(1)市場環境および事業基盤の変化
世界の経済は、一部新興国での景気の減速が見られるものの、米国をけん引役に緩やかな回復基調にあります。一方で日本経済は、労働力不足や円安の進行などが進み、マクロ環境への評価も分かれ、回復の兆しも見られますが、引き続き先行き不透明な状況です。
このような経済情勢のもと、世界の多くの企業が、競争力のさらなる強化を図るとともに、新市場への参入や新たな成長分野への投資など、積極的な経営を進めつつあり、そのような経営を支える柔軟かつ強固なICT基盤が求められています。
(2)経営概況
当社は、このような経営環境の激しい変化を踏まえ、2011年に新たな事業ビジョン「ビジョン2015」を策定し、2015年度に連結収益1.5兆円以上、グローバル売上高2倍以上(2010年度比)を目標指標としてグループトータルでの成長を目指すこととしました。2014年度は、「ビジョン2015」達成に向けた事業構造の転換と成長を加速し、アジアのNo.1からグローバルでのICTリーダーを目指す年と位置付け、お客さまのオンプレミスシステムのクラウド化を契機にICT環境を最適化しお客さまの経営改革に貢献するという「グローバルクラウドビジョン」のもと、サービス・セールス・オペレーション・マネジメントの4つの観点でグローバルシームレス化を推進してきました。
まず、サービスにおいては、通信事業者ならではの強みを有するクラウド/コロケーション/ネットワーク/アプリケーション/セキュリティ/マネージドICTなどの各種サービスを最適に組み合わせた「シームレスICTソリューション」提供のため、グローバルシームレスなサービスの展開、機能拡充を図りました。各事業分野別の主な取り組みは以下のとおりです。
<各事業分野別の取り組み>
○クラウド基盤:
法人向けクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」では、当社データセンターのコロケーションエリアと、SDN技術を活用して同一のネットワークセグメントで接続できる機能を2014年4月より、また本クラウドと接続されるVPN/インターネット回線やクラウド基盤内ネットワークの設定をお客さま自身がカスタマーポータルから設定・変更できる機能や、IBM i(AS/400)にて稼動する基幹システムのクラウド化を容易に実現する「Powerオプション」を2014年10月より開始するなど、クラウド化が進むお客さまのICT環境に更にスムーズに対応する各種機能を拡充しました。また日本でサービス基盤を1拠点新たに加え、世界9カ国/地域・12拠点へ提供エリアを拡大しました。パブリッククラウドサービス「Bizホスティング Cloudn」では、ファイル単位でリストア可能なバックアップサービスを2015年2月より提供開始するなど、各種機能の追加を実施しました。
データセンターサービスでは、「Nexcenter」ブランドのもと、2014年4月に「マレーシア サイバージャヤ4 データセンター」の提供を開始しました。加えて、2015年3月にドイツ最大のデータセンター事業者e-shelter社の株式取得について契約締結を行うなど、国内外のデータセンターを大幅に拡充しました。
○データネットワーク:
法人向けモバイルサービス「Arcstar Universal Oneモバイル」の提供範囲をグローバルに拡大するなど、IoT(Internet of Things)・M2M(Machine-to-Machine)通信に最適なサービス強化を実施し、2014年4月より提供開始しました。また、196カ国/地域で提供中の企業向けネットワークサービス「Arcstar Universal One」においては、NFV技術を活用したクラウド型のネットワーク機能「Arcstar Universal One アドバンストオプション」および、既存のネットワーク環境や使用する端末に係らず、お客さまが仮想ネットワークを簡単・迅速に構築できる機能「Arcstar Universal One Virtual」を、2014年5月から提供開始するなど、先進的な機能を複数開始しました。
個人向けのモバイルデータ通信サービス「OCN モバイル ONE」は、音声通話も可能な「音声対応SIMカード」を2014年12月から提供開始するなど、新たな機能追加や料金改定などで契約者数を大きく増加させました。
また、NTT東日本・NTT西日本が提供する光回線サービス「フレッツ 光ネクスト」とインターネット接続サービス「OCN」や「OCN モバイル ONE」を一括で、更にお得に利用できる「OCN 光」を2015年2月より提供開始しました。
○ボイスコミュニケーション:
法人向けには、コンタクトセンターサービスをクラウド化し、季節やキャンペーンなどに応じたオペレーター席数の増減や利用機能の変更に柔軟に対応できるクラウド型サービス「Arcstar Contact Center」を2014年5月より提供開始、ビデオ、電話、Webなどを介した会議系サービス「Arcstar Conferencing」を2014年6月より、国内に加え海外で提供開始しました。またユニファイドコミュニケーションサービス「Arcstar UCaaS」につき、提供中の「Arcstar UCaaS Ciscoタイプ」に加え、「Microsoft Lync®」を活用したArcstar UCaaS Microsoft® タイプ」を、2014年に買収したArkadin International社の海外基盤を利用してグローバルシームレスに提供することを2015年3月に発表しました。
また「050 plus」などのIP電話サービスと連携したスマートフォンアプリを簡単に開発できるよう、開発者キット「050 VoIP SDK」を公開し、パートナーの募集を2014年10月15日より開始しました。
○アプリケーション&コンテンツ:
法人向けのクラウド型仮想デスクトップサービス「Bizデスクトップ Pro Enterprise」の米国基盤での提供を2014年4月より、クラウドメールサービス「Bizメール」のシンガポール基盤の構築と、先行する台湾以外のAPAC地域における販売を2014年7月より開始しました。また、複数のクラウドサービスで共通的に利用する社員の連絡先情報などを一元的に共有・管理・更新できる「Data Federation」サービスの提供を2014年7月より、クラウドサービスを含む多様なアプリケーションを1つのIDで利用できる「ID Federation」サービスのトライアル提供を2015年1月より開始しました。
オンラインストレージサービス「マイポケット」においては、保存した写真の中から「笑顔」「ウィンク」などの表情を指定して検索できる「表情検索」機能などを2014年12月に追加したほか、「マイポケット」と連携したサービス開発を促進するため、アプリケーションやWebサービスの開発者・企業向けに「マイポケットデベロッパープログラム」を2014年7月より開始しました。
○ソリューション:
「WideAngleマネージドセキュリティサービス」において、セキュリティ運用基盤の機能拡張を行い、標準型攻撃を含む、未知のセキュリティ脅威の検知率の大幅向上を2014年6月に実現したほか、標的型攻撃やゼロデイ攻撃などに対する日本独自のセキュリティ対策サービス「Zero day Attack Protection」の提供開始を2014年12月に、未知のマルウェアを検出する「WideAngleマネージドセキュリティサービス リアルタイムマルウェア検知」の対応範囲をエンドポイント(PCやサーバーなど)にまで拡大する機能拡充を2015年3月に発表しました。
また、企業がグローバルに展開する、アプリケーション、クラウド、オンプレミス環境、ネットワークを含む広範囲のICT環境の運用を、一元的かつグローバル均一のサービス・品質・料金で提供するワンストップICTマネジメントサービス「Global Management One」を、2014年4月より提供開始しました。
さらに、当社サービスのお申込みから運用保守に至るまでのビジネスプロセスに関する情報の閲覧・操作やサービスの設定変更などを、利用企業の自社システムからダイレクトにコントロール可能な、複数サービスのAPI仕様を揃えた「NTTコミュニケーションズ APIゲートウェイ」を2014年12月より提供開始しました。
セールスにおいては、グローバルアカウントマネジメントシステム(GAMS)により、世界各国のGlobal Account Manager(GAM)とNational Account Manager(NAM)が連携して、グローバルにビジネスを展開しているお客さま企業の課題解決に向け、グローバル一体の取り組みを更に推進しました。また、NTTグループ各社とのクロスセルの活発化、国内外の複数の事業者とのパートナー連携拡大、営業支援システム(SFA)を活用した活発なコミュニケーションに基づく営業展開などにより、大型案件の受注実績を更に伸ばしてきました。
お客さまの経営課題を解決するというプロアクティブな提案力拡充、またお客さまIT部門に加えて経営層や経営戦略部門、事業部門等とのリレーション構築や潜在ニーズの開拓活動を強化するため「ICTコンサルティング本部」を2014年8月に新設しました。
オペレーションにおいては、海外のネットワークサービスのオペレーションを2014年10月にVirtela社に統合したほか、クラウドサービスのオペレーションを2012年に買収したNetmagic社に順次統合するなど、効率性と競争力を高めるオペレーション体制への移行を進めました。また「Global Management One」のオペレ―ションプロセスにAI機能を活用するなど、先進技術による自動化やプロセス標準化、最新手法の採用などを進め、スピードを含めたオペレーション品質の向上に取り組みました。
また、グローバルシームレスなマネジメントを推進するため、ICTシステムでは、グローバル共通のERPシステムの導入を推進しました。人材においては、外国籍社員の採用増や若手を含む海外トレーニー制度の継続などにより、グローバル人材の育成に取り組みました。
(3)経営成績
NTTコミュニケーションズグループ全体では、営業収益については、海外子会社の好調や買収効果などにより、対前年比330億円増(+2.7%)の12,634億円と、2期連続で増収となりました。また営業利益は対前年比81億円減 (▲6.3%)の1,198億円となりました。
NTTコミュニケーションズ株式会社単体の営業収益については、クラウド基盤収入は対前年比120億円増(+22.8%)の649億円、アプリケーション&コンテンツ収入は対前年比15億円増(+4.3%)の384億円と増収の事業分野がある一方で、データネットワーク収入は対前年比206億円減(▲5.3%)の3,708億円、ボイスコミュニケーション収入は対前年比265億円減(▲8.9%)の2,699億円、ソリューション収入は対前年比8億円減(▲0.5%)の1,498億円となりました。以上の結果、営業収益全体としては、対前年比340億円減(▲3.6%)の9,099億円となりました。
次に、営業費用については、ボイスコミュニケーション収入の減などに連動して通信設備使用料が対前年比で減少したこともあり、対前年比137億円減(▲1.7%)の8,168億円となりました。
これにより、営業利益は対前年比203億円減(▲17.9%)の931億円に、当期純利益は対前年比116億円減(▲13.1%)の772億円となりました。