2023年3月6日

リモートワーク下の社会人基礎力強化。ヒューマンリソース部が取り組む、ニューノーマル時代の新入社員育成メソッド「G-POP®(ジーポップ)ぐるり」とは

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、新型コロナウィルス流行をきっかけに全社的にリモートワークを導入しました。それから3年にわたり、リモートワーク下での新入社員育成の在り方を模索してきました。

この記事では、ITツールなどを駆使した「育成効果や学び合いの可視化」など、新入社員の自律的な成長を支援する「伴走者」としての取り組みについて、ヒューマンリソース部(以下、HR)の奥山亜美さん、櫻田駿さん、高田真有子さんに取材した内容をご紹介します。

リモートワーク下、育成施策を実施して浮かび上がった課題

HRが実施する新入社員育成では、社会人の基礎となるセルフマネジメント力を強化するため、「経験学習サイクル」を習慣化させることに注力してきました。

しかし、これまで経験学習サイクルの定着度合いや効果がどれほどなのかは、検証が難しかったといいます。

「以前、集合研修を実施していたときは、新入社員が各部署へ配属された後に研修内容を実務へ活用できているか把握するのは難しい課題でした」(奥山さん)

加えて、新入社員のリモートワークではつながりの希薄化が課題でもありました。

「実際に新入社員の皆さんから『自分の組織以外の同期と話すタイミングがなく、何をしているのか分からない』といった声が寄せられました。新入社員の場合、会社にも仕事にも不慣れなため、柔軟にリモートワークを行うのが難しいかもしれません」(高田さん)

そこでHRでは、リモート下でも継続的に育成の状況が把握でき、つながりも醸成できるような育成施策を検討することになりました。

まず取り入れたのが、学び合いの“見える化”を実現する学習管理プラットフォーム「チームタクト」です。

「チームタクト上で研修を行うことになり、ガラリと環境が変わりました。課題の提出や、テキストでの同期同士のコミュニケーションがログとして残ることで、継続的にトレースし育成の効果や定着を分析することが可能になったのです」(奥山さん)

課題感にフィットした、内省と対話を促すメソッド「G-POP®ぐるり」とは

そして、セルフマネジメント力の強化とつながり醸成という2つの目的を達成するために注目したのが、チームタクト上で行う「G-POP®ぐるり」というメソッドだったそうです。

「G-POP®」*とは、株式会社中尾マネジメント研究所代表の中尾隆一郎氏が提唱している、振り返りの型(下図参照)であり、「ぐるり」とは、〈グル〉ープ〈リ〉フレクションの略で、ファシリテーターの進行に沿って4人1組となり、各自記入してきたG-POP®シートを発表していくワークのことです。

*G-POP(ジ―ポップ)は、株式会社中尾マネジメント研究所の登録商標です。

新入社員研修「G-POP®ぐるり」の軌跡

「『G-POP®ぐるり』の導入に当たり、実際にHRで体験しながら、当社にこの手法がマッチするのか、効果的に設計するにはどうしたら良いかなど、時間をかけて議論しました。自分たちが感じた効果や心情の変化、そしてこの取り組みの意義を関係者の皆さんにどう伝えようか、文献なども参考に準備しました」(奥山さん)

そして、実際に導入されたのが2020年度研修。まずは、新入社員から参加希望者を募り44人で実施しました。いざ終わってみると、とても満足度が高く、翌年2021年度から新入社員全員に対象を広げたそうです。

経験学習サイクルの継続のため、工夫した全体設計

どのように実施したのか、全体の流れを伺いました。

「4月のスタートアップ研修では中尾氏(前述)をお招きし、取り組みの目的や意義、記述の仕方など直々にレクチャーしていただくことで、しっかりと動機付けを行いました。

その後、実際にシートの記入や内省の練習をした上で、配属後業務に慣れてきた9月からぐるりを実施しました。ぐるり期間終了後には、メンバー同士の成長や活動の効果を感じてもらうため、各グループで『振り返り会』を実施しました」(高田さん)

参加者もファシリテーターも、皆で学び合う場をつくる

前半は先輩ファシリテーターにリードしてもらい、後半は自分たちでファシリテーター役を立て、自走してもらうという2工程で実施しました。新入社員が先輩のファシリテーションを見て、学んだ後にトライする流れを作れたことで、混乱なく実施できたのはもちろん、先輩社員にとっても学びの機会を創出することができたそうです。

新入社員からは、「毎週シートを記入して振り返りを実施したことで、自分の業務や目標を俯瞰して見ることができた。同期の業務に取り組む姿勢に刺激を受けた」という声もありました。また、先輩社員も自身の成長につながったと実感した方がほとんどでした。

ファシリテーターとして参加した櫻田さんに、感想を伺いました。

「ファシリテーションの経験から、アドバイス目線ではなく、メンバーの内面に目を向け、引き出すという視点が得られました。ぐるりでのファシリ経験は、1on1などにも応用できそうだと感じました」

レポートで可視化した、セルフマネジメント力向上

今回は、チームタクトの付帯サービス「G-POP®レポート」の分析を活用して育成や学び合いの効果の可視化にも力を入れました。

G-POP®レポートには、シートのテキスト(記述)をAI分析し、内省の評価とアドバイスが記載されています。ぐるり実施前後でどのような変化があったかを分析すると、「振り返る力*」「目標を達成する力*」が向上した人が増えたそうです。

*はレポート上の評価基準によります。

「取り組みの前後で、G-POP®レポートの判定がどう変化したかを分析したり、チームタクト上の行動ログ(他者の閲覧、コメント・いいねのし合いなど)の分析も行いました。他者のシートを複数閲覧している人は、振り返り力が高く、仕事の計画・実行力も上がっているという結果も得られました。当初想定していたセルフマネジメント力の向上や、つながりの醸成の成果を可視化し分析することができたので、今後はセルフマネジメント力が行動変容にどれだけつながっているのか、という個人データも分析していきたいです」(奥山さん)

新入社員育成から「育成のバトン」をつなぐ

今回の取り組みを振り返り、今後へのさらなる意欲を語ってもらいました。

「ぐるりを経験した新入社員の方が、翌年に先輩ファシリテーターとして参加し、その先輩社員に影響を受けた新入社員がまた翌年に先輩ファシリになる。そういった、熱意が受け継がれる流れができてきています。上長や同僚など、周囲が施策を理解し、サポートをすることでより効果的に実施できるのではと思っています。今後も“育成のバトン”が良い形でつながるように支援していきたいです」 (高田さん)

「今後、G-POP®ぐるりの取り組みの中で、業務面と健康面の双方の状況が個別に把握できるようになり、上長とのコミュニケーションも促進できるような仕組みを構築できれば理想的だと思っています」(櫻田さん)

「分析結果から活躍する社員に見られる特徴などが分かれば、採用時の観点にも連動できるのではと考えています。データ分析結果を育成にとどまらず、採用との連動にもつなげていきたいです」(奥山さん)

(キャプション)左上から時計回りに奥山さん、高田さん、櫻田さん

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズヒューマンリソース部

奥山 亜美

若手社員をはじめとする人材開発を担当しています。NTT Comが行っている、ニューノーマルな働き方の実現に向けた新たな人材開発の取り組みをご紹介します。

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