電子帳簿保存法でタイムスタンプは必要?要件や発行方法についても解説

電子帳簿保存法でタイムスタンプは必要?要件や発行方法についても解説

公開日:2022/12/28

2022年1月より電子帳簿保存法の改正案が施行され、電子データの保存要件やタイムスタンプの必要性、発行期限の延長など、さまざまな項目が緩和されました。

タイムスタンプは電子データの信頼性を証明する手段のひとつですが、データごとに発行するのは効率性に欠けます。そのため、なるべくタイムスタンプを使用せずに電子帳簿保存法へ対応したいと考えている企業は多いでしょう。

本記事では、電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの必要性や要件、発行方法などについて解説します。

電子帳簿保存法の要件とタイムスタンプの必要性

電子帳簿保存法は国税関係帳簿書類を電子データとして保存することを認める法律で、以下3つの要件があります。

・国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(パソコンで記録を作成した場合)
・国税関係帳簿書類をスキャナで読み取る電子保存(スキャナで紙を取り込む場合)
・電子取引の取引情報の電子保存(インターネットを介する取引の場合)

タイムスタンプは電子化した書類データの原本性を担保するのが役割です。以前は付与が必須とされていましたが、2022年1月の改正により現在は不要なケースも存在します。

電子帳簿保存法について詳しい内容はこちらから。

電子帳簿保存法のタイムスタンプとは何か

ここでは、電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの概要と利用要件について解説します。 データ改ざんの防止、契約が必要な点などは知っておきましょう。

タイムスタンプとは

電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは、時刻情報とハッシュ値の刻印により付与時点から電子書類が存在していること、および付与後に内容が改ざんされていないことを証明するものです。TSA(時刻認証業務認定事業者)がタイムスタンプを発行しているため、付与されたデータは信頼性が高まります。

電子データ化した書類は紙面よりも改ざんが容易となるため、電子帳簿保存法において「存在証明」と「非改ざん性証明」を同時に行えるタイムスタンプの重要性は高いといえます。

タイムスタンプは契約が必要

タイムスタンプを付与する際は、一般財団法人日本データ通信協会に認定されているTSAとの契約が必要です。2022年12月現在、TSAとして認定されている業者は下記5社となります。

・アマノ株式会社
・セイコーソリューションズ株式会社
・株式会社TKC
・株式会社サイバーリンクス
・三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(特例認定)

電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの扱い

2022年1月の電子帳簿保存法改正案施行後、タイムスタンプの要件は少しずつ緩和されてきました。ここでは、必要な場合と不要な場合をみていきます。

場合によっては不要

2022年1月の改正案施行から、電子帳簿保存法に対応しているクラウド上の経費精算ツールで帳簿書類を作成した場合については、タイムスタンプが不要とされています。

内容の訂正や削除を行った履歴を残せる会計ツールであれば、タイムスタンプがなくても存在証明・非改ざん証明を行えるためです。

電子データは保存必須

タイムスタンプの有無にかかわらず、電子取引などの電子データは紙書類と同様、確定申告の提出日の翌日から7年間の保存が義務づけられています。しかし、納税地で保存データを閲覧できるという条件のもとクラウド上での保存が可能になったため、以前よりも書類管理が効率化しました。

スキャナ保存のタイムスタンプ要件

帳簿書類をスキャナ保存する場合、タイムスタンプの付与期間は最長約2ヶ月と7営業日以内となります。2019年の改正以降は「約」「おおむね」の文言が追加されており、やむを得ない事情により期間内に保存が間に合わなかった場合も認められるようになりました。

スキャナ保存についても、定められた期間以内にデータ変更履歴が確認できるクラウドツールを使用すれば、タイムスタンプは不要です。

電子帳簿保存法ではタイムスタンプは必要か?

電子帳簿保存法において、結局のところタイムスタンプが必要になるかどうかはケースによって異なります。2023年より施行予定のインボイス制度などに向けて、タイムスタンプの制度も徐々に緩和されつつあります。最新の情報をみていきましょう。

スキャナ保存がある場合は保存方法による

2022年1月より施行された改正では、約2ヶ月と7営業日以内に、内容の訂正・削除履歴が残るクラウドツールなどを利用して帳簿書類をスキャン保存した場合のみ、タイムスタンプが不要となります。

履歴を残せない方法でスキャン保存を行った場合は、約2ヶ月と7営業日以内にタイムスタンプを付与する必要があります。以前はケースごとに分かれていましたが、2022年現在ではスキャンを行う人や方式に関係なく、同一の付与期限が設けられています。

電子取引では発行者のみ必要

電子取引では、やりとりの方法によってはデータの信頼性が保持できなくなるため、タイムスタンプを付与することが重要です。そのため、電子取引の保存要件はスキャナ保存と別に設けられています。

2020年の改正以降、タイムスタンプの付与は発行者側のみでも認可されます。以前は発行者側、受領者側の両方で付与が必要だったものの、よりスムーズに電子帳簿保存を導入できるよう改善されました。

また、2022年施行の改正により、電子取引のタイムスタンプ付与期限についても最長約2ヶ月と7営業日以内に統一されています。

タイムスタンプの発行方法

タイムスタンプの発行と付与までの流れは、次の通りです。

1.タイムスタンプの対象書類を準備
2.書類をスキャン・撮影
3.タイムスタンプシステムに画像をアップロード
4.タイムスタンプの事業者から付与される

電子帳簿保存法によりスキャナ保存が認可されている書類の場合、タイムスタンプの付与が必要となります。

電子帳簿保存法とタイムスタンプの注意点

ここでは、電子帳簿保存法とタイムスタンプにおける注意すべき点をみていきましょう。

電子データでの保存が義務化される

電子取引などの電子上で受け取った書類データについて、電子データのまま保存することが義務づけられます。これに伴い、電子保存に対応していない企業は電子保存・管理システムなどの速やかな導入が必要です。

メールソフト上でPDFなどの電子データを保存しているだけでは保存要件を満たせません。そのため、ツールを導入するまでの期間は、信頼性の担保手段としてタイムスタンプの利用を推奨します。

実施時期

2024年1月から施行される電子データ保存の義務化に向けて、2023年12月までの対応が求められています。帳簿書類の保存要件である存在証明・非改ざん性証明が満たされない場合、データ保存において調査が入る可能性もあります。

新しい経費精算ツールの導入や既存システムのアップデートには期間を要するため、早めに検討しましょう。

タイムスタンプ不要となるケースは限られる

タイムスタンプの要件は大幅に緩和されつつあるものの、完全に不要とされるケースは限定的です。まだ必要となる場面は多いため、発行方法を覚えておいても損はありません。

システムを自社内に構築している企業では、経費精算ツールを導入していても、電子帳簿保存法改正に未対応の場合もあります。ツールを更新するまではタイムスタンプを利用し、電子データの信頼性の保持に努めることが重要です。

まとめ

2022年1月に電子帳簿保存法の改正案が施行されて以降、編集履歴の残るシステムを使用している場合は原則タイムスタンプが不要となりました。しかし、旧型のシステムやツールを使用している企業もまだ多いため、データの信頼性を保持するのにタイムスタンプが必要とされています。

また、2024年1月より電子取引のデータ保存において、電子データのまま保存することが義務づけられるようになります。メールソフト上で受領したデータを保存しているだけでは、保存要件のうち存在証明に欠けるため、別途保存が必要です。

ファイルに保存した電子データの信頼性を証明するには、タイムスタンプが不可欠となります。タイムスタンプを使用せず対応する場合、法改正に対応している経費精算ツールなどの導入を検討しましょう。

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