セミナーレポート&事例インタビュー 「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用! 校務のクラウド化と、校務・学習ネットワークの統合を実現する方法とは?

2022年12月14日、NTTコミュニケーションズ (以下、NTT Com) は「デジタル田園都市国家構想交付金を活用!~校務のクラウド化」と題したオンラインセミナーを開催しました。

本セミナーでは、「デジタル田園都市国家構想交付金とは何か?どうすれば活用できる?」「校務系システムの更改において、将来に向けて今、何をどうすることが最適解なのか?」について、2021年度に実際に交付金を申請し、採択された兵庫県佐用町教育委員会の事例を交え、具体的な手法が明かされました。

2023年2月16日に公布締め切りが迫る中、本記事ではすべての自治体教育関係者必見のセミナー内容を、佐用町ご担当者へのスペシャルインタビューとあわせて、ご紹介します。


<セミナー概要>

  • 開催:2022年12月14日(水)15:00~16:30
  • 会場:NTT Com 共創ルーム「WORーX BASE」(東京・田町グランパーク)
  • テーマ:
    • 「デジタル田園都市国家構想交付金」の活用
    • 校務システムのクラウド化 および 校務系、学習系ネットワークの統合
  • 登壇者:
    佐用町教育委員会教育課 企画総務室 企画総務係長 篠倉 崇泰氏
    NTTコミュニケーションズ株式会社 スマートエデュケーション推進室 担当部長 稲田 友
    NTTコミュニケーションズ株式会社 スマートエデュケーション推進室 主査 両角 恵一
    NTTコミュニケーションズ株式会社 スマートエデュケーション推進室 高頭 実花(司会)

<INDEX>

① そもそも、「デジ田交付金」って何?

  • 「田園都市国家構想」&「デジ田交付金」とは?
  • TYPE1は何が軸で評価されるのか?
  • 「他の地域で確立されている有料モデル」とは?

② 事例公開!佐用町の申請内容と手続きは?

  • 専門家でもない担当が、「最先端」を目指した理由
  • 実施計画書作成のポイント

③「デジ田交付金」×「校務のクラウド化」

  • 「デジ田交付金」で「校務のクラウド化」を実現する方法とは?
  • NTT Comの自治体向け支援

④ Q&A

⑤ スペシャルインタビュー~佐用町・篠倉氏に聞く
「校務クラウド化へのチャレンジとNTT Comの支援」


① そもそも、「デジ田交付金」って何?

最初に登壇したのは、NTT Com スマートエデュケーション推進室 担当部長の稲田 友。

稲田は、学習eポータル「まなびポケット」のプロダクトオーナーを務めるほか、過去に文部科学省のICT活用教育アドバイザーなどを担当。2021年9月からは、デジタル庁にて教育・学習分野のプロジェクトマネージャーも務めている。

● 「田園都市国家構想」&「デジ田交付金」とは?

稲田は、「デジタルを基盤として、その地域の特色や豊かさそのままに利便性高く魅力あふれる地域に」を目指す国家構想「デジタル田園都市国家構想」の特徴的なポイントを説明。そして、その構想を実現するための「デジタル田園都市国家構想交付金(以下、デジ田交付金)」の中でも、学校教育のICT(デジタル)関連で自由度高く活用が可能なのは「デジタル実装タイプ」であるとして、

デジタル実装タイプにはTYPE 1/2/3の3種類があるが、学校教育分野のICT、デジタル関連に絞った施策ならば、TYPE1「有料モデル導入支援型」の選択が妥当

と説いた。

● TYPE1は何が軸で評価されるのか?

では、TYPE1「優良モデル導入支援型」は、いったい何を軸として評価されるのだろうか。2022年12月7日の「住民のマイナンバーカード受給率53.9%以上の自治体は、交付金の受給を申し込める」との報道を目にした方も多いだろう。

その点について、稲田は下の表を用いて解説。

セミナーでは、評価項目における各ポイントについても、詳しい説明がなされた。

● 「他の地域で確立されている優良モデル」とは?

もう一つ、TYPE1には重要なポイントがある。それは、「他の地域での優良モデル・サービスを活用した実装の取り組みを支援する」という点である。

この点については、R4年12月12日に内閣府が公開した「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)参考事例集(PDF形式/11.4 MB)」に、3つの事例が掲載されている。その中の事例1が、兵庫県佐用町における「校務支援システムのパブリッククラウド化、校務系・学習系ネットワークの統合」だ。

出典:内閣府地方創生推進事務局「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ) - 地方創生未来技術支援窓口 - デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 (chisou.go.jp)」より

② 事例公開!佐用町の申請内容と手続きは?

続いて、佐用町教育委員会教育課 企画総務室 企画総務係長の篠倉 崇泰氏が登壇。

篠倉氏は昨年度、佐用町がデジ田交付金を申請することとなった背景および、具体的にどのように申請を進めたのか、次のように語った。

● 専門家でもない担当が、「最先端」を目指した理由

篠倉氏は、令和3年4月に教育委員会に異動。「自治体あるあるですが、情報リテラシーも低いのにいきなり情報教育担当になり、当時はGIGAスクールって?という状態でした」と語る。

どうやってデジタル化すればよいのか、データをどう活用すればよいのか、皆目見当が付かない状態であった篠倉氏は「この時、2つの出会いがありました。」と語る。

1つめはイェール大学助教授の成田悠輔氏がその必要性を説く「教育にもEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:データを活用した政策形成)が必要」という主張。篠倉氏はこれをヒントに、「子どもの学習データを集めて分析したら、最適な教育ができるんじゃないか?GIGAスクール構想はこれが目的なのか。未来の教育はこれだ!」とひらめく。

そして2つめが、稲田が個人的に発信しているnoteの記事だった。篠倉氏はそこに記載されているさまざまな教育デジタル化のヒントを読み、稲田から無料でのアドバイスも受ける中で、教育のデジタル化を阻害する、現状の大きな問題点に気付く。

それが、今回のプロジェクトのテーマである「校務クラウド化と、校務と学習ネットワークの統合」だ。

「現状、校務用と学習用のネットワークが分離されているため、データがうまく共有できません。さらに先生方の使う校務PCはデスクトップで、職員室だけしか使えない。今後、GIGAスクール構想で蓄積される学習データの活用を考えたとき、そして先生方の働き方改革のためにも、ここが解決すべき根本課題だと考えました。」(篠倉氏)

折しも佐用町はサーバーやPCを含めた校務システム更改の時期を迎えていたこともあり、篠倉氏はさっそく財政担当に相談する。しかし当初は、「財源が確保できない」「前例がない」などの点を指摘され、芳しい反応は得られなかったという。そこに飛び込んできたのが、デジ田交付金の情報だった。

「補助率1/2、当時は関連する交付金も合わせれば実質9割の補助が受けられる。これはもう、やるしかないと燃えました。」(篠倉氏)

● 実施計画書作成のポイント

こうして、デジ田給付金の申請に向けて動き出した篠倉氏。しかし、必要となる実施計画書の締め切りまで、2週間しかなかった。本セミナーで篠倉氏は、実施計画書作成の上でのポイントについて、以下の5点を掲げ、詳しく解説している。

  • ポイント① 事業構想は持っておくべき
  • ポイント② 概算経費の算出
  • ポイント③ 誰のために?(地域の将来像)
  • ポイント④ デジタルを用いて(デジタル原則の遵守)
  • ポイント⑤ KPIとは?

● 合意形成の進め方

続いて篠倉氏は、最大のハードルともいえる「合意形成の進め方」についても解説。具体的には「財政担当」、「自治体幹部」、「学校現場」の3つの対象に分け、デジタル化や補助金活用を推進する上で、それぞれが抱える懸念や合意形成に向けたポイントについても詳しく説明した。

最後に篠倉氏は、「とにかく、やってみないとわかりません。チャレンジのマインドと、アジャイル思考が大切です。」と語る。そして、「人口1万5千人、人的リソースも少ないウチでできるなら、どこの教育委員会でもできるはず。誰でもどこでも同じように、それがデジタルの本旨。ぜひこの機会に、やってみませんか?」と結んだ。

③ 「デジ田交付金」×「校務のクラウド化」

続いて登壇したのが、NTT Com スマートエデュケーション推進室 主査 両角 恵一。

両角は「申請要件を満たしながら、実施計画書を具体的に書き切ることが重要!」と語り、以下、先日公表されたTYPE1の申請要件に沿って、そのポイントを解説した。

出典:内閣府地方創生推進事務局「デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ) - 地方創生未来技術支援窓口 - デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 (chisou.go.jp)」より

● 「デジ田交付金」で「校務のクラウド化」を実現する方法とは?

両角は5つの申請要件のうち、「全体像を掴む上で、5項目目の『デジタル原則の遵守』から理解しましょう。デジタル原則は5項目から構成されており、校務のクラウド化においても、この5つの原則を遵守する必要があります。いずれも、NTT Comが提供する『まなびポケット』と校務のクラウド化を組み合わせることで、実現可能です。」と語り、佐用町の構成図を示して解説した。

①デジタル原則・自動化原則:

  • まなびポケットは保護者連絡機能を提供し、学校と保護者間のコミュニケーションのデジタル化が可能。
  • また将来的に、保護者のスマホで欠席連絡した内容が校務支援システムに自動連携する機能も提供予定。

②アジャイルガバナンス原則

  • まなびポケットは、ドリル教材や協働学習ツール、MEXCBTなどのデータを蓄積する機能を持つ。
  • このデータを教育政策の策定などに活用でき、アジャイルガバナンスの原則を遵守可能。

③官民連携原則

  • まなびポケットをはじめ、校務支援システムなど民間サービスを活用することで遵守可能。

④相互運用性確保原則

  • 校務支援システムが持つ先生や子どもたちの名簿情報を、国際標準規格で学習eポータルに連携、アカウント管理の負担を軽減するなど、システム間でデータ流通が可能な仕組みで遵守可能。

⑤共通基盤利用原則

  • まなびポケットは学習eポータルであり、全国の自治体でご利用いただけるポータルであるため、遵守可能。

両角はこの他の申請要件、

  • 「地域の課題解決」を実現する方法
  • 「実効的・継続的な推進体制」を構築する方法
  • 事業成果を計測する「KPI」と「計測の仕組み」とは?
  • 「事業経費」の算定方法
  • 「校務のクラウド化」で加点申請する方法

についても詳しく解説した(セミナー動画視聴方法はページ最後のお問合せまで)。

そして両角は、もう1つの申請要件である

  • 「すでに確立した優良なモデル・サービス」の活用方法とは?

について、「すでに佐用町様で確立した『佐用町モデル』で、問題なく遵守可能です。」と強調した。

● NTT Comの自治体向け支援

そして最後に、「校務のクラウド化」実現に向けたNTT Comの自治体向け支援を紹介。

「デジ田交付金は募集開始(R4年1月27日)から締め切り(R4年2月16日)まで非常に短期間となるため、申請でお悩みの自治体様は、ぜひ弊社にご相談ください。」と結んだ。

④ Q&A

講演終了後、聴講者から数多くの質問が寄せられ、各講演者が回答するQ&Aが行われた。

  • Q1)学校現場のデジタル化の効果は?
  • Q2)どのようにKPIを設定?どこから考えた?
  • Q3)来年のデジ田交付金 まったく同じじゃダメ?+α必要?
  • Q4)導入時の技術的な苦労は?
  • Q5)学習用と校務のOSは?以前から同じ?
  • Q6)二要素認証はどのように実現?
  • Q7)構成変更でコストは下がった?
  • Q8)紙ベースのデジタル化、データ保存は?
  • Q9)ファイル共有、管理は?
  • Q10)まなびポケットに連携可能な校務系システムは?
  • Q11)セキュリティポリシーは?改訂した? ほか

これらQ&A詳細は、セミナー動画をご覧ください(セミナー動画視聴方法はページ最後のお問合せまで)。

⑤ 特別インタビュー~佐用町・篠倉氏に聞く
「校務クラウド化へのチャレンジとNTT Comの支援」

回答:佐用町教育委員会教育課 企画総務室 企画総務係長 篠倉 崇泰氏

― 「デジ田交付金」を活用した校務のクラウド移行について、特に重かった課題や不安点は?

「やはり合意形成ですね。学校が何を求めているか?財務担当は何を懸念するのか?自治体幹部にはどう伝えれば納得いただけるか?時間がない中で知恵を絞り、丁寧な説明を心がけました。」

― 多くの提案の中から、NTT Comをパートナーとして採用された理由は?

「今後も増え続ける学習コンテンツのHUBとしての、まなびポケットの存在が大きかったですね。自由度の高い基盤であり、シングルサインオンと多要素認証機能など認証基盤としての役割も果たす点。また、NTT Comの教育業界での経験値の高さも実感しました。 そしてなによりも、NTT Comが実現しようとしている世界感、教職員をエンパワーしようという姿勢に共感しました。」

― 今回、佐用町は先行してクラウド化を進め、校務・学習のデータ連携が可能となりましたが、今後の展望と、NTT Comへの期待をお聞かせください。

「私は、教育はリカレント、生涯学習など、学校だけのものではないと考えます。その視点で、まなびポケットは今後、人生におけるラーニングマネジメントシステムになって欲しいと期待しています。」

― それでは最後に、全国の自治体の皆さまに向けてのメッセージをお願いします。

「デジ田交付金を活用した校務のクラウド化は大きなチャレンジですので、進める中でさまざまな困難や課題に直面されると思います。しかし私は課題こそ財産であり、課題を考えることが行政の役割だと捉えていますので、ぜひチャレンジしてください。デジタル化やデータ活用に不安を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、『すべてのデータは本人のために』を理念として、乗り越えましょう!」

― ありがとうございました。

セミナー動画視聴方法やお問い合わせはed-cl@ntt.comまでお願いします。

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