XR学祭とは?

  • XR学祭とは?

    文部科学省が公表した新しい学習指導要領では、学びにおける3つの柱「主体的」「能動的」「協働的」が示されています。学校で学んだことが、明日、そして将来につながるように、子どもたちの学びが進化している今般、ドコモが貢献できることとはー

    時間と空間を超えた新たな体験を、先生・子どもたちと創造する機会を創りたい、そのような想いがカタチとなり、2022年3月18日、ドコモ教育ICTオンラインセミナー特別編「XR学祭」が開催されました。

    XR学祭には全国の小学校・中学校、高等学校、大学、専門学校から5校が参加。ドコモの提供するVR空間(Virtual Event Platform)に3Dオブジェクト、動画、静止画などを配置し、先生・子どもたちが思い描いた未来の学校を創作・展示しました。パソコン、タブレット端末のほか、VRゴーグル(MetaQuest2)を使うことで、その場にいるような臨場感を味わうことができ、参加者たちの心を湧かせました。

  • VR空間での交流会に、日本各地から参加

    参加校による交流会の様子はウェビナーでライブ中継。XRの技術開発を推進しているドコモ移動機開発部の的場直人による「学びにおけるXR環境は試行錯誤の段階ですが、ドコモだから提供できる誰もが使いやすく、楽しめるようなプラットフォームを今後も開発していきたいです」という挨拶で交流会は始まりました。

    参加校によるショートプレゼンテーションでは、各校が創作した展示空間にアバターが入り、作品を見ながら、創作テーマ・制作の意図や苦労した点等を、先生・子どもたちがリレー形式に紹介してくれました。

各校ご紹介

  • 森村学園初等部

    • ・力を入れている学業:英語・言語技術・ICT
    • ・参加学生:小学3年生・5名、小学5年生・10名 計15名
    • ・担当教諭:榎本昇先生・黒澤友美先生・不破花純先生

    [テーマ] 未来にむけて歩み続ける森村学園初等部

    「誰もが参加できる社会」について、生徒たちの話を聞いていた際に、VRの話が挙がりました。例えば「身体が不自由であったとしてもVRの世界ではもっと自由に過ごせるのではないだろうか?」と考えたのです。そうした自由な世界に子どもたちの想いがこもった作品を上映することができたら素敵だと考え、この「XR学祭」に参加を希望しました。

    作品テーマは「未来にむけて歩み続ける森村学園初等部」。
    このXR学祭のバーチャル空間をこの1年の学びの発表の場として考えました。
    そしてこの空間で上映されている映像作品は「2030年の学校や社会、世界はどうなっていて欲しい?」という問いかけをきっかけに、数チームがそれぞれの解決したい問題を掲げて、取材を開始。そして、1年近い月日をかけてまとめていきました。

    取材においては、自分たちが感じたことや本当のことを正しく伝えられるように、インターネットでの情報に頼りすぎることなく、必ず現地に足を運んで、関係する方々に話を伺うことを大切にしてきました。5年生が制作した映像コンテンツでは、地場産業の横浜スカーフを特集していますが、「その歴史と関わってきた人への思いを見ているみなさんに届けたい」という気持ちが作品に込められています。
    また、楽しみながら制作したXR空間の中にいるキャラクターにも注目です。
    ますますXRが発展していく中で、子どもたちには実際の世界を大事にしてもらいつつも、今回のように、時間や空間を越えるような学びを提供できたら素敵だと思いました。

  • 佐賀龍谷学園 龍谷中学校

    • ・力を入れている学業:英語教育・STEAM教育・個人研究・SDGs
    • ・参加学生:中学2年生4名、中学1年生9名 計13名
    • ・担当教諭:中村純一先生、村岡亮典先生

    [テーマ] 未来の学校にありそうなもの、こんな学校ならいいな。について考えてみた。

    「未来の学校にありそうなもの」をテーマにみんなで意見を出しあい、3Dオブジェクトを制作しました。

    まず、生徒同士で「未来の学校ってどんなだろう?」、「未来の学校には、どんなものがあるの?」などの会話をしました。いくつかの動画を参考にしながら、チャットを使って意見を出した後、3Dオブジェクトの制作に取りかかりました。生徒たちにとって3Dオブジェクトの制作は初めてのことで、3Dモデリングアプリの操作も今まで経験がなかったため、慣れるまでは思うように作れませんでした。しかし、諦めることなく、粘り強く試行錯誤を重ねた結果、なんとか形にすることができて、とても満足しています。

    オンライン化が浸透してきた現在の社会状況を通してより実感しているのは、「リアル」な人とのつながりだけにこだわらず、「メタバース(仮想空間)」の中での人とのつながりにも目を向ける必要があるということです。生徒たちのように、若いうちからメタバースの制作や、メタバースの中での活動に積極的に取り組む経験ができたということは新たな価値となり、これからの時代の中で生きていくための大切な視点の一つを得ることができたのではないかと感じました。

  • 札幌新陽高等学校

    • ・力を入れている学業:探究学習、アウトドア、
      e-sports、企業との連携
    • ・参加学生:2学年・探究コース 34名
    • ・担当教諭:細川凌平先生

    [テーマ] 「未来の学校」

    新陽高校では、身近なものから地球レベルのものまで、まだ解決されていない社会課題を取り上げ、それを解決することができる「未来の学校」をデザインしました。

    バーチャル空間の魅力は、「現実を超えることができる」だけでなく、「まだ存在しないものを創り上げることができる」ということだと思います。目の前の課題に悲観するのではなく、これから訪れる「未来」に希望を持っていこうというメッセージを多くの人に伝えたいと思い、今回の作品を34人全員で作っていきました。
    まず、チームで社会課題をいくつかリストアップしました。そこから、「薬物乱用」や「個性が尊重されない社会」など課題を絞り、その課題を解決する、まだ存在しない未来の学校を3Dオブジェクトにしていきました。また、制作の方法はチームで自由にしています。絵を描くのが得意な生徒はイラストを作り、PCスキルが高い生徒はBlenderやマイクラを用いて作成するなど、それぞれが自らの強みを生かして未来の学校を表現しました。
    授業の半分以上が、オンライン授業という環境だったので、メンバー間で意思疎通を図ることがとても難しかったのですが、全員しっかりと完成させ、今回のXR学祭を迎えることができました。

    XRが今後発展していくことで、海外など遠く離れた人とも簡単に交流ができるようになり、今まで出会えていなかった人やもの、可能性が大きく広がっていくことを期待します。

  • ncc 新潟コンピュータ専門学校

    • ・力を入れている学業:メタバース、5G、eスポーツ、プログラム、ロボット、AI、CG
    • ・参加学生:1年生7名
    • ・担当教諭:山中裕介先生

    [テーマ] メタバースによるXR作品展示・実績紹介

    XRやVTuberの制作を専攻している学生による作品です。

    産学官連携で実施した、様々なXRや5Gを活用した先進技術の実証実験、授業で制作したコンテンツを展示しています。企業と連携したXRプロジェクトを通じて先端技術に触れ、職業体験をすることで学生たちは成長できたと実感しています。

    展示した和楽器の3Dオブジェクトは、XRを活用したオンライン授業で制作しました。VTuber(バーチャルYouTuber)のデザインや衣装も学生たちの作品です。

    昨今の社会事情によって 、私たちの生活は大きく制限されることになりました。しかし、その一方でメタバースにより注目が集まり、新しい体験や楽しみの創造が広がりました。このVirtual Event Platformを活用したメタバースでの学園祭も、その一つだと思います。年代も地域も異なる他校の方々とVRで交流ができるということがとても楽しみです。今後、XRに対応したデバイスが普及することでメタバースが一般的で誰もが楽しめるものになると思います。デバイスの発展と通信速度の向上によってコミュニケーションや情報伝達が変化し、SFのような世界が現実になる日も近いのではないでしょうか。

  • 立命館大学

    • ・力を入れている学業:技術経営学・イノベーション論
    • ・参加学生:大学院テクノロジー・マネジメント研究科システム・イノベーション研究室修士1回生1名、2回生3名 計4名
    • ・担当教授:湊宣明先生

    [テーマ] 宇宙飛行士訓練を応用した遠隔チーム行動トレーニングの開発

    ここ二、三年でオフィス以外の場所で就業するリモートワークという言葉が浸透し、普及しました。同時に、オンライン会議など遠隔で行うチーム協調作業にストレスや非効率性を感じるケースが増えてきたという事実もあります。情報通信機器などハード面での環境充実ももちろん必要ですが、働く人が離れた環境であっても協調的に行動し、目的達成に向けてチーム全体のパフォーマンスを最大化させる「チーム行動能力の向上」が求められています。

    そこで、私たちは遠隔協調作業でのチーム行動能力を育成する宇宙飛行士訓練に着目しました。宇宙飛行士訓練を応用し、リモートワーク実践者がチームとしての行動能力を向上させる訓練プログラムをオンライン環境で実装することにしました。
    宇宙飛行士の訓練を応用した研究内容を、どうすれば小学生や中学生の皆さんにもおもしろく感じてもらいながら、わかりやすく伝えることができるのか? メンバー間で議論を重ねて、試行錯誤しました。その工夫の一つとして「宇宙空間」をコンセプトに、有名な映画「スターウォーズ」をイメージしてコンテンツ作りを行いました。

    XRの発展によって、世界中のあらゆる場所で対面授業に匹敵するような質の高いオンライン授業を受けることができたら、さらに、対面とオンラインが融合したハイブリッド授業が実現したらどれほど素晴らしいか。国や地域を超えた学びが促進されるだけでなく、「教育格差」のような社会課題の解消にもつながるのではないかと考えています。

質疑応答

  • 各校の作品に感化され、
    盛り上がる質疑応答

    各校のプレゼンテーションの後は、学校同士で行う質疑応答です。まずは、元気いっぱいの森村学園初等部の子どもたちから立命館大学大学院の湊宣明先生に向けて質問が飛びます。
    「今、SDGsが注目されていますが、宇宙飛行士の訓練ではどのように達成をめざしていますか?」

    それに対し、湊先生からは
    「宇宙に行こうとするとたくさんの燃料を使うため、環境にとっては正直優しくありません。しかし、例えば国際宇宙ステーションなど、いろんな国の宇宙飛行士たちが男女問わず集まって、文化の違いや性別の差を理解・配慮しながらプロジェクトを進行しています」と小学生にも分かりやすい言葉を選んだ回答。

    このほかにも森村学園初等部からは4名が各校に対して質問をし、それぞれ丁寧に回答する先生や子どもたちの様子が印象的でした。アバターの完成度の高さから技術的な質問が集中したのはncc 新潟コンピュータ専門学校で、「設計図をきちんと仕上げてから着手するようにしています」と制作のコツを伝授する場面もありました。

  • XRが国や地域の境界を取り払い、
    学びのカタチを変える

    一般の聴講者からも時間の中で収まらないほどの質問が寄せられました。今回一番多くの3Dオブジェクトを作り上げた龍谷中学校、さらに札幌新陽高等学校に対しては「3Dモデリングソフトを使っての制作で工夫した点は?」という質問が。

    龍谷中学校の中村先生からは、
    「大切なのは、目的についてしっかり話し合ってから制作に入ることです」

    札幌新陽高等学校の細川先生からは、
    「技術については専門的な知識のある人と連携しながら制作できたことです」
    と回答がありました。

    また「もっと広いVR空間を使って学校同士で交流会をするなら、どのようなことをしてみたいか」という質問に対しては、各校から「国内だけでなく、海外からゲストを呼ぶ」「レゴブロックのようなものを使って、巨大なピラミッドや東京タワーを大人数で共同制作する」といった、XRだから実現できる、無限の可能性を秘めたアイデアが次々と飛び出し、交流会を盛り上げました。

有識者からの総評

XR学祭に参加した子どもたちの作品に対して、世界最大のメタバースイベントを主催するVR法人HIKKYのCEOである舟越靖氏と、ICT活用教育で著名な情報通信総合研究所の特別研究員、平井聡一郎氏からの総評が行われました。

  • 「世の中に存在するメタバースの制作物をものすごくたくさん見てきました。その上で、皆さんの作品への感想や想いを伝えます。」

    森村学園初等部

    みんなの笑顔が想像できる作品です。この先、遊びと学びの垣根はなくなっていくでしょう。今後も、楽しみながら新しいことに積極的に取り組んでください。

    佐賀龍谷学園 龍谷中学校

    メタバースの世界では、中学生でも大人をびっくりさせるようなことができます。これからも楽しみながら学んでほしいと思います。

    札幌新陽高等学校

    今回は社会課題に向き合い表現していましたが、メタバースは応用範囲がとても広いです。勉強、就活、進学などにメタバースの活用を意識するとおもしろいと思います。

    ncc 新潟コンピュータ専門学校

    さすが専門学校という感じです。インターネット上ではクリエイターさんが公開している情報もあるので、いろいろ試してください。それが力として蓄積されるはずです。

    立命館大学

    私も学生さんからリモートでのコミュニケーションの悩みを相談されたとき、メタバースを使うことをおすすめしています。雑談はアイデアにもつながりますからね。よいコミュニケーションをとりながら、今後も研究を深めてください。

    VR法人HIKKY CEO 舟越 靖氏

    2018年VR法人HIKKYを設立。世界最大と称されるVRイベント「バーチャルマーケット」を主催するなど、メタバースにおける新時代のビジネスの可能性を切り開き社会的課題の解決へ先駆的に活動中。

  • 「皆さんの作品を通して、XRは未来の可能性を示してくれるすばらしいツールだと改めて感じました。今回はコンテストではないのですが、一つひとつに賞をおくります。」

    森村学園初等部

    「未来の教室賞」。「これから必要となる学び」と「XRの活用」を兼ね備えていて、こんな学校あったらいいなという想いが伝わってくる作品でした。

    佐賀龍谷学園 龍谷中学校

    「PBL(Project Based Learning)賞」。日本の教育現場でやってほしい学びのイメージを伝えてくれました。これからも「こんなことができるよ!」という発信をし続けてください。

    札幌新陽高等学校

    「3Dデザイン賞」。PBLでもあるのですが、いろんなツールを使い、自分たちの持っているイメージを見事に具現化していたのが実にクリエイティブでした。

    ncc 新潟コンピュータ専門学校

    「未来のビジネス賞」。これからのビジネスは皆さんが作っていくものです。XRというツールを使ったビジネスの可能性を大いに示すことのできた作品でした。

    立命館大学

    「未来の学び賞」。宇宙飛行士の訓練として行われている、リモートでのチーム行動能力の向上の研究は、そのまま学校教育に活かせると思います。私もたくさんのヒントをもらいました。

    情報通信総合研究所 
    特別研究員 平井 聡一郎氏

    公立小・中学校で教諭、教頭、校長として勤務。教育委員会指導主事、教育委員会参事兼指導課長を経て、株式会社情報通信総合研究所特別研究員。ドコモ教育アドバイザーとして数多くの研修等を実施。

まとめ

今回のXR学祭を通して交流を深めた皆さんが、年齢や地域という枠を超え、それぞれの展示に対して今後を見据えながら、活発的な意見交換を行なっていたことが大変印象的でした。オンライン=リアル環境よりコミュニケーションが取りにくい、というこれまでの固定観念を払拭させるだけでなく、XRの可能性についても、未来の”学校のあり方”や”学びのスタイル”をよりオープンかつ柔軟なものへと導くツールになり得るものと改めて期待できたのではないでしょうか。

ドコモは、今回の経験や参加いただいた皆さんの意見をもとに、教育の場でもより活用しやすいXRプラットフォームの実現をめざし、開発・検討に努めてまいります。

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