コールセンターの離職を防止する
EX(従業員満足)向上の取り組みとは?
コンタクトセンター運営のCX(Customer Experience)向上の鍵は、EX(Employee Experience)向上にあります。そのような相乗効果を実現するソリューションに着目します。
コールセンターがEX向上に取り組む理由
CX(Customer Experience)・VOC(Voice of Costomer)との違い
昨今、多くのコンタクトセンターにおいて重視されているのがCX(Customer Experience)である。顧客がコンタクトセンターに問い合わせを行った際、オペレーターの対応が適切であったり、顧客が抱えていた問題を素早く解決することができたりすれば、顧客の満足度は高まり、企業やブランドに対するロイヤルティが高まることになるだろう。また、顧客の声(VOC:Voice of Customer)を事業部門や経営層に届け、顧客の満足度を高める製品やソリューションの創出につなげることも、CX向上におけるコンタクトセンターの重要な役割となる。
EX(Employee Experience )とは? コールセンターにおける重要性
このCXに加え、昨今ではEX(Employee Experience)にも注目するコンタクトセンターが増えている。EXとは従業員が働くことによって得られる体験であり、その満足度が高まり、自社に対する信頼感や愛着を持つようになれば、従業員のパフォーマンスが高まると期待できる。
オペレーターの離職を防ぐ観点でも、EX向上にはメリットがあるだろう。そもそもオペレーターは非正規雇用の割合が高く、企業に対して愛着心や愛社精神を抱きにくい傾向がある。さらに採用難から多くのコンタクトセンターが積極的に募集を行っており、別のコンタクトセンターに移りやすいことも離職率が高い理由として考えられる。そこでEXを高め、オペレーターの定着率を高めるというわけだ。
EXに注目しているのはコンタクトセンターだけではない。一般社団法人日本能率協会の「日本企業の経営課題 2022」によれば、現在の経営課題として「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」が2021年、2022年と続けて7位にランクインしている。少子高齢化に伴う採用難は日本社会全体の課題となっていることを考えると、EXは今後さらに重視されるだろう。
EX(従業員満足度)の改善はCX向上につながる
コンタクトセンターにおけるEXの向上は、離職率の低下だけでなく、CXの向上にも寄与すると考えられる。そもそもコンタクトセンターにおける業務の中心は、顧客とオペレーターのコミュニケーションだろう。そのオペレーターのEXが低く、自社やブランド、製品およびサービスに愛着を感じていなければ、CX向上につながるコミュニケーションは期待できない。
逆にEXが高ければ、顧客目線に立って応対するなどコミュニケーションの質が高まり、CX向上につながる可能性が高まる。またセンターとして掲げている目標への積極的な関与なども期待できる。つまりEXの向上がCXの向上につながるわけだ。
コールセンターEX改善施策の例
このEX向上のための施策は、さまざまなものが考えられる。たとえばトレーニングの充実である。これにより、顧客とのコミュニケーションに必要な知識をしっかり吸収することができれば、不安を感じることなく応対することが可能になる。また応対マニュアルやFAQがしっかり整備されていれば、やはり応対時における不安の払拭につながるだろう。
そのほかにも、業務量の適正化や使い勝手がよく顧客応対に必要な情報を迅速に得ることができるシステムの整備、オペレーターの評価基準の明文化なども重要だ。
AIを活用した感情分析・ストレス対策でオペレーターを"見守り"
音声からオペレーターの感情分析・ストレス値を測定
また、オペレーターがストレスを感じたときに、迅速にサポートする仕組みの整備も欠かせないだろう。この点において従来大きな役割を担ってきたのはスーパーバイザー(SV)だが、今後はAIの活用も鍵となる。
たとえばAIによって電話応対の音声からオペレーターの感情を分析し、客観的に把握することができれば、適切なタイミングでオペレーターに声をかけることができる。これによって「見守られている」という気持ちになれば、オペレーターも安心して働くことができ、またEX向上にもつながるだろう。
EXを向上するコールセンターのAI活用
こうしたことを実現するソリューションがNTT Comの「コンタクトセンターKPI管理ソリューション-Dashboard-」である。コンタクトセンター運営に必要な各種システムをクラウドサービスとして提供する「Amazon Connect」と連携し、コンタクトセンター運営に不可欠な各種KPIをレポートする機能を持つ。そのうえ、音声から感情分析などを行うEmpath社のテクノロジーを用い、オペレーターの感情や元気度を可視化する機能も備える。
コンタクトセンター運営におけるAI活用というと、顧客応対の自動化などコスト削減やセンター運営の効率化の視点で語られることが多い。しかしAIはそれだけではなく、CX向上につながるEXの観点でも有効なテクノロジーとなる。EX向上に取り組むのであれば、こうしたソリューションの活用も視野に入れたい。