DXとの関係や企業の対応を解説
気候変動対策やサステナビリティへの取り組みが重視される昨今、「GX」の号令がかかっている企業も多いことでしょう。とはいえ、GXといっても何が必要なのか、どうやって進めればよいのかわからず、課題を抱えたままではありませんか?このコラムでは、GXの概要や政府の取り組み、企業がGXに取り組むべき理由など、GXに関する基本情報をわかりやすく解説します。
GXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation ※英語圏では慣習的にTransをXと省略する)の略称です。カーボン(主にCO2)をはじめとする温室効果ガス(GHG)の排出抑制を目的とし、従来の化石燃料を用いた火力発電から太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー中心の産業構造へと転換する取り組みを指します。
現在、世界各国で気候変動への対策が進められており、日本では経済産業省主導のもと、関連する施策を一括してGXと呼んでいます。社会経済システム全体の変革をポジティブに捉え、カーボンニュートラル(=温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)と経済成長の両立を目指す点に特徴があります。
日本政府は、GXを通じて次の3点の実現を目指しています。
日本の産業構造は製造業が多く、工場などは20〜30年の減価償却を必要とするため、脱炭素化への移行には長い時間を要します。いわゆる「炭素税」に代表されるカーボン排出量の規制を厳しく設定すると、経済成長を阻害してしまう可能性があるのです。
そのため、政府は省エネ法の改正やGX推進法を通じて、化石燃料を用いた火力発電の合理化(省エネ)を企業に課し、段階的な再生可能エネルギーへの移行を促しています。また、企業などのカーボン排出に金銭的負担を求める「カーボンプライシング」についても、最初は小さい負担で導入し、徐々に引き上げする方針をあらかじめ示すことで、早期のGX投資に対するインセンティブを確保。この「成長志向型カーボンプライシング構想」を実行することで、カーボンニュートラルと経済成長を両立しようとしています。
GXが大きく動き出した契機として、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された、パリ協定が挙げられます。これは産業革命以来、進行し続けている地球温暖化を世界共通の脅威と見なし、加盟国196カ国が温室効果ガスの削減について合意を得たものです。
パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」という長期目標が掲げられています。この「1.5度目標」を達成するために、脱炭素に向けた国際的なルール作りや機運の醸成が一気に進展することになりました。GXが注目されるようになった背景には、次のような事象が挙げられます。
世界の平均気温は現在も上昇を続けており、2023年7月には観測史上最高となる17度を記録。これに先駆けて、国連のグテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、“地球沸騰”の時代が到来した」と危機感を表明しました。
このまま気温上昇が進行すれば、海面推移の上昇による沿岸域の消失や熱波・豪雨などの異常気象、生態系の崩壊といった世界規模のリスクが懸念されます。また、温暖化による災害や環境資源の損失は、とりわけ途上国に強いる負担が大きく、国際社会の分断を招く危険もはらんでいます。
2021年のCOP26終了時点で、世界の154カ国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明し、国際社会は脱炭素化に向けた積極的な姿勢を見せています。
先進的な取り組みとして、イギリスでは1,300社を超える一定規模以上の企業に対し、2022年4月から気候関連の非財務情報開示を義務付ける法改正が行われました。
また、ドイツは2030年までに総電力消費の65%を自然エネルギー発電でまかなうことを法制化。世界最大の温室効果ガス排出国である中国と第2位のアメリカの間では、削減のための協議が継続的に実施されるなど、経済大国を中心とした脱炭素の取り組みが世界的に加速度を増しています。
世界的な潮流を受け、日本においても、岸田内閣が掲げる“新しい資本主義”に向けた5つの「重点投資分野」にGXへの投資が位置付けられています。国際公約達成と産業競争力強化(=経済成長)の同時実現に向けて、150兆円規模からなる官民協調のGX投資を表明。省エネ法の改正や成長志向型カーボンプライシング構想など、規制・支援一体型の投資促進策が計画・実行されています。
配慮気候変動対策に向けられるステークホルダーの関心はますます高まっており、世界的にESG投資市場の拡大が続いています。2015年末で約650億ドルだった投資額は、2021年末には約9,200億ドルにまで増大。2022年は急拡大の弊害としてうわべだけの環境訴求(グリーンウォッシュ)が横行していることを背景に、世界主要地域のファンド市場で規制強化の流れが見られました。
日本においても、新たな金融手法であるESG投資の活用はGX実現に向けた重要施策に挙げられています。国際的なESG資金を呼び込むために、企業の情報開示を充実化させるとともに、ESG評価機関の信頼性向上やデータ流通のための基盤整備を行う見通しです。
政府は、有識者と協議を行う「GX実行会議」を2022年から継続的に開催。具体的な施策の検討を行っています。また、経済産業省はGXに取り組む企業群が官・学・金と協働するための実践的な場として「GXリーグ」を2022年に発足させ、2023年4月から本格稼働を開始しました。
2022年7月から、GX実現に向けて必要な施策を検討するための「GX実行会議」を随時開催しています。実行会議ではこれまで、エネルギー安定供給の再構築、政策イニシアティブ(成長志向型カーボンプライシングなど)、今後10年を見据えたロードマップ、世界各国の投資支援の現状などについて協議。2023年8月に行われた第7回では、後述するGX経済移行債(トランジションボンド)やカーボンプライシングなどの具体化・実行案について協議が行われました。
GXリーグとは、GXに積極的に取り組む企業群(GX企業)が官・学・金と協働するための実践的な枠組みです。経済と環境および社会の好循環として、GX企業が排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長を実現できる社会の実現を目標に活動。市場ルール形成や自主的な排出量取引の合意形成を図ります。参画企業は2023年1月時点で769社に達し、それらの企業が排出するCO2は日本全体の4割以上を占めています。
環境省は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、地域脱炭素ロードマップおよび地球温暖化対策計画にもとづき、2025年度までの集中期間に政策を総動員し、「少なくとも100箇所の脱炭素先行地域を設定」「重点対策を全国津々浦々で実施」するとしています。
また、住宅の脱炭素化においては高性能な断熱窓への改修を推進するほか、建材一体型太陽光発電システムを開発し、新築/既存建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を拡大しています。
脱炭素社会への円滑な移行を推進するため、2023年2月10日にGXのための政策パッケージ「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。2023年5月12日にはGX推進法が成立。GX経済移行債の発行、成長志向型カーボンプライシングの導入、GX推進機構の設立など、2050年カーボンニュートラルに向けた具体的な施策が定められました。
政府は150兆円超のGX投資実現に向けた財源として、2023年度から10年間、GX経済移行債(脱炭素成長型経済構造移行債)を20兆円規模で発行する方針を表明しています。海外の国債で一般的な環境債(グリーンボンド)は集めた資金の使途を再生可能エネルギーへの投資に限定していますが、移行債(トランジションボンド)はカーボン排出量が多い企業が脱炭素を進めるための広範な投資に活用できます。
GX経済移行債による約20兆円規模の政府支援額は、化石燃料に代わる次世代エネルギーとして期待される水素・アンモニアの需要拡大支援や、製造業の産業構造改革、省エネ推進などに使用される方針です。
GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)は、民間企業のGX投資支援や化石燃料賦課金・特定事業者賦課金の徴収、排出量取引制度の運営などを担う専門組織です。GX技術の社会実装段階におけるリスク補完策(債務保証等)も含め、成長志向型カーボンプライシングの施策を一元的に執行。政府は2026年度に予定している排出量取引制度の本格稼働を見据え、2024年度に設立する見通しを示しています。
カーボンプライシングとは、企業などの排出するカーボンに、課税や売買取引を通じて価格を設定する取り組みのこと。世界ではEU加盟国の排出量取引制度(EU-ETS)や、イギリスなどの炭素税といった施策で知られています。
日本では、経済成長との両立を重視した成長志向型カーボンプライシング構想が検討されています。GX経済移行債を活用した先行投資支援に加え、GXリーグにおける排出量取引制度の実施を通じて、投資に対するインセンティブを向上させ、市場全体の活性化を促すことが期待されています。
GX推進法の成立を契機に、日本におけるGX投資の動きは加速しています。カーボン排出量に応じてコストが発生する排出量取引制度や炭素に対する賦課金制度は、徐々に引き上げする方針が明示されており、早期のコミットメントが重要となるでしょう。
2015年のパリ協定をきっかけとして、世界市場で気候変動対策の開示義務化の動きが広がっています。各国政府や投資家、消費者といったステークホルダーの関心も年々高まっており、もはや「脱炭素に消極的である」ことは経営上のリスクになりえます。
一方で、グローバルな脱炭素の潮流に上手く適合し、GX分野のイニシアティブを握ることは、自社の競争力を高めることにもつながるでしょう。政府による先行投資の促進も早期の移行を後押ししています。以下に挙げるような点からも、企業にとってGXは“取り組んだ方が良いこと”から“取り組まなければならないこと”に変わりつつあるといえます。
国際的な動きとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に提出したTCFD提言が挙げられます。気候変動がもたらす「リスク」および「機会」の財務的影響を把握し、内部監査等の対象とすることを狙いとして、各国の企業に経営の持続可能性を高めることを推奨しています。2023年6月時点で1,300以上の日本企業・機関が賛同の意を示しており、統合報告書や財務諸表を通じた非財務情報の開示を進めています。
日本国内では、エネルギー使用の合理化等に関する法律(省エネ法)が2023年4月に改正され、新たに非化石エネルギー関連の内容が盛り込まれました。工場・事業場や運輸分野における一定規模以上の事業者(エネルギー使用量1500kℓ/年以上、保有車両トラック200台以上等)は、エネルギーの使用状況等を定期的に報告するとともに、非化石エネルギー転換の目標に関する中長期計画の提出が求められます。また、電力需給のひっ迫を見越して、需給状況に応じた「上げDR(再エネ余剰時等に電力需要を増加させる)」「下げDR(電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる)」の実績報告も義務化されています。
脱炭素へのコミットメントは、事業の資金調達においても重要度を増しています。日経ESGによる「ESGブランド調査2022」では、機関投資家や個人投資家の半数以上が再生可能エネルギーの動向に注目しており、東証プライム上場企業による脱炭素の移行債も急増しています。実際にESG債を発行したことがある企業へのアンケートでは、自社の取り組みの認知度向上や新たな投資家の開拓につながったとのメリットが挙げられています。
また、経済産業省と東京証券取引所は共同で、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)銘柄を創設。持続的な企業価値向上を実現する上場企業を選定し、投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することで、GX投資へのインセンティブを高めています。
環境省はGXの実現において、商品やエネルギーの需要側に対しても広く働きかけています。国民・消費者の行動変容、ライフスタイル変革を後押しするための国民運動「デコ活」を主導し、新しい暮らしの在り方を提案しています。
今後、脱炭素の取り組みが消費者に浸透していく中で、環境負荷の少ない商品やサービスの需要は増大していくと予想されます。消費者に選ばれる企業であるためにも、気候変動対策はコストではなく、ビジネスチャンスとしてとらえることが重要です。
GXを推進する上で、DX(デジタルトランスフォーメーション)は急務の課題といえます。GX実現には、デジタル化によるペーパーレス化に加え、サプライチェーン全体のカーボン排出量をコントロールするための、リアルタイムかつ正確な情報の収集と“見える化”が重要です。デジタル技術を用いた情報の管理がGXの根幹を支えると言っても過言ではありません。
たとえば、デジタル技術の活用可能性として、IoT(モノのインターネット)が挙げられます。機械、自動車、建物などをインターネットに接続することで、稼働状況と時間ごとのカーボン排出量をモニタリング。そのデータをもとに自社のマテリアリティ(重要課題)を策定すれば、効果的な取り組みと情報発信が可能になるでしょう。
日本の社会経済システム全体を変革するには、製造業や運輸・物流の果たす役割は大きいとされています。また、地方の人口減少による担い手不足を課題として抱え、気候変動が生産量と直接に関係する一次産業は、DXとGXの推進が事態を打破する手立てになりえます。
その手段として、IoTの活用が期待されています。
では、ドコモビジネスのGreen IoTソリューションの導入によって、各産業のビジネスモデルにどのような変革が生まれるでしょうか。情報の見える化、ムダの削減という2つの視点から考えてみましょう。
複数の工場を有する製造業では、遠隔監視・制御システムの導入によって施設内電力使用量を分電盤単位で可視化できるでしょう。工場ごとの電力使用状況を詳細に把握することができれば、改善点の洗い出しが容易になります。
また、AI運転支援や遠隔作業支援によって設備の稼働効率を高め、エネルギー使用量が削減できると考えられます。熟練者が現場の作業員を遠隔から監督することで、人・モノの移動にかかるカーボン排出を抑制できるだけでなく、従業員の負担軽減にもつながります。
物流業界は働き方改革関連法の施行により、ドライバーの長時間労働が大幅に是正される変革期を迎えています。収益の減少や物流の担い手不足といった「2024年問題」への対策が企業には求められます。
そこで、物流倉庫やトラックにIoTソリューションを導入し、空調の稼働確認やドライバーの健康管理システムを搭載すれば、荷物の品質や現場作業員の状態を必要に応じて自動でアラートすることが可能に。負担軽減によるコスト抑制とリスク回避が見込めます。
また、ドローンを用いた人・車・モノの移動削減や、倉庫と輸送トラックのクラウド連携による輸配送の効率化も、人件費や荷待ち時間の削減に大きく貢献するでしょう。
農業におけるIoTソリューションとしては、農機の自動操舵やドローンによる除草剤散布などを用いた人手不足の是正が効果的になりそうです。
現状では従事者の経験によるところの大きい田畑や家畜の管理も、クラウドシステムでデータを収集し、過去の気温や湿度と照らし合わせて分析すれば、効率化できるでしょう。また、農作物の病害や家畜の伝染病といったリスク要因についても、早期の発見・対処が期待されます。
NTTコミュニケーションズでは、法人向けブランド「ドコモビジネス」を展開しており、社会・お客さまのグリーン化を目指した「Green by ICT」と自社のグリーン化を目指した「Green of ICT」の2つの領域でGXに取り組んでいます。
ドコモビジネスは、IoTを活用してGXを推進するGreen IoTソリューションも展開しています。店舗や工場単位でのエネルギー使用量/GHG排出量の把握をはじめ、ヒトやモノの移動の削減など、ESGへの貢献や現場の業務効率化にも寄与します。
気候変動への対策や電力料金の高騰の中、SDGsやカーボンニュートラルへの関心や認知度が高まり、それらの取組みを積極的に進める企業が増えてきました。しかし、電力使用量の削減はやみくもに進めてもうまくはいきません。まずは、どこでどのくらいの電力が使われているのかを把握することが重要です。
その上で電力使用量を削減できそうな部分や課題を特定し、節電意識を高め効率的に省エネを実践できるソリューションを活用することで電力使用量の削減につなげていくことが大切だと考えます。
世界規模で展開しているアパレルブランドさまには、SDGsを推進する上で、その導入効果を測定するためにも、まずは現在の電力使用量の把握から始めたいというニーズに対し、「電力使用量可視化ソリューション」を提供しています。
これは、分電盤などに電流センサーを設置し、IoTプラットフォームを活用してリアルタイムな電力使用状況を把握することができるソリューションです。また、月・年単位などでも電力使用量を見える化することが可能です。店舗単位といった可視化も可能で、省エネに向けた課題を明確化、定量化できるソリューションとして期待が高まっています。
たとえば、全国チェーン店舗ごとの電力使用量を可視化することで、店舗面積単位で優先的に対策が必要な店舗の洗い出しが行いやすくなったり、分電盤毎に電力使用量を可視化するため、照明・空調など何に一番電力を使用しているのかが明確になることで打ち手が取りやすくなります。
(取得できる電力使用量情報の粒度は分電盤の分岐等によって異なります。)
本ソリューションの最大の特長は、後付け可能な電流センサーを利用することから、既存の電源設備への工事が不要であることであることです(※)。分電盤単位で、電力使用量の内訳が分かりやすいグラフや表形式で可視化されます。
※電流センサを挟む隙間が無い場合、電線のほぐし等の作業を実施頂く必要があります。
もう一つの特長は、電流センサーの調達~設置工事~IoTプラットフォームの設定まで含めてトータルで提供していることです。要件をしっかりとヒアリングし、月・年単位、店舗単位、レポート出力形式などお客さまのご要望に合わせてサポートします。また、電力使用量を測るだけでなく、温湿度センサー、CO2センサーなど他の環境測定センサーも活用して工場内や店舗全体の環境データの可視化の提案も可能です。
一般的なオフィスビルでは、エネルギー消費の約5割を空調が占めます。NTTグループが掲げる2040年のカーボンニュートラルを実現するため、従来の設備更改や運用見直しによる改善だけでなく、AIを用いた空調制御が注目されています。
NTTアーバンソリューションズ株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社NTTファシリティーズの3社は、ビル内の空調を最適制御するためのシステム開発に着手し、NTT都市開発株式会社が開発を進めている次世代型先進オフィスビル「アーバンネット名古屋ネクスタビル」における実証実験を2022年より開始しました。単なる省エネでなく、快適であること、生産性向上、満足度向上にも資する仕組みの実現をめざしています。
省エネと快適性の両立を実現するために、NTTグループの持つ人流予測・環境再現・最適制御算出の技術を組み合わせ、データ収集・人流などを考慮した室温変化の予測・人々の快適性を推測し、時々刻々と変化する状況に応じた最適な空調制御「シナリオ算出」、シナリオにもとづいた「自動制御・監視」を実現しています。
本実証実験ではアーバンネット名古屋ネクスタビルの共用部空調を対象に制御を行い、快適性を担保しつつエネルギー消費の3割以上を削減した実績があります。
SDGsや働き改革としても取り上げられているように、昨今では労働者の身体的健康の維持が仕事へのモチベーション向上のためにも重要であると言えます。会議室の予約変更や利用状態の確認をIoTにより自動化することで、手間のかかる調整業務を省力化し、生産性の向上や利便性の向上に貢献できるAkidoko®ソリューションも展開しています。現在、NTTコミュニケーションズ本社ビルの会議室やカフェテリアやお客さま拠点にも導入しています。
NTTコミュニケーションズ本社ビルでは、120個の人感センサーを設置し、IoTプラットフォーム上にデータを蓄積し、人のプレゼンスがリアルタイムで分かるようにしています。
これにより、空予約となっていた会議室を解放し、本当に必要な方が利用できるようになります。また、カフェテリア/フリースペースにも人感センサーを設置することで、飲食やワークスペースとして活用する際に、わざわざ現地に足を運ばなくても混雑状況をWeb 上で確認できるようになりました。
また、TIoT®ソリューションでは、オフィストイレの混雑把握が可能です。本社ビルの6階~34階のトイレに370個程度マグネットセンサーを取り付け、Web上で各階のトイレの混雑状況を可視化し、「待ちストレス」の解消を実現しました。清掃業者にもデータを共有することで、清掃頻度の見直しにも役立てていただいています。
ご紹介した事例にはいずれもEnOcean規格のセンサーを採用しています。
EnOceanとは、EnOcean社が提供する、環境発電技術と超低電力無線通信技術を組み合わせたバッテリーレスソリューションのことです。NTTコミュニケーションズは、ハーベスティング無線技術(太陽光や照明光、機械の発する振動などのエネルギーを採取し、電力を得る技術)の国際標準化を促進し、製品間でのインターオペラビリティー確保を主目的とするEnOcean Allianceに参画しています。
この技術を用いたIoTセンサーは、電池・配線・メンテナンスが不要であることが特長で、既存の設備にも簡単に設置できることから、近年IoT分野で注目が高まっています。ドコモビジネスは、ネットワーク・クラウド・アプリケーションサービスに加え、EnOcean規格のIoTセンサーも積極的に取り組むことで、環境も配慮したGreen IoTソリューションを推進しています。
NTTコミュニケーションズでは、法人向けブランド「ドコモビジネス」を展開しています。GXの取り組みとして、GHGや電力削減にむけた最適化ソリューションやサーキュラーエコノミー(循環型経済システム)といった、社会・お客さまのグリーン化を目指した「Green by ICT」と、リモートワークの推進・オフィスの省エネ・脱炭素化といった自社のグリーン化を目指した「Green of ICT」の2つの領域でGXに取り組んでいます。
NTTコミュニケーションズは、「環境目標2030」のもと、2030年度カーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)を目指して、脱炭素の取り組みを進めています。先進技術を活用した省電力化・高効率化をいっそう推進するとともに、GXプラットフォームやソリューション・サービスの提供を通じて、社会全体のGXに貢献していきます。
データセンターでは、建物の構造の工夫や冷媒自然循環方式の採用などで断熱性を高め、CO2排出量を削減。きめ細かな空調管理の工夫や、機器冷却環境の高性能化など、ソフト・ハード両面から省エネソリューションを推進しています。こうした取り組みにより、世界標準のグリーン環境性能を備える「LEED」の認証取得を行っています。
自社内においては、職場環境と業務効率を勘案した空調、人感センサーや輝度調整による照明の最適化など、通年で節電対策を実施。環境負荷データをフロア単位で集計・可視化し、各部署で節電を推進しています。また、プライベートクラウドによる社内ICTインフラに社内システム群を移行・統合し、サーバー数を合理化することで、使用電力を削減しています。
GXとは、経済産業省が主導するグリーントランスフォーメーションの略称。日本の気候変動対策を一括した呼称であり、脱炭素への移行と経済成長の同時実現を目標に掲げています。
世界の平均気温は継続的に上昇しており、このままでは沿岸域の消失、熱波や豪雨の頻発といった環境変動による深刻な経済的・文化的リスクが懸念されます。脱炭素社会への移行は世界共通の課題であるとして、各国が積極的な対策に取り組んでいます。
日本でも、GXは新しい資本主義の重点投資分野に位置付けられています。成長志向型カーボンプライシングの導入やGXリーグの発足を軸に、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しています。
世界的な脱炭素の潮流が広がる中で、企業には非財務情報の開示や中・長期改善計画の提出が求められます。また、ステークホルダーの関心も高まっており、資金調達の面でもGXへのコミットメントは無視できない要素になっています。
GX実現に向けて、ペーパーレスやデータの“見える化”を可能にするDX推進は急務の課題。なかでも、機械や建物をインターネットに接続するIoTは、日本のGX推進の要である製造業、物流などの産業構造を効率化させる可能性があります。
NTTコミュニケーションズは、今後も長年養ってきた通信事業のノウハウを活かし、自社におけるグリーン化「Green of ICT」と社会・お客さまのグリーン化「Green by ICT」の双方の取り組みを通じて社会全体のGX実現に貢献します。