LPWAとは?
Wi-Fiや5Gとの違いから、
IoT時代の新しい通信技術を紹介

LPWAとは?Wi-Fiや5Gとの違いから、IoT時代の新しい通信技術を紹介
LPWAとは?Wi-Fiや5Gとの違いから、IoT時代の新しい通信技術を紹介
省電力と長距離通信を兼ね備えた通信技術「LPWA」。大量のIoTデバイス運用を低コストで行えるため、さまざまな業界のIoT基盤として導入が進んでいます。近年では電池駆動による運用が可能になるなど利便性の向上も目覚ましく、今後さらなる普及拡大が見込まれます。
そのような中でNTTコミュニケーションズは、IoT向けの料金プラン「ImoT™」やIoT向けデータ通信サービス「IoT Connect Mobile® Type S」の提供を通じて、お客さまのDX推進をサポートしています。
あらゆるモノをネットワークに接続するIoTは、さまざまな業界の効率化・省人化を進める手段として注目されています。環境構築においては、対応の IoTデバイスはもちろん、通信規格や外部電源の選定といった周辺環境の整備も重要です。
そこで本記事では、IoTの構築・運用に適した通信技術として注目を集めている「LPWA」を紹介。その特長や実際の活用事例などを解説します。

LPWAとは

LPWAとは

LPWAは「Low Power Wide Area-network」の略で、省電力(Low Power)と長距離通信(Wide Area network)を兼ね備えた通信技術の総称です。LPWAには下記のような特徴があります。

LPWAの特徴

  • ① 電力の消費が少ない(低消費電力)
  • ② 電力がない場所での電池運用も可能
  • ③ 長距離通信(数km~数10km)
  • ④ 大量機器接続(IoTに向いている)
  • ⑤ 少量データ通信

LPWAが注目されている背景

LPWAが注目されている背景には、IoTへのニーズの高まりと普及が挙げられます。
モノをネットワークに接続するIoTの主な用途は、遠隔からの対象物の計測・制御や、モノ同士の通信を可能にすること。用途は多岐に渡りますが、特に下記のような条件・環境でその真価を発揮します。

● 複数のIoTデバイスを並行して稼働させる

● 工場やビルなどの広範囲にわたる区域内で設置が必要

● 郊外や山岳部、河川部での使用

● 長期継続使用が標準であり、5〜10年の耐用年数が求められる

● IoTデバイスの通信機能に制限があり、少量のデータ通信しか行えない

こうした運用環境においては、少ない消費電力で長期間・広範囲にわたる使用が可能なLPWAのほうが、送受信できるデータの量と速度に優れているものの、消費電力が大きく、バッテリー駆動には向かない5GやWi-Fiなどよりも適していると言えます。

映像(動画)や音声といった大きいデータのやり取りを想定しないのであれば、LPWAのような低速度の通信方式でも運用に問題ありません。そのため、LPWAはIoTの通信基盤として急速に導入が進んでいるのです。

LPWAの長所と短所。
使用シーンは?

LPWAを他の通信技術と比べながら、その長所と短所、効果を発揮する使用シーンについてご紹介します。

LPWAの長所と短所。使用シーンは?

〈長所〉 長距離通信と低消費電力

LPWAの長所は、一度の通信に必要な電力量が少なく(低消費電力)、IoTデバイスを外部電源なしで長期的に駆動させられるという点です。そのパフォーマンスは、IoTデバイスを市販の乾電池1個で数年間作動させられるほど。太陽光発電でも必要な電力を賄えるため、メンテナンス頻度を最小限に抑えることも可能です。

もう一つの長所は、数10km範囲での「長距離通信」です。これはBluetoothやZigbeeなどの「無線PAN」や、Wi-Fiなどの「無線LAN」が数10〜数100mの通信範囲であることを考えると、非常に広域だと言えます。通信区域内のIoTデバイスをまとめて接続できるので、回線を複数用意する必要がなく、管理コストを圧縮させられるのも優れた点と言えるでしょう。

〈短所〉 低速度とハンドオーバー非対応

同じ広域通信技術として一般的な4G LTE(受信時最大1.7Gbps、送信時最大131.3Mbps)、5G(受信時最大6.6Gbps、送信時最大1.1Gbps)と比べるとLPWAでのデータ伝送速度はLTE-Mの場合、受信時最大300kbps、送信時最大375kbpsと、1/350以下の速度しかありません。送信容量に制限があるサービスもあり、映像データの送受信には不向きです*1

また、一般的に車両搭載型や持ち歩き型などの広範囲を移動するIoTデバイスには向かないと言われています。これはLPWAの規格である「NB-IoT」「Sigfox」にハンドオーバー機能*2がないためです。LPWAの規格については、本記事の「LPWAの規格」で詳しく紹介します。

  • *1 映像(高画質)ファイルの送受信には3Mbps以上が目安。
  • *2 広範囲のエリアを移動中に、もっとも電波が強い基地局との通信に自動で切り替える機能。車両搭載型や持ち歩き型のデバイスは基地局の担当範囲を渡り歩くため、非対応の場合は通信している基地局と離れるたびに通信が不安定になります。しかし、LTE-Mであればハンドオーバーに対応しています。

LPWAが効果を発揮する使い方

ここまでの内容をまとめると、LPWAは「複数のデバイスを」「広範囲にわたって」「常時稼働させる」用途で高い効果を発揮することがわかったと思います。

たとえば、電気・ガス・水道などのエネルギーインフラにおいては、遠隔検針や計器保守などに用いられるスマートメーターの通信手段として利用されており、全国に設置するメーターを、低コストで運用可能にしています。また、公共事業や農業においては、温度・水位センサーによる常時監視に活用され、河川の氾濫や農作物の高温被害を早い段階で検知し、被害を未然に防止しています。

LPWAの長所と短所。使用シーンは?

LPWAの規格
「セルラー」と「ノンセルラー」

LPWAは使用する周波数帯域によって、「セルラー(ライセンスバンド)」と「ノンセルラー(アンライセンスバンド)」という2種類に大別できます。

セルラー(ライセンスバンド)

通信エリアを区画ごとに分割し、各区画に配備した基地局から無線通信を行う方式のことです。携帯キャリアの運営するセルラーネットワークを用いたLPWA規格であるため、使用にあたっては総務省が発行する無線局免許(ライセンス)が必要です。通信規格としては、「LTE-M」「Cat.1」「NB-IoT」などが当てはまります。

〈LTE-M(LTE Cat.M1)〉
ハンドオーバー対応型のLPWA。携帯電話の通信規格であるLTE(4Gに相当)を使用しています。移動するデバイスに適しているほか、通信速度が約1MbpsとLPWAの中では高速なのが特徴です。
〈Cat.1〉
LTE標準化当初(3GPP Rel-8)からの通信技術。通信速度は下り最大10M/上り最大5Mbps。高速通信向けLTEと比べてモジュールの低価格化が特長。
〈NB-IoT(LTE Cat.NB1)〉
狭い周波数帯域(Narrow Band)を使用するLPWA。他のネットワークと通信が混乱しにくく、消費電力が他のLPWAよりも少ないという特徴があります。但し、ハンドオーバーに対応していないため、移動しながら使う用途には向きません。

セルラーLPWAはキャリア各社の通信網を利用することから、市街地や住宅地、工業地帯など都市部に近いエリアでのデータ収集に長けています。また、省電力技術である「eDRX」*3や「PSM」*4と組み合わることで、電源のない場所でもデバイスの長時間稼働が可能になります。

  • *3 待受中の間欠受信(DRX)周期を延ばし、スリープ状態を長くすることで消費電力を削減する技術。
  • *4 待受中の受信周期を最大約254日まで拡大することで、eDRXよりもさらなる省電力効果を実現できる技術。

ノンセルラー(アンライセンスバンド)

ノンセルラーは免許不要の周波数帯であり、日本国内では920MHz帯が利用されています。基地局との接続が困難な山間部や離島でも、問題なく使用できるのが利点で、通信規格としては、「LoRaWAN」「Sigfox」などが当てはまります。

〈LoRaWAN〉
米国Semtech社のLPWA。屋外での使用に長けており、基地局を自前で設置可能。ハンドオーバーには対応していないものの、時速40kmまでならスムーズに通信できます。そのデバイスがLoRaWANの規格に準拠していることを示す、「LoRa Alliance」という認証も発行されています。
〈Sigfox〉
仏国UnaBiz SAS社が提供するLPWA。基地局の設置不要、国際ローミング対応などコスパの良さが特長です。ただし、1日あたりの通信制限があるため、LPWAの中でも特に「低速かつ小データ」の運用が前提になっています。

それぞれ得意とする利用環境が異なるため、導入の際はほかのネットワークとも比較しながら検討するとよいでしょう。

【業界別】LPWAの活用例

【業界別】LPWAの活用例

LPWAがどのように活用されているか、また今後どのような活用が期待されているか、業界別に紹介します。

農業:生育状況の見える化でオンライン農業を実現

セルラー・ノンセルラーLPWAの活用によって、立地を問わず、スマート農業から一歩進んだオンライン農業が現実のものになってきています。遠隔から植物の生育状況を正確に把握するためには、温湿度、照度、水分などのセンサー類に加え、カメラ、計測器などさまざまなデバイスとの安定接続が必要です。従来の通信方式ではコストとの見合いから同時接続数を制限せざるを得ないケースが多くありましたが、広範囲かつ省コストのLPWAを利用することによって、コストを抑えつつ多種多様なデバイスを並行して運用することが可能に。栽培管理のさらなる効率化と無人化を実現し、農業の生産性を向上させます。

運輸業:IoT×LPWAで物流・輸送管理の効率化

運輸業もセルラー系のLPWAと相性の良い業界です。ドライバーの安全管理や冷蔵・冷凍車両の温度管理といった物流IoTの基本的な運用はもちろん、キャリアの通信網を活用したトラッキングにも活用されています。
LPWAの中では高速度の「Cat.1」であれば、バッテリーや燃料タンク情報の監視や事故発生時の自動通知など、より幅広い業務のコスト効率化にもつながります。

インフラ業界:スマートメーターでコストカットに成功

エネルギーインフラのスマートメーター*5は、セルラー系のLPWAと相性が良く、すでに多くの試験導入や実証実験が行われています。特に、中小事業者が大半を占めるLPガス業界においては、スマートインフラ推進に伴う導入コストが長らく参入障壁となっていたこともあり、低コストのLPWAへの期待度は非常に高いものになっています。「eDRX」や「PSM」など省電力技術の発達により、電源の確保が難しい屋外やメーターボックス内での長期運用が可能になったことでも、業界のLPWA普及に拍車がかかっています。

  • *5 通信機能がついた電力計。電気使用量をデジタル計測することで、毎月の検針業務にかかる人的コストを削減できます。

ドコモビジネスの
LPWA向けサービスと活用事例

NTTコミュニケーションズでは、25年を超える通信事業者としてLPWAをはじめとする豊富なネットワークサービスやソリューションを提供する「ドコモビジネス」ブランドを展開しています。
IoT・DX支援にいち早く取り組んでおり、さまざまな業界・企業のコスト効率化、省人化に役立つICTソリューションを多数の企業へ導入した実績があります。
ここでは、LPWA向けのサービスや実際の導入事例をご紹介します。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

IoT向け料金プラン「ImoT™」

「ImoT™」は、NTTドコモが提供するIoT向けのシンプルで分かりやすい低価格プランです。映像・画像の伝送も可能な大容量プラン「ImoT」と、330円(税込)/月から利用可能な低価格プラン「ImoTミニ(SMSなし)」を提供しており、お客さまの用途に合わせた最適な導入をサポートしています。

〈活用事例①〉 モビリティ活用
レンタカー業界における、利用者の認証および開錠、車両利用時間の遠隔管理などに活用。通信に多くの電力を必要としないため、EV車のバッテリー上がりを抑止できるのが利点です。また、タクシーやバスなどの業務車両における事故の備えにもなります。自力での通報が難しい場合にも、位置情報検索や故障時の緊急発信ができ、バッテリー残量が少ない状況下で長い時間、救助信号を送り続けられます。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

〈活用事例②〉 農業環境の見える化
水田農業センサーを活用し、電源がない場所でも水位・水温の見える化が可能に。遠隔で状況が把握できるため、台風・大雨時の事故防止にも役立っています。そのほか、ビニールハウス内の環境を、スマートフォンで遠隔監視できるシステムを導入することで管理を効率化するだけでなく、作物の品質向上と収穫量増加に貢献します。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

〈活用事例③〉 公共事業(河川事業)における水位管理
大雨における河川水位の目視確認は、危険が伴う作業です。LPWAを活用することで遠隔地の水位を管理センターで一括管理。現地に赴くことなく災害放送や避難誘導などが行えるため、作業者の安全を確保した災害対応が可能になりました。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

〈活用事例④〉 公共事業(インフラ)のスマート化
ガス・水道などのスマートメーターに活用。毎日のデータ収集および分析により、利用者に対して月々の利用料金を提示することが可能に。利用状況に応じた最適プランの提案はもちろん、再生可能エネルギーの活用などGX(グリーントランスフォーメーション)に配慮した取り組みも進めやすくなります。ガス業界においては、保安業務の最適化も大きな導入メリットです。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

〈活用事例⑤〉 愛知時計電機株式会社
LTE-Mの活用によりカバレッジエリアが拡大し、業務の効率化や配送業務の合理化に貢献します。

ドコモビジネスのLPWA向けサービスと活用事例

IoT向けデータ通信サービス
「IoT Connect Mobile® Type S」

「IoT Connect Mobile® Type S」は、NTTコミュニケーションズが提供するIoT向けデータ通信サービスです。ドコモビジネスとの1契約で172の国/地域でご利用可能なSIMを提供しており、国内通信プロファイル(NTTCプロファイル)はLTE-Mにも対応しています。また、SIMの開通・廃止などのライフサイクルをポータルから一元的に管理できるほか、IoT Connect Gatewayによるセキュアなクラウド接続や、Flexible InterConnectを介した閉域接続などの機能を提供しており、機密性の高いデータ収集を安心して行えるのも利点です。

〈活用事例〉 株式会社日本パープル
文書管理ソリューション「保護(まもる)くん」本体に測距センサーを設置。廃棄文書が規定量に達したタイミングで、交換車両の手配を自動で行うシステムを構築しました。IoT Connect Mobile® Type SのSIMカードを選択することで発信モジュールの選択肢が広がり、装置の製造スロットを最小に抑えることが可能に。専用サービスとしては安価だったことも導入理由に挙げられます。

まとめ

  • LPWAとは

    省電力(Low Power)と長距離通信(Wide Area-network)を兼ね備えた通信技術。IoT運用の基盤として注目されており、少量のデータ伝送を大量の機器で並行して行う環境で効果を発揮します。
    通信範囲が20〜50kmと幅広く、電力がない場所での電池運用も可能。一方、通信速度は100bps〜10Mbpsと遅く、大規模データの送受信には向いていません。LPWAは、ほかの通信技術と比べて、少量データの送受信を継続的に行うIoT環境での利用に適しています。

  • LPWAの規格

    LPWAは使用する周波数帯域によって、「セルラー(ライセンスバンド)」と「ノンセルラー(アンライセンスバンド)」の2つに分けられます。前者はキャリアの通信網を活用した都市部での運用に、後者は基地局の電波が届きにくい山間部などの運用に向いています。

  • LPWAの活用事例と今後の展開

    LPWAはモビリティや農業、公共事業など幅広い業界のIoT基盤として活用されています。省電力技術の発達によって、電源が確保しにくい場所でも長時間の稼働が可能になり、今後もさらなる普及が見込まれます。

NTTコミュニケーションズは、これからも社会やみなさまの普段の暮らしが、より一層豊かで充実したものとなるよう、ネットワークのさまざまなソリューションを全国的に展開させていただいております。

関連リンク

ImoT™・ImoTミニ|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

M2MはIoTと何が違う?それぞれの定義を仕組みや事例から解説|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

相互接続性試験(IOT)完了済みメーカーブランド通信モジュール・製品 相互接続性試験(IOT)|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

お問い合わせ
まずは、お気軽にご相談ください。
詳しく見る