MSP(マネージドサービスプロバイダー)を利用するメリットとは?
導入時の比較ポイントも紹介
システムの監視・保守・運用業務のリソースに悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。そのような場合には、ICT環境を常時監視してくれるMSPの利用を検討するとよいでしょう。MSPを導入する際は利用のメリットや選び方について理解し、自社に合ったサービスを導入することが重要です。
この記事では、MSPの概要やサービス内容、導入メリット、選定ポイントなどについて紹介します。
MSP(マネージドサービスプロバイダー)とは
MSP(マネージドサービスプロバイダー)とは、お客さまのICT環境における監視・保守・運用業務を代行する事業者のことです。サーバーやストレージをはじめ、各種システムなどから構成されるICT環境でトラブルが発生すると、業務に多大な影響が出るおそれがあります。とはいえ、自社エンジニアがICT環境を常に監視することは困難です。そこで役に立つのがMSPのサービスです。
MSPが24時間体制でICT環境全般を常時監視し、異常を検知すると即座に通知してくれるため、システムトラブルなどが起きた際でもいち早く復旧できます。
通知だけでなく、トラブルの復旧や原因の分析などを行ってくれるサービスもあります。システムをオンプレミスからクラウドへ移行する際の、構築や設定を行ってもらえる場合もありますが、サービス内容は事業者ごとに異なるので注意が必要です。
MSPを利用する際は、自社に合ったサービスを用意している事業者を選ぶことが重要です。
MSPが注目を集める背景
MSPが注目を集める背景としては、リモートワークが増えて社内エンジニアの出社が減り、システムの管理や保守が難しくなったことが挙げられます。政府がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していることもあってIT人材が不足しており、MSPにシステム管理をアウトソーシングする必要性が高まっています。
「2025年の崖」 のリスクを考慮し、多くの企業がレガシーシステムからの脱却を図っていることも要因の1つです。2025年の崖とは、複雑化したレガシーシステムの存在によってDXの推進が滞り、2025年以降に大きな経済的損失を被るとする予測のことです。
システムの老朽化や基幹システムのサポート終了、システムを熟知したエンジニアの離職など、レガシーシステムは多くの問題を抱えており、DX化の障壁となることが懸念されています。
MSPを活用することによって、IT人材が不足しているなかでもシステムを安定的に運用したいと考える企業が増えています。
SIer・VAR・MSSPとの違い
MSPは、「SIer」「VAR」「MSSP」などのマネージドサービスと混同されることが多々あります。それぞれの違いについて理解し、自社に必要なサービスを見極めることが大切です。
以下は、各サービスの対応領域について簡単に示した表です。
サービス | 対応領域 |
---|---|
MSP | システムの監視・保守や運用を行う |
SIer | 主にシステムの開発・運用を請け負う |
VAR | 既存ハードウェア・ソフトウェアに機能を追加して再販する |
MSSP | セキュリティに特化した管理・運用ソリューションを提供する |
SIer(システムインテグレーター)はお客さまの課題解決に向けてシステム開発や運用などを担うサービスで、システムの保守や監視をメイン業務とするMSPとは明確に異なります。
また、VAR(付加価値再販業者)は企業のニーズに合わせ、既存のハードウェアやソフトウェアに追加機能などの付加価値を付けて再販する事業者のことです。
MSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダー)は、セキュリティに特化した形でICT環境の監視や運用を行います。セキュリティに特化したソリューションを提供し監視を行う点で、MSPとは違いがあるといえます。
MSPが提供するサービス内容
MSPのサービス内容は事業者ごとに大きく異なりますが、共通しているサービスもあります。ここからは、MSPが提供するサービス内容について紹介します。
システム構築・設定代行
業務システムをオンプレミスからクラウドに移行する際、MSPがシステム構築の代行やアドバイスをしてくれる場合があります。お客さまの課題をヒアリングしたうえでデータ移行やクラウドの設定も代行してくれる場合があり、システムの構築や設定を苦手とする企業でも安心して利用できるでしょう。
情報セキュリティ対策やデータのバックアップなど、MSPは幅広い内容をカバーしています。また、MSPのデータバックアップサービスによって貴重なデータが損失するリスクも軽減可能です。
MSPのセキュリティサービスとしては、セキュリティポリシーの策定やコンプライアンス支援などが挙げられます。サービスによっては、不正アクセスやマルウェアを検知した場合、迅速に対応してくれることもあります。
システム監視・トラブル通知
システムの監視やトラブルが発覚した際の通知は、MSPの根幹といえるサービスの1つです。MSPが24時間365日体制でお客さまのシステムを監視し、異常やインシデントの発生を即座に検知して担当者に通知するため、社内エンジニアの負担を減らせます。
このシステム監視と通知をメインとして、多くの事業者が、復旧作業などはお客さまに任せる形です。なお、ICT環境全体だけでなく、特定のシステムのみ監視を依頼するといった形で契約することもできます。
復旧対応
MSPのなかには、異常の検出とアラートの通知だけでなく、復旧対応まで代行可能なサービスもあります。エンジニアが出勤していない休日や深夜でも作業してくれるため、自社で対応するよりも早期に復旧できるでしょう。同時に、早期復旧により経済的な損失を抑える効果も得られます。
MSPが復旧対応まで行う場合、事象に応じて適切に対応してもらうために、あらかじめ手順書を作成しておく必要があります。
課題分析・対策提案
システムの運用や保守についての課題を分析し、改善策を提案してくれるサービスもあります。運用効率の向上につながるため、リソース不足に悩んでいる場合には一助となるはずです。
また、トラブルが発生した際はその原因や改善策についての提案を行ってくれます。提案された改善策を実施することにより、以降は同様の不具合が起こりにくくなるでしょう。
なお、トラブルについての細かい原因分析や根本的な対処については、システムの専門家から意見を聞きながらお客さま側で行う必要があります。
MSPサービスを利用するメリット
MSPサービスを利用することにより、担当者の負担軽減やシステムの可用性向上など、企業はさまざまな恩恵を受けられます。ここからは、MSPサービスを利用する4つのメリットについて紹介します。
担当者の負担を軽減できる
システム担当者の負担を軽減できることは、MSPサービス導入の大きなメリットです。
MSPに頼らない場合、トラブルが発生すると夜間や休日であっても担当者が対応しなくてはなりません。システムの復旧に時間がかかるほど経済的な損失も拡大するため、担当者には一刻も早い対応が求められます。このような体制では担当者の業務負担が大きく、離職にもつながりやすいでしょう。
一方、MSPを導入すれば24時間365日の監視体制が確立され、担当者の負担は軽減されます。また、夜間にも自社エンジニアが有人監視を行う必要がなく、人件費削減という効果も得られるでしょう。
システムの可用性が向上する
夜間や休日にシステムトラブルが発生したとき、自社エンジニアが対応する場合は通常、復旧までに時間がかかります。それに対して、24時間監視しているMSPなら即座に対応できるため、スムーズに復旧できます。その結果、システムダウンの時間を短縮して機会損失を低減可能となり、システムの可用性向上にもつながるでしょう。
コア業務に多くのリソースを割ける
MSPサービスを利用することにより、社内エンジニアはシステムの保守や監視を行う必要がなくなります。
自社エンジニアがシステムをすべて管理している場合、突発的にトラブルが発生した際は本来の業務より優先して復旧作業に当たらなくてはなりません。しかし、利用するMSPサービスによっては復旧作業も行ってもらえます。
このように、自社エンジニアがコア業務に集中しやすい環境が整い、業務効率が高まる効果が期待できます。
また、MSPサービスによって、社内で監視業務を行う人材の育成も不要になり、育成の時間やコストがかからない点といった利点もあります。
クラウドに移行しやすくなる
MSPには、クラウドに関する専門知識を備えたエンジニアが多く在籍しています。オンプレミスからクラウドへのシステム移行支援もMSPサービスの一環となっており、クラウドに移行しやすくなることもMSP導入の魅力です。
エンジニア不足などで移行になかなか踏み切れない場合でも、MSPを利用することで、クラウドやデータの移行のサポートも受けることができるため、スムーズに進むメリットを得られます。
システムをクラウドに移行することにより、リモートワークが主流となりつつある現代社会の働き方にも適応しやすくなります。
MSPサービスが必要になるケース
ここからは、MSPサービスが必要になるケースについて2つ紹介します。
サーバー環境のことがわからない
MSPサービスが必要になるケースとして、まずサーバー環境についての知識がない場合が挙げられます。サーバーの選定や環境構築、バックアップなどの知識や経験がない場合、インフラまわりの整備に多大な労力がかかり、リソースを圧迫します。
このような場合、システムの保守や運用、管理を代行可能なMSPサービスが有効活用できるでしょう。インフラまわりの煩雑な業務をMSPに行ってもらうことにより、企業側は本来の業務に専念できるため、業績向上などにつながる効果が期待できます。
社内運用のノウハウ・リソースが不足している
現在、社内でシステムの保守や監視を行っているものの、トラブルが起きたときの対応についてノウハウがない場合にはMSPの活用がおすすめです。MSPサービスに一任すれば、システムトラブルの復旧対応や現状における問題点の分析などを行ってくれるはずです。
また、社内エンジニアが不足しており、システム運用のリソースが確保できない場合にもMSPを有効活用できます。MSPサービスの導入で人材不足を補いつつ、採用や育成にかかるコストの削減を図るとよいでしょう。
MSPサービスを導入する際の比較ポイント
MSPサービスを選ぶ際は、サービス内容や得意分野などについて確かめたうえで、自社のニーズを満たすサービスを導入することが大切です。ここからは、MSPサービスを導入する際に重要な3つの比較ポイントについて紹介します。
サービス内容
MSPによって依頼可能なサービス内容は異なります。システムの監視や通知を主として請け負っている場合もあれば、復旧対応や問題点の分析まで対応可能な場合もあるでしょう。
トラブル対応のノウハウが不足している企業であれば、復旧対応や改善策の提案までしてくれるサービスを選ぶことにより、システムの可用性向上が期待できます。対して、MSPサービスのコストを抑えつつリソースを確保したい場合などは、システムの監視や通知のみに対応したサービスを選ぶことがおすすめです。
このように、自社にとって必要なサービスを提供している事業者を選ぶことが大切です。
監視対象の範囲
MSPサービスが監視対象としている範囲は、優先的に確認しておくべきポイントです。各サービスを比較する際に、自社が使っているオンプレミスには対応しているのか、どのパブリッククラウドが監視対象になるのかといった点について確認しましょう。
現状の自社システムにおける監視対象を事前にとりまとめておくことで、MSPサービスにおける監視対象の範囲と重なり合う部分を確認しやすくなります。また、システムをオンプレミスからクラウドへ移行することを検討している場合、先に利用するクラウドを決めておくと、MSPサービスも選択しやすくなります。
得意分野・対応できる規模
事業者によって得意分野や対応可能な規模は異なるため、自社の条件に合うサービスを選定することも重要です。
ECサイトなどの多数の人が同時に閲覧するシステム、不特定多数の人がアクセスするWebメディアなどのシステム、社内システムなど、得意とするシステムのジャンルはMSPサービスごとに異なります。また、対応できるシステム規模についても事前に確認が必要です。
自社が使用しているシステムで豊富な実績があり、自社のシステム規模に対応しているMSPを探すとよいでしょう。
まとめ
MSPではシステムの構築や監視、トラブルに対する通知、復旧対応などのサービスを提供しており、企業におけるシステム担当者の負担軽減やシステムの可用性向上に役立ちます。システムをクラウドに移行したい場合のサポートや、セキュリティに関するアドバイスなども受けられるため、必要に応じて有効活してみてください。
近年はICT環境が高度化・複雑化しており、社内エンジニアによるシステムの監視や保守はますます困難になっています。社内リソースの確保にお困りの場合は、ドコモビジネスが提供する「X Managed®」の利用がおすすめです。
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