海外におけるBaaSの動向
BaaSは、免許を持つ銀行によって提供されるが、その定義通り単体でサービスは成り立たず、外部で顧客基盤を有するサービスとの協業や組み合わせにより、初めて意味が生まれる。その接続については、従来は専用のネットワークを介した接続や、金融機関ごとに専用の開発が必要とされ、ハードルが高かった。銀行システムは元来、外部のシステムの接続リスクを取ることが難しい存在である。特にインターネットのような開放されたネットワーク上のサービスが対象となることは、想定外の状況であった。だが、いまや便利なサービスは、インターネット上のプラットフォームとして生まれるのが当たり前の世の中になった。そのため、例えばECサイトでの支払いにおいて、わざわざユーザーが銀行のサイトやATMを利用して支払い指示をしたくないように、振込はECサイトの中で直接行えるようにしたい、というニーズが高まっている。
そこで状況を変えつつあるのが、本人を認証するための技術の進展と、銀行APIの登場である。前者については、OAuthに代表されるような、インターネット上で認証や認可を行う技術の標準が普及したため、銀行のシステムとインターネット上のサービスを連携することも、独自の組み込み開発ではなくとも、安全に行えるようになってきた。後者の銀行APIについては、2015年あたりを境にして、日本を含む世界中で、オープンバンキングと呼ばれる潮流の拡大が注目される。オープンバンキングでは、銀行顧客の利便性のために、銀行サービスは銀行以外のチャネルでも利用可能にしていこう、とする流れであり、そのためにはAPI(Application Programming Interface、コンピューター間での情報処理の窓口を意味する)が銀行においても整備されつつある土壌がある。認証技術と銀行APIがともに進展することで、従来であればインターネットバンキングかATMでしか可能でなかった取引を、外部のサービスからでも行うことが現実的となってきた。そしてその機能を活かして、積極的に協業を見込む形がBaaSであるといえる。