I.業績の概況

(1)市場環境および事業基盤の変化

わが国の経済情勢は、デフレや円高などの影響で景気が足踏み状態となっており、多くの企業はアジアなどの新興市場を中心に、グローバル化や新規事業開拓を推進しております。また、3月に発生した東日本大震災の社会経済全体への影響は、避けられないところでもあります。このような状況下で、日本の情報通信市場においては、次世代高速モバイルにも代表されるように、固定・無線ともブロードバンド化がより一層進展しており、スマートフォン・タブレット型端末の急速な普及やデータセンターにおけるマネジメント技術の高度化により、あらゆる端末からいつでもどこでも必要な分だけサービスを利用できるクラウドサービスが実現しつつあります。

(2)経営概況

当社は、基本方針として、シームレスに高い品質とコスト競争力をもったサービスを、世界中のお客さまに提供する会社を目指してきました。

分野別には、お客さまの経営課題解決に資する最先端のICTサービスを、国内外ワンストップで提供していく「法人ビジネス事業」、ネットワークやデータセンター等を拡充し、お客さまのグローバルな事業展開を支えていく「グローバル事業」、および豊富なサービス・コンテンツや顧客基盤を基に、グループの総合力を発揮した事業展開を推進していく「ネットビジネス事業」の積極的な展開に努めてきました。

さらに生産性指標に基づく永続的な業務の効率化を目指し、組織を超えたプロセス改善とコストコントロールの徹底を追及してきました。

2010年度は、2006年に策定したNTTコミュニケーションズグループの成長戦略「事業ビジョン2010」の総仕上げの年として、“つなぐ”、“つなぎ続ける”という基本ミッションのもと、事業戦略上の“成長のためのエンジン”群として、「ソリューション」「ネットワークマネジメント」「セキュリティ」「グローバル」「ユビキタス」「ポータル/エンジン」「マネージドクオリティオペレーション」の7つのコアバリューに経営資源を集中することにより事業構造の転換を推進し、これらの事業を支えるプロフェッショナル人材の育成、コンサルティング型営業の推進、デリバリープロセスの改革、オペレーションの品質改善、新たなサービスの創造などに取り組んできました。

法人ビジネス事業については、お客さまが、コア事業へのリソースの集中や海外進出の更なる増加など、環境変化への柔軟な対応を一層進めるなか、ネットワークの効率的な活用、ICTインフラのアウトソーシング、テレワーク推進、海外進出企業の事業継続など、お客さまニーズの高い分野に対し、国内外シームレスなオペレーションサービスやセキュアで高品質なクラウドサービスである「BizCITY」など、業種・業態にマッチした付加価値の高いソリューションをワンストップで提供しました。

グローバル事業については、多国籍企業のお客さまニーズに応え、ネットワークインテグレーションに「データセンター」「セキュリティ」「サーバ・マネジメント」などを組み合わせた、付加価値の高いトータルなICTサービスの充実に努めました。アジア地域をつなぐ大容量光海底ケーブル「Asia Submarine-cable Express」やシンガポールと香港で新たなプレミアムデータセンターの建設を開始するとともに、アジア拠点を中心にITアウトソーシングサービスをグローバルに提供するEmerio Globe Soft Pte.Ltd.を買収するなど、サービス提供能力の強化を図りました。

ネットビジネス事業については、光サービスを中心とした販売の推進や多様なサービス提供により、インターネット接続サービスがOCN・ぷらら合計で1,134万契約となりました。また、「OCNプレミアムサポート」や「NTT IDログインサービス」など新たな付加価値サービスの展開を進めたほか、NTTレゾナントでは、NTTドコモと連携しケータイ検索機能の高度化を進めました。さらに、NTTぷららの「ひかり TV」においては、BSデジタル放送のIP再送信サービスの提供やハイビジョンコンテンツの拡充などを進め、当初目標の140万契約を達成しました。

以上の取り組みにより、多様化・高度化するお客さまニーズにお応えするとともに、お客さまとの接点を担う「現場力」「人間力」そして活力ある「企業力」を重視した、地に足を着けた収益基盤作りを行いました。

(3)経営成績

営業収益については、減少傾向が続いており、音声伝送収入は対前年比▲256億円減(▲6.8%)の3,533億円、データ通信収入は対前年比▲87億円減(▲7.3%)の1,113億円、ソリューション収入は対前年比▲50億円減(▲2.7%)の1,814億円となりました。一方、前期まで増収の続いていたIP系収入が、当期は対前年比▲37億円減(▲1.0%)の3,611億円となりました。

以上の結果、営業収益全体としては、対前年比▲458億円減(▲4.2%)の1兆334億円となりました。

次に、営業費用については、コストコントロールの徹底等により、経費が対前年比▲251億円減(▲5.2%)の4,547億円となりました。また、携帯電話接続料の減等の影響により通信設備使用料が対前年比▲49億円減(▲1.8%)の2,639億円となりました。

以上の結果、営業費用全体としては、対前年比▲416億円減(▲4.2%)の9,401億円となりました。

これにより、営業利益については、対前年比▲42億円減(▲4.4%)の932億円となりました。当期純利益については、関係会社株式評価及び東日本大震災による特別損失を計上した一方、法人税等の減により+82億円増(+13.6%)の689億円となりました。