―Musubiのローンチ前に、薬局へのヒアリングを徹底されたと伺っています。
中尾:具体的な数を決めていたわけではありませんが、400件は回りました。
「売るものは何もありませんが、勉強させてください」というところからのスタートでしたが、本当にやってよかったと思っています。
―現場の声に耳を傾けることの意義についてどう考えますか?
経営者として未来を想像することも重要ですが、そもそも現場が今どういう状況にあるのかわからないと、未来へのプロセスを提示できません。
また、現場のあらゆるシチュエーションを理解することで“共感”が生まれます。すると現場の薬剤師さんとだんだん心が通っていき、カケハシのミッションをお話ししたときに、ファンになっていただける方が増えました。
そうすると指数関数的に紹介が増えて、また訪問して…という繰り返しです。たくさん関係性もつくれましたし、業界のキーマンから知見を得ることもできました。今でもヒアリングは続けていて、これまでに数千件になると思います。
―それだけ現場へのヒアリングを重要視されているということですね。
今はオンラインの情報交換という形でお話することが多いです。
例えば夕飯の時間でも、1人で食べるのであれば「○○さん、一緒にご飯食べましょう。情報交換しましょう」といった感じで人と話すようにしています。この方法はおすすめです。
―経営者として他に意識していることはありますか?
現場へのヒアリング以外に、意識していることが2つあります。
1つは、10年15年という長いスパンで医療の世界を考えること。「想像がつかないことを想像する」ということです。
もう1つは「半歩先の未来を考える」こと。
医療業界はビジネスとしては少し独特で、保険制度の中でお金が動くので、国の方針が重要になります。そのため「今、国はどう考えているのか」という情報収集が大切です。
「現場」と「半歩先の未来」と「大きな未来」。この3点を考えながら経営しています。