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物流プラットフォーム「ハコベル」が挑む物流DX #2

  • 齋藤 祐介氏ラクスル株式会社
    ハコベル事業本部
    ソリューション事業部 パートナー

物流業界は変革の過渡期を迎えている。ドライバー不足による物流危機が叫ばれるなか、生産性改善のため業界全体のDXが期待されている。その一方で、まず現状のアナログ業務をデジタル化する時点での課題も多い。

物流プラットフォーム「ハコベル」は全国の運送会社をネットワーキングし、ラストワンマイルから幹線輸送まで幅広いニーズに合わせたマッチングサービスを提供。自社内の配車センターのデジタル化の事例をもとに、お客様にもシステムやノウハウの提供を行い業界全体の課題解決を目指し物流DXを推進している。

本記事では、ハコベルによるDX事例(株式会社NTTロジスコ、ネスレ日本株式会社)をもとに、物流DXの要諦について考察する。

  1. 01アナログな物流の現状
  2. 02株式会社NTTロジスコ:配車計画DXにより配送コスト25%減・業務時間75%
  3. 03ネスレ日本株式会社:配送依頼のDXによる繁忙対応。業務時間80%減、配送ミス0へ
  4. 04物流DX

アナログな物流の現状

前回の記事でもお伝えしたが、物流業界では電話・FAXを中心としたアナログな伝達手段による情報連携が未だに残っている。もちろん、IT・IoT・ロボット等の技術発展によって、最先端の物流業務を行う企業もあるが、特に輸配送業務に関しては、ほとんどの企業はまだ共通システムを使った情報連携すらできていない状況だ。

輸配送のデジタル化を特別難しくしている要因は、複数企業間の連携と、標準化の必要性だ。弊社が実施したアンケートでもDXの課題として、アナログな業務(33%)にならんで、作業の標準化の難しさ(23%)、企業間連携の難しさ(12%)が挙がっている。

大抵の場合、自社車両で配送するということはなく、基本的には荷主・元請企業(倉庫)・運送会社が連携して配送を行い、それぞれの企業が入り組みあって情報連携をしている。限られた範囲の情報連携であれば、グループ内の企業にすべてEDI(Electronic Data Interchange、商取引などのビジネス文書を専用回線やインターネットを用いて電子交換する仕組みを意味する)の導入が可能そうだが、現実的には、荷主は複数の運送会社と、運送会社も複数の荷主と付き合っているため、1つの統一されたシステムを全員が導入するのが困難だ。

また、配送業務や必要な情報項目は、荷主の業態、商材、積み下ろしの倉庫の状況によって大きく異なり、標準化されていない。そのため、すべての配送案件に必要な情報項目をもったシステムを作るのは容易ではない。

この企業間連携と標準化のため、今まで多くの企業がシステムを導入に挑戦してきて、現場での運用が回らず諦めてきたという歴史がある。結果として、生産性の低いアナログな配車業務が残り、属人的にできる範囲の部分最適しか行われないのが現状となっている。

ただ、状況は変わってきた。技術的にはオンプレではなくクラウド型のシステムが普及することによって、複数の企業間で同じシステムを導入する事が容易になった。さらにAIの発展により、データを蓄積すれば、人間ではできなかった最適な配車計画を立てることが可能だとわかってきた。

また、各企業も物流コストが上昇し、担当者が高齢化するなか、現状の配車業務を続けるわけにはいかないという危機意識が強まり、新型コロナウイルス感染拡大の影響も受け急速に物流業界のデジタル化を推進する必要性が高まっている。

本記事では、我々ハコベルが支援するDX案件で、根本的な配送業務見直しを行うことで、大幅な業務改善・コスト削減をおこなった事例を2件ご紹介したい。

株式会社NTTロジスコ:配車計画DXにより配送コスト25%減・業務時間75%

株式会社NTTロジスコはNTTグループ唯一の3PL(Third Party Logistics、 第三者が荷主企業の物流全体を包括的に請け負う業務形態を指す)企業で、NTTグループを始めとし、「IT機器」「医療機器」「エンターテインメント」業界等の物流業務を支援している企業だ。

ハコベルとNTTロジスコは2020年より「輸配送計画自動化システム」を共同開発。NTTロジスコでの実証実験では、輸配送計画業務を自動化し、輸配送計画に関わる事務作業の所要時間を75%削減、車両削減および輸送方法見直しによる輸配送コストを25%削減した。

当プロジェクトでは、専門性が高く、従来は経験のある配車担当者が属人的に行ってきた輸配送計画業務を自動化できるシステムの開発をした。具体的には、荷物の出荷データを元に、そのサイズや運賃、積み降ろしの条件から、チャーター、宅配、路線等のあらゆる輸配送手段に振り分けていくという業務だ。配送に関わる様々な制約条件を踏まえた複雑な作業になるため、今までデジタル化が難しかった。

「輸配送計画自動化システム」では、荷物特性による制約条件や運送会社との契約条件などをマスタに設定可能にすることで、様々な案件に柔軟に対応。さらにその後の、運送会社への依頼といった輸配送業務も配車管理システム「ハコベルコネクト」にてワンストップで行うことで、自動的な車両手配が可能になっている。

ネスレ日本株式会社:配送依頼のDXによる繁忙対応。業務時間80%減、配送ミス0へ

もう1つの事例は食品メーカーであるネスレ日本株式会社だ。ペットボトルコーヒーでシェアNo.1であり、毎年2ケタ成長を達成する当社は、夏場に急増する出荷に関わる配送業務負荷の増大や、それに紐づく配送ミスに頭を悩ませていた。

業務負荷の大きな要因は、自社から20社ほどの運送会社へのアナログな情報連携だ。配車依頼を行う際、常時電話とメールで受発注を行い、エクセルシートで管理するというアナログな状態であったため、工場、物流、営業それぞれの部署間のやりとりが一元化されず、配送手配の不備が発生していた。不備に関してもデータが蓄積されていない状況であったため、原因を調べるのに時間がかかっていた。

そこで「ハコベルコネクト」を活用し、対象範囲のすべての運送会社との情報連携を、電話やメールからすべてシステムに一元化した。一元化することにより、どの製品が、いつ出荷され、どの運送会社が、どこに向かっているのかといった情報、全ての配送ステイタスをタイムリーに把握できるようになった。さらに、繁忙期に工場、物流、営業、運送会社がそれぞれ配送情報を修正した場合も、すぐにその更新が全員に伝えられるようになった。

結果として、業務負荷・物流コストが大幅に下がっている。繁忙期における配達ミスによる再配達のコストが数百万円単位でかかっていたコストがゼロに。そして、運送会社への一箇所への連絡に80分かかっていたのが15分と80%の業務削減を実現している。

物流DX

今回は2つの事例を説明させていただいた。生産性改善率・コスト削減率はそれぞれ大きいがDXとして行っていることはシンプルだ。業務から電話・紙・メールをなくしシステムに一元化、蓄積されるデータをもとに最適化することで、生産性改善とコスト削減双方を同時に実現させるという形だ。

他にも多くプロジェクトを行ってきたが、DXの要諦は、現場と連携しながら、標準化と臨機応変のバランスが取れた運用ルールとシステムを設計し、それを毎日の運用に乗せることにあると考える。

上記2つのプロジェクトでは、プロジェクト推進の方々がリーダーとなり、全国各地の現場担当者(多くの企業の場合、物流部門だけではなく生産・営業・IT・経理またがって)とコミュニケーションを取りながら、新たな運用の作り、合意を取り、そして実際に運用に乗せるという事を実施してきている。現場の方々も日々の忙しい業務の中、時間を割いて現状業務を我々プロジェクトメンバーに共有し、そして、新しい運用やシステムを根気よく理解して、取り組んでくださった。まさに、チーム一丸、ちゃんとデジタルへトランスフォームするまでやった結果である。

様々な領域でDXの議論がされる今日だが、物流領域のDXはその中でも業務関連部門・企業が多く、複雑であると思う。ただ、もともとのアナログさゆえに、それをやりきった際には、確かな生産性改善とコスト削減が実現できる。今後もハコベルは、業界全体の物流DXを加速し、より価値のある物流を作り出すことに貢献していきたい。

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