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近年、ビジネスの領域に限らず、スポーツの領域においても、AIをはじめとするテクノロジーが浸透してきています。

1回の試合や選手から取得できるデータは膨大で、データの分析を行うことにより、チームの戦術に生かしたり、選手をサポートしたり、運営の改善につなげたりすることが可能となるためです。

2月18日にNTTコミュニケーションズが開催したFesaas Growth Webinar「スポーツの未来を創るデータ分析の最前線」では、ウイングアーク1st株式会社 Cloud事業部Customer Success部部長・渡部覚氏、株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長・石山洸氏が登壇。

AIとデータ分析、そしてスポーツの関わりのトレンドや可能性を実例を交えながら紐解いていただきました。

本記事では、当日のダイジェストをレポート形式でご紹介します。

  1. 01スポーツにおけるトレンドは「非構造化データ」の活用
  2. 02調子がいい時の状態をデータに落とし込む
  3. 03資本力による格差を埋めるオープンソースコミュニティ
  4. 04ファンドリブンで行うデータ分析
  5. 05技術の進化と選手のパフォーマンス向上は同時進行
  6. 06AI活用・データ分析は、スポーツの醍醐味を奪うのか
  7. 07SaaS企業経営において重要なポジショニングとは

スポーツにおけるトレンドは「非構造化データ」の活用

司会者:まずはデータ活用の最新取組事例から伺っていきたいと思います。

石山さんはさまざまな業界におけるAI活用を推進されています。その中で、スポーツに関連する取り組みとしてはどのようなものがありますか。

石山洸(以下、石山):データには構造化データと非構造化データの2種類があります。構造化データは、野球で例えると「ヒットを打ったか」などの、スコアに関するデータです。

有名なものでいうと「セイバーメトリクス」(※野球においてデータを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法)などは以前からあります。

一方、非構造化データは動画や画像データです。ディープラーニングの技術が飛躍的に進化したことで活用が広がってきているというトレンドがあります。

また、フィジカルのデータだけではなく、メンタルのデータの分析も行っています。

例えば、ゴルフ選手はスコアが落ちてくると少し気持ちが消沈するので、首が下に傾きやすく、それによってスウィングの軌道がずれる。

メンタルが改善すると、正しい姿勢に戻って正しいスイングで打てるというように、フィジカルとメンタルの関係性の中で、いろいろな分析が行われています。

渡部覚(以下、渡部):AIを非構造化データにも使う技術が進化していくと、AIとスポーツがより融合していく可能性はあると思います。

BMXやスケートボードのような、点数をつけるのが難しい競技でAIが活躍できるようになってくると、全然違う世界になってくる気がしています。

調子がいい時の状態をデータに落とし込む

司会者:渡部さんは、BMXフリースタイル・中村輪夢(なかむらりむ)選手の活動を支援する中で、スポーツメンタルコーチングのデータを活用されていますよね。具体的にお話をお聞かせください。

渡部:我々の若い頃は、気合や根性だったり、なんとなく感覚でスポーツをやっていることが多かったと思います。

私もずっと水泳をやっていて、「右足からスタート台に上がる」などのルーティンをやったりしていました。ただ、そこには自分の調子が良かった時のデータがないので、やっぱり感覚論になってしまいます。

そこで必要になるのは、「道具がちゃんと揃っているか」「筋肉量が足りているか」「技のトリックが目標まで届いているか」などの項目を細分化して、1つひとつが自分の目標値に達しているのかを正しく把握することです。

また、睡眠データなども蓄積して、(選手が)自分の「調子がいい状態」を正しく振り返れるようにしています。

資本力による格差を埋めるオープンソースコミュニティ

司会者:スポーツにおけるデータ収集・分析を行う中で苦労する点やスポーツ特有の難しさはありますか?

石山:AI活用がもっと進んでいった先に、ちょっと問題が起きそうだなと思っていることが1点あります。

気づきはBリーグ(国内男子プロバスケットボールリーグ)の試合を見ていた時でした。

タイムアウトを取った時に、片方のチームはパソコンが4台くらい出てきて、分析データを共有している。

一方、反対側のチームは、タオルを肩に巻いて「ハァハァ」と言っているだけ。このチームは分析をする投資余力がおそらくなかったのかもしれません。

データ分析力が高いことによって、資本力のあるチームの方が強くなるという構図が生まれていってしまう部分は、個人的には課題感があると思っています。

司会者:その課題の解決方法はありますか?

石山:コンピューターサイエンスの世界には、「オープンソースコミュニティ」という便利な仕組みがあります。台湾IT担当大臣のオードリー・タンさんは、オープンソースの有志コミュニティを作り、台湾におけるコロナの封じ込めをしました。

それと同じように、スポーツファンの中にも、ソフトウェアエンジニアや、データサイエンスが得意な人はいると思うんです。

そういう人たちがボランタリーに集まって、チームのサポートをすることで、データリテラシーの格差を埋めていくことはできるんじゃないかと思っています。

渡部:今、開発中の「Makit!(メイキット)」というメンタルセルフマネジメントアプリは、幅広い方々に使っていただきたいので、基本無償で提供しようとしています。

若い選手たちが、若い時期からセルフマネジメントをできていくと、未来は違う世界が開けていくんじゃないかなと思っていて。そういう取り組みは、投資力の関係ないところで提供していきたいなという想いがあります。

ファンドリブンで行うデータ分析

司会者:現在のスポーツ業界で、データをうまく活用できている事例を教えてください。

石山:面白い事例をいくつか伺ったことがあります。

例えば、ダルビッシュ有選手のファンの方が、勝手に(プレーを)分析して、Twitterで本人に話しかけたんです。ダルビッシュさんは、それをそのまま吸収してプレーに反映されて、うまくいったという逸話があります。

現代は、AIを勉強するためのコストも下がってきているので、いちファンが分析してソーシャル上でアドバイスするというループが生まれていく。すると、データ分析がファンドリブンでできたりするので、盛り上がるのかなと思います。

日本はデータサイエンティストがそもそも足りなくて、育成した方がいいと言われています。

そこでスポーツの画像データを教材として大学に入れて、データサイエンティストを育成するという流れに乗りながら、まだ分析されてない種目のデータを分析していくというような好循環を作っていけるといいと思います。

司会者:オープンデータで今使えそうなものはあるのでしょうか。

石山:スポーツにおけるオープンデータってすごく難しくて。例えば、YouTubeを見たらたくさんの動画が上がっていて、分析しようと思ったら物理的にはできてしまう。ですが、著作権上の取扱いとしてはNGみたいな話があるわけですよね。

そういう権利関係も含めて、これからどう整理していけるか。ライセンス形態をどう規格化して広めていくかが、オープンデータという意味では重要かもしれないですね。

渡部:企業はデータを手放さないと思います。そのデータは、すごく有意義なデータになっていくと思うので、企業自身が自分のビジネスに使っていくのではないかという感じはしますね。

技術の進化と選手のパフォーマンス向上は同時進行

司会者:ここからはウェビナー中に、チャットでいただいた質問をしていきたいと思います。

まず「技術の進化によってできるようになったことや、それが将来的にどうつながるのかということについて事例はありますか」。

渡部:画像解析も然りですが、データ量がどんどん大きくなっていく中で、データを活用するためにはそれなりのネットワークがあるとより進むと思います。

センサーの精度ももっと上がっていくと思うので、より正しいデータを取れるようになる可能性があります。

それが結局、選手たちのパフォーマンスにつなげられると思うので、技術の進化と選手の分析は一緒に進んでいけるものという気はしますね。

石山:AIとの関係性の中で面白そうなのは「生成系」です。今AIは、分析だけじゃなくて画像を生成できるようになってきています。

5Gの世界になると、プレーしているところにマッピングすることによって、さらにプレーの能力を上げられたり、エンターテインメントとしてさらに面白くなるなど、ユースケースは無限に考えられると思います。

司会者:ケガやリハビリテーションの分野で、AI活用はできるのでしょうか。

石山:例えば、ジャンプしたときの着地のデータをAIで解析すると、靭帯を損傷するリスクを、選手ごとに何パーセントと出せる例もあります。ケガをしないようにデータを取っていくことは、予防の世界でまさに進んでいるところです。

渡部:同じ症状の怪我をされた方々が、どういうリハビリテーションを行った時に回復が早かったのか、どこに筋肉をつけたら回復が早かったのか、などのデータがちゃんと蓄積されていくと、治療という部分でも効果は出てくるだろうなと思います。

ただ、膨大にデータが増えていくので、「どのデータが意味あるデータなのか」を見つけ出していくことは、課題としてあると思いますね。

AI活用・データ分析は、スポーツの醍醐味を奪うのか

司会者:「AIの解析やデータ分析が進んでいくと、今まで見られたダイナミックなプレーが見られなくなり、つまらなくなるんじゃないか」というご質問もあったのですが、お二人はどうお考えでしょうか。

渡部:スポーツの種類によっても違うと思います。BMXみたいなアーバン系のスポーツは、視覚的に、感情に訴えるような技を決めると、それが審査にも響いてしまうんですよね。

そういう意味でいうと、最終的なパフォーマンスは、私は期待感も込めて、変わらないでほしいという想いはありますね。

石山:最後に変な話をしちゃうかもしれないんですが、大学の講義で合コンにAIを活用するという話があるんですね。

例えば、私が女性だとして、渡部さんと安達(司会者)さんとどっちがいいかなと。AIが予測してくれて、安達さんが自分のことを好きになってくれる可能性は85%、渡部さんが好きになってくれる可能性が30%、ただ一方で私は渡部さんの方が好みですと。

そうなったときにどっちに行くかという話ですよね。

この時に、85%だから安達さんに行こうと答える生徒と、やっぱり自分は渡部さんが好きだから30%で勝負するという生徒がいます。

これは何の話かというと、同じAIを使っても「リスク許容度」は人によって違うということです。転ぶかもしれないジャンプをやるかやらないかというのは、フィギュアスケートなどでも分かれますよね。

そういった時に、リスクを取る選手は逆にすごい人気があるとか、いろいろなことが生まれていくと思うので、そこにスポーツ選手としてのパーソナリティが見え隠れすると面白いのかなと思いました。

SaaS企業経営において重要なポジショニングとは

司会者:本ウェビナーは、SaaS企業のビジネスもテーマのひとつなので、最後に、そちらについても伺いたいと思います。SaaS業界でAI分野に携わる方には、今後どのような技術・知識・思考が必要だと思われますか?

石山:まず元々の「SaaSとは何か」ということを考えつつ、AIの関係を整理するのがいいと思います。

昔は「SaaS(Software as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「IaaS(Infrastructure as a Service)」と言っていましたよね。

IaaSはネットワーク、ストレージ、物理サーバー、仮想化など。PaaSはOSやランタイムを扱っています。SaaSになるともっと上の、バックエンド、フロントエンド、UIなどをコアにしながら、アプリケーションというレイヤーを作り上げていく。

ただ実は、PaaSとSaaSの間にセンサー、アルゴリズム、アクチュエータ、前処理、そしてデータという形で、層がいっぱいあります。

これからのSaaS企業は、AI部分のコンポーネントをどういう風に埋めていくかを考える必要があると思います。

フィジカルの世界、物理的な空間にデジタルツインで入ってくるようになると、技術的にもかなり広がりが出てくると思うんです。

今、言ったPaaSとSaaSの間にあるようなものの競争優位性を、自分たちのSaaSのプロダクトがどう持つのかを考えながら経営していくことが肝になるはずです。

・・・

スポーツにおけるデータ活用は、「構造化データから非構造化データへ」といった形で次のフェーズに進んでいます。また、当日は海外の取り組み事例や、国内におけるデータサイエンティスト不足の課題解決についても言及されました。

レポート記事でご紹介しきれなかった部分につきましては、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。

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