I.業績の概況

(1)市場環境および事業基盤の変化

日本の情報通信市場においては、さまざまなサービスの融合や淘汰が進行し、「膨張するインターネット」や「固定と携帯」「通信と放送」の連携を軸に、新しいサービスやビジネスモデルの変化が急速に進んでいます。こうしたなか、デジタル革命・インターネット革命は、生活やビジネスの革新へとつながり、まさに「ICT革命」というべき状況に進展しています。さらに、世界へ目を向けると、米国や欧州におけるネット事業者を中心としたM&Aによる業界再編が進むなど、情報通信市場をめぐる競争環境は世界規模で日々変化しています。インターネットの世界では、ブログやSNS(Social Networking Service)などのCGM(Consumer Generated Media)において情報量が溢れ、ネットコミュニティが拡大し、コミュニケーションは多様化・活性化しています。インターネットによるお客さま接点の強化やお客さま接点を軸としたビジネスモデルの拡大とともに、検索エンジンがナビゲーションに果たす役割が非常に大きくなっています。

一方、企業経営においては、ビジネスの拡大や事業継続を円滑に進めるために、グローバルレベルでICTの果たす役割がますます重要になっています。

(2)経営概況

当社は、急速に変化する経営環境を踏まえ、お客さまのワンストップでトータルかつグローバルなソリューションサービスに対するご要望や、「豊かな社会と安心で快適な生活」を実現するサービスに対するご要望に応えるため、法人サービス・ネットビジネスサービス・グローバルサービスにおける提供体制の定着化および深化に努めてきました。2007年度は「第二の創業期」に続く、NTTコミュニケーションズグループの新たな成長戦略「事業ビジョン2010」の達成に向け、「現在と未来を“つなぐ”パートナーとして、豊かな社会と安心で快適な生活の実現に貢献し、世の中のお客さまに信頼される会社を目指す」ことをミッションに掲げ、“お客さまやマーケットを第一”に考えた経営とサービス提供を念頭に、新しい法人営業体制の構築と強化、デリバリー・保守品質の向上に向けたプロセス改善、プロダクト戦略の見直しなど、「現場力」、「人間力」そして風通しのよい活力ある「企業力」の向上に向けた種々の改革に取り組み、一層の収入拡大と構造転換を推し進めました。

上記ミッションのもと、従来の6つのコアバリューである「ソリューション」、「ネットワークマネジメント」、「セキュリティ」、「グローバル」、「ユビキタス」、「ポータル/エンジン」に加え、新たに「マネージドクオリティオペレーション(高信頼保守)」を追加し、事業戦略上の“成長のためのエンジン”群として経営資源を集中し、以下の事業展開を実施しました。

法人ビジネス事業については、お客さまに信頼いただける「ICTソリューションパートナー」として、業種・業態別を基本とした法人営業体制の整備、プロセス改善ならびにSE機能の強化を図るとともに、経営課題解決型のコンサルティング営業の推進により、お客さまニーズにあった付加価値の高いソリューションの提供と利便性向上に努めました。

グローバル事業については、「ICTソリューションパートナー」として、ネットワークインテグレーションにデータセンター/セキュリティ/サーバー・マネジメントなどを加えた付加価値の高いトータルなサービスをグローバルレベルでお客さまに提供しました。

ネットビジネス事業については、「“CreativE-Life”for Everyone」のブランドのもと、NTTレゾナントのgooのポータル事業をNTTグループのネットビジネスの中核と位置付け、OCN、ぷららなどのISP、050IP電話、映像配信、CGMなど総合的なネットサービスを展開しました。

また、CSRについては、NTTコミュニケーションズグループの「CSR基本方針」に基づき、「社会への貢献」、「地球環境保護」、「人財の尊重」の観点から、豊かで持続可能な社会の実現に向け、ICTソリューションパートナーとして、情報通信サービスの提供を通じてグローバル規模で社会の新たな価値創造や課題解決に取り組みました。

以上の取り組みにより、お客さまに信頼されるパートナーとして、また、時代を先取りするナビゲーターとして、「現場力」、「人間力」そして活力ある持続的な「企業力」を目指して、従業員一丸となってスクラムを組み、改革と創造を進めました。

(3)経営成績

上記の経営概況の結果、ソリューション収入の大幅な拡大などに伴い増収増益となりました。

収益については、ソリューション収入が前年実績に対し大幅に伸びたほか、OCNやVPN関連などのIP系収入も順調に拡大しました。その結果、音声伝送収入および専用・パケット交換などのデータ通信収入の減はあるものの、営業収益は対前年同期比で90億円(+0.8%)増の11,545億円となりました。

また、費用面では、収益連動費用の増がある一方、事業全般に渡りコストコントロールに努めた結果、営業費用は対前年同期比▲183億円(▲1.7%)減の10,497億円となりました。

以上により、営業利益は、対前年同期比273億円(+35.4%)の増となる1,047億円をあげることができました。

営業成果の主な項目について、その概要は以下の通りです。
(ア) ソリューション収入は、中期経営戦略に基づいて2006年8月に実施したNTT東日本・西日本からの法人営業部門移管や、昨年4月の業種・業態別法人営業体制の再編により、お客さまの業種・業態にマッチした付加価値の高いソリューション提案体制が整ったことに加え、セキュリティ対策を含めた企業のIT投資の拡大などもあり、対前年同期比270億円(+16.3%)増の1,929億円となりました。
(イ) IP系収入については、広域イーサネットやIP-VPN関連ならびに2008年3月末現在で680万を超えたOCNの契約数の増などに伴う収入の伸びにより、対前年同期比144億円(+4.5%)増の3,341億円となりました。
(ウ) 音声伝送収入(IP系除く)は、「プラチナ・ライン」の積極的な販売や、「フリーダイヤル」を含めた多彩なパッケージ・ソリューションの提案などで、収入の維持に努めたものの、加入電話の減少、携帯電話へのトラフィック流出、メールの普及などによる市場縮小に伴うダイヤル通話料収入の減少などにより、対前年同期比▲126億円(▲2.7%)減の4,503億円となりました。
(エ)  データ通信収入(IP系除く)は、イーサネットインターフェースを中心とする「ギガストリーム」の販売に努めたものの、専用サービスから広域イーサネット、IP-VPN関連などのIP系サービスへのマイグレーションにより、対前年同期比▲133億円(▲8.3%)減の1,476億円となりました。

また、営業費用は、ソリューション収入の拡大に伴う費用増はあるものの、バリューチェーンの見直しや調達業務の一元化による経費の削減など事業全般にわたる効率化に全社をあげて取り組んだ結果、対前年同期比▲183億円(▲1.7%)減の10,497億円となりました。

これにより、営業利益は、対前年同期比273億円(+35.4%)の増となる1,047億円をあげることができ、特別利益として厚生年金基金代行返上益120億円を計上するとともに、特別損失として、株式評価損の他、新たに設定したテレホンカード引当金やリース会計基準改正の早期適用影響などについて304億円を計上したことにより、当期純利益は対前年同期比324億円増の627億円となりました。

(4)今後の取り組み

2008年度については、「事業ビジョン2010」の達成に向け、引き続きグループ経営を一層推進し、成長分野である法人ビジネス事業・グローバル事業・ネットビジネス事業の強化・拡大に取り組んでいきます。

その新たな施策として、成長のためのエンジンである6つのコアバリューに、新たに「マネージドクオリティオペレーション(高信頼保守)」を追加しました。“つなぎ続け、切れてもすぐつなぐ”ためにプロセス改革やサービス品質の向上に努め、お客さまに信頼・満足いただけるサービスを提供していきます。

法人ビジネス事業については、引き続き、「ICTソリューションパートナー」としてコンサルティング営業を強化し、法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)、SaaS(Software as a Service)、データセンターといった最先端のICTソリューションをNTTグループ各社との連携などによりワンストップで提供します。

グローバル事業については、昨年度来、光海底ケーブルの建設、プレミアムデータセンターの展開など付加価値の高いサービス推進体制の強化に取り組んできました。

先月発表された英国Telemark社によるグローバルキャリア8社を対象とした顧客満足度調査では、昨年の部門単位での1位獲得の実績を上回り、初めて総合で第1位となり、国際的な評価も高まっています。

また、現在、22カ国52都市に海外拠点を展開していますが、今後も、日系および外資系企業のお客さまのグローバル展開に応えるため、海外拠点やサービス提供エリアといったフットプリントをタイムリーに拡充していくとともに、国内外シームレスなサービスを提供します。

ネットビジネス事業については、OCN、ぷらら、gooなどの豊富なサービス・コンテンツや顧客基盤を背景に、グループの総合力を発揮した事業展開を進めていきます。

特に、NGN(Next Generation Network)の商用サービス開始にあわせ3月より提供しているNTTぷららの新たな映像配信サービス「ひかりTV」を始め、お客さまにとって魅力あるサービスを開発、展開していきます。

以上の取り組みにより、「事業ビジョン2010」の下、7つのコアバリューに磨きをかけ、成長分野の事業拡大に努めると共にNTTコミュニケーションズグループ一体となった事業運営を進めていきます。