ウィズコロナ時代の
コールセンター、コンタクトセンター運営
アフターコロナ・ウィズコロナ時代の「コールセンター」「コンタクトセンター」運営とはどのようなものなのか。チャネルや応対品質を向上させるポイントについて着目します。
目次
「コールセンター」から「コンタクトセンター」へと進化する顧客接点
従来、顧客からのお問い合わせを受け付ける拠点として、一般的だったのは電話を主なチャネルとして利用する「コールセンター」である。しかし昨今では、電話だけでなく、さまざまなチャネルを活用して顧客からのお問い合わせに応対している拠点が少なくない。このような拠点は電話(コール)だけではないことから、コールセンターではなく「コンタクトセンター」と呼ばれている。
電話以外のチャネルとして、まず普及したのはメールやFAXである。電話の場合、当然ながら営業時間内でしか応対できないが、メールやFAXであれば深夜に問い合わせを送ることも可能である。顧客にとっては、電話が話し中でオペレーターにつながるまで何分も待たされるといったストレスがないことも、大きな利点と言える。
一方、メールやFAXの場合は質問に対する回答を得るまでに時間がかかる難点がある。顧客としては、問い合わせに対してすぐに回答がほしいことが一般的だろう。そのため、リアルタイム性に劣るFAXやメールは、顧客に敬遠されがちだ。
そのような理由から、オムニチャネルに対応したコンタクトセンターであっても、主要なチャネルは電話のケースが多い。しかし最近では「チャット」が新たなチャネルとして急速に普及しつつある。
新たなチャネルとして「チャット」が注目される理由
コールセンタージャパン編集部が毎年実施している「コールセンター実態調査」においても、26.7%の企業が対応しているチャネルとして「チャット」をあげている。これは電話とメール、FAXに続く4番目の数字であり、新たなチャネルとしてチャットが広まっている様子がうかがえる。
コールセンターで対応しているチャネル(複数回答あり)
チャットが広まっている背景として、コンタクトセンターの業務効率の向上を図れることがあげられる。電話とは異なり、チャットであれば(状況次第では)1人のオペレーターが複数のお問い合わせに同時に対応することも可能である。これを実現できれば、大幅に業務効率を高められるだろう。
アフターコロナ・ウィズコロナ時代を見据えたコンタクトセンター運営を考える上でも、チャットがもたらすメリットは多い。たとえば飛沫感染の予防だ。声を出す電話応対では、どうしても飛沫が発生するため、オペレーターの中に新型コロナウイルスの感染者がいた場合には周囲に感染を広げる可能性がある。しかしチャットであれば声を出す必要はなく、飛沫感染のリスクを低減できる。
テレワークとの親和性の高さもチャットの大きな利点だ。オペレーターが自宅でお問い合わせの電話に応対する際、家族の生活音などが気になるケースもあり得る。しかしチャットであれば、周りの音を気にすることなく応対可能である。
なお、今後はAIとチャットの組み合わせも増えていくだろう。たとえば料金のお問い合わせなど簡単なものはAIが応対し、お問い合わせ内容が複雑な場合には人間にエスカレーションするなどといった形だ。このようにAIを活用できれば、業務効率の大幅な向上が見込まれる。
これからのコンタクトセンター運営における電話の位置付け
このような背景から、コンタクトセンターの新たなチャネルとしてチャットが定着する可能性は高い。とはいえ電話も重要なチャネルであり続けるのではないだろうか。
特に高齢層はチャットによるコミュニケーションに慣れていないケースが考えられ、電話とチャットを選択できるのであれば電話でコミュニケーションしたいと考える人が多いだろう。
またチャットで文字を打ち込むよりも、会話のほうがコミュニケーションは迅速に行える。このため特にスピードが求められる応対では、電話が第一のチャネルとして選択されると思われる。
さらに主軸はチャットに移行しつつも、重要顧客向けのチャネルとして電話を残すといったことも考えられるだろう。たとえば専用電話番号を用意し、話し中がほとんどない形で重要顧客のお問い合わせに応えるといったものだ。
電話応対の品質評価にAIを活用
このように電話は今後も重要なチャネルであり続ける可能性がある。ただ電話で難しいのは応対品質の評価である。
一般的に行われているのは、通話内容を録音し、その内容をスーパーバイザーなどが聞いて応対品質をチェックするという形である。しかしすべての通話を聞き返すのは事実上不可能であり、一部のコールだけを抜き出してチェックするということにならざるを得ない。
ただし、こうした評価ではオペレーターの不満を招きやすいという問題もある。評価が低かったのは、チェックされたコールが“たまたま”応対品質が低かっただけだとオペレーターが考え、評価に対して不満を感じるというわけである。
そこで検討したいのが、AIを活用した応対品質の評価である。人間のスーパーバイザーと異なり、AIであればオペレーターのコールを網羅的にチェックでき、オペレーターの不満を解消できる。また、実際に応対した音声を聞く必要がないため、スーパーバイザーの負担が軽減されるメリットもあるだろう。
実際にAIを活用し、応対品質をチェックするものとして、NTT Comから提供されているのが「コンタクトセンターKPI管理ソリューション」である。これはAmazon Web Servicesが提供する、クラウドベースでコンタクトセンターに必要なサービスを提供する「Amazon Connect」とAI感情分析を組み合わせたソリューションだ。
Amazon Connectは電話回線やPBX、CTIなどの機能がワンストップで提供されているため、迅速にコンタクトセンターを開設できるのが大きな魅力である。またクラウドベースであるため在宅勤務の環境を整えやすいこと、利用した分だけ支払えばよい料金体系もメリットだろう。
確かにチャットはメリットの多いチャネルだが、一方で電話も重要なチャネルであり続ける可能性が高い。コンタクトセンター全体の品質を高めたいと考えるのであれば、これまでと同様、あるいはそれ以上に電話の応対品質にも着目すべきだ。