「オールインワン」をキーワードにITインフラを見直す
「オールインワン(all in one)」は、複数の要素や機能を1つにまとめた商品やアイテムなどに使われているワードです。価格のお得感を訴求するなど、通販やファッション分野、家電製品などで多数目にしますが、最近では、新たにITの分野でも広く使われており、ソリューションの特徴を表す重要キーワードになりつつあります。
オールインワンとは何か
ファッションやスキンケア用品、家電製品などの世界において、複数の要素や機能を1つにまとめた製品を指す用語として広まっているのが「オールインワン(all in one)」である。
たとえばファッションの場合、上下がひとつなぎになった衣服のことをオールインワンと呼ぶ。ボディスーツのことをオールインワンと呼ぶこともある。女性が着るワンピースも上下ひとつなぎになっているため、一種のオールインワンと考えられるが、一般的にはスカートタイプはワンピース、パンツタイプがオールインワンと呼ばれている。また、オーバーオールやサロペットもオールインワンの一種である。
スキンケア用品におけるオールインワンは、化粧水や美容液、クリームなどのスキンケア商品の機能を集約した化粧品を指す。個別の化粧品を使ってスキンケアを行う場合、どうしても時間がかかってしまうが、オールインワンのスキンケア用品であればその時間を短縮できる。個別に購入するよりも、コストを抑えて必要なスキンケア用品がそろえられることもメリットだろう。
家電においても、複数の機能を統合したオールインワン製品は少なくない。一例として挙げられるのは洗濯機で、洗濯に加えて脱水の機能をセットしたものが一般化しているうえ、最近では乾燥機としての機能を備えている製品も数多く登場している。
あまりオールインワンと呼ばれることはないが、ディスプレイとチューナー、そしてスピーカーなどを組み合わせた液晶テレビもオールインワン製品の1つである。最近ではGoogleアシスタントの機能を備えるうえ、Netflix(ネットフリックス)やYouTube(ユーチューブ)といった動画配信サービスに対応した液晶テレビも珍しくなく、オールインワン製品としての幅を広げている。
PC周辺機器であれば、家庭用プリンターがオールインワンの代表例だ。もともと印刷だけを行う単機能製品が主流となっていたが、その後スキャナーを組み合わせてコピー機としても使えるようにした複合機と呼ばれる製品が広まっている。デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像をダイレクトに印刷する機能や、スキャンしたデータをクラウドに保存する機能なども一般的になっており、幅広い用途で使えるオールインワン製品だと言える。
ITの世界においても、複数の機能を統合した製品のことをオールインワンと呼ぶことは少なくない。たとえば複数の業務アプリケーションの機能を備えた製品を、「オールインワンソリューション(all in one solution)」あるいは「オールインワンパッケージ」などと呼ぶことがある。
オールインワン型ソリューションがもたらすメリット
ITにおけるオールインワンソリューションで、多くの企業に使われているものの1つに「UTM」(Unified Threat Management)と呼ばれるセキュリティ製品がある。日本語で統合脅威管理と呼ばれるもので、ファイアウォールやアンチウイルス、アンチスパム、URLフィルタリング、IDS(Intrusion Detection System)/IPS(Intrusion Prevention System)など、セキュリティ強化のためのさまざまな機能を一本化した、オールインワンセキュリティソリューションである。
このUTMのようなオールインワンソリューションを利用するメリットは、導入における負担を大幅に軽減できることだ。もしファイアウォールやアンチウイルス、URLフィルタリングといったセキュリティソリューションを個別に導入する場合、その導入作業だけでも膨大な時間がかかり、コスト負担も増大してしまう。しかし複数の機能がオールインワンで提供されているUTMであれば、導入作業が1回で済み、コストも抑えることができる。
それぞれの機能の連携を考える必要がないことも、オールインワンのUTMにおける大きなメリットである。ファイアウォールやアンチウイルスといったセキュリティソリューションを個別に導入した場合、それぞれのソリューションをネットワーク上のどこに設置するのかを考える必要があるうえ、場合によっては機能を連携するための設定などを行う必要がある。
しかしUTMであれば、すべての機能を連携して利用することが前提となっているため、各機能の配置や連携などを考える必要がない。これによって導入の負担を軽減していることも、オールインワンで複数のセキュリティ機能を提供するUTMの利点である。
運用管理のためのインターフェイスが統合されていて、統合管理が可能であることもUTMの大きな魅力である。バラバラにセキュリティソリューションを導入し、さらにソリューションによってメーカーが異なる場合、それぞれで運用管理画面が異なるため、個別に使い方を覚える必要がある。また、その都度画面を切り替えたり、異なる画面を見なければならないことも難点だろう。しかしUTMであれば、1つの管理インターフェイスですべての機能をコントロールすることが可能であり、運用管理の手間を軽減できる。
ここまで解説したUTMのメリットは、そのほかのオールインワンソリューションにもつながるものである。特にIT担当者の数が少なく、稼働を抑えてソリューションを導入したいといった中堅・中小企業に適しているのはもちろん、SE支援につながるオールインワンソリューションであれば管理負荷の軽減も図られることを考えると、管理コストの増大に頭を悩ませている大企業にも有効だ。
オールインワンとベストオブブリード
このオールインワンの対極に位置する考え方として、「ベストオブブリード」がある。これはシステムの構築などにおいて、メーカーやアーキテクチャなどの違いを意識せず、それぞれの領域で最適な製品を選択して組み合わせるという考え方である。複数の製品のベンダーを組み合わせることから、マルチベンダーと呼ばれることもある。
たとえば業務システムを構築する際、会計や生産管理、販売管理、在庫管理など、必要な機能をすべて備えたオールインワン型のソリューションを導入するのではなく、機能ごとに自社にとって最適なソリューションをフレキシブルに選択して導入するわけだ。
必要な機能すべてを備えたオールインワン型のソリューションの場合、「会計は自社にとって最適だが、生産管理や販売管理は自社のプロセスにマッチしないため使いづらい」といったことが起こり得る。しかしそれぞれの領域ごとに最適な製品を選択するベストオブブリードであれば、このような問題に頭を悩ませる必要がない。
ベンダーロックインを回避できることもメリットだ。システム構築などにおいて同じベンダーの製品でそろえた場合、それ以外のベンダーへの乗り換えが難しくなり、ユーザー側のソリューション選定の自由度が低下してしまうことがある。これがベンダーロックインで、たとえば保守コストが値上がりしてもそれを受け入れざるを得ないなど、ユーザー側の不利益になる可能性がある。しかしベストオブブリードであれば、特定ベンダーの影響を受けづらくなり、ベンダーロックインを回避しやすい。このような理由からITインフラ構築は機器ベンダーや通信事業者を限定しないマルチベンダー・マルチキャリア化が進んでいる。
とはいえ機能ごとに選定したソリューションを連携させる場合、ユーザー側で接続する必要があり、導入や開発コストが増大する問題が生じてしまう。場合によっては、それぞれの機能を接続するためのインターフェイスを別途開発する必要があるなど、大きなコスト負担が生じる可能性もあるため注意が必要だろう。
トラブルが発生した際、利用しているそれぞれのベンダーに連絡する必要があるうえ、ユーザー側で故障の原因を特定することが求められるなど、ユーザーの負担が増大することも注意しなければならないポイントとなる。
このように、オールインワン型のソリューションの利用とベストオブブリードには、それぞれメリットとデメリットがある。導入するソリューションによっては、こういった点も意識しつつ、自社にとって最適なのはオールインワンか、それともベストオブブリードかを判断する必要がある。
多くの企業が目指すITインフラの統合管理
前述したように、オールインワン型のソリューションには複数の機能を統合管理できるメリットがある。特に運用負荷の増大に頭を悩ませている企業にとって、統合管理が可能になるメリットは大きく、最近ではオールインワンではない、異なる製品やサービスを統合管理するためのソリューションも現れている。
実際、IDC Japanが発表した「2021年 国内企業のエンタープライズインフラのシステムタイプ別トレンド分析」によれば、現在のITインフラ関連の重点投資エリアとしてもっとも多くの企業が挙げたのは「クラウド、ネットワーク、データセンターを対象とした統合管理システムの構築」だった。
出典:IDC Japanプレスリリース「国内エンタープライズインフラ市場 ユーザー動向調査結果を発表」(2021年3月22日)
その背景にある理由として考えられるのは、ITインフラの複雑化である。従来であればオンプレミスだけを考えてITインフラを構築すればよかったが、昨今ではクラウドを利用することが当たり前のうえ、用途に応じて複数のクラウドサービスを使うことも珍しくなくなっている。またクラウド採用によってマルチベンダー・マルチキャリア化が進めば、当然ながらネットワークは複雑化してしまう。
このように複雑化したITインフラを監視・管理するのは容易ではない。チェックすべきソリューション・サービスや項目が大幅に増えてしまうためである。そこで期待されているのがクラウドからネットワーク、データセンターまでを統合管理するためのシステムというわけだ。
しかしながらITインフラの範囲は幅広く、オールインワン型のソリューションですべてをまかなうことは難しい。そこで異なるベンダーの製品やサービスをソリューションとして包含し、さらに導入支援や運用支援まで含め、一種のオールインワン型ソリューションとして提供されているものが登場している。こうしたソリューションを活用すれば、ITインフラでもオールインワン製品のように導入や運用の負担を軽減できるだろう。
オールインワンで変わるITインフラ
ITインフラ構築に利用できる、オールインワン型のソリューションとして、NTT Comでは「WANだふる®」を提供している。これはWAN接続およびLAN接続に必要となるネットワーク機器を、ワンストップのフルカスタマイズで一元提供するオールインワンソリューションである。
WANだふる®で提供されるのは、ネットワーク機器やセキュリティ機器に加え、Wi-FiやMVNOなどの無線機器、さらにはSD-WANやユーザー認証などに用いるクラウドサービスまでと幅広いラインナップとなっている。また機器提供だけでなく、ネットワーク構築支援やネットワーク機器の保守を支援する、インターネットゲートウェイソリューションやネットワークソリューションもオプションで選択可能であり、自社の状況に応じて利用できることもメリットである。
クラウドベースでの管理や可視化に対応した、マネジメントシステムが提供されることも見逃せないポイントだろう。前述のようにITインフラの統合管理は、多くの企業が課題として感じている領域である。この課題の解決において、クラウドベースのマネジメントシステムが提供されるメリットは大きい。
マルチベンダー・マルチキャリアに対応した運用保守サービスをワンストップかつ月額課金で提供するWANだふる®ならば、自社のニーズにマッチしたITインフラを構築することが可能である。たとえば業務システムの利用とMicrosoft 365など特定のサービスへの通信を切り分け、ローカルブレイクアウトによって快適なクラウド利用を実現する、あるいはテレワークでも利用できるインターネットゲートウェイをクラウド上に設置し、アナリストによる監視によってセキュリティレベルを高めるなど、さまざまなニーズに応えられるオールインワンソリューションとなっている。
構築や運用における負担を軽減したい、あるいは統合管理を実現していきたいと考えるのであれば、こうしたオールインワンソリューションの活用をおすすめしたい。