電子帳簿保存法の定義とデータ保存の形式

法人カードを使用するメリットから上手く活用する方法を徹底解説

公開日:2022/11/25

2022年1月1日、電子帳簿保存法が大幅に改正されました。国税関係の帳簿や書類のデータ保存方法が抜本的に見直されています。

2024年1月からは「電子取引」に関するデータの電子保存が義務化される予定です。

そのため、これまで国税関係の書類を全て紙で対応して来た場合、保存方法の変更が求められます。また、この機会にペーパーレス化に転じたいと考える担当者の方もいるでしょう。

本記事では電子帳簿保存法の改正に必要な対応や手順について解説します。

電子帳簿保存法の定義とデータ保存の形式

電子帳簿等保存法は1998年に施行されました。国税関係の帳簿や書類を電子データで保存する際の方法を定めた法律です。IT化の流れに伴い何度も大きな改正が行われています。主なものは次のとおりです。

・2015年:電子署名義務化の廃止、上限金額の撤廃
・2016年:スキャナ保存要件の緩和
・2020年10月:キャッシュレス決済の場合紙の領収書不要

2021年にはペーパーレス化や経理作業の効率化を目的として、要件がさらに大幅に変更されているため注意が必要です。2022年1月に施行された改正の詳細については後述します。

国税関係書類にはさまざまなものがあり、書類によって必要な保存方法は異なります。

国税関係帳簿 国税関係書類
決算関係書類 取引関係書類 電子取引
自社が作成 先方が作成
仕訳帳
総勘定元帳
補助簿など
貸借対照表
損益計算書など
契約書(控)
見積書(控)
請求書(控)
領収書(控)など
契約書
見積書
請求書
領収書など
メール取引
Web取引など
電子データ保存(電子帳簿等保存) スキャナ保存 電子データ保存
(電子取引等保存)

各保存方法の違いについて、詳しくみていきましょう。

電子帳簿等保存

近年、多くの企業では仕訳帳や総勘定元帳、決算書類などを会計ソフト等を用いパソコンで作成しています。これが「電子的に作成した帳簿や書類」に該当します。

この帳簿や決算書類などを紙に印刷することなく、電子データのまま保存することが「電子帳簿等保存」です。

スキャナ保存

電子取引以外の取引関係書類はスキャナ保存が可能です。例えば、商品を購入した際に渡される紙の領収書やレシートなどが該当します。

紙の書類を、スキャナなどで電子データ化することを「スキャナ保存」といいます。

スキャナ保存に用いられる機器は、スキャナ、デジタルカメラ、スマートフォンなどです。解像度は200dpi相当以上でなければなりません。

また、利用機器が私物であるか否かの制限はないため、社員が自分のスマートフォンで撮影した領収書もスキャナ保存の要件を満たしたものとなります。

電子取引データ保存

電子で授受した取引情報をデータで保存するのが「取引データ保存」です。

従来通り、領収書を紙で受け取った場合は紙での保存が可能です。これまでは、領収書をデータで受け取った場合でも、紙に印刷して保存することが可能でした。

しかし、2022年1月1日以降、電子取引データは電子データで保存しなければならなくなったため注意が必要です。2年間の猶予期間中のため、2023年12月末までは出力した紙の保存でも構いませんが、2024年1月からは電子データ保存が義務化されます。

2022年の電子帳簿保存法のポイント

2022年に改正された電子帳簿保存法には、大きなポイントが3つあります。それぞれについて詳しくみていきましょう。

税務署長への事前申請の廃止

これまで、データ作成した国税関係書類を電子データのまま保存するには、税務署長の事前承認が必要でした。しかし、2022年1月1日以降は、事前承認が不要となりました。

保存要件・タイムスタンプの緩和

タイムスタンプは、電子化された文書を認定した時刻を証明する電子技術です。タイムスタンプ発行後に書類の改ざんを行うことができないため、書類の信頼度が高まります。

従来、タイムスタンプの付与が必要な書類に関して、受領者がスキャン等の処理を行った場合には3営業日以内にスタンプを付与しなければなりませんでした。

しかし、改正により最長で概ね2か月と7営業日以内に付与すればよくなったため、時間的な余裕ができたといえるでしょう。

さらに、保存要件も緩和されています。電子データの修正や削除をした際の事実と内容を確認できるクラウドシステムなどを用いた場合は、タイムスタンプが不要になりました。

電子データ保存義務化

2024年1月からは電子データ保存が義務化されます。(2023年12月末までは猶予期間中)これまでは、電子データを紙で印刷して保存することが可能でしたが、今後は電子データのまま保存しなければなりません。

例えば、インターネットショッピングで商品を購入した場合でも、領収書が商品と一緒に紙で送られてきた場合は用紙の保存でも構いません。しかし、領収書がメールなどの電子データで送られてきた場合やクラウドシステム内で発行された場合などは、電子データ保存が義務付けられます。

領収書についての記事はこちらです。

電子帳簿保存法の改正に必要な対応

ここまで、電子帳簿保存法の改正について解説してきました。自社だけでの対応が難しい場合は、電子帳簿保存法に適したツールを導入しましょう。導入の際、どのような点に気を付ければよいのか、みていきます。

電子帳簿保存法とインボイス制度のどちらにも対応

2023年10月からはインボイス制度が始まります。インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除方式のことです。

適格請求書発行事業者である売手側は買手に対して、「適格請求書(インボイス)」を発行しなければなりません。インボイスは「デジタルインボイス」として電子データで送受信することも可能です。(2023年10月制度開始予定)

どちらにも対応するためには、電子帳簿保存法とインボイス制度、双方に適したツールを導入しましょう。

インボイス制度に関する記事はこちらです。

求められるシステム要件

電子取引制度やスキャナ保存制度に求められるシステム要件を満たさなければなりません. 対応しているかどうか事前に確認しておきましょう。

スキャナ保存制度で必要となる主なシステム要件は次のとおりです。

・書類の訂正・削除の事実やその内容確認ができる
・検索条件として「日付」「金額」「取引先」の指定ができる
・税務職員の求めによりダウンロードできる

なお、訂正・削除の記録が残るシステムでない場合は、タイムスタンプ付与機能が欠かせません。

電子帳簿保存法の改正に対応するための手順

一番大きな変更点は電子取引による電子データ保存が義務化されたことです。これに対応するために、どのような手順をとればよいかわからないこともあるでしょう。ここでは、改正に対応するための主な手順についてみていきます。

自社内の状況を把握

自社の現状を把握します。全て紙データで保管していることもあれば、一部を電子データ化していることもあるでしょう。

現在の他社との取引状況の中でどの程度電子取引があるのかの把握も欠かせません。ただし、現在電子取引をしていない場合でも、将来的に電子取引を行う企業は増えると考えられています。その際に、すぐ対応できるように今から準備をしておきましょう。

業務フローの見直し

これまで、全て紙で対応していた場合は、電子データの保存方法や保存場所を検討しなければなりません。国税関係書類は原則7年間の保存が必要です。

とくに次の3点は確認しておきましょう。
・7年間に対応できる保存容量はあるか
・必要に応じて電子データの一括ダウンロードが可能か
・適切なバックアップ体制は整備されているか

自社内のみでの対応が困難な場合は、条件に合ったツールの利用を検討してもよいでしょう。

電子データの活用にあたり、これまでとは業務の流れが変わってくることも少なくありません。これを機会にペーパーレス化に進んでいく企業もあるでしょう。ペーパーレス化を検討する場合、全てを全部一気に変えると対応が困難となる場合があります。最初は、請求書や領収書のスキャナ保存などを手掛け、スモールステップで対応していくとよいでしょう。

スキャナ保存の書類の範囲を定めましょう。スキャナ保存後の紙原本はその場での破棄が可能になります。社内においてどのように運用するのか、担当者をどうするのかなど、必要に応じて、現在の業務フローの見直しが欠かせません。

業務フローを見直すためには、まず、現在の業務フローをすべて洗い出します。その後、電子保存に対応するにあたって、どこが変わっていくのかを明確にしましょう。

例えば、経費精算の際にこれまで紙で申請していた場合、データへと切り替えることも検討してみてもよいでしょう。経費の節減だけでなく、従業員の手間の大幅カットにもつながります。

経費精算のキャッシュレス化に関する記事はこちらです。

運用体制とルールの策定

業務フローに沿って、運用体制を見直します。全てをデータ化するのが難しい場合、紙とデータでの情報保存が必要です。

保存要件を満たしたうえで、保存場所は保存方法などの細かいルールをきちんと策定しておかなければなりません。

関係者の業務遂行をスムーズにするためにも、ルールを整備しておきましょう。

経理部についての記事はこちらです。

まとめ

電子帳簿保存法の改正により、2024年1月から電子取引による電子データ保存が義務化されます。保存のためのシステム要件などのルールに則って保存しなければなりません。

対応できていない場合は、社内の現状を把握したうえで業務フローやルールの見直しが必要です。自社だけで対応が困難な場合は、外部ツールの利用を検討してもよいでしょう。

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