株式会社サンゲツ 情報システム部 部長 石田義博氏

株式会社サンゲツ
情報システム部 部長

石田義博氏

「ビジネスを止めずに新しいネットワークに順次移行できました。今後の更なるビジネスの拡大に向け、柔軟で安定したネットワークインフラを構築できました。」

 

課題

ITインフラのクラウド移行で生じたネットワーク遅延と運用コストの増加

インテリアからエクステリアまで快適な空間創造の事業を展開する株式会社サンゲツ(以下サンゲツ)は、愛知県名古屋市の本社を中心に受注とロジスティクスを担う支社・営業所とショールームなどを合わせて全国に約90拠点を持つ。

創業は江戸時代の嘉永年間にまで遡る老舗企業のサンゲツに大きな転機が訪れたのは、現在の代表取締役社長である安田正介氏が就任した2014年から。それまでの事業体制を再整備・強化し、次のステージに向けて更なる成長を目指すための基盤の整備に舵を切ったことが出発点となった。

サンゲツの強みとなる事業を支えるためには、社内の各部門との連携とシステムやネットワークの高度な環境整備が重要なポイントとなる。同社ではネットワーク構成をこれまでも段階的に改良してきたが、さらなるデータの利活用や機動性が求められる新時代のビジネスを推進するには業務システム全体の大幅な刷新が必要と判断したという。

業務システムのクラウド移行は、2015年にERP(統合業務)とCRM(顧客関係管理)のパッケージ導入から着手され、本社及び東京のサーバールームで長年メインフレームによって運用されていた基幹システムは、NTTコミュニケーションズの「SDPF クラウド/サーバー」(採用時の名称は「Enterprise Cloud(ECL)」)に移行、2018年10月に運用開始。ところが、ここでいくつかの想定外の問題に直面した。

中でも深刻だったのは、VPN(閉域網)で構成されていた社内ネットワークの通信負荷が想定以上に高まり、各拠点からのインターネット利用に遅延が生じたこと。さらに、本社回線がダウンすると、基幹システムのみならず全国の営業拠点からも業務システムが利用できなくなる、ネットワーク構成そのものが持つリスクも浮上した。

当時の状況について、サンゲツの情報システム部長である石田義博氏は次のように語る。「クラウドサービスの導入で、インターネットの通信量が大幅に増えたのが社内ネットワークの混雑や遅延の原因です。しかも、全国の拠点は本社を経由して外部ネットワークと通信していたため、本社のシステムが停止すると全国すべての業務が止まってしまう恐れがあったのです」

さらに、メインとサブの2種類のVPNを併用して本社と各拠点を接続する複雑なネットワーク構成であったことも問題に拍車をかけた。わずかな設定を変えるだけでも多数のネットワーク機器の設定を変更する必要が生じるなど運用負荷が高く、複数の通信事業者を利用していたことでコストも高くなってしまっていたからだ。

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対策

クラウド利用に最適化したシンプルなネットワークを再構築

業務システムのクラウド化に伴って生じたさまざまな課題に対し、社内のネットワークインフラ構成全体の見直しが必要と考えた石田氏ら情報システム部では、次なる改善として新たなネットワーク構築の計画を立案した。この計画では、通信負荷増大への対策に加えてセキュリティ強化やBCP(事業継続計画)のための冗長性確保など、7項目からなる要件が定義された。

新ネットワークに求められる7要件の中でもポイントとなるのが、大容量の通信を伴うクラウドサービス利用に最適化したネットワーク環境の再構築だ。特に通信のボトルネックの原因となっていた本社をハブ拠点とするネットワーク構成の見直しは最優先課題となる。

複数のベンダーから示されたシステム提案に対して、サンゲツが最終的に選定したのはNTTコミュニケーションズのデータ利活用基盤「Smart Data Platform (以下、SDPF)」のネットワークサービスである「SDPF クラウド/サーバー」だ。SDPF選定の決め手について石田氏はサービス品質に加え、豊富なサービス群を一体的に提供できる点を挙げた。

「各社からの提案にはそれぞれ優れた点がありましたが、クラウドサーバーの利用とシンプルなネットワーク構成、さらに今後より強く求められるセキュリティ対策などを一体的な解決策として提示してくれたのはNTTコミュニケーションズだけでした」(石田氏)

また、すでにクラウドで稼働中の基幹システムを停止せずにネットワーク構成を変更できることや、ネットワークインフラ統合による運用コストの削減もSDPFを選定する際の大きなポイントになったという。

図 刷新されたサンゲツの新ネットワーク環境

図 刷新されたサンゲツの新ネットワーク環境

刷新された新ネットワークでは、「Arcstar Universal One」を採用したことで本社と全国の拠点を結ぶVPNの構成がシンプル化され、本社だけでなく各拠点からもクラウドが快適にアクセスできるように負荷が分散された。各種クラウドサービスへの接続は「Flexible InterConnect(以下、FIC)」によりセキュリティが担保されている。 さらに、基幹システムであるSDPF クラウド/サーバーに接続するサブ回線としてインターネット通信を利用し、災害時やシステムトラブル時の事業継続性を確保した。

インターネット接続のセキュリティは、SDPFのセキュリティオプションからクラウドプロキシ型のゲートウェイセキュリティサービス「TMWSaaS」に変更し、各拠点のプロキシ機器を不要としている。これらのネットワーク構成の刷新により、通信のボトルネック解消と同時に機器設定の手間など情報システム部門の運用負荷軽減とコスト削減も達成された。

「経験上、ネットワークのトラブルが起きやすいポイントには傾向があると思っています。ネットワーク全体がダウンすることはほとんどありませんが、構成が複雑になるほどスイッチやルータなどの機器、拠点を増やす際の設定ミスから問題が生じやすいのです。SDPF導入でネットワーク構成をシンプルにできることが大きな魅力でした」(石田氏)

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効果

将来への拡張性も視野に入れた効率的なネットワークが完成

クラウドサービスに最適化したネットワーク構成とセキュリティ対策など7つの要件に対応したサンゲツの新ネットワークは、2021年3月末より全拠点から利用できるようになった。全社的なネットワーク構成変更にも関わらず、移行作業は非常にスムーズであったと石田氏は話す。

「新しいネットワーク構成の設計と設定をNTTコミュニケーションズに依頼できたことで、順調に移行できました。これまで4回ほどネットワーク切り替えに立ち会いましたが、今回がもっとも順調だったのは間違いありません」(石田氏)

また、SDPF導入によって各拠点からの帯域幅が十分に確保されただけでなく、ネットワーク構成が全体的にシンプルになったことで拠点の追加や変更に対してもフレキシブルに対応できるようになった。さらにはコストパフォーマンスについても向上が見られたという。

「VPNの契約内容の見直しで通信料金は全体で約10%、クラウドサービス全体では約15%のコスト削減ができました。NTTコミュニケーションズのクラウドサービスメニューを複数利用することによるコスト圧縮効果もあります」(石田氏)

そして年々巧妙化するサイバー攻撃への対策を、段階的に強化しやすくなったこともSDPF導入の大きなメリットと石田氏は話す。

「セキュリティ対策に『これだけやっておけば良い』というラインはありません。個別の脆弱性に対応しているだけでは不十分で、セキュリティをトータルで強化するためのアプローチが求められます。SDPFでは最新のサイバー攻撃によるリスクに対応したセキュリティメニューを、段階的に追加できるのが利点と感じました」(石田氏)

新ネットワークではUTM(統合脅威管理)やアンチウイルスソフトなど境界型防御を中心に導入することから始め、振る舞い検知やAIを用いて疑わしいマルウェアを検知する次世代型のアンチウイルス機能やEDR(エンドポイント検知・対処)も備えることでセキュリティを担保し、将来的な脅威にも対応できる環境が整えられたという。

「サンゲツの情報システム部門だけで、セキュリティへの対策やサポートなどをすべて対応するのはリソース的にも困難です。その点でクラウドを利用した業務の効率化や、SDPFの目的であるデータ利活用に向けた提案、セキュリティ対策の相談などを1つの窓口で対応いただけるNTTコミュニケーションズには、今後とも期待をしています。」(石田氏)

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事業概要
江戸時代嘉永年間に名古屋城近くに、襖や屏風をしつらえる表具師として創業。「スペースクリエーション企業」として、インテリアからエクステリアまで人々の暮らしを彩る商品を生み出し、快適な空間創造の事業として企画・開発・製造・販売・施⼯まで手掛ける。愛知県名古屋市の本社を中心に営業・提案活動や受注・配送を担う支社・営業所とショールームなど全国に約90拠点を展開している。

URL
https://www.sangetsu.co.jp/


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