講演レポート

マネジメントの本質

マネジメントの本質に立ち返り
変革の時代を生き抜くビジョンを描く

近年、大きな変化を続ける社会とビジネス環境。世界規模での感染症拡大、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する世情不安や原材料の高騰など、時代の変化を予測し、それに対応していく上でさまざまなリスクも生まれています。このような社会環境において、ITサービスマネジメントには、何が求められていくのでしょうか。「第18回itSMF Japan コンファレンス」の西野弘理事長のオープニング講演(2022年11月24日開催)より、そのヒントを紹介します。

特定非営利活動法人 itSMF Japan
理事長
西野 弘氏

IT産業の黎明期からプロジェクトマネジメント、コールセンター、政府調達、政府CIO制度創生に関わるなど、多くの海外・民間・政府関連のプロジェクトに携わる。特定非営利活動法人CeFIL 理事 / DBIC共同創設者、特定非営利活動法人ITサービスマネジメントフォーラムジャパン 理事長

ウクライナのことを他人事と捉えず万一のリスクに備える

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻。ウクライナでは、ITサービスのプロフェッショナルたちの絶え間ない尽力により、ITインフラの運用が維持され続け、国民の生活を支えているといいます。

そのような背景を踏まえ、itSMF Japanでは、IT関連団体との共催により、2022年8月1日に「IT・デジタル強国ウクライナの背景と日本との協業の可能性を探る」というタイトルで特別セミナーを開催。西野弘氏は、その意義を示します。

「いまウクライナで起きていることを他人事と捉えることなく、リスクに備え、事業を継続することが不可欠ではないでしょうか。有事であってもITインフラが堅固に運用されていることがいかに重要であるか、あらためて認識することができました」(西野氏)

西野氏のオープニング講演では、セミナーの様子を動画に集約して上映。動画では、ウクライナを代表する世界的IT企業であるELEKSの経営陣が同社のプロフィールや活動内容を紹介。この戦禍の中でも、ITサービスが滞ることなく高い品質で提供され続けていることなどを通して、まさにウクライナが今日のIT先進国の1つであることが印象づけられました。

状況に応じて自分を変えていくことがマネジメントである

この後、西野氏は「自分が最近感じていること」と前置きして、企業のマネジメントについて、基本的な姿勢や考え方のヒントとなる話を続けました。

PMBOK(ピンボック)というプロジェクトマネジメントを正しく進めていくための方法を体系的にまとめたものがあります。そのPMBOKを学ぶためにアメリカを訪れた西野氏は、PMBOKを開発し、積極的に活用していた国防総省の高官からこのような話をされたといいます。

「マネジメントは、たくさんの書籍を読んだりして理解するものではありません。マネジメントとは、まずは”Do Right Thing”、すなわち『決めたことをしっかりやろう』ということですが、それだけでは十分とはいえません。”Do The Right Thing”こそがマネジメントであり、いま自分たちが行っていることが正しいかどうかを常に見据え、必要があれば変容・変化させていかねばならないのです」

いま日本の企業にはISOやITIL、各社のガイドラインなど、さまざまな決めごとやルールがあって、そこにサイバーセキュリティも加わって、られている感もありますが、「決めたことがいまの時代に適合しているのか、また未来のあるべき姿に対応できているのか、それを常に見直していかなければマネジメントとはいえません」と西野氏は提言します。

困難を克服するのはテクノロジーではなく人の意志である

次に西野氏は、PDCAサイクルについて触れていきます。

「最近、企業の現場で話をすると、DCAのことを”Please Do not Change Anything”と言い換える人が多いのです。何かを新しく変えようとすると、必ずどこかに抵抗が生じますが、『何も変えてくれるな』では、マネジメントはできません」

西野氏は企業に対し、これから1年ぐらいをかけて自ら新しい進化のシナリオを書いてほしいと提案します。プロジェクトマネジメントの分野では、OODA(ウーダ)ループという新しい考え方が広がっているという変化についても触れました。OODAは、「観察・方向づけ・意志決定・行動」という4つのプロセスをループにして繰り返すという考え方で、スピーディーな意思決定や行動が求められる際に有効であると評価されています。

そして西野氏は、オープニング講演を以下のように締めくくりました。

「マネジメントとは何か、PDCAがちゃんと回っているのか、自分たちの会社のこととして、ぜひ考えてみてください。それを社内で議論し、新しいアクションを計画し、実行に移すことが必要です。そういう行動をやり抜く胆力が、いま日本のIT企業に求められていると思います。

コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、社会は思いがけないような困難な状況に直面することがありますが、それを克服して社会を前に進めるのは人間の力です。人の意思こそが困難に打ち勝つ原動力になります。一人ひとりが、『自分の職務とは何か』『自分が仕事を通してどのように社会に貢献できるのか』と自身に問いかけ、会社が取り組んでいる新しい挑戦など、常に当事者意識を持って向き合うことが必要です。そうやって、この変革の時代を力強く生き抜いていってほしいと願っています」

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