講演レポート

ネットワーク革命
IOWN構想とNTT Comの挑戦
生成AIの急速な普及により、データセンターや半導体工場の消費電力が急増し、2033年には現在の11倍に達すると予測されています。
この問題に対応するため、NTTグループは「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想を提唱し、革新的な光通信技術によるエネルギー効率の向上と、超低遅延・大容量通信の実現を目指しています。
本講演では、NTTコミュニケーションズの莊司哲史氏が、IOWN構想の背景、技術的な進展、そして社会実装に向けた挑戦について紹介しました。

NTTコミュニケーションズ株式会社
イノベーションセンター IOWN推進室
IOWNエバンジェリスト
莊司 哲史 氏
電力消費の急増とIOWN構想の必要性
「ChatGPTのような生成AIを1回学習させるだけで、原子力発電所を1時間フル稼働させるほどの電力が必要になると言われています」と莊司氏は語ります。
今後、AIの活用が拡大するにつれ、電力需要はますます増大し、2050年には現状より3〜4割増加すると見込まれています。しかし、日本はエネルギー資源の多くを輸入に依存しており、持続可能な電力供給が課題となっています。
そこで、NTTグループが開発を進めるのがIOWN構想です。
IOWNは、光通信技術を活用し、従来の電子(エレクトロニクス)ベースのネットワークをフォトニクス(光)ベースに移行することで、圧倒的な低消費電力・高品質・大容量・低遅延通信を実現しようというものです。
「2032年までに、現状比200分の1の低遅延、125倍の大容量、100倍の高電力効率を実現することを目標に、研究開発が進められています」と莊司氏は説明します。

ネットワークの「全光化」がもたらす変革
IOWNの第一段階として、NTTグループは「IOWN 1.0」を目標に、まずネットワークの全光化を進めています。
現在のネットワークは、光ファイバーを使用していても、データはルーターやスイッチを通じて何度も電気信号に変換されます。しかし、端末から端末まで完全に光だけで通信できるようになれば、変換による電力消費を大幅に削減できるのです。
さらに、通信遅延の低減も期待されます。「従来の通信は、データが複数のノードを経由するため遅延が発生します。しかし、IOWN APN(All Photonics Network)では、データが直接目的地へ到達するため、通信の遅延を劇的に改善できます」と莊司氏は述べます。
すでに2024年には、東京と台湾を結ぶ2,893kmのIOWN APN実証実験が行われ、理論値に近い17ミリ秒の低遅延を達成しました。遅延の揺らぎも極めて小さく、遠距離通信でも近距離並みの安定性が確保できることが証明されました。
IOWN 2.0以降の展望:コンピューター内部の光化へ
NTTグループは、IOWN 1.0(ネットワークの光化)の先に、「IOWN 2.0」以降の構想として、コンピューター内部の光化も視野に入れています。
現在、コンピューター内部の配線は電気信号を用いており、処理速度が向上するにつれて電力消費や発熱の問題が深刻化しています。これを解決するために、基板やチップ間の通信を光化し、データ転送効率を飛躍的に向上させることを目指しています。
「最終的には、コンピューター内部まで光化することで、電力効率を100倍、通信速度を125倍に向上させることが可能になると考えています」と莊司氏は展望を語ります。

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