AI空調制御クラウド

「省エネ」と「快適性」の両立へ

NTTコミュニケーションズは、「快適性」を保ちながら
最大限の「省エネルギー」となる空調制御を実現します。
建物の空調関連コストを削減により企業やビルの価値を向上させ、
脱炭素社会の実現を目指します。

サービス概要

課題・背景

建物において空調関連のエネルギーは全体の40~50%を占めていると言われています。そのため、空調関連のエネルギーを削減することが、省エネルギー効果の最大化に通じます。

サービスコンセプト

通常、トレードオフの関係にある空調の「省エネ」と「快適性」を両立させ、不快にならない範囲での最大限の省エネルギー化を目指します。

省エネの実現
人や外部環境の予測技術に基づき無駄を最小限にとどめ、空調の消費エネルギーを30%程度削減
快適性の向上
建物の人流情報を活用し「快適性指標」を用いて滞在者が暖かい・寒いと感じる度合いを定量化し不快者がほぼゼロとなる環境を提供

特徴

  • ① 快適性と省エネを高い水準で両立
    AIの深層強化学習を活用し、快適性と省エネを定量的な指標を用いて高い水準で実現します。
  • ② 導入の容易性
    既設センサーや監視カメラ画像を活用することによりAI学習に必要な温湿度や人流などのインプットデータを収集することが可能です。そのため初期費用、構築期間を抑え、スムーズな導入が可能です。
  • ③ ビル収益の向上
    AIによる全自動制御により、ビル運用工数を増やさずに、エネルギー料金の削減が可能です。

差別化ポイント

温湿度や人流などのデータから人の感じる快適性を予測し、快適性を保ちつつ消費エネルギーを最小化する空調制御シナリオを算出します

省エネの実現

  • ① 深層強化学習
    消費エネルギー量に影響する室内温湿度・外気温・空調制御ログを考慮した空調制御シナリオを深層強化学習で算出
  • ② フィードフォワード制御
    環境変化を事前に予測し、空調制御を先回りして実施
  • ③ 学習データの拡張
    空調制御ログを拡張し学習することによりメリハリのあるダイナミックな空調制御を実現

快適性の向上

  • ① 快適性指数PMV値*の活用
    快適性指数PMV値に基づき、PMV値が±0.5(不快者率:10%以下)に収まる環境を実現しつつ省エネを実現
  • ② 運動量や着衣データの活用
    PMV値の算出に必要な運動量・着衣のデータも学習データとしてインプットすることにより精度の高いPMV値を予測・再現することが可能
  • * PMV値とは
    Predicted Mean Vote(予想平均温冷感申告)の略称で、人間の感覚量から物理的考察について温熱快適性を示したもの。快適性方程式に環境側の要素「気温」「湿度」「風量」「放射熱」と人体側の要素「運動量」「着衣量」を代入することにより算出。値が高ければ高いほど暑く感じ、低ければ低いほど寒く感じる。
PMVの7段階評価尺度
3 Hot 暑い
2 Worm 暖かい
1 Slightly warm やや暖かい
0 Neutral 中立
-1 Slightly cool やや涼しい
-2 Cool 涼しい
-3 Cold 寒い

構成

各種センサーから収集したデータ、人流などを考慮して室温変化および快適性を推測し、省エネと快適性を考慮した最適な空調制御シナリオを算出。そして、シナリオにもとづく自動制御指示を行います。

導入メリット

運用作業の省力化・サービスレベルの向上

人による空調制御は勘や経験、暑い・寒いといった個々人の主観に頼ることになるため、省エネ・快適性という観点で定量的な効果を得ることが難しいことがあります。
AI空調制御クラウドで空調制御を自動化することで、消費エネルギー量のみならず運用コストも削減が可能。快適性についても客観的な指標を用いるため、ビル利用者にとってより快適な環境が提供可能となりサービスレベルも向上します。

収益・企業価値の向上

建物運用のエネルギーコストの削減が直接的に収益を生み出すだけでなく、省エネへの寄与で脱炭素経営に貢献することにより、施設・企業の価値を向上させます。

導入要件

対象空調機器

AI空調制御クラウドは中央熱源方式*(セントラル方式)の空調に対応しています。

  • * 中央熱源方式
    熱源機器と空気調和機を組み合わせて建築物全体で集中管理している空調で、大規模施設に多く導入されている。

運用

AI空調制御クラウドは、普段過度に快適性より省エネを優先させる運用をしている空調には、省エネという観点で導入に適しません。

適している運用

  • 施設側で空調制御を集中管理し快適な空調環境を提供している運用

適さない運用

  • 空調エリアごとに施設利用者が空調機器の設定変更できる運用
  • 過度に省エネを優先させて快適性を損なうような運用
    例:頻繁に人為的に空調のON/OFFを繰り返す運用

施設(エリア)

適している施設

  • 施設側で空調制御を集中管理している商業施設・オフィスビル

適さない施設

  • 空調環境の悪い工場
    例:スポットクーラーを利用するなど設備の空調と併用しているエリア。空調エリアに設備空調の制御に影響を与える熱源があるエリア
  • 広大な倉庫
    例:空調を最大限稼働させても空調の効きが悪く快適性を得ることができないエリア

よくある質問

導入する建物・設備に関する質問

省エネ効果に関する質問

費用に関する質問

導入事例

NTTアーバンソリューションズ株式会社

オフィスビルにおける快適さと省エネを両立する空調サービスの提供

(オフィスビルに快適な空調環境を提供しつつ空調エネルギー使用量の30%を削減することに成功)


【オフィスビル向け快適さと省エネを両立する空調の提案】

 NTTコミュニケーションズでは2030年度までにデータセンターとネットワークに関わる設備のカーボンニュートラルの実現を目指しています。
 具体的な取り組みとしては、「Green of」、「Green by」の2つの視点で取り組んでいて「Green of」はNTT コミュニケーションズグループが自ら利用するものをグリーン化すること、「Green by」はお客様に提供するソリューションやサービス、その過程で排出されるCO2を減らすことを目指しております。
 「Green by」には「エネルギー最適化」のサービスとして空調の「快適性」と「エネルギー使用量の削減」を提供する「AI空調制御クラウド」があり価値を提供できる有望な提案先としてNTTアーバンソリューションズグループを選定しました。
 NTTアーバンソリューションズグループでは、各都市がめざす個性豊かで活力ある街づくりを支援しています。2022年東海地区に建設した次世代型先進オフィス「アーバンネット名古屋ネクスタビル」は、個人の目的や状況に合わせて働き方をより自由に選択するというニューノーマル時代のニーズを意識した最新のICTツールが導入されており、ビルで働く個人のパフォーマンスの最大化だけでなく、社会課題の解決やSDGsにも貢献することをコンセプトに掲げています。
 NTT コミュニケーションズは、この次世代型先進オフィスビルのコンセプト実現のため「AI空調制御クラウド」を提案しました。

【快適な空調環境提供の課題】

 NTTアーバンソリューションズグループでは次世代型オフィス「アーバンネット名古屋ネクスタビル」において、自由な働き方の支援や環境負荷の低減をコンセプトとして掲げています。NTTコミュニケーションズは、このコンセプト実現には、自由な働き方という観点ではコーワーキングスペースなどのオフィスエリア(専有部)以外での快適な空調環境の提供が必要であり、環境負荷の低減という観点では、ビルのエネルギー使用量の削減が求められると考えました。一般的にオフィスビルでは空調エネルギー使用量が全体の40~50%を占めており、一番多くのエネルギーを費やしています。空調エネルギー使用量を削減することが、省エネ効果を効率的に高めることになります。「快適な空調環境の提供」では空調エネルギー使用量の増加が見込まれ「省エネを意識した空調管理」では空調エネルギー使用量の削減が求められるという課題を同時に解決する必要があり、いかにしてこの相反する要件の許容レベルを見出し両立できる環境を作り出すことができるかが重要とNTTコミュニケーションズは考えていました。

【プロジェクトの詳細】

 「AI空調制御クラウド」プロジェクトは2022年度冬に実施し、アーバンネット名古屋ネクスタビルの共用部吹き抜けエリアを対象エリアとしました。
 「AI空調制御クラウド」は快適性の算出・評価に快適性指数「PMV」を活用しています。一般的なオフィスビルの空調では、空調機器の吹き出し口付近の温度を元に制御を実施していますが、本プロジェクトでは人体に近い位置の温湿度情報を用いた方がよりビル滞在者の快適性が向上すると判断し、人の高さに温湿度センサーを設置しました。
 一般的にPMV値が±0.5以内に収まっていれば不快者率が10%以下に収まりISOでもこの値を快適な環境の数値として推奨していますので、PMV値を±0.5以内に収めることを目標に制御することにしました。
 プロジェクトで利用するクラウド環境はNTTコミュニケーションズにおいて実績が豊富で設計・構築・運用までワンストップで提供できることからAWSを採用しました※1
 システム構成としては、AIの学習モデル作成・シナリオ生成の環境としてAWS EC2を構築しデータ収集用AWS LambdaでAPI通信により取得したデータをRDSに格納する構成としています。AI学習の入力データである天気予報データ、人流データ、室内温湿度データ、エネルギーデータ、空調制御ログは予測データも含めてRDSやS3に格納され、学習用EC2により学習モデルの生成を行います。生成された学習モデルを使ってシナリオ生成用EC2により空調制御シナリオを算出しシステムエッジに配置された制御指示用LambdaによりAPI通信で送出しビル内の空調機器の制御を行います。

【AI空調制御クラウド利用結果】

 「AI空調制御クラウド」の利用により空調制御を実施した日と、通常のBAS(Building Automation System)※2により空調制御を実施した日で平均外気温が一番近い日を比較した結果、快適性を維持したまま空調エネルギー使用量を約30%削減できました。
空調エネルギー使用量とは具体的には中央熱源方式※3で消費される冷水・温水のMJ単位で計測されるエネルギー使用量となります。
 快適性という点では、普段のBASによる制御ではおおむねPMV値が-0.5~-0.7の範囲で制御されていましたが、「AI空調制御クラウド」の利用でもほぼ同等の-0.4~-0.7の範囲で制御し空調エネルギー使用量を削減できました。
 「AI空調制御クラウド」の利用による空調制御でPMV値が10%程度低下した日であってもビル滞在者からは特に寒いといったクレームなどはなく、削減できたエネルギー量は約30%となり、十分許容できる範囲で省エネを実現できることが分かったのは非常に有意義だったと言えます。

 また、運用面でもメリットがあることが分かりました。「AI空調制御クラウド」の利用前は、空調運用担当者の経験を元に空調を設定していましたが、冷房シーズン・暖房シーズンごとに画一的な温度設定で空調を稼働させているために天候の急変に合わせて快適な空調環境を提供することが難しい状況でした。「AI空調制御クラウド」では、前日の天気予報の情報を元に1日の外気温の移り変わりを考慮し快適な室内環境を実現するための空調制御を実施します。仕組みとしては前日の夜間に深層強化学習で作成した学習モデルに天気予報情報を読み込ませ最適な空調制御シナリオ(10分ごとの空調設定情報)を作成します。天気予報情報の収集、空調制御シナリオ作成、空調制御シナリオの配信を自動化することにより空調運用担当者の負荷を増やすことなく運用できます。

 ビル運営における空調の運用は重要で最適な設定で連続稼働させる必要があるため「AI空調制御クラウド」では迅速に障害対応できる仕組みも取り入れました。AWSのEC2上にシステムを構築しAWS CloudWatchとAWS Step Functions、AWS SNSを連携させることによりデータ取集および空調制御シナリオの配信を行い、障害時には迅速に障害原因をタスク単位で追跡できるようにしました。

【今後の展開】

 今回のプロジェクトでは、空調制御の範囲が共用部のみでしたが、NTTコミュニケーションズとしては、今後サービスの提供範囲をオフィス・店舗エリアに広げ、ビル全体の空調制御に取り組み他のビルへの提案につなげたいと考えています。
 対象エリアが拡大した場合、AWSのシステム側では、前日の天気予報情報を元に空調制御シナリオを算出する工程をビルの空調が稼働開始する時間までに終えていないといけませんが、シナリオを算出するリソースは、柔軟に変更することができるため、ビルの対象エリア数や規模に関わらず問題なく運用に耐えるシステムを提供可能と考えています。

※1 NTTコミュニケーションズが参画するAWSパートナーネットワークについて

※2 BAS(Building Automation System):ビルに設置されている照明、空調などの設備機器をネットワーク経由で一元管理し、監視や制御を行うシステム

※3 中央熱源方式:熱源機器と空気調和機とを組み合わせて空調する方式。熱源機器で製造した冷温水を空気調和機に送水して建物全体を空調する方式

某製造会社

製造会社の事務棟多目的スペースの空調エネルギーの削減

(AIを活用した空調のフィードバック制御により消費エネルギー量を35%以上削減)


【某製造会社のCO2削減の取組】

 某製造会社は、グローバルに展開している産業用品・化学製品のメーカーで、海外の環境基準に適応するため環境への負荷を低減し持続可能な未来の実現を目指し、環境対策へ積極的に取り組んでいます。
 CO2排出量を削減するために、エネルギー効率の最大化と再生可能エネルギーの使用拡大に取り組み、製造製品については再生資源の循環を促すサーキュラーエコノミーを目指しています。

【事業拠点における課題】

 エネルギー効率の最大化のためには全世界で研究開発拠点・工場などで使用されているエネルギーの効率化を検討する必要がありますが、研究開発施設やオフィスで共通して削減余地の大きいものとしてエネルギー全体の約50%を占める空調エネルギーが挙げられます。しかしながら、地域ごとに異なる気候環境において、既存の空調機器の自動温度設定で稼働させることだけではエネルギー削減を実現することは難しいと考えられていました。

【エネルギー削減の取り組み】

 こうした課題を抱える中、かねてから取引のあるSIerだったNTT Comをパートナーとして選定し、AIを活用したエネルギー削減に取り組むことになりました。パートナー選定にあたっては、NTTグループは数年前から既設の空調運用の快適性・効率性の両面からの研究実績があったことと、SIerとして求められる柔軟性・確実性に長けている点が評価のポイントとなりました。
 「AI空調制御クラウド」の導入エリアとして研究開発・製造拠点の事務棟の多目的スペースが選定されました。建物の中では最も天井が高く、複数種別の空調機器が混在し、エネルギー使用量が多く削減施策には重要なエリアでした。中央熱源方式※2の空調で使われる温水・冷水の30%以上の削減を目標とし取り組みを開始しました。

【課題解決の仕組み】

 これまで空調関連の省エネルギーについては、エネルギーを消費する空調機器の性能向上が重要視され、センサーからの信号に基づくフィードバック制御や施設管理者の経験に基づいた制御が行われてきました。しかし、大規模施設では空調の制御が室内環境に影響を及ぼすまでのタイムラグを考慮することが難しく、消費エネルギーを抑えつつ快適な環境を実現することは困難でした。
 解決方法として、室温の変化をあらかじめ予測し、予測結果に対して先回りして制御を行う事で最適な空調制御が可能になると考えました。今回の導入プロジェクトではAIの深層強化学習の手法を取り入れた最適な環境再現モデルによる空調制御シナリオの算出を目指しました。
 導入プロジェクトで利用するクラウド環境はNTTコミュニケーションズにおいて実績が豊富で設計・構築・運用までワンストップで提供できることからAWSを採用しました※1。システムとしては2022年から2023年にかけてAWSのEC2上にAI空調制御エンジンを構築しAWS LambdaとAWS Step Functionsを連携させることによりデータ取集および空調制御シナリオの配信を行いました。サービスの安定稼働についてはAmazon Cloud Watchによるログ監視やAmazon SNSによるアラート通知の仕組みを取り入れることで実現しました。
 2ヶ月間の環境データ・空調制御ログを深層強化学習することにより外気温の移り変わりに合わせた省エネに寄与する空調制御を実施するため天気予報情報もインプットデータとして活用し空調制御を実施しました。

【導入結果】

 「AI空調制御クラウド」を導入した結果、「AI空調制御クラウド」で空調制御を実施した日と通常のBAS(Building Automation System)※3で空調制御を実施した日で平均外気温が一番近い日を比較して導入エリア全体で35%以上の冷水・温水のエネルギーを削減することに成功しました。
 検証を行った冬の外気温では平均気温が10℃前後や20℃前後と高低差が大きい日がありましたが、外気温の平均気温の高低差に関わらず全体として35%以上の削減ができました。
 これまでのBASによる制御では平均外気温が変化しても消費エネルギー量が比例して変化していませんでしたが「AI空調制御クラウド」では春に向けて平均外気温が高くなるのに比例して消費エネルギー量が少なくなりました。適切なエネルギー消費が実現できたと考えられます。また、同じ室内温度環境を実現する場合でも、「AI空調制御クラウド」の方がBASによる制御よりも消費エネルギー量を抑えられていました。外気温の変化の影響を考慮した空調制御ができた結果と考えられます。

【今後の展開】

 今回の導入により、目標を越える35%の消費エネルギー量の削減を実現できました。 全拠点に「AI空調制御クラウド」を導入すれば空調に関わる消費エネルギー量の約1/3を削減できることになり、某製造会社が目指す政府が掲げる2050年カーボンニュートラル化の実現に向けたCO2排出量の削減への大きな貢献となることが期待できます。

※1 NTTコミュニケーションズが参画するAWSパートナーネットワークについて

※2 中央熱源方式:熱源機器と空気調和機とを組み合わせて空調する方式。熱源機器で製造した冷温水を空気調和機に送水して建物全体を空調する方式

※3 BAS(Building Automation System):ビルに設置されている照明、空調などの設備機器をネットワーク経由で一元管理し、監視や制御を行うシステム

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