講演レポート

最新の生成AI潮流と
マーケティングでの利活用
AI技術は、ディープラーニングの進化による第3次AIブームから、生成AIが主流となる第4次AIブームへと移行しています。生成AIは、従来のデータ解析型AIとは異なり、大規模なデータセットがなくても実用レベルでの活用が可能になったことが特徴です。
この技術の進展により、マーケティング領域での活用も加速しており、顧客体験(CX)やユーザー体験(UX)の向上に直結するツールとして、企業のDX推進に欠かせないものとなっています。本講演では、株式会社電通デジタルの有益伸一氏が、最新の生成AIの潮流とマーケティング領域での活用事例、そして今後の展望について解説しました。

株式会社電通デジタル
トランスフォーメーション領域マネージャー
有益 伸一 氏
生成AIの進化と第4次AIブームの特徴
「AIの進化は何度もブームを繰り返してきましたが、現在は第4次AIブームの時代です」と有益氏は語ります。
これまでの第3次AIブームでは、ディープラーニングによる大量のデータを基にした予測や分類が中心でしたが、対して第4次AIブームでは、「生成AI」が中心となり、画像やテキストの生成が実用レベルに高まりました。
特に大きな変化として、
- 事前に用意すべきデータが少なくても高精度な結果を生成できる
- 自然言語による対話が可能になり、非エンジニアでも使いやすい
- テキストだけでなく、画像・動画・音声の生成が進化
といったポイントが挙げられます。
「これまでのAIは、専門的な知識を持つエンジニアにしか扱えませんでした。しかし、生成AIは非エンジニアでも活用できるため、とりわけ決裁権限のある方々へのご理解がスムーズになったことで、導入へのハードルが下がることとなりました」」と有益氏は説明します。

マーケティングにおける生成AIの役割
マーケティング領域において、生成AIはすでにさまざまな形で活用されています。
「現在は認知段階での広告作成や、検索エンジンにおけるキーワード最適化、お問い合わせ対応の自動化などでAIが活躍しています。
しかし、これからは生成AIがユーザーの曖昧なニーズを明確化し、購買行動へ誘導する役割を担うようになるでしょう」と有益氏は指摘します。
例えば、従来のチャットボットはルールベースで、「イエス or ノー」の選択肢に限られていました。しかし、最新の生成AIはより自然な対話が可能となり、顧客が自分でも整理できていない「ふんわりとしたニーズ」を明確化し、最適な提案へと導くことができます。
事例1:AIを活用したマンガレコメンドサービス「DEAIBOOKS」
その代表的な活用事例が、集英社の「DEAIBOOKS」です。
「多くの読者は、自分の好みのマンガを明確に言語化できないことが多いです。そこで、AIによるアバターと対話することで、自分に合ったマンガを見つけやすくする仕組みを導入しました」と有益氏は説明します。
このシステムでは、ユーザーが好きなマンガの系統をアバターに伝えながら、会話を通じて「やっぱりこっちのほうが良いかも」といった意思決定をサポートし、最適なマンガをレコメンドします。
事例2:ゴルフ場の特性を分析し、最適なコースを提案する「GOLF-AI Lab.」
もう一つの事例が、大手ゴルフポータルサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」を運営するトライト社との共創事業です。
このプロジェクトでは、ゴルフ場のレビューをAIが解析し、それぞれのゴルフ場の特性(ゴルフ場DNA)を生成。ユーザーの希望条件にもとづいて、最適なコースをレコメンドするサービスを開発しました。
「例えば、コースの設計や状態、レストランなど、そのゴルフ場の特徴を示す『ゴルフ場DNA』を生成し、最適なゴルフ場を提案する仕組みを構築しました」と有益氏は語ります。

今後の展望:生成AIによるマーケティングの進化
生成AIの発展により、マーケティング業務の大部分が自動化される時代が近づいています。
「ある研究では、『全職業の80%がAIの影響を受ける』と予測されています。しかし、これは人間の仕事がなくなるという意味ではありません」と有益氏は強調します。
特に、生成AIの活用によって、クリエイティブ業務の生産性が5倍に向上していると述べ、次のように説明しました。
「例えば、プログラミングやライティングの作業では、AIを活用することで60〜70%の業務時間を短縮できます。しかし、最終的な判断やアイデアの創出は人間の役割として残るため、AIの補助を受けながら、より創造的な業務に集中できる環境が整っていくでしょう」。
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