IT運用アウトソーシングの最新動向と企業選定のポイント
複雑化するICTシステム、複数ベンダーの情報統合、社内のあちらこちらから殺到するシステムに関する問い合わせや、トラブル発生時の切り分け・対処――思いつくままに列挙してみただけでも、IT運用担当者の負荷がますます重くなっていることが容易に見て取れます。こうした負荷を軽減し、トラブルを未然に防止するとともにトラブル発生時にできるだけ早く必要な情報収集・対処を実施して早期に解決する上で、ICT運用管理業務のアウトソーシングは今や常識になっていると言ってよいでしょう。
企業内の全般的な業務のICT化に伴い、情報システム部が担当する領域は拡大の一途をたどっている。複雑化するICTシステム、複数ベンダーの情報統合、社内のあちらこちらから殺到するシステムに関する問い合わせや、トラブル発生時の切り分け・対処――思いつくままに列挙してみただけでも、IT運用担当者の負荷がますます重くなっていることが容易に見て取れる。
こうした負荷を軽減し、トラブルを未然に防止するとともにトラブル発生時にできるだけ早く必要な情報収集・対処を実施して早期に解決する上で、ICT運用管理業務のアウトソーシングは今や常識になっていると言ってよい。
ITアウトソーシングの最新動向
シャドーITの表面化
ICT運用業務のアウトソーシングというと、従前は、サーバー・ネットワークなどレイヤの低いアウトソーシング、およびスクラッチ開発したオンプレミスのシステム運用・保守のアウトソーシングなどが主流であった。しかし、近年になってクラウドの活用が進み、いわゆるシャドーIT(※1)の存在があちこちで表面化しつつある。こうしたオンプレミスとクラウドのハイブリッド環境上で多様なアプリケーションが稼働していることを踏まえて、ITアウトソーシングの目的やレイヤも大きく変化している。
※1:シャドーIT:企業側が把握していない状態で、従業員が企業のITを活用すること。スマホやタブレットの普及、企業システムのクラウド化などによりシャドーITに伴うリスクが増加しつつある。
海外企業のM&Aや新規拠点立ち上げの増加
他方、多くの企業において海外企業のM&A・新規拠点立ち上げなどが積極的に行われている中で、いち早く新規拠点へ既存システムを組み込み、本社のICT環境と連動させることも重要な課題となっている。このような局面においては、例えば安価に早くVPN(Virtual Private Network)を構築する目的でSD-WAN(Software Defined WAN)の導入を検討したり、本社および外部インターネットへのセキュアで安定的な接続を確保したりする必要がある。
人材不足・働き方改革によるIT部門のリソース不足
一般にIT部門は専門知識と最新技術へのキャッチアップを求められがちであるが、近年の人材不足に伴う慢性的なリソース不足により、専門性の高い要員を確保するのは年々難しくなりつつある。目まぐるしいスピードで進化を続ける最新技術をキャッチアップするのも容易なことではない。このような事情から、IT運用の内製化に関して、二の足を踏んでいる企業が少なくないというのが現状だ。
こうしたリソース不足やICT環境の高度化・複雑化の問題に加えて、近年、国家レベルで推進されている「働き方改革」に伴うさまざまな変化も大きな課題の一つと言えるだろう。テレワークの普及等により、企業の外部からITシステムにアクセスして業務を行うシーンも増加しつつある。セキュリティを含む高い技術やノウハウを持つスペシャリストを育成・確保していくことは、あらゆる産業分野における共通課題となっている。
ITアウトソーシングのメリット
個別業務単位での利用・フルアウトソーシングのどちらも可能
こうした課題を抱えた企業にとって、ITアウトソーシングは強力な味方となり得る。とりわけ、プロバイダーが提供する運用管理メニューから自社の課題に応じて必要なものを選択することができれば非常に魅力的である。社内のICTに関するさまざまな問い合わせやトラブル申告に、一元対応するヘルプデスク/コンタクトセンターサービスの設置・運営、よりコスト面を重視した選択肢としてのオフショアリングといった、個別業務単位でITアウトソーシングを利用することもできるし、全てのIT運用管理業務を一括で委託するフルアウトソーシングの形で利用することも可能である。
プロジェクト運用の安定化・ノウハウの吸収
ITアウトソーシングには、さまざまなメリットがある。外部の専門家集団の高い技術やリソースを活用することでより安定したプロジェクト運用が実現可能になるほか、プロジェクトを通じてノウハウを吸収し、技術やメソッド、ツールの内部化などに役立てることもできるだろう。ITアウトソーシングに際しては技術の空洞化が懸念されるが、ノウハウ蓄積のためのスキームを整備しておくことにより、こうしたリスクに対応することは十分に可能である。
自社のリソースをコア業務に集中
変化の激しい近年のビジネス環境において、自社のITをスピーディーかつ柔軟に対応させていくことは、何よりも重要な課題の一つであるといっても過言ではない。全ての運用管理業務を自社で行うのではなく、頼りになるアウトソーサーとタッグを組むことで、それが可能となるだろう。既存の業務は彼らに任せ、自社のリソースをより戦略的な分野やコアコンピタンスに振っていくことが企業としての競争力の源泉となり、持続的成長を叶えるIT戦略として極めて重要になっていくはずだ。
アウトソーシング先の企業選定のポイント
最後に、アウトソーシングパートナーの選定において、ぜひ念頭に置いておきたいポイントを一つご紹介する。アウトソーシングの範囲に関わらず留意すべきなのは、そのパートナーが、複雑なICT環境に対し横串を刺せるマルチベンダー、マルチキャリア、マルチクラウド対応であるかどうかという点である。多くの海外拠点を持つ企業であれば、そこに「マルチリンガル性」という要素も加わるだろう。
技術力に裏打ちされたリソースを有し、自社担当者と円滑なコミュニケーションを取りつつ、信頼のおける責任体制が組めるパートナーとなりうるか――従来からの取引関係の有無だけではなく、こうした視点からアウトソーシングパートナーを選ぶよう心がけて頂きたい。
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