中央省庁で導入されているIT基盤は、国家の運営を支える絶対に止められないライフラインです。そのため、運用管理には一般企業をはるかに凌駕する非常に厳しい条件が求められます。NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)には、そうした国家の心臓部を長年にわたり支えてきたプロフェッショナルチームが存在します。
今回は、これまで多くの中央省庁でIT基盤の運用管理を担ってきた「ベテラン」サービスマネージャー鶴長政則、彼の背中を追う「ルーキー」サービスマネージャー長嶺大輔のめくるめく活動を紹介します。
鶴長と長嶺は、NTT Com ビジネスソリューション本部に在籍し、サービスマネージャーとして中央省庁のネットワーク基盤の運用保守を担っています。
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第一マネージドソリューション部門
第三グループ 主査
鶴長政則
1992年入社。伝送装置の運用保守を経て、上流工程にあたるソフトウェアの基本設計、開発に8年間従事。その後は中央省庁などの公共系の顧客を担当するサービスマネージャーとして16年のキャリアを重ね、現在はチーム管理業務の傍ら、人材育成による自身の後継者づくりに力を入れている。オフタイムの趣味は海釣り。温暖化の影響で千葉沖に北上しているという、キハダマグロを狙う。
中央省庁の多くは本省を霞が関に置き、全国に数百、場合によっては千以上の拠点を展開しています。2人が主に担当しているのは、そうした拠点間を結ぶ大規模な閉域ネットワークです。鶴長は、中央省庁はすべての国民がお客さまにあたる点で、一般的な企業とは大きく異なると語ります。
「中央省庁における運用保守では、日本国民から国家のICTインフラに対する信頼を損なわないことが大前提になります。たとえば、ネットワークが故障して年金支給などの対応が遅れることは許されないのです。中央省庁のネットワークは、絶対的な安定稼働が求められるライフラインであるため、その運用保守を担う私たちの責任は重大です」(鶴長)
そんな緊張感の漂う運用保守の現場で、非常にユニークなキャリアアップを重ねてきたのが、2019年12月よりサービスマネージャーに転身した長嶺です。
「中央省庁の案件には、5年前にはじめてヘルプデスクのオペレーターとして関わるようになりました。その後、現在のサービスマネージャーに至るまで、ほぼ1年単位で担当職務が変わるという刺激的な時間を過ごしてきました」(長嶺)
運用保守のようなマニュアル化されている定型作業は、現場のオペレーターによる対応で大半は片付きます。サービスマネージャーに求められるのは、現場では処理しきれない非定型なオーダーへの対応です。鶴長は、ここでは圧倒的なスピード感が求められることが多いと明かします。
「新システムの組み込みなどに伴い、既存ネットワークの仕様を変更したという相談が増えています。直近でいうとコロナ対策でテレワークに切り替える際、速やかに通信帯域を拡大してほしいというオーダーがありました。タイトなスケジュールだったのですが、社内の設備部門に頭を下げて迅速に対応することができました。お客さまからも、合格点をもらうことができてホッとしています」(鶴長)
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第一マネージドソリューション部門
第三グループ
長嶺大輔
NTTグループ企業のオペレーターから徐々にキャリアを積み重ね、2019年12月にNTTコミュニケーションズに入社し、サービスマネージャーとして多忙な日々を送っている。現在は中央省庁の現行ネットワーク基盤の運用保守の傍ら、来年の更改に向けて次期ネットワーク基盤の運用設計に携わっている。ステイホーム期間に料理に目覚め、こだわりぬいた手づくりチャーシューは家族からも絶賛されたという。
現在、長嶺は、ある省庁の既存ネットワーク運用保守を担当しながら、並行して進めているのが次期ネットワークの更改に向けた運用設計です。
「次期ネットワークでは、これまで難しかったネットワーク内を流れるデータの量、種類が可視化できるようになります。このような新しい技術を取り入れたネットワークの場合、たとえ優れた運用設計を用意しても、こちらの意図をきちんと伝えられないと、お客さまからの共感、納得は得られません。そのため、この案件を含めて日ごろから、お客さまの立場でわかりやすく伝えられるように配慮しています」(長嶺)
そうした長嶺の成長を優しい眼差しで見守り、的確な助言を与えているのが鶴長です。
「私もお客さまのマインドを理解することは、大切なことだと考えています。中央省庁のすべての官僚、職員は国家運営、国民の生活を支えているという意識、責任感を持っています。私たちサービスマネージャーも、ただオーダー通り仕様の提案を行うのではなく、必ずお客さまの先にいる国民への目線を持つことが欠かせません」(鶴長)
中央省庁との会議は張り詰めた空気の中で行われることも多いといいます。そこで、長嶺は空気を和らげるアイスブレイクを大事にしています。
「ちょっとしたユーモアを挟んだりするなど、議論しやすい雰囲気づくりを心がけています。これはオペレーター時代に受けた、たくさんのお叱りを糧にして身についたスキルです(笑)。お客さまとの関係性を深めることで、会議は円滑に進行でき、プロジェクトも加速します」(長嶺)
昨今、日本政府は行政サービスなどの電子化、デジタル化に大きな投資をしています。鶴長は、デジタルの実装は加速して進んでいくと考えているようです。
「徐々に、国民をオールデジタルで豊かにする議論は進んでいくと思います。すでに中央省庁では、IT基盤の共通プラットフォーム化がはじまっています。今後登場してくるIoTを活用した高齢者向け行政サービスなど、国の新しい取り組みを支えるIT基盤の安定運用を行うことが、NTT Com、そして、私たちサービスマネージャーの使命だと考えています」(鶴長)
これまで多くの中央省庁を担当してきた鶴長が、現在、心血を注いでいるというのが後継者たちの育成です。
「目標は私のコピーをつくることです。長年の苦労から得た知見、想いを、長嶺をはじめ後輩や部下に伝えていきたい。まだ時間はかかりそうですが、達成できたら私も安心して引退できます(笑)」(鶴長)
長嶺は鶴長と一緒に行動し、多くのことを吸収しているといいます。その中で、特に参考にしているというのが、どんな状況でも顔色を変えない鶴長の圧倒的なコミュニケーション能力だといいます。
「鶴長と一緒に仕事をして5年になりますが、どんなに理不尽な相談内容であっても、怒ったり、怒鳴ったりする場面を全く見たことがありません。サービスマネージャーとして尊敬しており、見習いたいと考えています」(長嶺)
感情をコントロールする能力に長けた鶴長。そこには独特の観点があるようです。
「長年の経験の中でカッとなっても一度飲み込む癖をつけ、これは人生の修行だと考えるようにしています。たとえば、オペレーターを強い言葉で叱責すると次から相談が来なくなってしまいます。チームの風通しを悪くするようでは、サービスマネージャーとして失格です。加えて長嶺には“難しい”“無理“といったネガティブな発言をするなとも指導しています。そういう言葉を使うと、仕事は悪い方向にしか進まなくなるからです。態度や言葉に出さず、冷静な状況判断ができるスキルを後継者たちには伝えていきたいですね」(鶴長)
目指すべき鶴長の背中は大きく、道のりも遠いと長嶺は考えています。
「私からすると、鶴長はすでに悟りを開いているように見えます(笑)。そうした先輩のもとでキャリアを重ね、5年後には担当省庁のことは私に聞けばすぐわかる、ミスター○○省と呼ばれるようになりたいですね」(長嶺)
オペレーターに始まりサービスマネージャーへの道のりを駆け上がってきた長嶺のような人材を、いずれは自身の意思を受け次ぐ管理者に据えたいと鶴長は考えています。
「今後は長嶺に続く新たな人材を広く募っていく予定です。運用保守に加えて、これからのサービスマネージャーにはオペレーション、設計、構築など多様な技能が求められます。幅広い視点からお客さまのマインドを理解し、お客さま志向で考えられる人材層を厚くしていく必要があるためです。私たちが目指すのは、コストパフォーマンスではありません。カタログスペックでもありません。フルデジタルが進む世の中で、むしろ“人間味”という人と人のコミュニケーションを大切にした提案でお客さまに寄り添っていきたいと考えています」
※肩書き、プロフィールは取材当時のものです