インボイス、電帳法以外にも法改正は存在する
2023年、インボイス制度や電子帳簿保存法といった法改正が大きな話題となりました。これらの制度変更は、企業規模や業界業種問わず該当する上、経理や税務とも深く関わるため、多くの事業者が対応に追われています。もちろん、中長期的に見れば企業の事務負担軽減につながる施策とも言えるのですが、対応するための準備が大きな負担となった企業も少なくないでしょう。
2023年10月にスタートしたインボイス制度に対応し、2024年1月から開始される電子帳簿保存法への準備を終え、ほっと一息ついている企業も多いかもしれません。しかし、話題となった、これら2つの法改正以外にも、中小企業に影響のありそうなルール変更があります。インボイス制度や電子帳簿保存法ほど、広範にインパクトを与える法改正ではないかもしれませんが、いくつか紹介します。
2023年から2024年に開始、開始が予定されている法改正
ステルスマーケティング規制【2023年10月】
2023年10月1日から、景品表示法の禁止行為にステルスマーケティングが指定されました。ステルスマーケティングとは、広告にもかかわらず、消費者に広告であることを気づかせないように商品を宣伝する行為のことを指します。近年SNSの普及によるインフルエンサーマーケティングなどが活発化し、ステマが急増。消費者の購買判断を鈍らせる行為とされ規制されることになりました。
(参考)消費者庁:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
労働条件明示ルールの変更【2024年4月】
2024年4月から、企業が従業員に対して行う「労働条件明示」に新たなルールとして、
(1)従事すべき業務の変更の範囲
(2)更新上限の有無と内容(有期契約労働者のみ)
(3)無期転換申込機会と無期転換後の労働条件(有期契約労働者のみ)
の3つが追加されました。特に有期契約労働者に対する内容が多く追加されたため、これまで以上に労務管理を適切に行う必要があります。
(参考)厚生労働省:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156050.pdf
フリーランス新法(フリーランス保護法)【2024年秋予定】
2023年5月、フリーランスの働く環境を保護するための「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下、フリーランス新法)という法律が公布されました。2024年秋頃に施行される予定となっています。
企業に雇用されているわけではないフリーランスは、基本的に労働基準法などが適用されないため、取引時に弱い立場になりがちでした。ある調査によれば約4割のフリーランスが企業とのビジネスにおいて、不当な扱いを受けているとされ、こうした状況を是正するために、フリーランス新法が制定されました。
(参考)内閣官房新しい資本主義実現本部事務局、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)
https://www.jftc.go.jp/file/flmovie_script.pdf
アルコール検知器によるチェックの義務化【2023年12月】
警察庁は、2023年12月1日から「白ナンバー」の車を使う事業者に対するアルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を義務化すると発表しました。このアルコール検知器による検査の義務化は、当初2022年10月から開始が予定されていましたが、市場への検知器の供給状況が芳しくないことから延期されていたものです。義務化は、2023年12月1日から始まっているため、該当する企業は改めて自社の状況を見直すとよいでしょう。
法改正はデジタルツールで対応できるものも多い
一部ではありますが、2023年から2024年に中小企業が対応すべき法改正を紹介しました。毎年のように新たな法改正や制度が制定されるため、対応に苦心している企業も多いかもしれません。しかし、一部の法改正はデジタルツールを利用することで、大きな手間をかけずに対応することができます。
たとえば、アルコール検知器の義務化に対し、ドコモビジネスでは「LINKEETH」というサービスを提供しています。道路交通法改正に対応した、クラウド型のアルコールチェックサービスとなっており、ドライバーは場所や時間を選ばず測定可能で、管理者側も管理画面を通して測定結果をリアルタイムで把握することができます。
ほかにも、フリーランス新法には「dX電子契約」が有効です。これまで口約束やメールで済ませてきたフリーランスとのビジネスにも、契約書を介在させれば法令を遵守することができます。特にdX電子契約であれば、ブラウザ上で契約締結のやり取りが完結するため、手間やコストの削減にもつながります。
社会の変化に伴い、企業を取り巻くルールも常に改善されています。こうした変化に対応するためには、デジタルツールを利用するのも一つの方法です。ルール変更を棚卸しの良い機会と考え、よりよい対応策を検討してみるのも良いかもしれません。
※本記事は2023年11月現在の情報を元に制作されています。最新かつ正確な情報は官公庁や自治体のホームページなどをご確認ください。