見て、触れて、感じて分かった、革新と持続可能性の融合
「docomo business Forum'24」注目展示レポート
2024年10月10日と11日の2日間、ザ・プリンス パークタワー東京において「docomo business Forum'24」を開催しました。コンセプトは「来たれ、DX万博へ。」 さまざまな事業課題に取り組むドコモビジネスのお客さまと、多様な場面で活躍するDXの知見が一堂に集まり、共創のアイデアを生み出す場となりました。
イベントは「事業イノベーション」「EX向上」「次世代企業プラットフォーム」の3つのゾーンで展開され、展示や講演では「少し先の未来」をイメージし、実ビジネスに直結する事例やユースケースを紹介しました。
サステナブルな未来へ、顧客との共創を深めるイベントに
docomo business Forumは、ドコモビジネスにとってお客さまとのリレーションを強化する年間最大のイベントであり、サービスの紹介にとどまらず、先端テクノロジーを活用したコンセプト展示が行われ、社会のさまざまな場面で活躍し、お客さまの課題解決に貢献する多くのDXソリューションを紹介しました。
全体を通じたイベントテーマは「サステナブル社会を支えるドコモビジネス」。開催初日のオープニングとして実施されたNTTコミュニケーションズ(以下NTT Com) 社長 小島克重の基調講演では、「ドコモビジネスが描く『驚きと感動』のDXで社会・産業をつなぎ続けたい」という思いを語りました。その一例として、会場で利用する電力や人の移動、事前に製作するパンフレットなどイベント実施に伴い発生するCO2排出量の算定を実施。排出量に相当するJ-クレジットを購入しオフセットすることで、同制度を通じて持続可能な社会の実現に貢献しています。また、森林管理協議会(FSC)の規格に基づいて適切に管理された森林の木材を使用した紙で制作した招待状や、リユース可能な基礎部材を活用した会場装飾が行われました。
加えて、来場者のアンケート回答数に応じた植樹活動を予定するなど、先端テクノロジーだけでなく、持続可能な未来を共に創造していく姿勢を伝えるものとなりました。
「少し先の未来」が見える事例やユースケースが満載
イベントは「事業イノベーション」「EX向上」「次世代企業プラットフォーム」の3つのゾーンで展開しました。ここからは、ゾーンごとに注目の展示をご紹介いたします。
事業イノベーション
低遅延や触覚伝送で、時空を超えてつながる世界
専門技術を持つ労働者不足が問題となっている昨今、医療や専門サービスなどに映像や音声を活用した支援が進められていますが、現状では正確な動作の伝達が難しいという課題があります。こうしたコミュニケーション上の課題を解決するため、大容量で低遅延を特徴とする「IOWN APN」と、ミライセンス社が開発したデバイス「3DHaptics」を活用し、視覚・聴覚・触力覚をリアルタイムで伝送する実証実験が行われました。
会場では、小売店の商品棚を想定したセットの中で、手のひらサイズの3DHapticsデバイスを手にした体験者が遠隔から商品を移動する体験を提供していました。今まで感じたことのない新たな感覚に、「触れられる距離」という概念が大きく変わる未来を伝えました。
事業イノベーション
生成AIとコンタクトセンター
人手不足の深刻化は、各業界のコンタクトセンターでも大きな問題となっています。オペレーターの確保が難しく、採用しても教育に時間がかかるため常に人手不足に悩まされ、カスタマーハラスメントによる精神的なストレスも問題となっています。こうした課題を解決するため、このブースでは生成AIを活用したリアルタイムのオペレーター支援のデモンストレーションが行われました。
サービスに不満を持つ顧客からのクレームに対してオペレーターが対応するロールプレイを実施。これは生成AIシステム(生成AIの「tsuzumi」 )が顧客の問い合わせ音声を認識し、リアルタイムに適切な回答を提示、オペレーターが回答をするというものです。また、お問い合わせ内容によっては、上席であるスーパーバイザーの対応が生じる場面もあります。感情分析やNGワード検知などの機能を紹介するデモンストレーション(「COTOHA Voice Insight」を活用したデモンストレーション )ではスーパーバイザーへのエスカレーションの様子が披露されました。不満をオペレーターにぶつける顧客が「そちらに乗り込んでもいいんですよ」と発言すると、NGワード「乗り込む」を検出してアラートが発報され、スーパーバイザーが対応を引き継ぎ、状況がスムーズに解決される様子が示されました。このデモンストレーションを通じて、将来的にはAIが人間のオペレーターとシームレスに連携し、複雑な問題にも迅速、かつ適切に対応できる姿を伝えました。
事業イノベーション
OPEN HUB for Smart World
事業イノベーションゾーンではリアル店舗支援に関する2つのソリューションを展示しました。
1つ目は、NTTコノキューデバイスのXRグラス「MiRZA(ミルザ)」を使った新しい購買体験です。展示ブースでは、接客現場でのユースケースとして腕時計のバーチャル試着が行われており、XRグラス越しに立体視できるリアルな時計の試着を体験いただきました。今後、共創パートナーとの実証実験が予定されています。
2つ目は、NTTドコモの持つ人流データとIoTデバイスを活用したマーケティングソリューションです。カメラで人の流れを確認し、統計情報を基にデジタルサイネージ上にターゲットに合わせた広告を表示します。店舗内では登録した個人をカメラで認識し、サードパーティーのデータと掛け合わせることで、よりパーソナライズした広告による顧客体験価値の向上を実現します。これらの技術を体験して、EC市場と実店舗の垣根のない購買体験を生み出す可能性を伝えました。パーソナライズされた広告は、顧客満足度を高めるだけでなく、効率的な店舗運営にも貢献することが期待されます。
事業イノベーション
NTNで切り拓く新たなビジネス
最近注目を集めるネットワーク技術の一つが、「NTN(Non Terrestrial Network・非地上系ネットワーク)」です。こちらのブースでは、静止軌道衛星、低軌道衛星、成層圏プラットフォームシステム「HAPS(ハップス・High Altitude Platform Station)」を組み合わせたNTNのサービスや次世代技術を展示しました。
静止衛星は高度約3万6千キロメートルに位置し、日本全土で耐災害性に優れた安定した通信が可能です。スペースX社が提供する「Starlink」では、高度約550キロメートルの低軌道に衛星を配置し、静止軌道衛星以上の高速・低遅延通信が期待できます。
また、次世代のHAPSでは上空約20キロメートルを飛行する無人航空機が開発されており、さらに高速な通信が実現される見込みです。NTTグループでは、HAPSを日本の航空法や活動範囲に基づいて将来的に運用開始する予定です。NTNは、災害時の通信確保や地上の基地局建設が困難な電波の届きにくい不感地帯でのインターネットアクセス改善や、農業や建設業でのIoT活用や自動運転の通信基盤として大きな可能性を秘めています。
EX向上
生成AIソリューション
これからの時代、企業にとって業務における生成AI活用は必要不可欠です。生成AIを活用した業務サポートに関する展示の中から、2つのユースケース展示をご紹介します。
1つ目は、tsuzumiとドキュメント検索技術である RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用したユースケースです。この仕組みは、属人的になりがちな問い合わせや標準化が難しい業務において効果的で、社内ナレッジの蓄積を促進し、他の従業員が再利用できるシステムを構築します。構築後は、ユーザーの評価やフィードバックからRAGの精度を向上させていくことができます。
もう1つは、ChatGPTのような広範囲の知識を持つ大規模言語モデルでなく、特定の業務や企業に特化した知識を学習させて精度向上をめざす特化型の生成AIのユースケースです。ある自治体では、行政業務に特化したAIを開発するにあたり、現状の一般的な生成AIを使った仕組みでは期待通りの結果を得られませんでした。そこでチューニングの実証を行い、自治体が持つデータを学習させて日々知識を蓄積した結果、精度が大幅に向上しました。これらのソリューションは、セキュリティ面での配慮もあり組織や企業特有のニーズに応えることができるので、AIと人間が協調しながら、より良い職場環境をつくる可能性を秘めています。
次世代企業プラットフォーム
GPU活用のための複合ソリューション
AI時代を迎え、多くの企業が生産性向上や持続的な発展をめざし、AI活用を成長戦略に取り入れています。その中で重要となるのが、コンピューティング資源やネットワークなどのデジタルインフラの整備です。ドコモビジネスでは、これらのインフラの導入から運用までをワンストップでサポートしています。
こちらのブースでは、AI導入に不可欠なハイエンドGPUを使用した高発熱サーバーに対応する、液冷方式の超省エネ型データセンターサービス「Green Nexcenter®」や、IOWN構想に基づく大容量・低遅延で伝送できるAPN(All Photonics Network)「APN専用線プラン powered by IOWN」、それらを組み合わせたGPUソリューションを紹介しました。
それらのソリューションをよりお客さまに分かりやすくお伝えするため、データセンターの効率的なサーバー冷却の仕組みがわかる模型の展示や、4K映像・音声とともに触覚(振動)をリアルタイムに伝送できる「OPEN HUB Window」を使ったAPN専用線の大容量・低遅延の伝送を体感できるデモなどを行いました。
ドコモビジネスは、AI活用の推進と同時に脱炭素への取り組みにも応えています。データセンターはカーボンニュートラルをめざし、機器の消費電力削減や再生可能エネルギーを活用することで、エネルギー効率をさらに向上させています。
今後、より一層ビジネス領域におけるAI活用が進む中、性能の高いサーバーの活用を支えるデータセンターサービスやスムーズでセキュアなデータ伝送などのICT環境も必要になってきます。AI時代に対応すべく、ドコモビジネスは、GPU利用に関わるICTインフラをトータルで提供していきます。
「明日にも手が届く、未来」が伝わってくる
docomo business Forum'24では、ドコモビジネスの技術力とそれによって描かれる近い未来を実感し、テクノロジーがもたらすさまざまな可能性や、会場でのCO2排出量の可視化などを通じ、技術革新と持続可能性の両立の重要性をお伝えしました。
皆さまの業務をお手伝いできるものがありましたら、ぜひNTT Comへご相談いただければと思います。