ICT運用の最前線!熱きプロフェッショナルたちの物語 vol.04「守るべき聖域を守りながらDXにも挑む。常に考えているのはお客さまの事業の未来」 ICT運用の最前線!熱きプロフェッショナルたちの物語 vol.04「守るべき聖域を守りながらDXにも挑む。常に考えているのはお客さまの事業の未来」 ICT運用の最前線!熱きプロフェッショナルたちの物語 vol.04「守るべき聖域を守りながらDXにも挑む。常に考えているのはお客さまの事業の未来」

ITに求める品質基準の高さにおいて、日本企業は世界でもトップレベルに位置します。その頂点に君臨するのが銀行、証券といった金融系の企業です。幅広い業種・業態の企業、組織のIT運用をサポートするNTTコミュニケーションズのマネジメントサービス部では、金融系の顧客も少なくありません。そこでは顧客とサービスマネージャーの契約を超えた強い「絆」が存在します。

今回は金融系のミッションクリティカルなIT基盤の運用を担当する2人のサービスマネージャーの日々の取り組みをセレクト。森伊佐夫サービスマネージャー、鈴木拓サービスマネージャーの熱い奮闘記をお届けします。

金融業としては革命的だったServiceNowの導入

NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の森伊佐夫と鈴木拓は、マネジメントサービス部で金融系の顧客を担当するサービスマネージャーです。

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第一マネージドソリューション部門
第一グループ
主査 森伊佐夫

2003年の入社以来、大手証券会社のSEを6年、サービスマネージャーを8年、キャリアのほとんどを同証券会社とともに歩んできた。現在は大手銀行系クレジットカード会社のネットワークの24時間運用をサービスマネージャーの立場から統括している。難局から逃げないことを矜持にしている。趣味はサッカー、マラソン。フルマラソンの自己ベスト3時間18分、圧倒的な脚力が武器のサービスマネージャーである。

それぞれ担当する顧客は異なりますが、二人の共通項は金融系ひと筋、業界事情に精通したスペシャリストであること。現在、デジタライゼーションの波を受けて日本の金融業界が変革の時期を迎えつつある中、森サービスマネージャーは「変わっていく必要性を感じながらも、簡単に変えることもできない」という顧客の悩みを肌で感じ取っています。

「これまで、日本の金融業界は堅牢なシステムをフルスクラッチで開発し、クローズドのオンプレミスで運用することにより高い信頼性を担保してきました。一方で現在のITのトレンドはオープンなクラウドを活用し、柔軟でスピーディなアジャイル開発が主流になりつつあります。昔から守ってきた聖域の安全性を100%担保しながらクラウドを活発に利用したい、二つの相反するテーマに整合性を持たせて進めていくことに、多くのお客さまが苦労されています」(森)

IT基盤の運用に携わる二人は、お客さまの「守るべき聖域を守り抜く」ことが大前提だと考えています。鈴木サービスマネージャーは、その上で積極的なサービス提案を心がけています。

「私は、大手銀行でグローバルネットワークのオペレーションを担当しているのですが、チケット管理を自動化、効率化したレスポンス向上のためにServiceNowを活用しています。これはクラウド上にデータを集約、活用するサービスであり、金融業界としては革新的な決断だと思っています」(鈴木)

森サービスマネージャーの担当するクレジットカード会社は、複数のカードブランドの統合により誕生しました。各ブランドが個別に構築したシステムを一本化する基盤として、AWSが導入されています。

「既存のシステムを守るために厳しいルールが定められており、AWSの利用が拡大するたびに何百行ものコード変更が必要になることもあります。それをお客さまの求める納期で対応できるよう仕組みやプロセスを整える事が求められています。また、他のITベンダーの運用範囲との連携が必要な事も多くあるのですが、ベンダー間の調整でスピード感を落とすことが無いように、構築、運用に関わるすべてのITベンダーをリードする気持ちで取り組んでいます」(森)

「品質を守る立場として嫌われ役にもなる覚悟です」

金融系ネットワークでは、リアルタイムな商取引で利用されるため、わずか1秒未満の通信の遅延でも大きな損害が生まれることもあります。

もちろん、ネットワークは切断が絶対に許されないため、冗長構成になっており、万一、メインの回線が切断された場合は瞬時にサブの回線に切り替わります。しかし、これが国どうしを結ぶグローバルネットワークになると、メイン(最短)とサブ(迂回)回線の物理的な距離の差が影響し、大きな遅延を生んでしまうこともあると鈴木サービスマネージャーは語ります。

「グローバルネットワークの場合、お客さまに求められる品質を担保するためには、海外キャリア、現地の回線部隊との緊密な連携が必須です。日本に比べて海外では品質の考え方が異なり、日本のお客さまにとっては品質が低いと捉えられることもあるため、私もお客さまと同じ立ち位置で厳しい要求をすることも少なくありません。ときには嫌われ役になりながら、辛抱強く交渉を続けることを大事にしています」(鈴木)

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第一マネージドソリューション部門
第一グループ
鈴木拓

2015年入社、大手銀行のグローバルネットワークの設計・構築を担当するネットワークエンジニアを経て、同銀行のグローバルネットワーク運用を一手に担うサービスマネージャーに就任。日々の業務では顧客目線を大切にしており、ときには泥をかぶる「嫌われ役」になることも厭わない。今年、娘の誕生で一念発起、かっこいいパパを目指して筋トレを始めた、自称フィジカル派のサービスマネージャー。

森サービスマネージャーは、あまりにもハイレベルな品質が求められるため、契約内容を超えてお客さまをサポートするケースもあると明かします。「かつて証券会社を担当していた頃は、故障から3時間以内に駆けつけ対応をする契約になっていましたが、その条件をクリアできても“もっと早く”と注文がつくことは珍しくありません。契約ですからといって断ることもできますが、可能な限りはお客さまの要望に応えられるよう、社内や協力会社のメンバーと協力して頑張っています。そうした繰り返しが、お客さまとの信頼関係を育むはずです」

鈴木サービスマネージャーは、グローバルネットワークの担当であるため、駆けつけ対応をすることはありません。しかし、契約書に明記されていない場合でも、特別な故障対応を行うことがあるといいます。

「日本から海を渡って海外の国や地域に伸びたネットワークは現地の局舎につながり、そこから海外キャリアの回線を利用して各拠点にまで伸びていく非常に広範囲で複雑な構成になっています。そのため故障が発生した際には、日頃の運用で築き上げたネットワークの構成管理データを参照して故障個所の特定を行い、迅速な指示が出せるようにしています」(鈴木)

森サービスマネージャーには、駆けつけ対応の忘れられないエピソードがあります。「サッカーでアキレス腱を断裂し、松葉杖をついていた頃の話です。早朝に深刻な故障発生の連絡を受け、朝6時に飛び起き、タクシーに飛び乗り現地の支店に7時に駆け付け、危機的状況を回避したことがあります。松葉杖であれだけ早く動けたのは自分でも驚きでした(笑)

そういった姿勢を見ていただけたのか、私が証券会社の担当を退くとき、お客さまが送別会を開いてくれたのですが、そこに歴代のご関係者が30人以上もいらして下さり本当に感激しました。それまでの頑張りが報われた瞬間でしたね。」

契約を超えた頑張りが報われ、そこには契約以上の深い信頼関係が築かれていたのです。

標準化を進めて専業化の壁をなくす

サービスマネージャーの役割は、IT基盤の故障を極限まで減らし、安定運用を支えること。基本的な運用ルールをつくり、運用部隊に周知することがメインの仕事のため、故障が起こらない限りのんびりしている印象があるかもしれませんが、実際は違うようです。

「時間ができれば、いかにお客さまのIT基盤を改善するか、新しい提案で効率化するかを常に考えています。従来は駆けつけ対応も現場担当者が行いますが、それでも重要な故障発生時には自ら出向きますし、現場での気づきを次の改善に役立てることを大事にしています」(森)

鈴木サービスマネージャーも故障のない平時こそ顧客のビジネス、IT基盤を深掘りするチャンスだと考えています。

「私はサービスマネージャーとして、お客さまのグローバルネットワークの運用データを見て、メールをクラウドに乗せればトラフィックが削れる、この通信はSD-WANでインターネットのオフロードができるなど、いろいろな改善提案を常に考えています。今後は運用で得た知見、ノウハウ、お客さまの事業展望を踏まえて、ビジネスの成長に直結するデータ分析、利活用などの新たな提案も積極的にしていきたいですね」(鈴木)

森サービスマネージャーは、豊富な知見、ノウハウを活かし、あらゆるケースを想定してすぐに行動に移していくことが「サービスマネージャーの資質」だと持論を語ります。

「何か起きたときには状況を的確に把握し、速やかに原因を特定して復旧にあたり、再発防止の改善を行い、その状況を逐一お客さまにお伝えして安心させる。それを日々繰り返すのが私たちの仕事です。

従来のサービスマネージャーは、お客さまのビジネスに深く入り込む専業化によって高い付加価値を提供してきました。しかし、これからはお客さまのシステムの標準化を進め、専業化の囲いをなくし、業務状況に応じて人員をドラスティックに動かせる体制をつくりたいと考えています。それがお客さま、私たち双方の事業変革につながると信じているからです」

深い知見を持った「専業化」に加え、広いエリアをカバーできる「兼業化」、さらには拡大するシステムの標準化、そうしたサービスマネージャーの取り組みが金融業界のDXを推進させるカギになるのかもしれません。

※肩書き、プロフィールは取材当時のものです

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