NTT Communications
ローカル5Gを、これまで培ってきた
ネットワークやクラウドの技術と融合。
そこで生み出される付加価値の一つ一つが、
私たちの目指すSmart World実現へのプロセスです。
Introduction
NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は、お客さまの事業創造や競争力の強化を導くデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、社会的課題を解決する「Smart World」の実現に取り組んでいます。そのための中核となるのが、「企業のデータ利活用」に必要な機能をワンストップで提供する「Smart Data Platform」。NTT Comは、Smart Data Platformのさらなる活用に向け、今注目を集める「ローカル5G」のノウハウの蓄積に本格的に動き出しています。「高速大容量、低遅延、多端末接続」という特徴を、安心安全かつ安定的な自営の閉域無線網として、お客さまの要件に合わせて最適な形で提供できるローカル5G。この技術を、これまで培ってきたネットワークやクラウドと融合させることで生み出される付加価値の一つ一つが、私たちの目指すSmart World実現への軌跡となります。
Our Value
Smart Data Platformとの融合で、
お客さまのDX、
ビジネス創造を推進
NTT Comでは7つの分野におけるSmart Worldプロジェクトを発足させ、お客さまと共にさまざまな取り組みを進めています。その中でも製造業のお客さまと共にSmart Worldの実現に取り組んでいる3人が、お客さまがローカル5Gに期待すること、NTT Comだからこそご提供できる価値についてご紹介します。
前田 亮
柿元 宏晃
若林 憲人
Value 01
今、ローカル5Gは、移動する物体との高速通信を実現する技術として、製造業をはじめとするお客さまに注目されています。電車や自動車、ドローン、ロボットといった移動体から、映像など大容量のデータや多数のセンサーからのデータをリアルタイムに取得することができ、データ利活用の幅が大きく広がります。また、ローカル5Gでは、SIM認証により、携帯キャリアと同等のセキュリティ強度を持つ自営の閉域無線網を構築することが可能。Wi-Fiに比べて、なりすましや盗聴のリスクを低減できるため、これまでセキュリティリスクが障壁となり無線化が進まなかった領域(工場内の機密性の高いデータなど)での活用が期待されています。
想定されるユースケースとしては、ロボットが収集したデータを取り込む、あるいはロボットを遠隔で制御するなど、ロボットが人間と協調して作業するといった場面が考えられています。昨今では、ロボットが施設内の警備を行う、あるいはドローンを使って設備を点検するケースなど、製造業以外の分野でも応用が考えられています。
このほか、撮影した映像にさまざまな情報を埋め込んでリアルタイムに配信するなど、エンターテイメント分野でのローカル5G活用にもつながると考えています。
Value 02
企業ネットワーク全体からみれば、ローカル5Gでの通信は一部分に過ぎません。例えば、エンド・ツー・エンドで低遅延を目指すのであれば、ローカル5Gの裏側のネットワーク構成、データを蓄積するクラウドとの接続、さらにアプリケーションまで含めてトータルで考える必要があります。
NTT Comが提供しているSmart Data Platformは、ローカル5Gと連携させるネットワークやエッジ、クラウド、各種アプリケーションといったデータ利活用に必要なすべての機能をワンストップで提供するプラットフォームです。企業に点在するデータをシームレスに融合・整理し、利活用しやすくするため、お客さまはビジネスに応じて必要な機能を選択し、自由に組み合せてご利用いただくことができます。
柔軟にソリューションをご提案できることも、NTT Comならではのメリットです。ローカル5Gを構築する際には、お客さまの課題に合致する最適な機器・サービスを選定することが可能です。
ローカル5Gを含めたネットワークからアプリケーションまで全体で最適な構成を実現し、ソフトウエア技術を用いて柔軟にコントロールできるようにする。IT環境全体を最適化することで、お客さまのDXを確実に実現していくことがNTT Comの目指すところです。
個別に、詳細にカスタマイズ
ローカル5Gと
ネットワーク環境の連携も
2019年からローカル5Gに関する実証実験を重ね、知見やノウハウを蓄積しているNTT Com。さまざまなユースケースに対して、28GHz帯と4.7GHz帯の2つの周波数帯をどのように用いるべきか、また、どういった技術によりローカル5Gを含むネットワーク環境を構築するべきか検証を進めています。その取り組みをリードするイノベーションセンターの社員から、NTT Comの技術的な特徴をご紹介します。
松山 幸中
中村 大輔
森藤 福真
Value 01
NTT Comは、28GHz帯の実験試験局免許に加え、2020年末(11~12月)予定の4.7GHz帯でのローカル5G制度化を見据えて、同周波数帯の実験試験局免許を2020年6月に取得。制度化に先立って、4.7GHz帯の電波伝搬特性の検証を自社施設であるアークス浦安パークでスタートしました。
同じローカル5Gでも、4.7GHz帯と28GHz帯とでは、電波特性は異なります。28GHz帯は、通信速度を重視する時にメリットを出しやすい反面、遮蔽物に対する透過や回析が期待できず、到達距離も短いといった特性があります。基地局のアンテナと受信端末との間にさえぎるものがないような理想的な無線環境に近いLOS(Line Of Sight:見通し)内での5G通信に、より強みを発揮できるでしょう。
一方の4.7GHz帯は、28GHz帯と比べると、遠くまで電波を飛ばすことが可能で、遮蔽物に対してもある程度、透過や回析をします。そのため、28GHz帯での置局設計よりは工場の敷地内など一定のエリアをできるだけ少ない基地局でカバーすることができます。この2つの周波数帯の特性を踏まえた上で、お客さまの利用用途や通信のニーズに応じて適切な周波数帯を選択することが重要です。
Value 02
NTT Comでは、ローカル5Gとネットワークサービスとの連携について、さまざまな角度から検討を行っています。その中で、ローカル5G通信で収集したデータを、クラウドよりも手前にあるネットワーク上で処理を行うエッジコンピューティング「MEC(Multi-Access Edge Computing)」という技術に注目しています。低遅延を求めるお客さまに対しては、このMECをオンプレミス(自社内の情報システム)に配置することで、リアルタイムなデータ収集と利活用を実現。また、NTT Comのネットワークサービスをご利用いただく場合は、用途に応じてMECをネットワークエッジに構築し、多段利用していただくことも可能になります。さらに次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」を活用すれば、エッジだけではなく、各種クラウドサービス(Enterprise Cloud、Amazon Web Services、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなど)とセキュアに接続することも可能です。
このようにMECを上手く活用することで、低遅延を実現しながら、クラウドへ送信するデータ量を削減できるほか、災害などによってクラウドやインターネットにトラブルが発生しても処理を継続できる可能性を高めることができます。こうした対応は、さまざまなサービスを持つNTT Comの強みです。
Value 03
5Gにはソフトウエアを用いて仮想ネットワークを構築する「スライシング」という技術があります。3GPP(Third Generation Partnership Project)が策定する5Gの仕様では、高速大容量通信と低遅延、そして多端末接続の3種類のスライスが規定されていますが、ローカル5Gでは、さらに細かく、アプリケーションごと、あるいは端末ごとといった要件に合わせてスライスを作成できます。NTT Comでは、ローカル5G通信だけでなく、その裏側にあるネットワークも含めて、細かく多彩なネットワークスライスを作成し、エンド・ツー・エンドで制御することを目指しています。それによって例えば、工場の稼働データなど機密性が高いケースでは閉域網やオンプレミスのネットワークに閉じたスライスに載せ、インターネットなど情報系ネットワーク用のスライスと分けるなど、自由なカスタマイズが可能になります。
Our Challenge
NTT Comは2019年10月、多段エッジコンピューティングを組み合わせたローカル5Gの実証実験を開始すると発表(リリース)。実験の環境構築や免許申請などの手続きを経て、2020 年6月にラグビーチームShiningArcsのホームグラウンド「アークス浦安パーク」において、4.7GHz帯の周波数帯を用いた本格的な実証実験をスタートさせました。ここでは、引き続きイノベーションセンターの3人から実験の内容についてご紹介します。またNTT Comは、DMG森精機株式会社、株式会社ブリヂストンと連携し、実際の導入環境下における実証実験も実施しています。
実証実験1. 電波伝搬
電波伝搬試験では、アークス浦安パーク敷地内の屋外と屋内で4.7GHz帯の電波を発射し、その特性を確認しました。電波が届く距離や、基地局のアンテナと受信端末との間に遮蔽物(人や鉄板など)がある場合の電波強度の減衰や指向性といった特性に加え、受信強度によるスループット(機器が単位時間あたりに処理できるデータ量)や遅延、PER(パケットエラー率)の変化をデータで取得、通信品質についても検証しました。概ね事前に想定していた通りの結果を得ることができた一方、過去に検証実績のあるプライベートLTE技術で得た以上の新たな気づきやノウハウを蓄積することができました。実際にローカル5Gを導入する際には、今回の実証実験で得た気づきやノウハウを綿密なエリア設計に生かしていきます。
実証実験2. 映像伝送
ローカル5Gにおける私たちの最終的なゴールは、ローカル5Gを利用するユーザーの要求に応じて、ネットワークやエッジコンピューティング環境といったリソースを柔軟に提供することです。それを達成するには、ユーザーやアプリケーション単位での細かい粒度でのスライス制御が必要になります。今回はQoS*識別子を用いたスライス制御の実験を行いました。シンプルですが、今後のスライシング技術開発に繋がる重要な実験です。
アークス浦安パークにローカル5G設備を、NTT Comの田町オフィスには5G設備を擬似的に再現するエミュレーターを設置し、この2つの5G拠点をWAN回線で接続しています(図参照)。WANには2つの経路を用意し、それぞれをスライスに見立てて、QoSに応じた経路選択ができることを実験で示します。
ネットワークを伝送させるデータには、無線ネットワークで(特にアップロード方向にデータを流す際に)困難度が高い「映像ストリーム」を用いました。HEVCエンコードした映像ストリームを実際の5G無線区間に通し、バックヤードのネットワークと連携させてサービス(ネットワークポート)毎にQoSを設定して指示通りに経路制御できるかを試し、成功しました。また、映像ストリームのビットレートを5~50Mbpsで変更しその影響を調べたり、無線区間におけるパケットロスやそれを補うエラー訂正、再送制御機能の検証も行いました。
今後、さまざまなネットワークと連携させる検証や、各種アプリを実際のローカル5G上で動かしてみる検証を行います。また、例えばラグビーの映像を撮影し、それをMECで解析することで、解析結果を素早く映像に反映して伝送するといった機能の開発も想定しています。
※QoS:Quality of Serviceの略。事前に設定した優先度に基づいてデータの転送順、あるいは帯域幅を制御する技術
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、ローカル5G環境構築において、導入コンサルティング、免許取得、機器構築、運用の支援を行う「ローカル5Gサービス」の提供を2021年3月31日より開始します。
NTTコミュニケーションズ株式会社は、2020年末に予定されているSub-6帯の周波数帯の実用免許制度化を見据え、スタンドアローン(SA)方式のローカル5Gにおける特長である低遅延通信や、利用用途に応じたQoS通信を混在可能とするエンド・ツー・エンドスライシング)機能に関する実証実験を、2020年10月より開始します。
ローカル5Gを活用することで、高精細な位置情報・詳細な稼働情報取得による自動走行の精度向上や安全性向上、エッジコンピューティング側でのデータ処理負荷軽減による車体の軽量化など、AGVの高性能化への寄与が期待されており、両社は本実験を通じてその実現可能性を検討しています。
ブリヂストンの広大な工場敷地内において通信品質実験、大容量データ送受信実験などを行うことで、将来的なセンサー類のワイヤレス化や、高精細カメラによる高スキル者の技能分析など、製造現場のDXにおけるローカル5Gの活用領域を共同で検討しています。