企業が電話で安否確認するのは効果的?確認方法や代替手段を紹介
自然災害をはじめとする緊急事態において、電話連絡による安否確認は有効なのでしょうか?
本記事では、電話による安否確認の方法と、その有効性を解説するとともに、電話以外の方法についても紹介します。ご紹介する内容を参考に、突然の災害でも慌てることのないよう準備しておきましょう。
もくじ
電話で安否確認をする方法
電話を使った安否確認としては、「緊急連絡網」で各自が持っている電話番号へ直接架電する方法と、大規模災害発生時に設置される「災害用伝言ダイヤル(171)」に架電して間接的に確認する方法があります。
緊急連絡網
緊急連絡網は、災害や事故・トラブルなどの緊急事態が発生したときに、「誰が」「誰に」「どの順で」「どうやって」連絡するのかを定めたものです。ツリー図の形で記載されているものが一般的で、状況把握と判断・指示を行う役職の高い順に名前と連絡先(電話番号)が記されています。
緊急連絡網を使った安否確認を行う場合、次の点について事前の備えが必要です。
- 緊急連絡網の管理
- 各自の携帯電話などへ連絡先を入れる、紙に出力するなど、すぐに連絡先の確認ができるようにしておく。常に最新のデータに更新させる。
- 個人情報の漏洩などリスク対策
- 氏名と電話番号が記載されるため、「社用携帯を支給する」「連絡相手以外の情報を見えなくする」などの環境整備が必要となる。
- 連絡後の集約方法
- 上層部からの流れだけでなく、安否確認後の状況を取りまとめて下層部から上層部へ報告する流れや、全体集計する方法を確立しておく必要がある。
災害用伝言ダイヤル(171)
災害用伝言ダイヤルは、震度6弱以上の地震など大規模災害が発生した際に、通話が殺到して繋がりにくくなる状況下でも安否確認を実施できるよう、NTT東日本・NTT西日本が設置する伝言サービスです。利用方法は次のとおりです。
1.被災地にいる人が「171」へ電話をかけて自分の電話番号をキーとして伝言を録音する
2.被災地外にいる人が「171」へ電話し、て安否を知りたい人の番号をキーとして伝言を再生する
また、企業が災害用伝言ダイヤルを使った安否確認を行う場合のポイントは以下のとおりです。
- 電話番号の管理
- 安否確認の担当者を決め、従業員一人ひとりの電話番号を事前に把握し、個別に録音を確認して集計する作業が必要となる。
- 操作の習熟
- 非常時にしか行わない操作だが、NTTが体験利用できる期間を設けているため、その機会を使って操作に習熟しておく必要がある。
電話での安否確認は災害時に有効なのか?
電話は日常的に多くの人が使うものであるため、非常時の連絡手段としても操作方法に困ることは少ないでしょう。一方で、安否確認のツールとして用いるには、機能の特性上いくつかの課題点があります。
災害時は電話がつながりにくい
大規模災害が発生した際には、救助要請や個人の安否確認などの発信が殺到し、回線を圧迫します。このとき、通信事業者は救助に必要な回線を確保するために通信制限をおこなうため、電話が繋がりにくい「輻輳(ふくそう)」状態が発生します。東日本大震災時は、最大で固定電話は80~90%、携帯電話は70~95%の通信規制がかけられました。
その他、ケーブルの断線や停電による基地局の停波などの要因で電話がつながらなくなる可能性もあります。
総務省の調査では、東日本大震災時に電話を利用しようとしたがまったくつながらなかった割合が、固定電話で55.1%、携帯電話で65.4%ありました。すべてつながったのは固定電話で13.3%、携帯電話で4.9%と、ごくわずかでした。
出典元:
総務省|大規模災害時の非常用通信手段の在り方に関する研究会報告書
総務省| 情報通信白書(H24)(3)地震発生当日に利用しようとした通信手段
なお、デジタル通信を利用した通話アプリの場合、音声をデジタルデータの塊に分割して送信するパケット通信のため、電話よりつながる可能性は増えますが、平常時よりは品質の低下や遅延が生じる場合があります。
相手が電話に出られない可能性がある
電話連絡の場合、発信時に相手が電話をとる必要があります。しかし、災害で被災したり避難や対応にあたっている最中では、電話に出ることが難しいでしょう。また、充電切れや停波による通信障害などで連絡できないと、安否確認がいつまでも進まないおそれがあります。
全員分の安否確認は時間がかかる
電話連絡の場合、一人ひとりに電話をかけ、つながらなければ何度もかけ直したり、留守番電話に吹き込んだりして連絡を待ち続ける必要があります。災害用伝言ダイヤルも、いつ伝言が吹き込まれるかわからないため、何度も人数分の電話番号を入力して確認しなければなりません。集計も、確認する度に手作業で更新する必要があります。
想定通りにネットワークが機能しない
緊急連絡網を利用した電話連絡の場合、被災などによって連絡がつかない人が出ると、それ以降の連絡が途絶えてしまう可能性があります。管理職やリーダーが被災すると部署単位で連絡がまったく届かないという事態も起きかねません。組織の規模が大きい場合は特に、想定上のネットワークが機能しなくなった際の対策が不可欠です。
電話以外の安否確認方法
電話による安否確認は、単体では課題が多いため、別の手段を併用することが望まれます。ここからは、電話以外の安否確認方法をみていきましょう。
災害用伝言板(web171)
災害用伝言板(web171)は、災害用伝言ダイヤル(171)のWebサイト版です。震度6弱以上など大規模な災害発生時に専用のWebサイトからアクセス可能になります。被災地内の人が電話番号をキーとして伝言(テキスト)を登録し、被災地外からは電話番号をキーに閲覧ができます。上限はあるものの、複数の伝言を登録することも可能です。
音声による通知・確認や伝言の追加登録など、NTT東日本/西日本で少しずつ機能が異なるため、該当するエリアで、事前にできることと利用方法を確認しておきましょう。
メール
ふだん使いのメールを安否確認に流用することも可能です。CCやBCCを使い、必要な人へ一度に連絡できます。また、メールは電話回線ではなくインターネット回線で送受信されるため、電話がつながりにくいときでも届く可能性が高まります。ただし、メールサーバが機能不全を起こしていた場合は、メールの不着や大幅な遅延になるおそれがあります。
メールは汎用の連絡ツールのため、安否確認を行うタイミングや確認の文面、送信先の管理、回答ルール、回答結果の集計などが、すべて手作業になる点にも注意が必要です。
SNS
SNSは、相手とふだんからつながっていれば連絡をとる操作に迷わず、すぐに返信できる強みがあります。グループ機能を使えば一斉送信も可能です。
また、LINEやfacebook messengerのように既読状態がわかるものだと、本人かどうかはともかくメッセージを開くまでの動きがあったことは把握できるでしょう。
facebookの「災害支援ハブ」やLINEの「LINE安否確認」のように、災害発生時に特定の機能が立ち上がる場合もあります。
一方で、SNSを社内の安否確認に活用するためには従業員にアカウントを開示してもらって平常時からつながっている必要があります。SNSはプライベートでアカウントを運用する人も多いため、全員の登録は困難が伴うでしょう。また、回答結果の集計に手間がかかります。
ビジネスチャット
ChatworkやSlack、Teamsなどのビジネスチャットも、普段から使い慣れていれば安否の連絡を簡単に行えます。一斉送信や通知機能、リアクションボタン、DM機能などをうまく使えば、すばやい概況把握やきめ細かな個別の確認・指示など、柔軟な対応ができるでしょう。
ただし、汎用の掲示板のため、他のメッセージが間に入ると埋もれてしまう可能性があります。安否確認専用のスレッドを立ち上げたり、回答ルールを決めておいたりすることで、安否確認作業を独立させておくことが望ましいでしょう。また、安否の回答結果のとりまとめは別途手作業で行う必要があります。
安否確認システム
安否確認システムは、非常時の安否確認作業に特化したシステムで、災害時の通信規制や輻輳を前提に安定稼働を実現したものが多く見られます。また、災害発生直後の困難な状況を支える機能が充実し、操作に迷わず集計が簡単で、安否確認後の災害対応をすばやく行える点はメリットです。
よくみられる機能は以下の通りです。
- 震度など気象庁の発表に合わせて自動で一斉送信する
- 未回答者へ自動で再配信する
- 対応指示など手動でも一斉送信する
- 受信側で登録先を複数設定できる
- 回答結果を自動的集計する(時間軸で変化をみたり、グラフ化したりもできる)
その他、家族の安否確認機能やアンケート、掲示板機能などがついたシステムもあり、普段から活用することで操作に慣れておくこともできます。
電話だけで安否確認をするのは難しい
通話が困難になりやすい大規模災害の際、電話による安否確認は想定外の事態を生みやすいため、複数の手段と併用する必要があります。
その点、安否確認システムは災害時に特化したしくみにより、アプリプッシュ通知、メール、電話など複数の通知手段を用いて連絡を取り、安否の回答状況を自動集計することができるサービスもあります。
「Biz安否確認/一斉通報」システムでは、災害発生時の自動配信や自動再配信、リアルタイムの自動集計、組織階層単位の権限設定、個人情報非表示設定、健康管理情報の自動収集など、安否確認に必要な各種機能が搭載されています。
また、通信事業者ならではの堅牢性で災害時でも通信品質や安定した稼働を実現しており、安心してご利用いただけます。手段のひとつとしてご検討ください。