CSI(継続的サービス改善)とは?
目的と重要性、実行プロセスまでわかりやすく解説

昨今のデジタル時代において、ICTサービスの継続的な改善は企業の成長と生存に不可欠な施策です。しかし、具体的にどのような対応が必要なのかわからない、という企業担当者の方は多いのではないでしょうか。そこで注目したい手法が「CSI(継続的サービス改善)」です。

この記事では、CSIの概要、CSIによってもたらされる価値と効果、具体的なプロセスなどについて解説します。

CSI(継続的サービス改善)とは?目的と重要性、実行プロセスまでわかりやすく解説

CSIとは?目的と重要性

CSI(Continual Service Improvement、継続的サービス改善)は、ICTサービスの品質と顧客満足度の向上を目指す重要なプロセスです。ITサービスマネジメントにおいて、CSIは刻々と変化するビジネスニーズに対応して、サービスの価値を継続的に向上させる役割を担っています。ここでは、CSIの定義や目的、重要性について紹介します。

CSI(継続的サービス改善)の定義

CSIはPDCAサイクルにもとづき、すべてのICTサービスやICTサービスに関わる活動を継続的に改善するプロセスです。CSIは、ITサービスマネジメント(ITSM)における成功事例を5つのカテゴリに分類してまとめられた書籍群である、ITIL V3の1つのプロセスとして位置づけられています。ITILはサービスの設計から運用、改善までを一連のライフサイクルとしたフレームワークです。

CSIの主な目的

CSIの目的は、常に変化するビジネスニーズをとらえ、ITサービスの効率性、有効性、および費用対効果を向上し、お客さま顧客により良い価値を提供・維持することです。具体的には以下の点について改善を図ります。

  • サービス品質の向上
  • 顧客満足度の向上
  • コスト削減、最適化
  • プロセスの効率化
  • 技術的な改善

CSIによってICTサービスのパフォーマンスを継続的に改善し、企業は常に最適なサービスをお客さまに提供することにより、競争上の優位性を維持することが可能です。

ビジネスニーズの変化とCSIの重要性

デジタル技術の進歩、顧客ニーズの変化、新たな規制の導入などといったビジネス環境の急速な変化にともない、ICTサービスも常に進化することが求められます。CSIはこのような変化に対応するためのプロセスとして、欠かせないアプローチです。CSIを効果的に実施することにより、企業はICTサービスの価値を最大化し、ビジネス目標を達成することができます。

CSIとITSM、ITILの関係

CSIとITSM、ITILの関係

CSIは、ITサービスマネジメントと「ITIL(アイティル)」の重要な要素として位置づけられています。ここでは、CSIがITSMとITILにどのように関連し、どのような意義を持つのかについて解説します。

ITSMフレームワークにおけるCSIの位置づけ

ITSMフレームワークにおいて、CSIはICTサービスの品質や効率を継続的に向上させるためのアプローチや手法を提供します。ITSMの主要な目的である「より良いサービスを提供すること」を実現するために、CSIの実施によってICTサービスの価値を最大化します。
CSIは、ITSMの各プロセスに適用されるものです。CSIが適用される代表的なプロセスを以下に示します。

  • インシデント管理
  • 変更管理
  • 問題管理

CSIを効果的に実施することにより、企業はITSMの運用効率を高め、ビジネス価値の創出につなげることができます。

ITILにおけるCSIの定義と概要

ITILは、ITSMにおける成功事例をまとめて5つのカテゴリに分類した書籍群で、CSIは5つのコア書籍の1つです。前述のCSIの定義はITILにおいて定義されています。ITIL 4ではCSIの概念がさらに発展し、「継続的改善」として組み込まれるようになりました。ITIL 4のサービスバリューシステム(SVS)において、継続的改善は5つに分かれたコンポーネントの1つとして位置づけられ、次の点を重視しています。

  • 企業全体で改善文化を育む
  • PDCAサイクルの確立
  • リーンシンキングとアジャイル手法の活用
  • 測定と報告、評価の重要性

ITILにおけるCSIは単なるプロセスではなく、企業全体のマインドセットとしてとらえるとよいでしょう。それにより、ITサービスの提供者は常に顧客価値の向上を目指し、変化するビジネスニーズに柔軟に対応することができます。

CSIは、ITSMとITILの枠組みのなかで、サービスの継続的な改善と価値創出を推進する重要な役割を果たしています。ITサービス提供者は、CSIの原則を理解し実践することによって、より効果的なITサービスマネジメントを実現し、顧客満足度の向上につなげることが可能です。

CSIがもたらす価値と効果

CSIがもたらす価値と効果

CSIは、企業全体にさまざま価値と効果をもたらします。ここでは、CSIの実践によって得られる主な価値と効果について解説します。

ICTサービスの品質向上

CSIにより、サービスの問題点や改善点を早期に特定して迅速に対応できるようになります。業務プロセスを標準化することにより提供するサービスが均質化し、全体的なサービスの品質向上が期待できるでしょう。ICTサービスの信頼性と効率性が高まることで、新たなビジネス価値の創出にもつながります。

業務プロセスの効率化

CSIの実践を通じて、無駄な作業や重複したプロセスを特定し、排除することができます。成功事例の共有やプロセスの自動化により、業務効率やサービス品質の向上も実現可能です。業務プロセスの効率化によって従業員の生産性も向上し、より戦略的な業務に注力できるようになります。

コスト削減と投資対効果の向上

CSIによって効率化された業務プロセスにより、サービス運用コストの削減が期待できます。問題の早期発見と解決による改善コストや、品質向上による投資対効果(ROI)の最大化なども実現可能です。

顧客満足度の向上とロイヤリティの強化

サービス品質が向上することにより、お客さまのニーズに対してより適切に対応することが可能になります。問題への迅速な対応や予防措置も可能となり、お客さまの不満を最小限に抑えられます。カスタマーサポートの品質改善や、サービスレベル合意(SLA)の達成率向上などによって、顧客満足度が高まり長期的な関係構築へとつなげることが可能です。

イノベーションの促進

継続的な改善の文化が企業に根付くことで、新しいアイデアを積極的に探求する姿勢が育まれます。企業の変革が進み、市場の変化に対して柔軟に対応できるようになります。具体的には、新サービスの積極的な導入と評価、顧客フィードバックにもとづいた新サービスの開発などといった取り組みが挙げられるでしょう。これらの取り組みにより、企業の競争力が強化され、市場での優位性を確立できます。

リスク管理の強化

CSIの実践により、潜在的なリスクを早期に特定し、予防措置を講じることが可能です。トラブル発生時もその影響を最小限に抑えることが可能となり、ICTサービスの安定性と信頼性が向上します。リスク管理の強化により、セキュリティインシデントの減少や災害復旧計画の改善などにつながり、企業全体のリスク耐性が高まります。リスク耐性が高まれば、ビジネスの継続性も維持することが可能です。

競争優位性の確立

ICTサービスの品質向上と効率化により、お客さまにより高い価値を提供できます。イノベーションの促進、コスト削減なども競争優位性の確立につながります。具体的には、市場シェアの拡大やブランド価値の向上、新規顧客の獲得と既存顧客の維持などの効果が挙げられるでしょう。これらの成果により、業界内でのリーダーシップを確立して持続可能な成長が実現可能です。

CSIの具体的なプロセスと7ステップ改善モデル

CSIの具体的なプロセスと7ステップ改善モデル

CSIは組織に多様な価値と効果をもたらす7つのステップからなる改善モデルを通じて実施されます。この7ステップ改善モデルは、ITILフレームワークの中核をなす重要なプロセスであり、継続的な改善を体系的に実行するための指針です。

ステップ1:測定対象の定義

改善が必要な項目を特定するプロセスでは、まず現在のサービス状況を測定・評価し、企業目標との整合性を確認します。顧客要求のフィードバックや運用データなどを分析して改善が必要な項目を見出すことが重要です。具体的には次のようなタスクが行われます。

  • サービスレベル合意(SLA)の達成状況の確認
  • 顧客満足度調査の結果分析
  • インシデントや問題の傾向分析
  • 業界のベストプラクティスとの比較

これらのタスクを通じて、企業は改善の優先度を決定し、最も重要な改善項目に注力することができます。

ステップ2:測定可能な項目の定義

改善の進捗を測定可能な指標を定義します。測定基準は以下の3つに分類されます。

  • 技術的測定基準:システムの稼働時間、応答時間
  • プロセス測定基準:インシデント解決時間、変更成功率
  • サービス測定基準:顧客満足度スコア、サービス可用性

これらの指標を適切に選択して定義することにより、改善活動の効果を客観的・定量的に評価することが可能です。

ステップ3:データの収集

定義された測定対象にもとづいて、必要な情報・データを収集します。データ収集の方法や頻度、責任者を決定したうえで、データを収集することが重要です。データ収集の際には、自動化ツールの活用なども検討するとよいでしょう。効果的なデータ収集のためには次の点に注意が必要です。

  • データの正確性と一貫性の確保
  • プライバシーとセキュリティの考慮
  • 適切なサンプリング方法の選択
  • リアルタイムデータ収集の可能性の検討

これらの点に留意しながら、改善活動に必要なデータを効率的に収集します。

ステップ4:データの処理

収集したデータを加工して分析が可能となるよう、同一条件の形式に変換します。データクレンジングや統合、フォーマット変更などを行い、次のステップである分析のための準備をする段階です。具体的には次のような作業が含まれます。

  • 重複データの削除
  • 欠損値の処理
  • 異常値の検出と対処
  • データの正規化

これらの処理を通じて、データ分析基盤を構築します。

ステップ5:データの分析

トレンド分析やギャップ分析、ベンチマーキングなどの手法を用いて、改善の機会や課題を特定します。分析結果を用いて目標達成度の測定や原因分析、事業活動への影響分析などを行います。具体的な分析手法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 時系列分析
  • 相関分析
  • ルート原因分析
  • 予測モデリング

これらの分析を通じて、データから有意義な洞察を導き出し、改善活動の方向性を決定します。

ステップ6:情報の提示と活用

分析結果を視覚化しわかりやすい形でレポートにまとめて関係者に報告します。ここで得られた洞察をもとに、改善のための行動計画を策定します。効果的な情報提示のためには次の点に注意が必要です。

  • 対象者に応じた情報の粒度の調整
  • 直感的に理解できるビジュアル表現の使用
  • 重要なポイントの強調
  • アクションにつながる具体的な提案の提示

これらの点に留意しながら、分析結果を組織の意思決定に活用します。

ステップ7:是正措置の実施

策定された行動計画にもとづいて実際の改善を実施します。改善後はその効果を評価し、新たなベースラインを設定して次のサイクルに備えます。改善の実施においては次の点が重要です。

  • 明確な目標と期限の設定
  • 責任者と役割分担の明確化
  • 進捗のモニタリングと定期的な報告
  • 予期せぬ問題への迅速な対応

これらの点に注意しながら、PDCAサイクルを回し、継続的な改善を実現します。

まとめ

CSI(継続的サービス改善)は、ITサービスマネジメントにおいて変化するビジネスニーズに対応し、サービスの価値を継続的に向上させる役割を担っています。変化の激しいデジタル時代において、CSIは企業の成長と生存に不可欠な要素といえるでしょう。

CSIはサービス品質を向上させるだけでなく、業務プロセスの効率化やコスト削減、顧客満足度の向上などさまざまな効果をもたらします。この記事で解説した7ステップ改善モデルなどを参考にしながら、対応を進めてみてはいかがでしょうか。

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