従業員の健康管理は企業の義務?8つの健康管理項目を解説

安否確認の基本

「健康問題は個人の問題だから企業がアプローチできることは少ない」と考える経営者も多く見られます。しかし、健康管理は人道的意義だけでなく、人の資源の確保という、生産性の側面からも重要な取り組みです。また、中には法的拘束力をもつものもあります。

本記事では、従業員の健康管理を企業が行う意義と実施による効果について説明するとともに、実際の取り組み事例や取り組みの際の留意事項などを紹介します。

もくじ

従業員の健康管理が重要な理由

まず、企業が従業員の健康管理を行う意義を理解しておきましょう。前提として、企業が従業員の健康を守ることは、いくつかの法律によって義務付けられています。

例えば労働契約法第5条では労働者に対する「安全配慮義務」が明文化されていますし、労働安全衛生法第7章においても健康の保持促進のためにおこなうべき措置が規定されています。

また、企業が従業員の健康管理を積極的に行うことによって、生産性の向上や企業イメージの上昇といった効果が期待されるでしょう。長期的な成果としては、医療保険関連の負担軽減などの間接的効果も考えられます。


従業員の健康管理に必要な8つの項目

では、具体的には従業員の健康管理をどのように行えばよいのでしょうか。ここからは、従業員の健康管理を行う際に押さえておきたい8つの項目を紹介します。

1. 長時間労働の是正

従業員の長時間労働が常態化している場合は、これを是正する必要があります。厚生労働省によると、時間外労働が月に100時間、あるいは2~6カ月平均で月80時間を超えてくると健康に悪影響を及ぼすリスクが高まるとされています。

長時間労働の防止には、まず労働時間の実態把握として、システムの導入などによる客観的な勤怠管理が重要です。その他、以下のような取り組みを進めて労働時間の短縮を図りましょう。従業員側から言い出しづらい側面も多いため、トップダウンでの取り組みが求められます。

  • 定時退社や有給取得を申し出やすい連絡のしくみづくり
  • リモートワーク・フレックスタイムの導入など、勤務の場所と時間の選択肢の拡大
  • 従業員の心身の特性に応じた部署や職種の提供
  • 時間にとらわれず従業員の働きを評価できる裁量労働制の導入

2. 健康診断の実施

従業員の健康状態を客観的に把握できる仕組みも大切です。労働安全衛生法第66条では、従業員に対し、医師による健康診断を行うことが企業の義務と明文化されています。

一般健康診断には、1年以内に1回行う定期健康診断のほか、雇入れ時、特定業務、海外派遣労働者など、対象によって診断内容が定められています。

また、健康診断実施後は、結果を記録し、従業員の通知と労働基準監督署への報告を行うとともに、必要に応じて医師から意見聴取した上で、作業の転換や労働時間の短縮などの適切な措置や保健指導などが必要です。

3. ストレスチェック制度の導入

従業員の心身にどの程度の負荷がかかっているかを知ることも重要です。ストレスチェック制度は、ストレスという見えない状態のものを通知化し、職場だけでなく従業員本人も客観的に把握するため設けられました。

従業員自身がストレスに気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ一次予防を主な目的としており、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることが求められています。

ストレスチェックは、従業員が自らアンケートに回答する形で行います。2015年の労働安全遠征法の改正により、従業員50人以上の職場では年に1回以上の実施が義務付けられました。50人未満の場合は当面の間努力義務として、できるかぎり行うよう推奨されています。

4. 安否確認システムの採用

従業員の健康状態を把握する際に、毎日一人ひとりに連絡をとって聞き取っていたのでは業務に支障が出てしまいます。報告する従業員にも集計する担当者にも負担のない仕組みを考えて対策する必要があります。

安否確認システムは、地震など自然災害が発生した際に従業員の安否状況を把握するためのツールです。しかし、一斉配信・回答の自動集計機能、アンケート機能などを使えば、毎朝定期的に従業員へ体調報告用の簡単なアンケートを配信できます。従業員が回答を送信するだけで自動的に集計される健康管理ツールとして、集計・記録の労力を大幅に軽減できるでしょう。

実際、新型コロナウイルス感染症が流行していた間の健康管理に活用した企業も数多くありました。

5. 快適に働ける職場環境の整備

従業員の心身の健康状態を可視化しても、職場環境がそのままではいつまでも健康状態が改善されません。よって職場環境の整備も重要になります。

物理的な環境としては、以下の事項に注意して整備しましょう。

  • 室内の温度、湿度、換気(風通し)、匂い
  • 日当たり、明るさ
  • 仕事に集中できる静謐さ、1人あたりの作業スペース
  • 作業場所と休憩場所の分離、仮眠やシャワーなどストレスを軽減するスペース

6. 福利厚生の充実

適切なワークライフバランスを実現できるよう、福利厚生を充実させることも重要です。従業員の健康維持やストレス軽減に関連する制度としては、以下のようなものがあります。

  • 住宅手当、社宅・寮などの住居関係
  • 社員食堂、弁当・おやつ・飲料などの配布・優待利用
  • 記念日休暇、リフレッシュ休暇などの臨時休暇
  • 保養所、スポーツジムなどの開放・優待利用
  • クラブ活動、旅行、イベントなどの運用

7. 研修やセミナーの実施

従業員自らが健康を維持する行動をするよう促すのも有効です。セミナーや研修、勉強会などを行い、従業員の理解と意識の向上を図りましょう。近年はオンライン形式のミニ講座など、時間・場所にしばられず受講できるものも増えています。

また、外部から専門家を呼んで話題をつくる、受講ポイントをためて報酬が得られるようにするなど、従業員が受講したくなる仕掛けをつくっても良いでしょう。

8. 相談窓口の設置

健康にまつわる悩みや疑問を、安心して相談できる相談窓口を作りましょう。健康についての悩みは他者に聞かれたくないケースもあるため、相談窓口は秘密が守られる場であることを重視します。相談窓口の存在は、特にメンタル不調の重症化を防ぐうえで有効です。

従業員によって連絡したい手段が異なるため、電話やメール、チャット、SNSのダイレクトメールなど、多様な入り口を用意して連絡までの敷居を低くします。また、相談を受けた後は従業員の立場を守りながら専門家と連携し対処する体制を整えましょう。


従業員の健康管理で得られること

ここからは、従業員の健康管理を行うことにより、具体的にどんな効果が得られるのかをみていきましょう。

労働生産性の向上

適切な健康管理によって、従業員が心身ともに健康な状態で仕事に従事できれば、労働生産性の向上につながります。

また、健康的に働くことの出来る職場であれば、離職率の低下や、優れた新規人材の獲得など、人材確保の面でも良い効果が期待できます。

企業のイメージアップ

健康管理を企業の経営的観点でとらえる「健康経営」の概念も浸透してきました。

経済産業省では、毎年「健康経営度調査」を実施し、国内の企業の健康管理の実態を把握しています。また、調査結果から次のような顕彰制度を創設し、健康経営に取り組む企業を評価して、従業員や求職者、取引先企業や金融機関などへ積極的にアピールできる環境を整備しています。

  • 健康経営銘柄
  • 健康経営優良法人(大規模法人部門)、ホワイト500(上位500に冠を付加)
  • 健康経営有料法人(中小規模法人部)、ブライト500(上位500に冠を付加)

社会保険料の負担軽減

健康管理を継続して実施することにより、組織全体の健康度が上がっていきます

健康に関する取り組みも、疾病の可能性があり治療などの措置が必要な人たちに働きかけて病気を予防する「ハイリスクアプローチ」だけでなく、まだリスクを抱えていない人たちを含む集団全体へ働きかける「ポピュレーションアプローチ」の浸透が進んでいます。

心身において健康な人が増えれば医療費の削減が進み、保険の負担が軽減。その結果、保険者と企業で負担しあっている社会保険料の引き下げにもつながってくるでしょう。


従業員の健康管理を実施する際の注意点

企業にとってメリットの多い健康管理を経営戦略のひとつとして積極的に活用するために、気をつけておきたいポイントをみていきましょう。

業務への影響を考慮する

健康管理の取り組みは、多くの場合、人事や総務の担当者が兼任します。専従ではないことから、通常業務に追われていて、健康管理は年に1回の健康診断の義務を果たすのが精一杯となってしまうケースも少なくありません。

より積極的な健康管理をおこなうには、健康管理に携わる担当者を専従で配置するなど、トップ判断による戦略的な展開が望まれます。

データを活用する

健康管理は、医療保険の関係者と労務人事の関係者が連携する「コラボヘルス」の考え方で取り組むことが望ましいとされています。

健康診断に代表される健康管理と勤怠などの労務管理は、それぞれ独立したシステムで運用されている場合が多く、両者を融合させたコラボヘルスの推進には、領域を超えて健康管理と労務管理の情報を一元的に把握できるデータの統合管理が不可欠といえるでしょう。

健康管理は、企業戦略として積極的に取り入れたいものとして近年話題になっているDX(デジタル・トランスフォーメーション)の領域でも注目されています。


従業員の健康管理には「Biz安否確認」がおすすめ

健康管理は、国が定めた義務としてだけでなく人的資本への投資としても積極的に活用したい取り組みです。しかし一方で、従業員の考えや価値意識、プライバシーに踏み込んだ働きかけになるため、個人が特定されたり人事評価に影響したりすることのないセキュアなデータ管理が求められます。

「Biz安否確認/一斉通報」システムは、一斉送信と各自の回答を自動集計する機能により、担当者が個別の回答を見ることなく集団での傾向を把握することが可能です。必要に応じて部署単位での把握や個別への連絡にも対応し、平常時から積極的に使いこなすことで、従業員の状況把握にかかる負担軽減が期待できます。

安否確認システムの新たな日常の活用法として、ぜひご利用ください。

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