講演レポート
海外大手ITアウトソーサーの
最近の動向からみた
マネージドサービスのトレンド
世界に数十万人もの社員をかかえ、成長し続ける海外大手アウトソーサーには、どんな特徴があるのでしょうか。「第17回 itSMF Japanコンファレンス」(2022年2月10日) に登壇した株式会社アウトロジック代表取締役の杉本幸太郎氏は、この疑問を出発点に包括的な調査を実施しました。
株式会社アウトロジック
代表取締役
杉本 幸太郎氏
1995年NTT入社。法人営業などを経て、1998年からNTTグループのシンクタンクに出向し海外調査や戦略分析、新規事業コンサルティングを担当。2006年に独立し、情報通信・ハイテク分野におけるトレンド調査やイノベーション戦略分析、企業戦略コンサルティングに従事。
情報に触れる機会の少ない海外大手ITアウトソーサーを徹底的に調査
システム/サービス開発において、企業のブレーンとなるのはITアウトソーサーです。杉本氏は、国内・海外市場において、どのような顔ぶれがその役割を果たしているのかを追いかけたと話します。
「国内市場では、富士通、NTTデータ、日立製作所、NEC、といった企業が上位に登場しました。海外市場では、Kyndryl、DXC Technology、Atos、Fujitsu、Accentureなどであることが判明しました。今回は、日本ではなかなか情報に触れる機会の少ない海外大手アウトソーサーに着目しました」(杉本氏)
調査対象としたITアウトソーサーは、Kyndryl(米国)、DXC(米国)、Atos(フランス)、Accenture(アイルランド)、TCS(インド)、Tech Mahindra(インド)、OBS(フランス)の7社です。
杉本氏は「このようなトッププレーヤーは、いずれも高い営業利益率を維持しながら、徹底したオペレーション標準化や自動化を進め、デジタルサービス基盤と人材を強化するとともに、高度なスキルを有する技術者を活用する仕組みを構築していたことが判明しました」と総括します。
高い営業利益率を生み出すために徹底した体制強化に注力
まず注目すべきは、高い営業利益率です。たとえば、TCSは過去10年以上にわたってほぼ25%以上を維持していますが、その大きな要因は、オフショアで単金の安い人材をうまく活用している点にあると、杉本氏は見ています。
Accentureも、世界50拠点以上を結んだ組織がグローバルサービスデリバリーを担っていて、全従業員62万人の7割近くがインドや中国、東欧などのデリバリーセンターに所属するとされます。
しかし、理由はそれだけではなく、各社ともオペレーション標準化や自動化といった業務改革を推進しつつ、利益率の高い商材の展開に注力しています。
フルスタック・ソリューションを提供すべくデジタルサービス基盤と人材を強化
このような取り組みをケーススタディとして、各社は顧客のシステム運用に適用するうえ、ビジネスアプリケーション自動化のオファリングにも拡張しています。TCSでは、企業向けニューラルオートメーションシステム「ignio」や、AI駆動型のヒューマンマシン・コラボレーション・スイート「Cognix」を考案。Tech Mahindraは、AIベースの「New Age Delivery」エンジンを活用したオペレーションフレームワークにより、サービスデリバリーの革新を進めています。
人材育成という観点では、パブリッククラウドに精通したエンジニアの確保に主眼が置かれています。Kyndrylは AWS、Microsoft Azure、Google Cloudのスキルセット拡大に取り組み、2024年までに従業員の50%がクラウド関連資格を取得する予定です。AtosはCloudreach買収により、クラウドに精通した600人以上のプロフェッショナル人材を獲得することになりました。
注目すべきはバリュークリエイション経営モデル
杉本氏は、以下のようにセッションを締めくくりました。
「海外大手アウトソーサーは、高い営業利益率を確立するために徹底したオペレーションの標準化と自動化を行い、サービス基盤やプラットフォーム・人材を強化しています。また、顧客からの信頼をベースにコストをかけてもあらたなケイパビリティを獲得していく取り組みもきちんと組みこんでいます。
事業全体を可視化して、柔軟かつ迅速に、またダイナミックにリソースアロケーションを可能にする体制を整え、全世界に50~60万人もの社員が分散して働く中でも全社レベルで価値創出に関する共通理解を常々促していくことが可能という意味でも、TCSやAtosに代表されるバリュークリエイション経営モデルは非常に重要な意味を持っていると、あらためて実感しました」
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