2024年3月6日

日本生命の全国2000拠点にFMC内線基盤を導入
DCCの力を結集し挑んだ大規模プロジェクトの裏側

日本生命保険相互会社(以下、日本生命、敬称略)は2019年、全国の約2000拠点の内線基盤を刷新するプロジェクト(以下、PJ)に着手した。NTTドコモグループはFMC内線基盤の導入を提案し、パートナーとして参画。数年に及ぶ大規模PJは、コロナ禍を乗り越え、2023年に全拠点の内線基盤リニューアルを実現した。

本PJのキーパーソンである日本生命IT統括部のホルヘ裕子さん、日本生命の情報システム子会社であるニッセイ情報テクノロジー株式会社(以下、ニッセイ情報テクノロジー、敬称略)の山田法子さんを迎え、NTTドコモグループの森中孝洋さん、今村真帆さん*とともにPJを振り返り、その成功要因について考えたい。

*森中さん:PJ参画当時はNTTドコモ、現在はNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)第一ビジネスソリューション部(以下、一BS)に所属
今村さん:PJ参画当時は一BS、現在はビジネスソリューション本部 事業推進部に所属

後列左から、森中 孝洋さん、今村 真帆さん(NTT Com)
前列左から、山田 法子さん(ニッセイ情報テクノロジー)、ホルヘ 裕子さん(日本生命)

日本生命の働き方変革PJの一環として、全国の内線基盤を刷新

日本生命は2015年に「人財価値向上プロジェクト」をスタートさせた。「人財育成」と「闊達(かったつ)な風土醸成」を軸に、多様な従業員の活躍を支え、推進しようという取り組みである。

「人財価値向上プロジェクト」の大きな柱と位置付けられているのが働き方変革だ。テレワークやフレックス勤務の促進、Webコミュニケーション環境の整備などの課題解決に向け、日本生命は2018年にNTTドコモグループに相談を持ち掛けた。これが後に、基幹ネットワークや動画システム刷新も含む「NNプロジェクト*」へと発展する。

*2つのNはそれぞれ、日本生命グループ、NTTグループの頭文字

「NNプロジェクト」を推進する中、内線電話環境が一つの課題として浮かび上がった。内線電話のユーザーは、全国の支社・支部、本店(大阪市)・本部(東京都)で働く内務職員約2万人。日本生命のホルヘさんは次のように話す。

「支社・支部の内線には固定電話、本店・本部の内線には社内のみ使用可能なPHSを使っていました。オフィスでの業務を前提とした内線環境がテレワーク普及の壁になっていたのです。また、内線電話をかけるプロセスについても、PCで電話帳を開き、相手の番号を検索し、端末に番号を入力して通話するという、今までの使い方をモデルチェンジし、テレワークにフィットするように変えていきたいと考えていました」

山田さん

ニッセイ情報テクノロジーの山田さんは、内線基盤のリニューアルが求められた背景にはシステム運用上の事情もあったと説明する。

「もともと全国の拠点には内線電話用のPBXが設置されていましたが、PBXはビル移転などに伴い移設する必要があります。部品交換の際、古いものが生産中止になっていて新しい機種に買い替えることもあるなど、運用コストが課題とされていました」

こうした課題を解決するため、NTTドコモグループが提案したのがFMC内線基盤の導入だ。

NTT Comの森中さんは「私たちが提案したのは、モバイル内線とセントレックス型の集約PBXを組み合わせたソリューションです。内線をモバイル化することで場所に縛られない柔軟な働き方を実現できます。同時に、各拠点に設置したPBXの機能を集約すれば、機器の運用コスト削減にも寄与できると考えました」と話す。

同じくNTT Comの今村さんも「提案の中には電話帳のクラウド化も含まれていました。ユーザーはおのおのの端末で相手先を検索し、そのまま通話することができますし、誰から電話がかかってきたのかも一目でわかります。ただロケーションフリーを実現するだけでなく、社内コミュニケーションの活性化にもつながる点をアピールしました」と振り返る。

こうした提案内容に加え、これまでにNTTドコモグループが手掛けてきた多くのFMC導入実績なども評価され、日本生命の内線基盤刷新PJがスタートした。

パンデミックを乗り越えた大規模PJ

今回のPJの本格的な準備が始まったのは2019年4月。翌2020年の春ごろに日本をパンデミックが襲った。予期せぬ環境変化により、テレワークの必要性は一層高まったともいえる。

ホルヘさん

「コロナ禍の影響は大きく、スケジュールを含めてさまざまなところで計画を見直しました。同時に、これからの働き方をより深く考えるきっかけになったようにも思います。

対面での会議が難しくなった当時、NTT Comがすぐに電話会議の環境を用意してくれました。その後はTeamsに移行しましたが、スムーズにオンラインでのコミュニケーションが行える環境が素早く提供されたこともPJを滞りなく進められた要因です」(ホルヘさん)

最大のチャレンジは機器調達だった。パンデミックによって世界のサプライチェーンが不安定化。半導体不足や製造工場の停止により機器の確保が困難になった。

「内線端末として採用したiPhone、ルーターやスイッチ類を調達するのが難しい時期がありました。入手困難になったさまざまな機器を調達できたのは、NTTドコモグループの皆さんの尽力によるところが大きいでしょう」とホルヘさんは語る。

約2000もの拠点への展開計画づくりも容易ではなかった。新たな内線基盤に切り換える際には現場での作業が必要だ。2021年7月より、比較的小規模な拠点から経験を積み、最後に本店・本部などの大規模拠点の内線基盤をスイッチするというアプローチでPJを進めた。大規模拠点での切り換えの直前には、役員を含む多くの関係者が集まる「決起会」を実施してPJ完遂を誓ったという。

「決起会や入念な打ち合わせを重ねたことにより、関係者が一致団結してPJを推進することができたと思いますし、それが内線基盤のスムーズな移行につながったと感じます。実際に、本店・本部の切り換えもトラブルなく進めることができました」(ホルヘさん)

テレワーク促進や社内コミュニケーション円滑化に寄与

2023年8月、日本生命の全国約2000拠点へのFMC内線基盤の導入が完了した。働き方変革の観点ではすでに効果が見え始めているという。

「自席以外でも業務ができるようになったことで、各拠点のユーザーからは『便利になった』という声が寄せられています。本店・本部からは『テレワークを実施しやすくなった』と聞いています。

また、今回導入したWeb電話帳『PHONE APPLI PEOPLE』によってワンタッチで通話できるようになったことや、着信履歴が残る機能も好評です。以前は拠点間の通話で取り次ぎが発生することがありましたが、今では拠点同士のコミュニケーションも円滑になりました」(ホルヘさん)

山田さんも次のように話す。「留守番メッセージの運用も効率化できました。以前は各拠点でメッセージを録音して手動でセットしていましたが、留守番メッセージもPBXを集約したことで、全国共通のメッセージを簡単な操作で利用できるように。

システム運用面での効果も大きいです。例えばオフィス移転の際、今まではPBXの移設が必要でしたが、これも行わなくてよくなりました」

固定電話から持ち歩けるiPhoneへ移行したことで、情報漏えいなどのセキュリティリスクを懸念する向きもあるかもしれない。しかし、電話帳のデータは端末内ではなくクラウド上にあるため、紛失・盗難時にデータを盗まれる心配は少ない。さらに、MDM導入により、紛失時には管理者がデータ消去の措置を講じることもできる。

森中さん

ホルヘさん、山田さんからのコメントを受け、森中さんは次のように話す。「場所にとらわれない働き方により、生産性や従業員満足度などの観点で効果があったとの声を頂いています。運用コスト削減なども含めて生産性向上につながるPJに携われたことをうれしく思っています」

さらに、今村さんはこう補足する。「通勤などの移動時間の短縮効果も期待できます。業務の生産性向上に加え、従業員の皆さまのプライベートの充実にも寄与できたのではないでしょうか」

冒頭で触れた「人財価値向上プロジェクト」において、日本生命は「ESの向上→CSの向上→企業価値・収益力の向上→ESの向上」という好循環を加速しようとしている。今回のFMC内線基盤がこのサイクルにポジティブな影響を与えたことは間違いなさそうだ。

DCC連携による柔軟かつスピーディーな対応

NTTドコモがNTT ComとNTTコムウェアの子会社化を発表したのは2021年10月。その後、2022年7月にグループ組織再編が実施された。今回のPJと重なるタイミングでの再編だが、この間3社による「DCC連携」は着実に強化されてきた。

DCC連携について森中さんは「以前はモバイルならNTTドコモ、固定回線はNTT Com、システム関係はNTTコムウェアというように各社が個別に対応していました。お客さまにとっては複数の窓口に対応する煩わしさを感じる場面もあったかもしれません。組織再編を経て窓口が一本化されたことに加え、今まで以上に総合的なバリューや付加価値が提供できるようになりました。お客さまに対して柔軟かつスピーディーな対応が可能になり、DCC間での調整もしやすくなりました」と語る。

そのDCCシナジーは、システムに何らかの問題が生じたときの原因特定から復旧までのプロセスでも発揮される。

今村さん

「ICTシステムは複雑です。固定電話でトラブルが発生したとき、実はモバイル側のシステムに原因があったというケースもあります。そんなときでも3社が連携することで迅速に問題を切り分けて、原因特定から問題解決に進むことができています」(今村さん)

今回のPJを通じ、日本生命側もDCC連携の価値を感じたようだ。

「PJに参画したどの企業の誰に相談を持ちかけても、しっかりしたレスポンスが素早く返ってきました。皆さんがPJの全体像を把握した上で関わっていることが分かりましたし、NTTドコモグループの幅広いケイパビリティも実感しました」(ホルヘさん)

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日本生命は今後、リニューアルした内線基盤のさらなる進化をめざしている。

「今は、新しい内線基盤のさらなる活用に向けて検討しているところです。業務を円滑にするアプリの搭載など、セキュリティポリシーに則った形で機能を拡充し、利便性を高めていきたいですね」とホルヘさんは意欲をみせる。

一方、山田さんはPJを通じて蓄積したノウハウをさらに育てていきたいと考えている。

「ニッセイ情報テクノロジーには幅広いソリューションがありますが、電話関係の知見については手薄でした。今回NTTドコモグループの皆さんと一緒に仕事をする中で、さまざまなノウハウを現場で教えてもらいました。この経験を今後に生かし、日本生命の働き方変革に寄与していきたいと思っています」

このPJを通じて、日本生命の内務職員の働き方やコミュニケーション環境は大きく前進した。加えて、日本生命とDCC各社とのパートナーシップもより強固なものになったといえるだろう。

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 第一ビジネスソリューション部

森中 孝洋

第一ビジネスソリューション部第五グループでは、生命保険会社様のアカウント営業を行っております。固定回線やモバイルといった従来インフラ領域に加えて、お客さまのワークスタイル変革などのDX推進と、ヘルスケアやフェムテックなどのお客さまとの協創領域への拡大により、お客さま事業へのさらなる貢献とNTTドコモグループのビジネス拡大に取り組んでいます。

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