ネットワーク可視化の方法と
可視化ツールのメリット・デメリット
近年さまざまな業界でIT化が進んでおり、PCをはじめとする多くのデジタル機器がネットワークに接続されることで、利便性が高まっています。しかし、接続不良や通信速度が低下した場合に、ネットワーク内のどこで問題が発生しているのかわかりにくいのが欠点です。そこで、ネットワークの全体把握が実現できるように、ネットワークの可視化が求められています。
本記事では、ネットワークの可視化の概要や可視化の方法、監視ツールの必要性などを解説します。
目次
ネットワークの可視化とは?
ここでは、ネットワークの可視化とは具体的にどのようなものなのかを解説し、ネットワークの可視化により解決できることや、可視化に必要なソリューションを紹介します。
ネットワーク全体の状態を確認できるようにすること
ネットワークの可視化とは、サーバーやルーター、PCなどの機器が、どのように関連しあい、どのような状態でつながっているのかを一目でわかるようにすることです。
可視化に用いるネットワーク構成図に明確なルールはありませんが、大きく物理構成図と論理構成図の2種類に分けられます。
物理構成図は、機器が設置されたフロアや設置台数などを明らかにして、ネットワーク機器の物理的な配置を図にしたものです。一方、論理構成図は、IPアドレスなどにより情報の流れを明らかにしたものを指します。
さらに、構成図内で、機器の通信状態や接続状態を色分けしてわかりやすく表現すれば、ネットワーク全体の状態が一目で把握できるようになるでしょう。
現在のネットワーク環境は、PC1台をとってみても、ルーターやプリンターなど複数の機器につながっており、非常に複雑化しています。これらを一目で把握できるように可視化することは、そう簡単ではない困難な作業であることも事実です。
しかし、企業がビジネスを進める上でネットワークを可視化していなければ、外部から不正アクセスされた場合に、不審な接続をただちに検知できません。また、従業員が勝手にインストールしたアプリケーションなどの、いわゆるシャドーITについても、ネットワークの可視化により通信を監視することで、その存在に気付きやすくなります。このようにセキュリティの面からも、ネットワークを可視化する必要性は増しているのです。
トラブルの原因を見つけやすく迅速に解決できる
ネットワークを可視化する目的は、ネットワークのトラブル予防や、迅速な解決です。
ネットワークをあらかじめ可視化しておけば、トラブルが発生した際にどこに問題が発生したのかが一目でわかるため、解決までにかかる時間を短縮できます。
また、トラブルまでには至らない場合でも、ネットワークの可視化は役立ちます。ネットワークが可視化されていないと、明らかなトラブル以外には気付きにくいものですが、可視化されていれば、ネットワークの性能低下を把握しやすいでしょう。
ほかにも、ネットワークの可視化により、機器の通信状態や接続状態を確認できるため、アクセス集中による速度低下も把握できます。混雑する時間帯がわかっていれば、作業を行う時間を分散させて通信の集中を防ぐことも可能です。
可視化システムの開発が必要になる
ネットワークを可視化すれば、効率的なトラブル対応ができますが、可視化するためにはシステム開発が必要になります。複雑なネットワークの状況をリアルタイムで把握することは容易ではなく、実現するにはコストや手間がかかるでしょう。
また、ネットワークの可視化は一度開発したら終わりではなく、拠点が増えるなどでネットワーク環境が変化すれば、それに合わせて構成図も作り替えなければなりません。つまり、可視化されたネットワークを長期間、効率的に運用していくためには、誰でも構成図を作成・更新できる体制を整える必要があります。
ネットワークの可視化を実現させる3つの方法
ネットワークの可視化を実現させるには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは関連性の高い3つの方法を紹介します。
1.手動でネットワーク構成図を作成する
1つめは手動でネットワーク構成図を作成する方法です。構成図は、ExcelやPowerPoint、マインドマップなどを使えば作成できます。ネットワーク機器のつながりだけを可視化したいのであれば、この方法でも対応可能です。
ただし、ネットワーク環境は日々変化することから、1台1台の接続状況を人力で確認する手間がかかります。ネットワークを構成する機器が少ないうちは手動でも対応できるかもしれませんが、機器が増えると難しくなるでしょう。
また、この方法では機器間のリアルタイムの接続状況がわかりません。そうしたことから、労力がかかる割にはメリットがそれほど得られない方法ともいえます。
2.専用ソフトウェアやサービスを活用する
2つ目は、専用の可視化ソフトウェアやサービスを活用する方法です。1つめの手動による方法と比べると、自動化されることで効率良くネットワークを可視化できるでしょう。リアルタイムで状況を把握できるなど機能が充実しているため、トラブルが発生した場合に迅速かつ的確に対応できる点もメリットです。
デメリットは利用料金がかかる点ですが、なかには機能が制限された無料版や、一定期間無料で利用できる体験版が用意されていることもあります。とりあえず無料で使ってみて、使い心地が良ければ有料版のサービスを利用するのも一つの方法です。
3.無料のオープンソースソフトウェアを導入する
3つ目はオープンソースソフトウェアを使う方法です。可視化ソフトウェアのなかには、オープンソースソフトウェアとして無料でダウンロードして利用できる製品もあり、コストをかけずにネットワークの可視化ができます。無料とはいっても、機能が充実したソフトウェアが多く、有名なZabbixやNagios Coreなども無料のオープンソースソフトウェアです。
ライセンスによってはソフトウェアをカスタマイズできるものもあり、自社の状況に合わせて細かな調節ができれば、ネットワーク全体の状況をより把握しやすくなるでしょう。ただし、利用するにはネットワークやソフトウェアのことを熟知している人材が必要です。詳しい内容は次の章で解説します。
オープンソースソフトウェアのデメリット
ネットワークを可視化する方法の一つとして、オープンソースソフトウェアを利用する方法を紹介しました。無料のオープンソースソフトウェアであれば、費用をかけずに充実した機能を利用し、可視性を向上できますが、注意すべき点もあります。ここでは、オープンソースソフトウェアを利用する際の3つの注意点を解説します。
1.高い技術力が必要
多くの場合、オープンソースソフトウェアはメーカーのサポートが期待できないため、導入時の各種設定やカスタマイズは自社で行なわなければなりません。自社のネットワークに合わせてカスタマイズするには、高い技術力が必要です。また、バグや脆弱性が放置されている場合もあり、変更などへの対応も自社で行う必要があります。
設定やカスタマイズの方法がわからない場合や、設定にミスがありうまく動作しない場合は、導入に失敗する可能性があるため注意が必要です。
2.日本語で利用できない
オープンソースソフトウェアは海外のものが大半を占めているため、マニュアルや製品の公式サイトは日本語化されていないことが多く、外国語で対応しなければならないことがあります。
しかも、単に外国語ができれば良いというわけではなく、ネットワークやソフトウェアの専門知識がなければマニュアルの理解が難しいため、外国語とネットワークのどちらにも精通した人材が必要です。
また、オープンソースソフトウェアは一切の制約なく使えるというわけではなく、ライセンスにもとづいて使用しなければなりません。違反した場合は訴訟問題に発展する場合もあるため、ライセンスが外国語で記載されている場合でも、内容を正確に把握する必要があります。
3.無料版ソフトは機能が制限されていることもある
有料のオープンソースソフトウェアで無料版を使用する場合、有料版の機能を制限した状態で提供されていることがあります。この場合、自社に必要な機能が使えない可能性があるでしょう。
また、無料版は基本的にサポート対象外のため、トラブルが発生した場合も自社で解決しなければならないなど、細かな部分で使いにくさが目立ちます。
当初はコストのかからない無料版が良いと感じていても、このような使いにくさが頻発すると、稼働もかかり結果的に有料版にしておけば良かったと感じることにもなるでしょう。
ネットワークの可視化に専用のソフトウェアを使うメリット
ネットワークの可視化には無料ソフトを使う方法もありますが、高い技術力や語学力が必要だったり機能が制限されたりすることなどから、専用の監視ツールを導入するほうが手軽です。ここでは監視ツールが必要になる理由を3つ紹介します。
1.監視者の負担を軽減できる
ネットワークを単に可視化するだけでは、トラブル発生などのイベントや性能低下に対応するには不十分です。ネットワークの異常を発見した際に迅速に対応するには、可視化されたネットワークを常に監視する必要があります。
人がネットワークを監視する場合は、ネットワークの規模が大きくなるにつれて業務の負担も大きくなりますし、人力では限界もあるでしょう。監視ツールを導入すれば、自動でネットワークの状況を分析できるため、監視を担当する人の業務負担を軽減できます。異常があればただちに自動で通知されるため、迅速な対応も可能です。
2.人材育成のコストを抑えられる
ネットワークの監視には、ネットワークの状況を正しく分析できる知識や技術が必要で、それらを身に付けるための時間も必要です。
しかし、監視ツールを導入すれば、自動でネットワーク監視や情報分析が行なえるため、専門知識を持つ人材を育成する費用や時間を削減できます。
また、監視ツールのアップデートを行なえば、常に最新技術による監視が行なえる点もメリットです。さらに、ネットワークの監視が属人化しないため、管理者が急にいなくなった場合でも監視の質が落ちにくいでしょう。
3.改善サポートを受けられる
監視ツールのなかには、専門のシステムエンジニアがトラブルの対応などをサポートしてくれるサービスもあります。
社内にシステムエンジニアがいないなど、ネットワークの扱いに慣れていない会社では、ネットワークを可視化したとしてもメリットを活かしきれない可能性があります。しかし、こうしたサポートがあれば、ネットワーク管理に不慣れな会社であっても、設定で困ったりトラブルが発生したりした場合に、安心して対応できるでしょう。
ネットワーク可視化ツール「お客さま体感品質モニタリング・スマート」
NTTコミュニケーションズの「お客さま体感品質モニタリング・スマート」は、メーカーやベンダーを問わずにエンドツーエンドのICT環境における通信の体感品質をモニタリングデータとしてリアルタイムにダッシュボードで見える化、可視化できるサービスです。お使いの回線や接続機器などの制限がないため、環境の把握が困難なテレワークやマルチベンダー環境のモニタリングに適しており、従来のPingやSNMP Trapでは把握することが困難なユーザー体感の品質モニタリングを可能にし、トラブル対応を支援します。
たとえば、業務アプリやSaaS向け通信の品質不良を容易に特定し、インテリジェント端末の対策ができるなど、ユーザーが抱える通信品質の課題把握やボトルネックの解明が容易になり、ネットワークに潜む原因不明の課題を解決する方法として有力です。また原因究明のスピードアップに直結します。さらにPCにソフトウェアをインストールするだけで、環境や規模を問わずPC1台からでも始められる手軽さも大きな魅力です。主な機能は、以下になります。
「ネットワーク全体の可視化」
通信の種類やエンドユーザー別に、エンドツーエンドのネットワーク品質を可視化します。ネットワーク全体の把握、品質のモニタリングに有効です。
「ボトルネックの把握」
品質の問題が確認された場合、ボトルネック調査により原因を特定できます。
「スピードテスト」
リモート環境からのヘルスチェックに有効です。
「WiFi強度、PCパフォーマンス」
スピードテストの結果、課題が特定のユーザーにみられる場合、ユーザー毎のWiFi強度やPCパフォーマンスを確認することで原因の特定につなげます。
しかも、高価な複数ライセンスの購入は不要で1端末から廉価に導入できます。業務拡大によるモニタリング範囲の増減、スモールスタートで部分導入など、利用環境に合わせた無駄のないスケーラビリティな料金設計ができるようになっています。お申し込みも簡単で、サイトにアクセスして必要事項を入力し、PCなどのデバイスにソフトウェアをインストールするだけでモニタリングが開始できます。手軽に導入できるため、お試しで使ってみて効果を測定してから本格導入を検討してみてもいいでしょう。
まとめ
近年では企業におけるIT化が進んでおり、社内にネットワークを構築している企業は少なくありません。ネットワークには不正アクセスなどのセキュリティリスクがあることから、ネットワークを可視化する必要性が増しています。
ネットワークを可視化するには、手動での構成図作成、専用ツールの利用、オープンソースソフトウェアの利用などの方法がありますが、費用対効果を考えると専用ツールの利用をおすすめします。専用ツールは利用料金がかかるものの、機能やサポートが充実しており、オープンソースソフトウェアを導入できる高い技術力や語学力を持つ人材を確保する必要がないためです。
専用ツールの導入により、監視者の負担を軽減するだけでなく、人材育成コストの抑制なども可能です。まずは、既存の監視システムに「お客さま体感品質モニタリング・スマート」を追加することを検討してみてはいかがでしょうか。
さらにNTTコミュニケーションでは、アップグレードサービスとして「お客さま体感品質モニタリング」をラインナップしています。これはネットワークを可視化、企業の環境/計画に最適なコンサルティングを実施するネットワークアセスメントサービスです。経験豊富なエンジニアがネットワーク品質モニタリング、トラフィックモニタリング、アドバイザリレポートなどで課題解決をサポートします。キャリアならではの幅広いインテリジェンスを生かした状況の把握や分析、対策といったPDCAサイクルにより、継続的に体感品質を向上できます。気になる方はぜひお気軽にお問い合わせください。