マンガで紐解く!
グローバル連結経営の実現を阻む“ERP運用の壁”
業種・業態を問わず海外に進出することが一般的になった現在、あらためて課題として浮上しているのが海外子会社・海外拠点を含めたグループ全体でのガバナンスの確立である。さまざまな背景をもつ多くの企業で採り入れられている「2層ERP」でグローバル連結経営を実現するメリットとはどのようなものだろうか。
「2層ERP?ちょっと勉強不足でその言葉…知りません」
グローバル化が進んだとある企業での、上司と部下の会話の1コマです。
グローバル連結経営の実現にはさまざまな課題がつきものですが、こちらの企業も例外ではなく、全社的に改善を行うべく検討の真っ最中のようです。
そのような中、改善案として検討している「2層ERP」とはどのようなものなのでしょうか。また、そのメリットとは?
上司と部下とのやり取りから、マンガで紐解いていきましょう。
「2層ERP」でグローバル連結経営を実現するメリット
業種・業態を問わず海外に進出することが一般的になった現在、あらためて課題として浮上しているのが海外子会社・海外拠点を含めたグループ全体でのガバナンスの確立である。グローバルガバナンスの確立ではITの活用は欠かせないが、国や地域によってシステムがバラバラ、なおかつ本社とデータ連携がなされていないといったケースは少なくない。
このようにガバナンスが効かず、海外子会社の状況を正確かつリアルタイムに把握できない状況においては、意思決定を下すために必要となる情報を経営層に提示することができず、グローバルで激化する企業間競争において大きな不利を被ることになりかねない。この状況から抜け出すため、多くの企業が「SAP ERP」に代表されるERPパッケージを活用したグローバル連結経営の実現に向けて動き出している。
ERPパッケージを活用することにより、「ガバナンス確立に不可欠な仕組みをスピーディーに導入できる」「海外出店したその日からERPが利用できる」「海外展開作業の際に情報システム部の直接の関与が不要になる体制を検討できる」「維持管理のコストを最小化できる」「運用品質を統一化できる」などの運用面のメリットも期待できる。
さらに、「現場の会計状況のグローバルレベルでのリアルタイム化を目指せる」「海外拠点の不正検知や各種ガバナンスチェックが迅速に行える」「グローバルレベルでの会計の可視化を実現できる」、それにより「経営判断の迅速化やリスク回避も容易になる」といった経営面のメリットも期待できるだろう。
このグローバル連結経営において、ベストと言えるのは海外拠点を含めてシステムを統一し、各拠点のデータを集約して一元管理するシングルインスタンス化だろう。ただ現実的には、国や地域によって異なる商習慣やビジネスモデルへの対応といったローカル要件の存在などにより、シングルインスタンス化はなかなか容易ではない。
さらにシングルインスタンス化は柔軟性を損なう恐れがあり、時々刻々と変わるビジネスの変化への追従において障壁となる可能性があるほか、企業買収や統合における負担の増大にもつながりかねない。こうした背景から、多くの企業で採り入れられているのが「2層ERP」と呼ばれる方針だ。
※【2層ERP】これまで本社に一元運営管理していたERPを、各リージョンなどの現地ビジネス状況により対応させるために本社以外にもERPを構築し、データは本社ERPと連携をとる形態。
2層ERPは各拠点で同じインスタンスを利用するのではなく、本社で稼働しているERPとは別に海外子会社にERPパッケージを導入したうえで、それらを連携させることによってグローバル連結経営を目指すというアプローチである。これならば、本社と海外子会社でERPに対する要件が異なっていても対応することが可能だろう。また海外子会社のビジネスサイズに適したERPパッケージを選定することにより、導入期間の短縮や導入負荷の軽減を図れるといったメリットもある。
このように本社と海外子会社でそれぞれ個別にERPパッケージを導入したうえで、本社側のERPとデータ連携を図る。もちろんシングルインスタンスよりもシステム構成は複雑化するが、適切にデータ連携を図ることができればリアルタイムにデータ集計を行うことが可能となり、経営判断の迅速化も期待できる。
「2層ERP」で表面化するERP運用の課題
しかしながら、2層ERPにおいて課題となりやすいのはERP運用の高コスト化、複雑化ではないだろうか。拠点ごとにバラバラにERPを運用していれば、当然ながら運用業務の集約化を図ることができず、コストを最適化することは難しい。
海外拠点ごとの個別のERP運用では、クオリティのバラつきが問題となることも多い。言うまでもなくERPは基幹システムであり、システムにトラブルが生じればビジネスにも多大な影響が生じてしまう。このためERP運用には高いクオリティが求められるが、一部の国や地域の運用レベルが低く、頻繁にシステムトラブルが生じるといった状況では、グローバルの状況をリアルタイムに把握することが難しくなってしまう。
この運用レベルを判断する上で、ポイントとなるのが手順書や作業依頼および障害対応などのフローが整備されているかどうかである。手順書が整備されていれば運用の引き継ぎも容易となるうえ、運用業務の属人化が避けられるため、運用レベルの均一化につながるだろう。また作業依頼や障害対応のフローが適切に整備されていれば、新たな作業への着手や障害発生時のトラブルシュートが迅速化されるはずである。運用ベンダーの選定においては、このような手順書やフローのチェックは欠かせないが、海外子会社に運用を任せているようなケースでは徹底は難しい。
そこで検討したいのが、本社および海外子会社・海外拠点まで含めたグローバルのERP運用に対応できるベンダーの活用だ。こうしたベンダーの運用サービスを利用すれば、拠点ごとにインスタンスが異なっていても運用レベルを統一することにつながり、そのうえ運用業務の集約によるコスト最適化も果たせるだろう。
なおNTTコミュニケーションズでは、国内外に複数のSAP BASISコンサルタントチームを持ち、ネットワークからクラウド基盤までを含めたBASIS運用業務を一元的にサポートできる体制を整えている。またコスト最適化とクオリティの堅持、そして生産性の向上までを視野に入れてサービスを設計している。
ERPは安定した事業の継続とガバナンスの確立、競争力の維持・向上において欠かせない存在であり、その運用に不安があればビジネスにも影響が生じかねない。グローバル連結経営を実現し、安定してビジネスを成長させるためにも、ERP運用の不安はいち早く取り除いておきたい。