働き方改革に向けたSaaSの活用、コロナ禍で急増したオフィスワークからテレワークへの移行など、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化するニューノーマル下で、ITツールの導入が急速に進んでいます。その一方では、新たなITツールの活用に従業員が対応していくために、それらの操作を支援し、技術的な質問に回答する社内ヘルプデスクの拡張が不可欠になり、IT部門は導入とヘルプデスクという二重の負荷がかかるようになっています。
このようなテックリソース課題に対して、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)ではシステム管理者やエンドユーザーからのITに関する問い合わせに一元対応するグローバルアウトソーシングサービス「スーパーヘルプデスク」を提供しています。当サービスを統括する部署で活躍するサービスマネージャーは日々、どのようにミッションを遂行しているのでしょうか。
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第二マネージドソリューション部門
第八グループ
主査 小山修一
1990年の入社よりNTTの社内システム、基幹系ネットワークなどの開発業務に約10年携わる。その後、データセンター事業部の事業計画担当、客先常駐の運用保守を経て2005年より現職のサービスマネージャーに。最近、ハマっている趣味は学生時代に熱中したクラシックギターをつま弾くこと。
ネットワークやIT機器が複雑化する中で、ITに特化したヘルプデスク業務の重要性が高まっています。しかし、ITに関するヘルプデスク業務はテクニカルな専門知識が必須となるため、社内での人材確保、育成が難しいといった課題を持つ企業は少なくありません。
そうした課題を解決するアウトソーシングサービスがあります。NTT Comの「スーパーヘルプデスク」です。小山サービスマネージャーは、スーパーヘルプデスクを担当する部署に所属し、配下の5チーム、総勢約100名のスタッフをマネジメントしています。
「私が所属する部署はNTT ComでITヘルプデスクを提供しています。私が主に担当してきた業務は金融系ヘルプデスク専用チーム、オフショア(海外サービス拠点)チームなどのマネジメント業務です。とくにマレーシアで展開するオフショアの仕組みづくりにはゼロベースの立ち上げ当初から関わり、事業を成長させてきた経緯があります。また、オフショアセンターだけでなく国内でもグローバル向けのヘルプデスクを提供しています。」(小山)
現在、オフショアを中心にしたグローバルなヘルプデスク事業のサービス責任者は角本サービスマネージャーが担当しています。
「私のミッションはグローバルヘルプデスクの運用業務、個別案件の提案業務、新サービス開発業務、設備業務など多岐にわたります。中でも多くの労力を割いているのはオフショアに委託している数社のお客さまへの対応です。トラブル、インシデントが発生すればマレーシアの拠点と連携して終息させ、お客さまに月次報告を提出し、改善に向けた調整など、さまざまな業務を担当しています」(角本)
今後、ITヘルプデスクの事業は、国内外でますます伸びていくと小山サービスマネージャーは考えています。
「以前は働き方改革に向けたMicrosoft 365の導入に伴う案件が多かったのですが、現在はコロナ禍の影響を受けてテレワーク、リモートワーク環境の整備などを起因とした案件が増えています。お客さまは、こうした時代の流れに合わせて新たなテクノロジーを使いこなす必要があり、サポートを行う社内ヘルプデスクの負荷も大きくなっているようです。そのような課題を持つお客さまに、私たちはマルチリンガルで24時間365日対応が可能な高品質なITヘルプデスクのサービスを提供し、負荷の軽減に役立てればと考えています」(小山)
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
ソリューションサービス部
第二マネージドソリューション部門
第八グループ
角本邦臣
2007年入社。コールセンター研修、OJTの終了後はサービスの販売企画、営業、人事・育成などキャリアを重ね、2019年より現職のサービスマネージャーに就任。主にオフショア案件のマネジメントを手がけている。休日は子どものバレエ、水泳などお稽古ごとに帯同。子どものマネジメントについては妻から叱咤激励を受ける一面も。
オフショア案件は業務を海外ベンダーに委託して共同しながら行うため、タフな交渉も必要になるといいます。小山と角本は、グローバル拠点のウイルスソフトを統一したという過去の案件をもとに、オフショアの難しさについて振り返ります。
「その案件は、お客さまが海外でも国内と同様のガバナンスを効かせるために、海外の各拠点に同じウイルスソフトをインストールするというものでした。そこで、各拠点のアンインストールと、新たなソフトのインストールをサポートするヘルプデスクをオフショアで立ち上げました。最初の提案を小山が担当し、ほぼ受注が決まった段階で私が引き継ぎ、ヘルプデスク運用仕様の作り込みを行いました。海外ベンダーには、当時の言葉でいう「日本品質」を理解してもらえない、あるいは、日本の常識や商習慣が全く通用しないことも多く、苦労もありましたね」(角本)
オフショア案件では日本企業のサービスを海外ベンダーに委託するかたちをとるため、サービスマネージャーは両者の間に立ってバランスを取る「扇の要」の役割が求められます。日本人同士のビジネスとは異なり、国内外のプレーヤーが交錯するオフショア案件には配慮すべき点が多々あるといいます。
「日本人同士のビジネス文化では、互いに“気持ちを察する”配慮が働くため、細かく仕様を詰めなくてもある程度案件は回ります。しかし、日本のお客さま要望をヒアリングし、海外に依頼することになると必ずギャップが生じることがわかりました。そこを埋めるには、日本人同士のセオリーは全く通用せず、極めてシビアに仕様をつめていくような進め方が必要になります」(小山)
このような文化の違いに加え、契約順守という「壁」も立ちふさがりました。
「海外ベンダーの業務は、契約書や運用仕様書に記載された内容にすべて準じるというのが常識です。いわゆる“マニュアルどおり”ということです。そのため、契約書や運用仕様書の内容については、非常にシビアな交渉や調整が必要になります。本件では、記載の抜け、漏れがないようにするため、何度も現地と定例会を重ね、仕様を改善しながら、最終的にお客さまに満足いただける品質のサービスにたどりつきました。この経験が今では大きな自信になっています」(角本)
角本サービスマネージャーは、複数のオフショア案件を担当する多忙な日々を送っています。その中で、海外ベンダーとの連携の仕方について自分なりの知見を得たようです。
「海外ベンダーとは建設的に議論を重ねることで一定の方向性、結論を見出すようなコミュニケーションを心がけています。稚拙であっても臆することなく英語を話し、議事録は日本語と英語で併記する、日本語でメールを出すときには英語のサマリーをつける。そうした姿勢や熱意は国が違っても同じ人間同士なので伝わり、心が動くのです。新型コロナが流行する現在は現地に行くことができないため、意識的にリモート会議の回数を増やし、積極的に相互理解を深めるようにしています」(角本)
そんな仕事ぶりを小山サービスマネージャーはこう評価します。「私がオフショアを担当していたころにも、上手く意思疎通ができないことは多々ありました。それを角本が引き継いでくれて、より高いレベルに引き上げてくれているので、非常に頼もしく、さらに高品質なサービスに育っていくのではないかと感じています」
角本サービスマネージャーは、日本国内のお客さまとのコミュニケーションにも変化が生まれていると感じています。
「日本のお客さまが望むことが理屈に合っていれば、予算面を含めて全力で海外ベンダーとのタフな交渉することも辞しません。多少、無理な要求でも、お客さまのビジネスの発展を考え、粘り強く議論を重ねるようになりました。寄り添える結果が得られて、お客さまから喜んでいただけときには、心底、良かったなと感じますね」(角本)
かつて、角本サービスマネージャーは、「お客さまからのクレーム、セキュリティのインシデント対応は最優先で火消しに回れ」というアドバイスを小山サービスマネージャーから受けたといいます。
「小山から学んだ“火消し”という話は、保守運用の世界では非常に大切なことで、ビジネスを継続できるか、逃すかの分かれ目になると考えています。この言葉を私はつねに胸に刻んで仕事をしています」(角本)
クレームやインシデントの火消しが重要なミッションであるとしつつも、目指すべきゴールは別のところにあると小山サービスマネージャーは考えています。
「お客さまのサービスが安定している状態、何も問題が起きず継続的に運用できている状態こそが理想です。私がいても、いなくてもニュートラルに回る状態を目指したいと考えています。これは部署内、オフショアのチームでも同じです。私がフォローせずとも各スタッフが一人称で課題を解決し、サービスを作り上げるチームのサイクルが上手く回っている状態を目の当たりにすると、苦労してやってきて良かったなという達成感を感じます」(小山)
チャットボットによるオペレーションの自動化、AIを駆使した音声の感情分析による応対品質の向上、運用の可視化による業務の効率化など、ヘルプデスクを進化させるテクノロジーが次々と登場しています。その中で、角本サービスマネージャーはオフショアの進むべき未来も明確に描いています。
「現在、私たちの部署では“改善ワーキング”を立ち上げ、トラブルの再発防止を目的としたミッションに取り組んでいます。もう少し具体的に説明すると、あるお客さまのもとで過去に起きたトラブルが別のお客さまで発生しないようにする仕組みづくりを進めているのです。これにはサービスマネージャー同士の緊密な連携が必要になるため、いままで以上に円満なコミュニケーションができる信頼関係づくりを心がけています」(角本)
いずれヘルプデスクなどのコンタクトセンタービジネスは、人中心のスタイルから人とAIのハイブリッドに変化していくと考えられています。さらに利用するユーザーのワークスタイルも5Gなどにより多様化していくことは間違いありません。
「人の強みを引き出し、人と共創するAIのアドオン、オフィスに縛られない働き方にアジャストできるセキュリティ対策など、時代の要請に応えてサービスを継続的に進化、成長させていきたいですね。多くのサービス、テクノロジーを持つNTT Comの強みは、そこにあると思っています。私は現在55歳なのですが、少なくとも10年は腰を据えてサービス、そしてチームを育て上げ続けていくつもりです」(小山)
※肩書き、プロフィールは取材当時のものです
「バーチャル見学会」動画のご紹介
エンドユーザーさまからのお問い合わせに対応する「スーパーヘルプデスク(SHD)」の設備・運営模様をご覧いただける「バーチャル見学会」動画を公開しています。
入室の様子や実際のオペレーションルーム内の対応風景など、バーチャルに体験できる内容となっておりますので是非ご覧ください。