2017年10月5日
McLaren-Honda
NTTコミュニケーションズ株式会社
2017年Formula1日本グランプリにNTT ComのSDx技術を初導入
〜鈴鹿サーキットと英国マクラーレン・ホンダ本拠地間をSD-WANで接続しレース戦略に重要な大容量データを優先順位に応じて効率的に伝送〜
Formula 1 レーシングチームMcLaren-Honda (本拠地:英国・ウォーキング、以下 マクラーレン・ホンダ)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)は、2017年10月6日から開幕するFormula 1日本グランプリにおいて、鈴鹿サーキットと英国ロンドン郊外のウォーキングにあるマクラーレン・テクノロジー・センターを結ぶネットワーク(以下 トラックサイドネットワーク※1)に、NTT ComのSDx技術※2を初めて導入します。
これにより、マクラーレン・ホンダは、レース戦略の立案に重要なテレメトリーデータ※3が、今後さらに増大することを想定し、ネットワーク帯域を柔軟・効率的に制御できるセキュアなICT環境の確立を目的に、日英間に構築したSD-WAN上におけるテレメトリーデータの送受信を通じて、その伝達速度と品質の有用性を検証します。
1.背景・概要
現代のFormula 1は、レース会場の気象情報や、レース車両に搭載した200個以上のセンサー・カメラが取得する「エンジン回転数」「ブレーキ圧」「燃料の残量」「タイヤの空気圧」「走行状態の映像」などの1レースあたり約100GBにも及ぶデータを、的確かつ瞬時にPITガレージ(現場のエンジニア)と本社の技術チーム(リアルタイムにレース状況を分析し、レース戦略を考え、現場に指示を出すストラテジスト)の間で共有し、迅速なレース・マネジメントを展開することで、チームのパフォーマンスを向上させています。
マクラーレン・ホンダは、今回のFormula 1日本グランプリにおいて、既存のトラックサイドネットワークに加え、NTT ComのSDx技術を活用した広帯域ネットワークを導入し、鈴鹿サーキットと英国のマクラーレン・テクノロジー・センターにおける、大容量データ送信時の安全性・迅速性・効率性、およびレース中のより高度な戦略立案への貢献度などを検証します。
2.特長
(1)「SD-WAN」を活用した柔軟なネットワーク
「SD-WAN」は、既存のMPLS回線と、インターネット回線などの各レース会場でチームごとに敷設可能な回線(以下:補完回線)を柔軟に組み合わせることができるため、帯域拡張と、優先順位に応じた効率的なデータ伝送を実現します。さらに、これまでMPLS回線経由で接続していた、PITガレージのインターネット回線やパドックのゲスト用WiFi回線などを、補完回線経由に変更することで、MPLS回線に重要データを効率的に伝送することを目指します。また、4k・8kなどの高解像度・高精細な大容量動画データを利用する場合でも、それらを補完回線に振り分けることで、MPLS回線上の重要なデータを逼迫・パケットロスすることから回避できます。
(2)「NFV基盤※4」の活用で、WANアクセラレータ※5やUTM※6機能を迅速に実装
「NFV基盤」を活用することで、データを遅延なく届けるためのWANアクセラレータ機能や、セキュリティを担保するためのUTM・Webプロキシ※7機能などを、クラウド上で迅速に実装します。これにより、SD-WAN上のセキュア・迅速な通信を実現するともに、世界各地で年間20戦週末に開催されるレース期間限定のネットワーク環境構築・撤去の稼働を簡略化でき、時間とコストを削減します。
(3)「SD-Exchange」の活用で、鈴鹿サーキットとマクラーレン・ホンダ本拠地間を迅速に接続
「SD-Exchange」を活用することで、鈴鹿サーキットの近隣から、英国マクラーレン・ホンダ本拠地の近くまで、NTT Comが保有するグローバルな高帯域インフラを経由するため、通常のインターネット接続時と比較し、大容量データを瞬時に伝送できます。
(図1)マクラーレン・ホンダを支えるNTT ComのSD-WAN/NFV基盤/SD-Exchange
3.両社からのコメント
<Head of IT business director for racing, McLaren Technology Group マット・ロッキー氏>
Formula 1はとてもハイレベルな闘いが繰り広げられる世界であり、我々がテクノロジー・パートナーシップの締結を通じて、今回NTT Comより提供してもらうSD-WANの巧みな技術は本当に競合優位性につながるものだと考えています。チームみんなで、この革新的なネットワークを利用し、本社の技術チームと現場のエンジニア間で、迅速なデータ伝送を要求しあう挑戦ができることを大変光栄に思います。
<技術開発部長/次世代プラットフォーム推進室長 山下達也>
マクラーレン・ホンダはFormula1の中でも突出した技術集団。高い技術的要求に応えるため、テクノロジー・パートナーとして一緒に開発を行うことは大きなメリットです。SD-WAN/NFVの先進技術をいち早くFormula1チームの現場に導入することができ、興奮しています。
<IoT推進室長/マクラーレン推進PT 宮川晋>
世界最高度の技術を用いて競われるFormula1のレーシングにおいて、世界各国を転戦するレース場から遠く離れたレースチームの本拠地にあるリアルタイム情報解析システムとの間での相互のデータ通信および現場の状況把握に必要な画像伝送は、レースに欠かせない極めて重要なパーツです。今回、マクラーレン・ホンダとテクノロジー・パートナーシップを締結したNTT Comは、その情報通信分野における世界最高度の高い技術力および運用能力を余すところなく示すべく、最新鋭の通信技術であるSDx技術を実際にミッションクリティカルな現場へと適用することで、勝利のために最高なトラックサイドネットワークを作り上げました。より高いパフォーマンスの実現に向けこれからも挑戦し続けます。今後ともNTT Comの世界最先端の技術力にご期待ください。
4. 今後について
両社は、2017年Formula 1日本グランプリへの本ソリューション導入結果・考察を通じて、ネットワーク伝送品質のさらなる向上を目指すとともに、他レース会場への展開の可能性を検討していきます。
また、NTT Comは、今シーズンからマクラーレン・ホンダのオフィス世界16拠点に企業向けVPNネットワーク「Arcstar Universal One」を提供し、事業所間の迅速・柔軟なコミュニケーションの実現に貢献しています。今後も、マクラーレン・ホンダのFormula1レースにおけるデジタルデータ収集と活用を変革(Transform)し、これまでのモータースポーツレーシングの限界を超えて(Transcend)いけるよう、両社で取り組んでまいります。
なお、2017年10月5日・6日に開催される「NTT Communications Forum 2017」にて、本取り組みを紹介予定です。
※1 トラックサイドネットワーク:マクラーレン・ホンダのFoumula1チームが使うネットワーク全般を指す言葉。
※2 SDx:Software Defined Everythingの略。NTT Comは、仮想化技術を用いた「SDx+Mソリューション」の提供を推進している。
※3 テレメトリーデータ:レース会場の気象情報や、レース車両に搭載した200個以上のセンサー・カメラが取得する「エンジン回転数」「ブレーキ圧」「燃料の残量」「タイヤの空気圧」「走行状態の映像」などのデータのこと。情報量は1レースあたり約100GBにも及ぶ。1980年代半ば、Formula1にホンダが初めてテレメトリーシステムを導入した。
※4 NFV基盤:Network Functions Virtualizationを活用した基盤をさし、ネットワーク機器の機能を汎用サーバの仮想化基盤上でソフトウェア(仮想マシン)として実装している。
※5 WANアクセラレータ:WANの高速化を図る機能。
※6 UTM:Unified Threat Managementの略。複数の異なるセキュリティ機能を一つのハードウェアに統合し管理する機能。
※7 Webプロキシ:Webからの攻撃を防御する機能。
本件に関するお問い合わせ先
2017-R107