安否確認の意味とは?企業における重要性を解説!
地震をはじめとした大規模災害による緊急事態が発生した際、被災地にいる人々の無事を確認することを安否確認と呼びます。
その中で、企業が従業員に対して行う安否確認は、単に無事を尋ねるだけに留まりません。
こちらの記事では、企業にとって安否確認の意味するものは何かを整理し、災害時に安否確認を行う目的や必要性、安否確認で重視すべきポイントを解説。合わせて、安否確認の手段の中でも効果的な、安否確認システムについて紹介します。
安否確認の意味とは?
まず、安否確認とは何かについて、その意味を改めて確認しましょう。
企業における安否を確認する対象は、従業員を中心とした企業活動に関わる人々です。大規模災害が発生した場合、企業は速やかに全従業員がどこでどういった状況にあるかを確認し、避難などの安全確保を図るよう指示する必要があります。
さらに、被災後の事業継続についても考えなくてはなりません。少しでも早く初期情報を集め、どの程度の被害が発生しているのか状況を把握し、どこから重点的に復旧させ被害の拡大を防ぐかを判断して、対応にあたることが求められます。
従業員の安否確認は、こうした初動対応を行う上で重要な「人員の状況把握」を兼ねています。
企業が安否確認をする目的・必要性
ここからは、安否確認の目的や必要性について、具体的な項目に整理しながらみていきましょう。
なぜ安否確認が必要なのか
企業における安否確認は、先述した事業継続の観点から実施する必要があるほか、適時適切な連絡によって従業員や取引先に対して安心感を与える意味合いもあります。
事業の継続性を確保する(BCP)
大規模災害時の事業継続、または迅速な復旧を行うためには、いかに素早く的確な状況把握と判断を行うかが重要です。安否確認は、その第一歩となる重要な情報収集・集約であり、初動対応の要ともいえます。
災害発生直後の混乱した中、どの程度の被害が発生し、どのような対応が必要なのかを判断するためには、情報の一元的管理、連絡手段の統一、被害状況から正しく読み取るためのとりまとめと可視化が不可欠です。
従業員への安心の提供
夜間や休日、出張中などに被災すると、従業員は自分で状況を判断し、対応にあたる必要があります。そこで、災害発生直後に安否確認の連絡や当面の指示が届けば、従業員に安心感を与えることができます。
安否の回答とともに従業員が今どこにいるかの位置情報を把握できれば、被災している場合の救援も求めやすくなるでしょう。
また、従業員の安否確認と同時に家族の状況も把握・共有することで、以下のような効果も期待できます。
- 家族の無事が分かり、従業員が安心して災害の対応にあたることができる
- 状況に応じて、会社から従業員に「無理をせず休む」ように指示できる
※指示が無いが故に、家族や家屋、家庭の事情を顧みず無理に出社してしまう従業員の2次災害を防げる
取引先に対しての安心の提供
大規模災害で被災した際は、つい自社内の対応に追われてしまいがちです。しかし、関係する取引先への状況報告やプレスリリースなど、対外的な広報活動もできるだけ早く実施しなければなりません。
いま会社がどんな状況にあるのか、事業継続ができる見通しなのか、復旧が必要であればいつ再開するのかなど、災害直後から情報発信し続けることにより、関係各所に安心してもらえます。
第一報は概要程度でも良いため、可能な範囲で状況を説明しましょう。安否確認の実施状況や把握した情報を活用して、報告を行います。
安否確認のポイント
ここからは、安否確認を行うにあたって気をつけたいポイントをいくつかみていきましょう。
災害時の連絡手段は統一する
大規模災害など緊急事態が発生した際は、大声で呼び合ったり避難したりと、人々が慌ただしく動き回り、混乱した状態になります。連絡手段が決まっていないと、通知に気づかなかったり、従業員ごとに異なる連絡方法で連絡したりと、安否確認の効率が悪くなるでしょう。
災害発生時の緊急連絡は、最優先で使用する手段を事前に決めておきます。その他の手段についても、通信環境の悪化などを想定し、優先順位を明確にしておくことが重要です。
連絡方法は簡単に使え、早く着実に届くものにする
災害発生直後の安否確認は、できるだけ早く行うことが重要です。大勢の従業員がいる企業は、一斉送信する方法や担当者を決めておきましょう。全員に連絡が届くよう、バックアップを含め、複数の手段についての連絡ルールを明確にします。
また、大規模災害時には、被災地への連絡やアクセスが殺到し、非常につながりにくくなる「輻輳(ふくそう)状態」が発生します。つながらない状況が起きることを前提に、何度も再送信する仕組みや複数のバックアップ方法を決めておき、従業員の状況が把握できる体制を構築しましょう。
個人情報に注意する
安否確認を行う際の連絡先は、電話番号やメールアドレスなど、個人情報が多く含まれます。災害時の情報共有はもちろん、平常時の連絡先を登録する際にも、セキュリティには十分注意して管理しましょう。
たとえ直属の上司であっても個人情報を知られることに抵抗のある従業員もいるため、他社が閲覧できないようにする配慮も必要になる可能性があります。
また、担当者が十分注意して管理しているつもりでも、不正アクセスをはじめとしたサイバー攻撃は年々増加・高度化しています。連絡手段に用いる通信環境のセキュリティ対策にも注目し、堅牢なツールを利用することが大切です。
連絡内容を定めておく
安否確認の連絡内容は、あらかじめ統一しておくことが望ましいです。災害時の混乱した状況下では、確認事項があまりに多く複雑だと、回答しづらくなります。
従業員自身や家族が無事か、どこにいるかなど最低限の概況を聞くようにし、無事だとわかった従業員に対し、出社・待機の指示や災害対応への従事の可否などを連絡する段階的な構造にするのがよいでしょう。
集計・可視化の方法を決めておく
確認事項を統一すると、回答結果を素早く集計、可視化しやすくなります。集計方法やツールも統一するのがよいでしょう。
集まった安否情報は、ひと目見て何が起きているのか、重大な被害や対応が必要なところはどこかなど、全体の状況を把握し判断できるよう「見える化」します。(一覧表や地図上で概況を把握できるようにするなど)
特に、災害発生直後に企業としての対処方針をすぐに公表できるよう、事前に災害を想定した訓練を経てシミュレーションしておきましょう。
企業の安否確認で確認すべき内容
実際に安否確認を行う項目として、特に重視しておきたい内容を解説します。
従業員の安否状況・連絡が付くか
大前提ですが、従業員本人の安否状況の確認は、確実に全員に届くようにしましょう。
災害時でもつながりやすい連絡手段をとることはもちろんですが、従業員が安否確認の重要性を理解し、会社から届く連絡に回答できるよう、操作にも慣れておく必要があります。
このため、安否確認をBCPや災害対応マニュアルに明確に位置づけ、周知徹底を図るとともに、定期的に安否確認訓練を実施して浸透を図ることが望まれます。
従業員の家族の安否状況
従業員の家族の安否確認も重要なポイントです。本人や家族が被災したり避難場所で対応に追われていたりすると、出社して災害対応にあたることは難しくなります。また、家族の状態がわからないと、心配で災害対応どころでなくなってしまいます。
従業員の安否確認と同時に家族の状況を把握し、簡単に共有できるようにする仕組みも、事業継続上の重要な対策なのです。
緊急対応ができる従業員
安否の確認とともに、従業員が災害対応にあたることができるかを把握しましょう。
災害時には従来の所属を超えて柔軟に対応することが多いとはいえ、職務上の専門的な判断や技術が必要になる場面は少なくありません。部門別、担当部署別、職種別、職位別など、確保できる人材の属性と数を把握できるようにします。
また、出社までにどのくらいの時間がかかるのかも重要なポイント。回答時の位置情報からすぐに把握できるようにしておくと効率的です。
取引先の被害状況
事業継続ができるかどうかには、自社の従業員だけでなく、取引先や協力業者なども大きく関わってきます。グループ企業であれば全体でどの程度の対応ができる状況なのかを、一元的に管理できる仕組みが求められます。
その他の事業者であっても、どのような状況にあるのかを迅速に把握できるよう、連絡先と連絡手段、確認項目、担当窓口を決めておきましょう。
安否確認システムとは?導入目的は?
安否確認方法のなかでも効果的といわれる安否確認システムについて、概要や導入目的を解説します。
安否確認システムとは
安否確認システムとは、災害発生直後の混乱した中でも、着実に従業員や家族などの安否状況を把握し、適切な判断・初動対応がとれるように構築されたシステムのことです。
素早く一斉に連絡し、回答を集計して可視化するために、以下のような機能が搭載されています。
- 一斉送信
- 電話、メール、スマホアプリなど複数の連絡手段での送信
- 震度などと連動した自動送信
- 未回答者への繰り返し送信
- 回答状況に応じた二次連絡
- 家族の安否確認、メッセージ交換
- 掲示板・アンケートなどによる情報共有
- 回答の自動集計
- 部署別・項目別などの分類で集計、一覧表やグラフの作成
- 地図上への位置情報の記載
- 安否登録の部署別管理
安否確認システムの導入目的・必要性
大規模な災害では、停電や架線の切断による通信の途絶、基地局の被災による停波、被災地へのアクセス集中による輻輳が発生します。このため、救助・救急などの災害対応に必要な回線を優先的に確保する通信規制が行われるのが一般的です。
安否確認システムは、こうした状況下での通信障害を前提として、データセンターの分散や回線の冗長化などで機能を強化することにより、連絡の確実性を高めます。
また、自動的に一斉送信、簡単な操作での回答、繰り返し送信、自動集計などの機能があり、従業員の安否確認にかかる手間や時間を軽減します。
さらに、セキュリティ対策が施された中で運用され、担当者が個人的に管理するより強固な情報管理が可能というのもポイントです。
安否確認システムがない場合
安否確認システムを導入せずに安否を確認する場合、平常時に利用している通信手段を使って連絡することになります。主には、以下のようなツールが挙げられます。
普段から使っていれば操作にも慣れており、コストもかからないという点はメリットです。ただし、安否確認に特化した安否確認システムに比べると、通信環境の災害時特有の課題(つながりにくくなるなど)があるほか、担当者が繰り返し個別に連絡をとって集計していくため、負担が大きく効率が悪くなります。
- 電話(音声通話)
- 会社のメール、個人のメール、ショートメッセージ
- ビジネスチャットなど業務上のシステム
- SNS(LINE、Twitter、Messengerなど)
- 災害用伝言板(171、Web171など)
安否確認をメールで行う際のポイントは、以下の記事で詳しく紹介しています。
【関連記事】安否確認メールのポイント!送信・返信の例文も紹介! | BCPはじめの一歩
安否確認の各種方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
安否確認は企業の事業継続のために欠かせない
ここまで解説した通り、企業における安否確認は、災害時の事業継続・復旧のために重要な対応です。大規模災害時の厳しい通信環境の中でも着実な連絡を行い、できるだけ早く安否情報を収集・集約することが求められます。
そのためにも、安否確認に特化した一斉送信や回答の集計、情報共有機能が搭載され、セキュリティ対策上も安心の安否確認システムの活用がおすすめです。
被災状況の全体像を正確に掴み、いち早く災害対応の体制を構築できるように、平時から備えましょう。