日本のサプライチェーンの特徴と、世界共通の課題
――製造業における一般的なサプライチェーンは、どのような構造でしょうか。
竹内:大きな流れとして、まずお客さまからのオーダーが出発点になります。そこから販売計画が決まり、それに連動する形で生産計画、在庫計画が決まります。PSI(Production、Sales、Inventory)といわれるこの3点がセットで行われます。
PSIを引き継いで、実際に最終製品の生産計画を作っていくプロセスがMPS(Master Production Schedule)といわれます。ここで月単位や週単位といった具体的な形で計画に落ちていきます。
次にMRP(Material Requirement Planning)プロセスを経て部品の所要量計画が作成され、調達計画や製造計画へと展開されていきます。調達では、カタログ品や図面を提示して作成してもらう外注部品を調達します。その後加工や組立といった自社で内製する工程を経て、製品の出荷となります。製品は直接客先へ送る場合もあれば、販売拠点を経由する場合もあります。以上がサプライチェーンの大きな流れです。
さらに、見込み生産を行う場合は、「需要予測」のプロセスが加わります。
――製造業サプライチェーンはどのような課題を抱えていますか。
竹内:直近ではコロナやウクライナ危機でサプライチェーンが停止しましたが、この2つは特別なものとして置いておくとして。
一サプライチェーンの課題として焦点が当たっているのは「スピードアップ」です。要はリードタイムの短縮ですね。人の意思決定から実際の物を運ぶところまで、各プロセスに様々な要素が関わってくるサプライチェーンに対し、ICTを活用して合理化し、スピードアップを図っていく。
そうすることでキャッシュフロー的にも有利になりますし、原価を安くすることにも繋がります。そこをターゲットにしている企業は多いですね。
サプライチェーンにおける日本固有の特徴としては「層が深い」ことが挙げられます。
例えば自動車産業では、サプライヤーさんが多層構造になっていて、部品によっては、10層以上ある部品もあります。製品は1部品が足りなくても完成しないので、このサプライチェーンの深さがボトルネックになり、生産が遅れるといったことは、大震災が起きた時などにクローズアップされた部分です。
しかし、その構造によって日本に多くの中小企業が育ってきたという背景もありますので、一長一短があるといえます。