2021年07月21日

C4BASE Season 2 始動
スッキリ分かった「DX」 今こそ目覚めよ、日本企業!
~A step toward Smart World 第1回(前編)~

「会社や家庭、個人のコミュニティーを超えた"4thプレイス"」をうたい、他企業の新規事業やイノベーションを担当する会員が、新たなビジネス創出を目指して活動をしているC4BASE。
Studio Liveとして2年目を迎えた今年度の通年テーマは、「A step toward Smart World ~つながり続けるコミュニティーを目指して~」。NTT Comが目指すSmart World実現に向け、創造的で実践的な活動を共有・共創していくさまざまな取り組みを計画しています。

その第1回目となるオンラインイベントが、6月3日と16日、2日間にわたって開催されました。今回は、「Re-Confront~今さら聞けないDX~」と題し、NTT Comの“本業”でもある「DX」に改めて向き合う機会を設けました。スペシャルゲストにお招きしたのは、NTTグループと戦略的提携を結びNTT Comとも関わりが深い企業、SAPジャパン株式会社(以下SAP)の村田 聡一郎氏。国内外のDX実情をよく知るそのお立場から、ウェビナーとカウンセリング・セッションの2本立てで、たっぷりと語っていただきました。今回は、前編としてウェビナーをレポートします。

村田 聡一郎氏

SAPジャパン株式会社 インダストリー&バリューアドバイザリー統括本部 IoT/IR4 (Forth Industrial Revolution) ディレクター。米国Rice UniversityにてMBA取得。米系IT企業・本社駐在、ITスタートアップを経て2011年SAPジャパン入社。SAP HANA、クラウド、IoTなどを利活用した顧客およびパートナーとの共同イノベーション事業開発に関わる。海外事例にも精通し、講演・執筆など多数。SAPアジアの社内CSRコンテストOne Billion Livesの初年度Winnerになり、地震防災ネットワーク構築活動「my震度」を立ち上げ。この活動で協業中の白山工業株式会社にて社外取締役に就任。現在、新規事業としてトラック物流の効率化を促進するデジタルプラットフォーム「合い積みネット」に携わる。

Re-Confront いまさら聞けないDX
~DXの必要性を今一度認識し『これから』を考える~
村田 聡一郎氏 講演

“DXの教科書”“DXのバイブル”とうたわれる著書「Why Digital Matters? “なぜ”デジタルなのか」の出版以来、各企業や団体、国会議員などにも講義を行ってきた村田氏。講演は、今、改めて「デジタルとは何か」という問題に向き合った上で、「今後デジタルをどう使い、効果的に走らせていくべきか」という具体的施策まで踏み込んだ内容となりました。

村田氏

「C4BASEは、企業人としてイノベーション・新規分野に取り組まれる方の集まりだと伺っておりますが、私自身もそうです。今日は、講演者としてというより一緒に取り組む仲間を探しに来たつもりです」
視聴している国内の名だたる企業に属する会員の方々に向けて村田氏はこう呼び掛け、特別講義は始まりました。

1.改めて、「DX」とは何か。「IT化」とはどう違う?

まずは、今やバズワードと化している「DX」という用語について、従来使われてきた「IT化」と何がどう違うのかと問い掛けます。

「日本におけるIT化というのは、ヒトが行う前提で何十年も前から連綿と最適化されてきたビジネスプロセスそのものは変えずに、ところどころにデジタルを投入して、部分的に改善すること。一方、DXというのは、そうした現在の仕事のやり方を、基本的にはやめてしまい、人間ではなくデジタルが主なパートを行う前提で最適化した新しいプロセスに入れ替えることです」と村田氏は解説します。「この2つの違いは明確ですよね。一言でいえば、DXは“カイゼン”ではない、ということ。この認識を持てるかどうかが、日本、日本企業、そして皆さんにとってのチャレンジだと思っています」

2.他国にはマネできない日本の「優れた現場力」が今ではアダに

「ヒトの力」や「社員の現場力」が自社の強みであるという企業は、現在でも日本には大変多く、それは共通認識としてあると思います。高度成長期から90年代半ばまでの40年以上にわたり、日本企業はこれを武器に、世界最強の「勝利の方程式」をつくり上げました。戦後の“人口ボーナス”のもと、「長時間勤務もいとわない労働観」「在職期間の長さによるノウハウの蓄積」を前提に、大量に供給され続けた日本人労働者の「優秀さ・勤勉さ」はまさに日本を世界第2位の経済大国に押し上げた原動力でした。

しかし、それが90年代後半~2000年代に入ると様相が違ってきます。ITやインターネットなど「デジタル」の飛躍的な伸びとともに、ヒトの代わりに電子、つまりソフトウェアに仕事をさせるということが可能になってくる。日本のように現場力に頼ることができない欧米の経営者にとって、これは非常に魅力的な選択肢でした。なにしろヒトと違って電子は疲れない、間違えない、サボらない、ストライキをしない、賃上げを要求しない、退職しない……。一旦きちんと導入してしまえば、その後は24時間365日、そして1年でも10年でも、動き続けるわけです。こうして欧米や新興国では、ヒトとデジタルが業務を分担することで徐々に全体最適を実現し、生産性を高めていきます。

視聴者もリアルタイムにリアクションできるウェビナー画面

ただ、日本においては長きにわたって「ヒトが走る経営」だけで成功を収めてきた結果、それ以外の方法はほぼ顧慮すらされず、IT導入による効率化は「人員削減」とほぼ同義に扱われて敬遠されました。デジタルの導入で勢いを増す欧米企業との競争激化によって現場にシワ寄せがいっても、社員が有能で勤勉なので、それに耐えることができてしまっていた。団塊世代の大量退職や少子高齢化に伴って、人手不足と現場力の低下は少しずつ進行していても「何とかして、ヒトがさらに走る」以外の対応方法は検討されず、外国人労働者の導入などで補おうとしていました。

その結果、何が起きたか?

3.日本だけがDXに乗り遅れ、経済は20年停滞した

名目GDPで比較すると、世界各国が2000年以降も成長が続いているのに対して、日本だけが過去20年以上ほぼ横ばいという状況。また、G7で比較した平均給与では、2000年=1.0とした場合、2018年にはイギリス、カナダ、アメリカは1.62、1.61、1.60、一番下のイタリアですら、1.39倍に伸びている一方、日本だけが、0.94。しかも、日本人の労働時間は、ほかの先進諸国(OECD加盟国)と比べると依然として圧倒的に長く、日本を100とした場合アメリカは70%、ドイツは64%、フランスやイタリアに至っては半分程度。どこよりも長く働き続けてきたにも関わらず、給料が下がっているのは日本だけだったのです。

今後、日本において「ヒトが走る」経営手法が復活する可能性はない、と村田氏は言い切ります。日本の総人口、労働人口の推移のグラフ(1950~2060年予想)を見れば一目瞭然で、別の手法を本気で取り入れない限り、労働人口の減少とともに沈むしかないのです。では、日本はこれからどうすればいいのでしょうか。

4.ヒトではなく、デジタルを走らせろ!

「デジタル」の対義語はアナログではなく「フィジカル」である、と村田氏は説きます。そもそもデジタルとは、突き詰めれば、ビットのon/off、電子の羅列として表現され、伝送されるもの、ですが、大きく特長を3つ挙げると、①フィジカル世界では考えられない超高速(ゆえに、超大量でも容易に扱えるし、伝送もまた超高速でできる)、②容易かつ完全に複製できる、③指示されたことは100%正確かつ無限にこなせる。どれも、フィジカル世界(たとえばヒト)とは、真逆です。

ヒトは、デジタルと戦ってはいけない。デジタルの長所を生かし、途中でヒトが止めてしまうことなく自分たちのために“働かせる”必要がある。日本企業にとって、DXは喫緊の課題であると同時に、ROI(費用対効果)は大きく、かつ確実であると村田氏は強調します。そして次のように語り、講演を終えました。

「『デジタルは手段にすぎない、まず目的を』は、DX文脈では間違いです。手段が安価かつ確実に使えることを前提とした目的はいくらでもあり、デジタル抜きで考えつく目的はその時点で適しません。まずはやり方や考え方そのものを疑うこと。それを変えることができなければ“デジタル敗戦”を繰り返すことになります。日本企業は今や“素手で戦っている”も同然で、一刻も早く、諸外国と同じ武器を持つべきです。もともと日本人は器用で勤勉。正しいDXの考え方さえ身に付ければ、世界トップクラスに返り咲くことは可能だと私は思います」

クロストーク

講演後は、会員の方々が抱えているDXについての悩みを中心に、C4BASE Managing Directorの戸松 正剛部長とのクロストークが行われました。

最も多く寄せられた悩み、「コンセプト・アイデア創出」と「課題の発見」に対し村田氏は、「経験上、実感と共感が持てる結果」として、改めてDX文脈でビジネスを考えていく難しさについて言及しました。その上で、既存事業をタテ軸、デジタルをヨコに、タテ軸とヨコ軸の合わせ技で右上を目指していく「十字フレームワーク」の考え方を紹介。また、「落ちているカネを拾う」という独特の表現で、気付きにくいがビジネスチャンスが潜んでいる、捨てられていた空白地帯をつかんでいくことが近道だとも説明しました。

そのほかにも感想や質問がオンタイムで投げ掛けられ、示唆に富んだ議論が展開されました。そして、もっと直接的に、より具体的な相談ができる場として、次回の「カウンセリング・セッション」が紹介され、今回のウェビナーは締めくくられました。


最後に、後編のカウンセリング・セッションで進行役を務めたC4BASE中澤良一よりメッセージ。

「昨年度は、コロナ禍により突如としてオンライン活動への方向転換を迫られる中、全4回のウェビナーを中心に新規会員を集め、会員数はおよそ1200社、3000人まで拡大したC4BASE。今年度、私たちは、たとえオンラインであっても会員同士がつながり、より強く帰属意識を持てるような魅力的なコミュニティーに進化するようなイベントを企画しています。

後編では、私中澤と、同じくC4BASEの穐利理沙がパーソナリティーを務めた初の試み、「カウンセリング・セッション」の模様をお伝えします。村田氏が会員の方々の質問に答えながら、さらに示唆に富んだ会となりましたのでお楽しみに!」

後編はこちらからご覧いただけます。

※C4BASE会員の方は、見逃し配信のお申し込みからオンデマンドで本セミナーをご覧いただけます。C4BASE会員でない方は、会員登録が必要となりますので、会員登録サイトで会員登録を行い、完了メールが届いてからお申し込み画面へお進みください。

<参加者の声>

今回のウェビナーは、400 人以上の会員の方々が視聴し、イベント後のアンケートでは、96.8%の方が「大変有意義だった」または「有意義だった」と回答しました。以下にアンケート結果、声の一部をご紹介します。

IT化とDXの違いなど、もやもやしていたことをすっきり言語化していただきました。日本の製造業の「ヒトの力」を信じてきた姿も納得感ばかりです。私も自社内でDX推進側ですが、社内の(無意識の)抵抗力はかなりのものがあります。「電子を人が止めない」仕組みづくりを改めて頑張ろうという気持ちになりました。

とても分かりやすい内容でした。日本の遅れと原因がひどく心に突き刺さりました。自社の状況にも照らし合わせて、DXに取り組むに当たって考え直したいと思います。

日本はサボっていたわけではなく、他に追い抜かれてしまったのだというお話、また日本の底ヂカラだと思うヒトや現場力を否定することなく、デジタルによって伸びることができることができると知り、ある意味自信にもつながりました。

グローバルな視点での語りは、魅力的でした。ぬるま湯に漬かっている場合じゃないと感じました。

古いアナログ人間と自覚していましたが、実は過去のやり方から抜け出せないフィジカルの集合体だったのでは…と、お話を聞きつつ痛感した次第です。

当社の経営に届いてほしい内容でした。日本の外側からの視点が国内に受け入れられ、浸透していくことを切に願います。私も自社内で戦いたいと思いました。

論点は核心をついており、数字や図を多用したプレゼンテーション、非常に魅了されました。ぜひ、ご一緒にビジネス共創させていただきたいです。

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社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 事業推進部

穐利 理沙

2021年10月に立ち上げたOPEN HUB運営を担当しています。お客さまと新しい意味あるものを生み出すため、オウンドメディアによる情報発信、Webinarや会員コミュニティーによる共創プロジェクトの推進を行っています。ご興味ある方は、ぜひコンタクトをしてください!

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