AIOpsとは?ユースケースやメリットを解説

AIOpsとは、AI(Artificial Intelligence/人工知能)を活用してIT運用を自動化・効率化する手法のことです。
システム故障の予兆検知や迅速な原因特定など、複雑化・多様化するITインフラの運用課題に対する強力なソリューションとして注目を集めています。

AIOpsの導入は、単なるIT運用の合理化にとどまらず、企業全体の競争力やレジリエンスの向上にも寄与します。
近年、日本国内でもAIOpsへの関心が高まっており、企業のデジタル変革の中核技術としてAIOpsのプラットフォームが普及つつあります。

この記事では、AIOpsの基本概念からユースケース、導入メリットをわかりやすく解説いたします。

AIOpsとは?ユースケースやメリットを解説

AIOpsとは

AIOpsとは、「Artificial Intelligence for IT Operations」の略で、AI(人工知能)や機械学習を活用して、IT運用業務を自動化・効率化する手法を指します。

従来の手動による運用では対応が難しくなった複雑なシステム環境においても、AIOpsを導入することで、AIが膨大なデータをリアルタイムで分析し、迅速な問題解決を可能にしてくれます。

現代のIT環境は、クラウドサービスの普及とセキュリティの強化、IoTデバイスの増加によって複雑さを増しており、システムから生成されるデータ量も飛躍的に増加しています。このため、従来の手動監視や対応では限界が生じています。
AIOpsは、これらの課題に対処するための有効な手段として注目されているのです。

AIOpsが注目される背景

AIOpsが注目されるようになった背景を、もう少し詳しく見ていきましょう。

IT運用の「限界」と「複雑化」

現在、企業のITインフラはオンプレミスとクラウド、さらには複数のSaaSやネットワーク機器などが混在したハイブリッド環境が主流です。
このような環境下では、トラブルの原因特定に必要なログ情報が各所に分散しており、故障対応には膨大な時間と労力がかかります。異常発生時の対応遅れが深刻なビジネスインパクトをもたらすリスクもあります。

アラート疲れと属人化の課題

多数のシステムを監視する中で生まれるアラートは、一日に数百件から数千件に及ぶこともあります。
なかには、類似したアラートもあるため、運用担当者には優先順位を付けて“本当に対応すべきアラート”を見極める判断が求められます。

しかし、こうした判断は往々にして担当者の経験や勘に頼る部分が多く、運用が属人化しやすくなります。
その結果、判断ミスによる故障対応の遅れや、担当者の業務負荷増大という重要な問題が生じています。

データの増加とリアルタイム対応へのニーズ

IoTの普及や生成AIの活用、分散型システムの一般化により、IT運用現場で扱うデータ量は飛躍的に増加しています。

これらのデータをリアルタイムで収集・分析し、異常を検知・対処するには、AIや機械学習を適切に活用した自動化の利用が不可欠です。
従来の「人が見る」「人が判断する」運用から、「AIが先回りして通知する」「AIが原因を絞り込む」運用へのシフトが求められているのです。

DX推進と運用基盤の再構築

企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、基盤となるIT運用の高度化は不可欠です。なぜならDXは単なるシステムのデジタル化ではなく、ビジネスそのものの変革を意味するためです。

DXを実現するには、不具合に迅速かつ自律的に対応できる運用体制が必要になります。その中核的な技術として、AIOpsを位置づけることができます。

AIOpsのユースケース

AIOpsは、情報システム部門における複雑で多岐にわたる運用業務を支援するために、さまざまな場面で活用されています。

ここでは、代表的な4つのユースケースをご紹介します。

パフォーマンスの監視と分析

AIOpsは、サーバーやネットワーク、アプリケーションなどの稼働状況をリアルタイムで監視し、取得したメトリクスデータをもとに自動で傾向分析を行います。
たとえば、CPU使用率や応答時間などの数値を時系列で分析し、「どの時間帯に負荷が増加しているか」「特定のアプリケーションでパフォーマンス低下が起きているか」などの兆候を把握できます。

この結果、リソースの最適化や事前のチューニングが可能となり、サービスの品質を安定的に維持することができるようになります。

異常検知

AIOpsの大きな強みの1つが、膨大な監視データの中から「普段と異なる振る舞い」をリアルタイムで検出できる点です。
従来、人手による監視やアラートルールの設定に頼ってきた部分を、AIがデータのパターンを学習し、従来のしきい値では見逃されがちな微細な変化も検知します。

これにより、トラブル発生の予測を早期に認識でき、被害の最小化やダウンタイムの回避につながります。

根本原因の分析

故障が発生した際、その根本原因を迅速に突き止めることで、復旧時間を短縮できます。
AIOpsでは、関連するログやメトリクス、イベント情報などのデータを統合的に分析し、過去の類似事象との相関から「どこで」「なぜ」問題が起きたのかを自動で推定します。

この結果、担当者は従来のように大量のデータを手作業で調査する必要がなくなり、対応スピードを大幅に向上できます。

ITサービス管理

ITサービスマネジメント(ITSM)とAIOpsを連携させることで、インシデント管理や変更管理といった運用プロセスの最適化にも貢献します。

たとえば、インシデントが発生した際には、過去の対応履歴や影響範囲などビッグデータからAIが即座に分析し、最適な解決策やエスカレーション先を提案してくれます。
さらに、問題の根本原因が繰り返されている場合は、そのパターンを自動で特定し、継続的な改善につなげることも可能です。

AIOpsを導入するメリット

ここでは、特に企業の情報システム部門にとって実感しやすいAIOpsの4つの導入メリットをご紹介します。

運用の自動化・効率化

AIOpsの導入により、これまで人手に頼っていたIT運用業務をAIが自動化、大幅な作業工数の削減を実現します。これにより、担当者はより戦略的で創造的な業務に集中できるようになり、企業の競争力強化に貢献します。
たとえば、アラートのフィルタリング、故障の予兆検知、根本原因分析、対応策の提示までを自動化し、担当者の確認作業や初動対応にかかる高い負荷を軽減可能です。

この結果、情報システム部門は企画・開発や戦略的業務にリソースをシフトでき、部門全体の生産性向上が期待できます。

業務・サービス品質の向上

AIOpsの導入により、リアルタイムでの異常検知や迅速な原因特定が可能になることで、トラブルの発生頻度と影響範囲を最小限に抑え、システムの安定稼働とビジネスの継続性を確保します。

この結果、社内システムやサービスの稼働率向上と、ユーザー体験の質の向上が期待できます。
特に、社外向けサービスを運用している企業にとっては、信頼性の高さが競争優位性に直結するでしょう。

故障対応時間の短縮

故障発生時、AIOpsでは関連ログやメトリクスを瞬時に集約・分析し、迅速な根本原因の特定支援、復旧時間を劇的に短縮し、ビジネスへの影響を最小限に抑えます。

この結果、従来は数時間かかっていたトラブル対応が、数分から数十分で完了できるケースも珍しくなくなってきます。
対応の迅速化はダウンタイムの短縮に直結し、ビジネスの損失リスクを大きく軽減してくれます。

コスト削減

AIOpsを導入することで、IT運用を自動化し、業務効率化を向上させるだけでなく、貴重な人的リソースを戦略的な業務に再配置し、組織全体の生産性向上に貢献することが可能になります。

たとえば、夜間や休日の監視業務を自動化することで、オンコール体制や監視要員の削減につながります。
また、故障発生による業務停止や復旧作業にかかる時間も短縮され、間接的なコストも抑えられます。
さらに、AIが収集・分析したデータを活用して、運用の最適化や将来の投資判断にも役立てることができるでしょう。

まとめ

ますます複雑化するITインフラや膨大な運用データに対応するために、AIOpsという革新的なアプローチが注目を集めています。
AIや機械学習を使用することで、パフォーマンスの監視、異常検知、原因分析、ITサービス管理といった従来の運用業務を自動化・効率化し、運用コストを削減しながら、同時に実現サービス品質を向上させることができます。これにより、企業は限られたリソースを最大限に活用し、競争優位性を高めることができます。

また、AIOpsは、情報システム部門が抱える人的リソースの限界や属人化、アラート疲れといった課題に対し、その根本的な解決策を提示してくれる存在です。
未来志向のIT運用を目指す企業は、今こそAIOpsを導入しましょう。

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