Azureを構築する方法は?
導入のメリットや注意点・活用方法も解説
Azureは、Microsoft社が提供する強力なクラウドプラットフォームです。世界中で60以上のデータセンターを持ち、ネットワーク機能やアプリケーション開発、セキュリティ対策など、あらゆるITニーズに対応する幅広いサービスを提供しています。インフラからプラットフォームまでを柔軟に選択・利用することができるため、企業の業務効率化やシステム運用の最適化に効果的です。
当記事では、Azureの基本的な機能や導入メリットについて詳しく解説します。Azureの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
1. Azureとは?
Azureとは、マイクロソフト社が提供しているパブリッククラウドのプラットフォームです。「Microsoft Azure」が正式名称で、Azureは略称です。
Azureでは、ネットワーク・OS・ミドルウェアなどをインターネットを介して提供します。ユーザーはAzureを利用してクラウド上に仮想環境を構築し、自社業務に必要なネットワーク機能を配置することが可能です。
Azureが提供するプラットフォームの形態は、大きく分けて「IaaS」と「PaaS」の2種類があります。
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IaaS
IaaSは「Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラストラクチャ)」のことです。
ITインフラストラクチャであるネットワークとハードウェアを、クラウド事業者(Azureの場合はマイクロソフト社)が提供します。
OS・ミドルウェア・アプリケーションはユーザー側で用意する必要があります。
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PaaS
PaaSは「Platform as a Service(サービスとしてのプラットフォーム)」のことです。
PaaSでは、IaaSで提供するネットワーク・ハードウェアに加えて、OS・ミドルウェアもクラウド事業者が提供します。
IaaSとPaaSには、クラウド事業者・ユーザーが受け持つ責任範囲や、クラウドサービスとしてのカスタマイズ性に違いがあります。自社に合うほうを選ぶとよいでしょう。
1-1. Azureを導入するメリット
Azureの導入には下記のメリットがあります。
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全世界でネットワークを使える
Azureは世界中に60以上のデータセンターがあり、Azureで構築したネットワーク機能は日本に限らず世界中で使えます。データセンターの分散によってトラブルに対する回復性が高い点も魅力です。
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OfficeソフトやWindows環境で使いやすい
Azureは、マイクロソフト社のアプリケーションであるOfficeソフトと相性がよく、Windows環境で使いやすいメリットもあります。オンプレミス環境で構築されている既存システムと連携しやすく、クラウド化にかかるコスト・労力を最小限に抑えられるでしょう。
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必要な分のコストしかかからない
Azureの料金体系は、使用したサービスに応じて料金が発生する「従量課金制」となっています。使用するサービスは任意に選べるため、必要な分のコストのみに抑えることが可能です。
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強固なセキュリティがある
Azureには多要素認証・データ暗号化・アクセス制御・ログ監視といった強固なセキュリティ対策が施されています。サイバー攻撃などの問題が発生した場合に自動検知する仕組みも備わっており、ユーザーは信頼性の高いIT基盤をビジネスに利用できます。
2. Azure構築によってできること
Azureの導入を検討する際は、Azure構築で自社が何を実現したいかを考えることが重要です。
以下では7つの例を挙げて、Azureで仮想環境を構築すると何ができるかを解説します。
2-1. リモートワークの実現
社内システムにアクセス可能なVDI(仮想デスクトップ)環境をAzureで構築することにより、リモートワークを実現できます。
Azureでリモートワークを実現するために必要な機能は「Azure Virtual Desktop」と「Windows 365」です。
Azure Virtual DesktopによってPCのデスクトップ環境をクラウド上に構築し、ネットワークを通じて利用できるようにします。Windows 365は、構築された仮想デスクトップをPCやモバイルデバイスから利用するための機能です。
2-2. データの保管・保護
Azureには「Azure Storage」というサービスがあり、クラウド上でデータを保管・保護できます。
Azure Storageは高い耐久性と可用性を持ち、データを安全に保管できる点が魅力です。拡張性も高く、業務内容や経営状況の変化に合わせた拡張・カスタマイズを簡単に行えます。
また、アクセス頻度が低いデータを低コストで保存できる「Azure Archive Storage」もあります。従業員の個人情報や財務のデータなど、アクセスする頻度は高くないものの重要なデータの保存に適した機能です。
2-3. クラウドへの移行
ICTシステムをオンプレミス型からクラウド型へと移行する場合、必要なディスク容量の評価やクラウド上でのアプリケーションの動作確認などを行わなければなりません。
Azureで提供されている機能の「Azure Migrate」を利用すれば、クラウドへの移行をサポートしてくれるため、移行作業をスムーズに進められます。
Azure Migrateでは、大きく分けて「評価」と「移行」のプロセスで移行を進めます。評価は、オンプレミスからクラウドへの移行適性とサイズの評価を行うプロセスです。移行可能であれば、段階的なアプローチによるクラウドへの移行を実行できます。
2-4. Webアプリケーション開発
Azureには、Webアプリケーションに必要なマシン環境・通信環境などを提供する「Azure App Service」があります。
「Azure App Service」はOSをWindows系・Linux系から選ぶことができ、さまざまな種類の開発言語に対応しています。APIサーバーのホスティングもできるため、クラウド上で開発したWebアプリケーションをそのままデプロイすることが可能です。
また、モバイルアプリケーション開発に特化した機能の「Azure Mobile Apps」も用意されています。
2-5. AI機能の利用
近年はさまざまな分野でAIが活用されており、企業が使用するICTシステムにもAIを導入するケースがあります。Azureでは「Azure AIサービス」という機能により、マイクロソフト社が提供するAIを利用することが可能です。
Azure AIサービスには、機械学習に必要な環境や、人間の認知機能を模したサービスを提供する内容など、さまざまな種類があります。ほとんどのサービスは一般的な開発言語やGUIによる直感的な操作に対応していて、AI機能をビジネスに有効活用できます。
2-6. セキュリティ対策
Azureはデータセンター自体のセキュリティが高く、さらにデータを保護する機能を導入することでセキュリティ対策ができます。
Azureで利用できるセキュリティ対策機能は多くの種類が存在します。ログ管理から分析・検知・対応まで行う「Microsoft Sentinel」や、パスワードなどの格納ができる「Azure Key Vault」が主な例です。
Azureでの構築を行う際に、自社に必要なセキュリティ対策機能を導入するとよいでしょう。
2-7. BCP対策
Azureにはデータ共有・保護やファイルのバックアップ・復元を行う機能が用意されていて、企業のBCP対策に活用できます。
まず、データ共有・保護に使用できる機能は「Azure File」と「Azure File Sync」です。2つの機能の組み合わせにより、オンプレミスのファイルサーバーとクラウドストレージが同期されて、効率的なファイル共有が行えます。
ファイルのバックアップ・復元には「Azure Backup」を使用しましょう。
また、「Azure Site Recovery」を使用すると、災害発生時に自社のバックアップサイトをAzure上に展開できます。
3. Azure構築の手順
Azureは仮想環境の構築に適しているプラットフォームです。Azureで構築した仮想環境上ではOS・データのバックアップや、アプリケーションの開発・テストをシンプルに行えます。
以下ではAzureをどのように構築すればよいかを5つの手順に分けて解説します。
3-1. Azureのアカウント登録をする
最初に、Azureのアカウント登録をします。以下の手順で進めましょう。
1 | Azureのトップページを開き、「無料で始める」をクリックする。 |
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2 | Microsoftアカウントでサインインを行う(Microsoftアカウントがない場合は新規作成する)。 |
3 | 氏名・メールアドレス・電話番号などの情報と、クレジットカード情報を入力する。 |
4 | アグリーメントにチェックを入れ、「サインアップ」をクリックする。 |
以上で、Azureのアカウント登録は完了です。
登録後は準備完了の画面が表示されて、Azureポータルへのログインが行えるようになります。
3-2. リソースグループを作成する
Azureポータルにログイン後は、リソースグループを作成します。リソースグループとは、仮想ネットワークや仮想マシンといったリソースを管理する入れ物のことです。
1 | Azureポータル上部の「リソースを作成」をクリックする。 |
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2 | 「サブスクリプション」「リソースグループ」「リージョン」を入力する。 |
3 | 「確認と作成」を選択し、「作成」をクリックする。 |
手順2の「サブスクリプション」ではAzureの利用料金の支払い方法を、「リソースグループ」にはリソースグループの名前を入力します。「リージョン」は近い地域を選択してください。
3-3. 仮想ネットワークを作成する
次に仮想ネットワークを作成しましょう。
1 | Azureポータル画面の左側にある「+新規」から「ネットワーキング」を選択し、「仮想ネットワーク」をクリックする。 |
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2 | 「サブスクリプション」「リソースグループ」「名前(作成する仮想ネットワークの名前)」「リージョン」を入力する。 |
3 | 「IPv4アドレス空間」に「10.0.0.0/16」を入力する。 |
4 | 「サブネットの追加」で、サブネットの名前とサブネットアドレス範囲(10.0.0.0/24)と入力する。 |
5 | 「作成」をクリックする。 |
以上で仮想ネットワークの作成は完了です。
3-4. 仮想マシンを作成する
仮想ネットワークを作成したら、仮想マシンを作成します。
1 | Azureポータル画面の「リソース作成」から「仮想マシンの作成」をクリックする。 |
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2 | 概要画面で「作成」をクリックする。 |
3 | 仮想マシンの基本設定を入力する。 |
4 | 「ネットワーク」タブで各種情報を入力する。 |
5 | 「作成」をクリックする。 |
以上で仮想マシンの作成は完了です。
3-5. 仮想マシンを接続する
仮想マシンの作成後は、下記の手順で仮想マシンを接続しましょう。
1 | 仮想マシンの概要画面から「接続」、「RDP」を選択する。 |
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2 | 画面遷移後、「RDPファイルのダウンロード」をクリックする。 |
3 | ポップアップメッセージの「接続」をクリックする。 |
4 | 仮想マシンで設定した管理者アカウントを入力し、「OK」を選択する。 |
5 | サーバーマネージャーが表示されたら、接続完了になる。 |
なお、仮想マシンを停止する場合は、Azureポータルの「仮想マシン」から「停止」を選択してください。
4. Azure構築の注意点
Azureで仮想環境を構築するときには、いくつかの注意点があります。
自社のICTシステムをAzureへと移行する前に、下記のポイントを押さえてAzureを構築できているかを確認してください。
4-1. セキュリティ対策をしっかり行う
Azureはクラウド上で各種仮想サービスを提供するプラットフォームであるため、不正アクセスなどのサイバー攻撃に警戒する必要があります。自社のデータを守れるよう、セキュリティ対策をしっかりと行ってください。
特にユーザーが用意する部分のセキュリティについては、ユーザー側が責任を持つ必要があります。IaaSにおけるOS・ミドルウェア・アプリケーション、PaaSにおけるアプリケーションは重点的にセキュリティ対策を導入しましょう。
「Microsoft Sentinel」や「Microsoft Defender for Cloud」の導入により、Azureのセキュリティを高められます。
4-2. アクセス制御に気をつける
Azureのセキュリティを高めるには、アクセス制御に気をつけることも重要です。Azureに構築した仮想環境には多くのユーザーがアクセスするため、アクセス権限を適切に管理しないと不正アクセスや情報漏洩につながる可能性があります。
Azureでは基本的なアクセス制御のほかに、「Azure RBAC」によるアクセス制御が行えます。
Azure RBACは「セキュリティプリンシパル」「ロール」「スコープ」という3つの要素によってアクセス制御を行う仕組みです。セキュリティプリンシパルは各種リソースへのアクセスを行うユーザーやグループを指し、ロールは各ユーザーの役割を示します。スコープはアクセス制御を適用するリソースの場所です。
Azure RBACにより、各ユーザーの役割と対象のリソースに応じてアクセスの許可を行えます。
4-3. クォータ制限に気をつける
クォータとは、Azureで利用可能なリソースに設定されている上限のことです。クォータの上限に到達すると、新しいリソースの作成などができなくなったり、サービスの停止につながったりする可能性があります。
Azureには、上限の引き上げが可能なクォータと、上限の引き上げが不可能なクォータが存在します。上限の引き上げが可能なクォータは必要に応じてクォータ増加をリクエストしつつ、引き上げが不可能なクォータの値には気をつけてください。
クォータ制限にかからないためには、現在の使用状況を定期的に確認することが大切です。
5. Azureを導入するときはNTT Comに相談を
Azureを導入・活用するためには、ネットワーク・クラウドやAzureについての専門的な知識が必要です。
独力で導入を進めようとすると、既存システムとの親和性を軽視したり、セキュリティ対策が不十分になったりするおそれがあります。Azureの導入・構築時には専門家のサポートやマネージドサービス、関連ソリューションを利用することがおすすめです。
NTT ComはAzureのプロバイダーであり、導入のためのコンサルティングから設計・構築、運用保守・維持管理とヘルプデスクまでを一貫して提供しています。Azure導入実績が豊富にあり、お客さまにとって最適なメニューの提案もしていますので、まずはお気軽にご連絡ください。
5-1. Azure短納期モデルとは?
NTT Comでは導入支援の一種として「Azure短納期モデル」を提供しています。
Azure短納期モデルとは、要件確定・契約完了からAzure環境の提供開始までを約5営業日で行うサービスです。基本的な固定リソース群の「Hubリソース」と、要件ごとに必要な機能をまとめた「Spokeリソース」を組み合わせることにより、短期間でのAzure導入を可能としています。
Azure導入・構築にかかる期間を短縮したい場合や、経験が浅いエンジニアでも運用できる構成にしたい場合に、Azure短納期モデルがおすすめです。
まとめ
Azureは、グローバルなインフラ提供を基盤に、効率的にクラウドサービスを活用できる強力なプラットフォームです。特に、リモートワークの促進やセキュリティ対策、Webアプリケーションの開発など、さまざまな分野で柔軟に利用できる機能が魅力です。
Azureの導入にあたっては、適切な構築手順を理解し、セキュリティやコスト管理をしっかりと行うことが重要です。専門的なサポートを活用することで、より効果的なクラウド利用を行えるでしょう。