スピード経営に追随する
IT部門のサービスデリバリとは?

企業を取りまく情報や環境は複雑かつスピーディに変化し続けており、将来の予測が困難な時代を迎えています。そうした中で、企業のビジネス展開のカギを握るIT部門への期待は高まる一方です。今回はIT部門の活躍を後押しするシステム運用の稼働を抑える、サービスデリバリ(service delivery)について掘り下げていきます。

スピード経営に追随するIT部門のサービスデリバリとは?

いよいよIT部門が企業の先陣を切る時代に

政治や経済、環境、テクノロジーなどのマクロな変化に加え、個人の仕事に対する価値観やキャリア形成が多様化したことにより、企業を取りまく環境は複雑さを増しています。この予測困難なVUCA時代では、企業におけるIT部門の役割は大きく変化しつつあります。

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表した「予測困難なVUCA時代を乗り越えるIT部門の役割」と題した「企業IT動向調査2023」では、IT基盤への課題認識は新型コロナ禍で推進・整備されたテレワーク環境から、すでにビジネスへの柔軟・迅速な対応、グローバル化対応へと関心がシフトしています。

イメージ画像:IT基盤における企業の優先課題 今回現状と今後および前回現状(複数回答)
出典:JUAS「企業IT動向調査2023(2022年度調査)」より

さらに同調査でのIT部門の貢献状況は「システムの安定稼働(基盤整備、セキュリティ対策含む)」が高い一方、経営改革に直結する、本来取り組むべき「事業創造やビジネス面の変革(DXなど)」はまだ不十分と認識されているようです。

イメージ画像:IT組織の貢献状況
出典:JUAS「企業IT動向調査2023(2022年度調査)」より

また、少数派のIT部門が経営DXに貢献している企業の特長として、「経営者と事業部門がITを用いた変革に積極的かつ企画段階からIT部門が事業部門と協力的に進めている」といった、新たなIT採用への積極性の高さが挙げられています。とはいえ、日本の慢性的なIT人材不足の中、限られたリソースで従来のシステム運用業務を回すだけで精いっぱいのIT部門も多く、期待されるDXへの貢献ができていないケースは少なくありません。この悩ましい課題を解決するには、従来のサービスデリバリ体制を見直す必要があります。

サービスデリバリの概要、基礎知識と進め方

ユーザーのニーズに応じたITサービスの設計や提供、管理、改善といった活動全般のことを「ITSM(ITサービスマネジメント)」と呼び、それを実現する仕組みを「ITSMS(ITサービスマネジメントシステム)」と呼びます。ITSMの目的は、ITSMのプロセスを繰り返し継続的に行い、組織内のサービスを改善することでビジネスの発展に貢献すること、適切なコストで可用性、応答性のより高いサービスを提供することにあります。

サービスマネジメントのユーザーには社員や顧客、ビジネス・パートナーなどが含まれます。ITサービスには企業がユーザー向けに提供するハードウェアやソフトウェア、コンピューティング・リソースのすべてが含まれます。具体的にはノートPC、ソフトウェア資産、Webアプリケーション、モバイル・アプリケーション、クラウド・ストレージ、開発用の仮想サーバーなどです。

サービスデリバリとはITSMに含まれる、システム運用の安定提供と維持・改善により保守性、信頼性を高めてユーザーに提供する一連の活動やプロジェクトのことです。主に、中長期的なITサービスの計画と改善手法として行われます。サービスデリバリ業務は多岐にわたり、経理、人事といったバックオフィス業務、インサイドセールス、マーケティングなどの顧客接点業務、製造業の調達業務などを担います。

同じく、ITSMに含まれるものとしてサービスサポートがあります。これはITシステムに生じた問題の解決や原因の特定、予防措置、構成変更などの業務を指します。サービスサポートは構成管理とインシデント管理、変更管理、リソース管理、問題管理で構成されます。

サービスサポートの担当部署となるサービスデスクは、システムエラーや技術サポート、問い合わせなどの対応窓口となります。社内のユーザーのみならず、社外ユーザーから寄せられる問い合わせにも対応するという、顧客接点の役割も担います。原則的に、ITSMではサービスデリバリとサービスサポートという2つのプロセスを連動させて進めていきます。

話をサービスデリバリに戻します。具体的にサービスデリバリは「サービスレベル管理」「ITサービス財務管理」「可用性管理」「ITサービス継続性管理(ITSCM)」「キャパシティ管理」という5つのプロセスで構成されており、各プロセスが異なる役割と責任を担っています。サービスマネジメントにおけるベストプラクティスをまとめた書籍群、ITILをベースとしたITSMの規格(ISO/IEC 20000)では、これらのプロセスを総称して「サービスデリバリプロセス群」と分類しています。サービスデリバリの活動では、デリバリマネージャーを中心にデリバリ作業を行い、サービスデリバリモデルの最適化を進めていきます。

サービスデリバリの各プロセスを、順を追って解説していきます。

「サービスレベル管理(SLM)」では、ITサービス提供者とユーザーの間で結ばれるサービス水準に関する「サービスレベル要件(SLR)」を決め、サービス水準に関する合意として「サービスレベル合意(SLA)」を作成します。SLA内にはアップタイムや応答時間などの特定の指標に関する「サービスレベル目標(SLO)」の合意、SLOに対するコンプライアンスを測定する「サービスレベル指標(SLI)」も含まれます。さらに「運用レベル合意(OLA)」を作成し、IT業界のパートナーなどにアウトソーシングを利用する場合には「外部委託契約(UC)」を結んだ上でSLAにもとづき評価し、「サービス改善計画(SIP)」で洗い出した課題を「サービスレベル管理(SLM)」で是正していきます。サービスレベル管理では、ユーザーとサプライヤとの関係を保つビジネス要件と、サービス提供実現コストを相互評価する、サービスレベルの測定と継続的な改善を実施するという3つの目標が掲げられています。

続いて「ITサービス財務管理」では、SLAによる評価にもとづき、システムの増築や改修が必要な場合には内製であればIT資源の追加投資についての稟議を行い、外注を利用するのであればパートナーとなる開発ベンダーに見積依頼をします。ITサービス財務管理は一般的な企業会計と異なり、エンドツーエンドのITサービスの費用を計算するものです。そして最終目標は、例外もありますがユーザーに対して課金を行うことにあります。ITサービス財務管理では、IT予算のコントロールと会計管理、ITサービスのコスト算出と振り分け、ITサービスに対する公平公正なコスト回収という目標が掲げられています。

そして「可用性管理」では、SLAの評価を指標として、経年劣化や故障といった内的要因によりシステムの可用性を低下させる要因がある場合には、OSアップデート、ウイルススキャン、パッチ適用といった保護して安全を維持する保全、IT資産棚卸、ログ解析、システム改修などにより運用管理の品質を維持する保守についての検討・対策を行います。可用性管理はビジネスに負の影響を与えるシステムダウンを減少させ、継続的にITサービスを利用する計画、改善を行うプロセスです。さらに可用性そのものだけでなく、高可用性を実現するために必要な信頼性、保守性、サービス性を担保する役割も担っています。可用性管理では、将来的なサービス損失の予防、外部ベンダーに対する契約調整、サービスを構成するアイテムについての適切な保守活動という目標が掲げられています。

「ITサービス継続性管理(ITSCM)」では、SLAの評価にもとづき、地震、火災、感染症、コンピューターウイルスの感染などの外的要因により事業継続が危ぶまれる場合には、「ビジネスインパクト分析(BIA)」を指針に事業継続計画(BCP)を作成・修正する必要があります。BCPに対して新たなIT資産が必要な場合には、「ITサービス財務管理」のプロセスと連携して、投資予算についての検討を行います。災害時の対応はIT側だけが担うものではないため、ビジネス側で立てられる事業継続性管理と連動しておく必要があります。ITサービス継続性管理(ITSCM)では、災害時の事業への影響を確認する、効果的なリスク分析とリスク管理を実施する、企業の事業継続性計画(BCP)に統合した管理を実施する目標があります。

最後の「キャパシティ管理」では、構成管理にもとづくSLAによる評価の結果、IT資源の過不足が生じている場合にCPUやメモリー、ハードディスク容量、ネットワーク帯域などの最適化を行います。その際には将来的な売上計画や社員数の増減などといったビジネス側のキャパシティの変化を見越して、あらかじめ拡張性を持たせておくことも重要です。需要予測にもとづくリソースの増減で新たなIT資産の投入が必要なら、やはり「ITサービス財務管理」のプロセスと連携して、投資予算の検討を行います。キャパシティ管理では、事業計画の理解とキャパシティ計画の立案、コストと需要のバランス調整、モニタリングによる先行的な対応という目標があります。

以上がサービスデリバリの大きな流れです。しかし、昨今のビジネス環境の急速な変化により、IT部門に対する期待やITサービスに対するユーザーニーズは高まる一方です。いまこそ、従来のサービスデリバリの考え方をアップデートする必要があるのかもしれません。

IT部門の抱えるサービスデリバリの課題を一挙に解決

不確実なVUCA時代の真っ只中、IT部門にはニューノーマルに対応したインフラの整備やマルチクラウド/ハイブリッドクラウドの導入検討やセキュリティ対応、継続的デリバリによるソフトウェア開発など、複合した課題の解決が求められ、もはや従来のサービスデリバリのキャパシティを大きく超えている状況にあります。

一方でスピード経営に追随するアジリティの高いIT変革には「IT戦略を企画・実行するIT人材・エンジニアの確保」「高度化・複雑化するテクノロジーを適切に活用し標準化と効率化の実現」「要求品質とコストの最適化」など乗り越えるべき課題が多く存在します。

このような課題を抱えるIT部門におすすめのソリューションがNTT Comの「X Managed(クロスマネージド)」です。複雑化・グローバル化するITオペレーションを、デジタル活用により、シンプルにリ・デザインすることでビジネスのスピードに追随するアジリティの高いITへの変革を支援する統合IT運用マネージドサービスです。

最大の特長はデザインからオペレーションまでをワンストップで提供できることです。国内外の幅広い業界・規模のお客さまにさまざまなテクノロジー/サービスを提供してきた実績をもとに、要件整理、設計(基本/詳細)、運用設計から導入・運用までのベストプラクティスを一元提供。継続的な問題管理と継続的改善活動(CSI)の実施により、オペレーションの一貫性と即時性を実現し、運用の高度化を支援します。もちろん、グローバルで事業を展開するエンタープライズのお客さまのグローバルデリバリにも対応可能です。

さらにコンポーザブルなサービス体系による柔軟性の高さも魅力です。必要なサービスレベルに応じて自由に選択・組み立てが可能なサービス・メニューを提供することで、お客さま主導によるアウトソーシング範囲とコストをバランスよく考慮した最適化が可能です。お客さま要件に応じてサービスとメニューの自由な選択や組み立てができるようになっているため、お客さまが必要とするサービスレベルを満たすことも容易です。各サービスにおける必要不可欠な標準プロセスを一式で提供する「スタンダード」、豊富なインフラ・ソリューション実績で挙がった頻出要件を定型メニュー化し選択式で提供する「オプション」、スタンダード・オプションのみでは対応できない高度要求に対応する「プロフェッショナル」という3つのサービスレベルが設定できるようになっています。

デジタルオペレーションを支える最先端のプラットフォームも強みの1つです。「自動化プラットフォームを用いたゼロタッチオペレーション」「SREによる継続的な運用高度化」「統一されたデジタルタッチポイント」により、ビジネス環境の変化に追従できるIT環境の提供をサポート。お客さまの要望や時代の先端技術・トレンドに応じたデータドリブンでの戦略策定、メニューの入れ替えを実施します。

社内ユーザーや経営層に喜ばれるスピード経営を追随するサービスデリバリ刷新のことなら、アウトソーシングパートナーのNTT Comに相談してみてはいかがでしょうか。

コラム一覧へ

このページのトップへ