講演レポート

DX×ITSM

デジタル戦略におけるITサービスの重要性

全日本空輸株式会社(以下、ANA)は、近年、顧客の体験価値向上や働き方改革に、デジタルの力を上手に取り入れることで、近年目覚ましい成果を上げています。「第 16 回 itSMF Japanコンファレンス/ EXPO」に登壇した、同社のデジタル変革室 企画推進部 部長として DX を推進する黒木敏英氏による特別講演の模様をレポートします。

全日本空輸株式会社
デジタル変革室 企画推進部 部長
黒木敏英氏

1992年4月全日本空輸(株)入社。空港や貨物のシステムのアプリケーション開発・運用に携わった後、IT部門の組織運営やデジタル・IT戦略の立案・推進に従事。PMP®、CGEIT®

国際線事業が急成長する中でシステム運用に課題が

ANAでは「国際線事業」が急成長を遂げている一方で、システム運用において新たな課題が生まれていると、同社の黒木敏英氏は語ります。

「世界中で24時間ひっきりなしに航空機が飛ぶようになり、従来のように日本時間の夜中にシステムを止め、メンテナンス処理を行うという方法が取れなくなってしまったのです」(黒木氏)

理由はそれだけではありません。近年、同社が力を入れているITを活用したサービスのデジタル化にもあると言うのです。

「インターネット、空港などでサービスのデジタル化、自動化が進んでいくと、ITへの依存度は高くなります。その中で、もしシステムが故障すれば事業停止に直結してしまいます。航空会社にとって、システム運用の重要性は日に日に高まる一方です」(黒木氏)

サイロ化したデータを統合し顧客体験価値を向上

ANAは、カスタマーエクスペリエンス向上のために、サービスのデジタル化を進めてきました。そこで問題となっていたのが、各事業部門でサイロ化したシステム環境でした。

「弊社のシステムは、予約業務はマーケティング部門、空港業務は空港部門、客室乗務員業務は客室部門といったように、部門ごとに個別最適化が進んでいました。そのため、部門を超えてデータを共有し、それをリアルタイムに活用することができなかったのです」(黒木)

「リアルタイムデータ統合」を実現するために、同社が構築したのが「お客様情報基盤(CE基盤)」です。

「CE基盤は、あらゆるタッチポイントで、お客さま一人ひとりのニーズにあった“One to One Service”を実現するための情報基盤です。航空券の予約・購入から、目的地への到着、旅の振り返りまでといった13のシーンを想定。各シーンにおけるお客さまの情報をタイムリーに共有し、スタッフが最適なサービスを提供できるようになっています。」(黒木氏)

サービスマネジメントという「守り」をイノベーションする

デジタル化が進んだ現代では、システム基盤が複雑化、多様化しています。黒木氏はその中で、サービスマネジメントにおける責任範囲は広がり、システム運用も合わせて複雑化していくと分析しています。さらに、長年の経験とスキルによってシステムの運用を支えていく従来型の人材育成も限界を迎えていると指摘します。

最後に、黒木氏は、いずれシステム運用の軸足はDXの貢献に伸びていくべきだと述べ、講演を締めくくりました。

「今後はさらなるテクノロジの活用によって、運用で収集したデータをビジネス貢献のためのインテリジェンスにつなげたり、企業の垣根を越えたエコシステムマネジメントで互助的なサービス改善に取り組むことを目指しています」守りにとどまらない、攻めのDXにもつながっていくANAのシステム運用が描く未来は、これからのサービスマネジメントを考える際の良きお手本になるのではないでしょうか。

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