scroll
  1. TOP
  2. Leader’s Talk
  3. データを活用し、豊かな顧客体験(CX)を創造する-プレイドのエンタープライズ攻略法-

データを活用し、豊かな顧客体験(CX)を創造する
-プレイドのエンタープライズ攻略法-

  • 倉橋 健太氏株式会社プレイド
    代表取締役CEO

株式会社プレイドはCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」を軸に、CXに特化したメディア「XD」、CXカンファレンス「CX DIVE」など多角的に事業を展開。2011年の創業以来、堅調に事業を拡大させ、昨年、2020年12月17日に東証マザーズに新規上場しました。

エンタープライズ企業において多くの導入実績を誇る同社は、どのような成長戦略を描き、実践してきたのでしょうか。

代表取締役CEO・倉橋健太氏に、CX事業の本質、サービス設計、データの活用法、組織のあり方などを伺いました。若手SaaS従事者に業界トップランナーの景色を伝える、Leader’s Talkの第2弾です。

  1. 01データを活用し、豊かな顧客体験(CX)を創造する
  2. 02既存の概念を“新しい価値”として打ち出す
  3. 03現場担当者のファーストサクセスを設計する
  4. 04エンタープライズが無視できないビッグトレンドに乗れているか?
  5. 05リアクティブなサポートから、プロアクティブなサポートへ
  6. 06個人の意思を尊重し、経営者として背中を押し続ける
  7. 07会社のフェーズは「どこまで行きたいか」で決まる

データを活用し、豊かな顧客体験(CX)を創造する

―今回は「エンタープライズの攻略法」についてお伺いしたいと思います。まずはプレイドのサービスについてお聞かせください。

倉橋健太氏(以下、倉橋):メインプロダクトの「KARTE(カルテ)」は、Webサイトやアプリの訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析し、一人ひとりに合わせた体験の提供を可能にする顧客体験(CX)プラットフォームです。

データはマーケティング目的だけではなく、企業活動のほぼすべてに関わる重要なアセットです。我々はデータを中心とした経営をおこなうお客様に向けて、「企業を変化させていくトリガー」となるようなソフトウェアを提供していると捉えています。

既存の概念を“新しい価値”として打ち出す

―既に幅広い業種で、ラージエンタープライズ(大企業)への導入実績を出されています。この要因をどのようにお考えですか?

倉橋:最初はミドルレンジのお客様が多かったのですが、各業界トップ3のうち2〜3社に導入いただいている業界が増えてきています。

重要なポイントは、その業界におけるアイコニックな事例を意図的につくったことではないでしょうか。

大手企業は実績を重視する傾向があるので、本格的にサービスをスケールしようと思うと、導入事例の紹介は避けて通れません。

そもそも「顧客体験」という言葉自体は新しいものではありませんが、DX文脈で使われると新しい取り組みとなります。

我々はそこに「Web接客」や「CX(カスタマーエクスペリエンス)」などのコンセプトをプロダクトとセットにして、「新しい価値」として打ち出し、自分たちで市場をつくっていっています。

そうすることにより、大手企業からの問い合わせも増えました。これは「事例づくりの成功体験」として非常に大きかったと思います。

―実績を積むための突破口は何だったのでしょうか?

倉橋:最初の入り口は、共感してくれる担当者などの「小さな風穴」です。まずそこを開けられるかどうか。そこからサービス提供を拡大していき、他社や他業界でも活用していくこと。その繰り返しでしかないと思います。

導入事例は「CX Clip」というメディアやお客様向けのコミュニティ、勉強会などで紹介しているのですが、同業界の事例だけでなく、異業界の事例にも興味津々な様子が見られています。

現場担当者のファーストサクセスを設計する

―エンタープライズへのアプローチでは、決裁権を持つキーマンの重要性が高いと推察します。その方々につないでもらうための工夫はされていますか?

倉橋:最初の担当者の方に上流の話ばかりしてもダメだと思いますが、キーマンにつないでいただくためには、「風呂敷を広げた絵をしっかりお見せしながら、現場の目線感に合わせたサクセスをおこなう」ことが重要です。

―現場目線でのサクセスというのは?

倉橋:プロダクトを使い始めて、継続していただくということは、何かしらの納得感がある状態です。最初の納得感であるファーストサクセスをつくるためには、お客様の「現場」にある課題を解決する必要があります。

商談で自分たちの世界観をお伝えして、遠いところだけを指し示しても、今の位置からはかなり距離があります。お客様からすれば「今やるべきアクション」がわかりにくい。

なのでその手前の地図として、例えば「普段おこなっている施策の購入確率が少し上がる」など、今のお客様の言語で理解できるサクセスをつくっていきます。それができると、その後の話が非常に早くなります。

―キーマンにたどり着くために、ファーストサクセスの設計が重要ということですね。

倉橋:僕らは未来のプロダクトを作っているつもりなので、もちろん風呂敷を徹底的に広げた話もします。

ただし、それは向かう方角としてお見せするもので、足元の地図はお客様の言語で理解できるイシューにあります。そこからだんだん目線が上がっていくような設計が大事です。

まずは「KARTE」を導入いただき、協働してパフォーマンスを出す。そこからCMO(Chief Marketing Officer)やCDO(Chief Digital/Data Officer)といった取締役クラスの方と接点を持ち、中長期的な戦略を聞いたうえで、コミュニケーションを一段引き上げていくという流れです。

エンタープライズが無視できないビッグトレンドに乗れているか?

―CXOクラスの方に関心を持ってもらうコツはありますか?

倉橋:そもそもの話にはなりますが、ビッグトレンドに乗ったサービスであることが重要です。

我々の場合は、CXやその裏側にあるDX。そのような「エンタープライズの経営層が無視できないトレンドやイシューにポジションを取れているかどうか」ということを考えるべきだと思います。

先ほどお話しした、サービス導入における「HOW」の部分をやったからといって、すべてのサービスが受け入れられるわけではありません。

―エンタープライズの攻略において、最も苦労するポイントはどこでしょうか。

倉橋:スモールスタートから徐々に経営サイドとの交渉に進んでいくときは、当然ながら毎回強烈なストレスがかかります。

―その先のフェーズに進む難しさがあるのですね。

倉橋:プロダクトが解決できる課題はいきなり大きくなるものではありません。やはり実績がないところに行くのは大変です。

ただし、それを繰り返さなければいけないし、導入を支援してくれる仲間づくりも大切です。仲間を集めるためには、我々で言う「CX」のような「支援したくなる旗」があるかどうかが重要だと思います。

リアクティブなサポートから、プロアクティブなサポートへ

―今後の主戦場と考える業種や業界はありますか?

倉橋:特定の業界はありません。日本にある全Webサイトで考えると、我々のサービスが導入されているサイトはまだ多くないので、各業界でしっかりと広めていきたいです。

―他のサービスの軸として考えていることはありますか?

倉橋:もう1軸で考えていることは、マーケティング以外の分野におけるデータ活用です。最近はカスタマーサポートの環境でデータを活用している企業が増えてきているため、そのような職種による広がりも極めて重要視しています。

―秘匿性のあるデータの扱いも増えるのではないかと思います。

倉橋:そうですね。生活に関わる情報は秘匿性が高いですし、コーポレート・ガバナンスやデータ収集における正当性も重要になってきます。

ただし、データは本来「企業にとっての資産」である前に「ユーザーにとっての資産」だと思っています。そのため、収集したデータを眠らせずに、ユーザーのために有効に使えるかどうかが問われるべきだと思っています。

―カスタマーサポートにおける「KARTE」導入について、具体的な取り組みはありますか?

倉橋:従来のカスタマーサポートは、ユーザーから問い合わせが来た後に「どうされました?」とヒアリングをしていきます。

一方、KARTEの場合は、Webサイトやアプリでのタッチポイントにおいて、ユーザーの全ての行動がログとしてたまっているため、問い合わせが来る前に適切なナビゲーションをおこなうことが可能です。

リアクティブなサポートから、プロアクティブなサポートへ。そのような変化が起きつつあります。

個人の意思を尊重し、経営者として背中を押し続ける

―倉橋さんは会社員を経て起業されました。経験値の少ない若手が、起業も含めて新しいチャレンジをするときのポイントをお聞かせください。

倉橋:スタートアップ支援については、僕が起業した2011年より今の方があらゆる側面で環境が整っているでしょうし、これからも良くなり続けると思います。

ただし一番重要なのは、支援者に依存しないこと。環境はあくまでも助けてくれるもので、導いてはくれません。そのときにベースになるのは、やはり自分の強い意思です。起業に限らず、「覚悟」がないことはうまくいかないと思います。

―会社内でのチャレンジで大切なことは何でしょうか?

倉橋:トップが「どんどんチャレンジしていこう」と掲げていても、チャレンジした人の背中を「押し続けない」ということが多発しているのではないでしょうか。

僕はチャレンジさせる上では、「はしごを外さない」ことが非常に大事だと思っています。つまり、会社側にも相当な覚悟が必要なのです。

―若手の成長について、ご自身が気をつけているポイントはありますか?

倉橋:なるべく答えを教えず、逆に彼らの意見を聞くことです。

そもそも新しい価値を扱う事業なので、長くプレイドに在籍しているからといって、その人が答えを持っているわけではない。あるイシューに対して、ピュアに考えようとする環境づくりを意識しています。

会社のフェーズは「どこまで行きたいか」で決まる

―挑戦したい20代30代の方に向けてアドバイスをお願いします。

倉橋:僕が会社を辞めて起業にふみ切れた最後の理由は、「ミスっても死なない、なんとでもなる」と思えたことでした。

「死なないなら、動かない理由がない」と思ったんです。

また、やるからには「徹底的に大きな夢」を掲げたほうがいい。

自分のナレッジやスキルをアピールしても、自分に満たないか同じくらいの仲間しか集まりません。

しかしながら「こういう社会にしたい」という、誰も成し遂げていない世界観の話であれば、自分より優れた何かを持っている人が集まりやすい。

だからこそ、大きな夢を語ったほうがいいのです。

―SaaS領域におけるチャレンジはどのように考えたらよいでしょうか?

倉橋:BtoBやSaaSなどのカテゴリーで考えるのであれば、若い人でも良いサービスはつくれると思います。

ただし、エンタープライズ戦略やデータ活用、マーケティングなどは経験則が生きやすいカテゴリーです。だからというわけではありませんが、30~50代の方の起業がもっと増えるといいと思っています。

―2020年12月には東証マザーズに上場されました。最後に今後の展望を聞かせてください。

倉橋:最近よく言うのですが、僕は会社のフェーズというのは、「どこまで行きたいか」によって決められるべきだと思っています。社員数の規模や、上場・非上場といった客観的な尺度で決めてはいけません。

会社として行きたい目的地があって現在地がある。そう考えると、上場したとはいえ、我々はまだ始まったばかりのフェーズです。

それを、自分の責任、自分の覚悟で意思決定をして、チャレンジできる人がどれだけ社内に増えるかということを何よりも大事にしたいと考えています。

PROFILE

このページのトップへ