

学校法人佐々木学園が運営する鶯谷中学・高等学校は、学校業務の効率化や働き方改革の実現を目指し、校務のクラウド化ならびに教員PCとしてMacBookを120台導入しました。
鶯谷中学・高等学校は1903年に創立された岐阜県で最古の私学。中高一貫教育で、計画的かつゆとりのある教育を実現しています。そんな歴史のある学校で、校務DXを実現するに至った経緯やサービス導入後の運用状況、今後の展望などを鶯谷中学高校の加藤事務部長(導入担当)、中島先生(運用担当)にお聞きしました。
鶯谷中学・高等学校
導入担当 加藤繁樹事務部長
運用担当 中島康貴先生
校務に関するさまざまな課題を解決するため、校務DXを実現
時代の変化とともに、子どもたちを取り巻く環境も大きく変わり、それに伴い幼児教育の現場も変革を2019年に提唱された文部科学省が主導するGIGAスクール構想*によって、全国の児童・生徒に対して学習用端末の整備が進められてきました。しかし、その一方で、学校で働く先生たちのデジタル化はまだまだ進んでいないのが現状です。そのような状況を踏まえ、2023年3月、文部科学省は校務DXについてのガイドラインを発表しました。
①働き方改革
従来のオンプレミス環境からクラウド環境への移行を推奨しており、その結果として先生方が柔軟かつ安全な働き方の実現を目指します。
②データ連携
校務系・学習系システムを円滑に接続させることで、各システムが持つデータを低コスト・リアルタイムで連携させます。
③レジリエンス
校務に関する主要なシステムをクラウド化することで、感染症のパンデミックや大規模災害が起きた場合にも校務の継続性を確保します。
引用)「GIGAスクール構想の下での校務DXについて」より、第3章「次世代の校務DXの方向性」を一部抜粋
https://www.mext.go.jp/content/20230308-mxt_jogai01-000027984_001.pdf
ガイドラインに記された3つの方向性は、まさに鶯谷中学・高等学校が抱えていた課題そのものだと加藤事務部長は言います。
*GIGAスクール構想に関しての詳細はこちら
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm

――加藤事務部長
「従来の方法では、オンプレミスのサーバー(以下、オンプレミス)を校内に構築し、その中に「校務」と「教材」のネットワークが存在していました。「教材」は先生方への支給PCからアクセスできるのですが、「校務」に関しては個人情報や考査の入力等が発生するため、職員室にある共有の限られたPCからしかアクセスできない状況。そのため、成績入力時には順番待ちとなり非効率な状態が続いていました。
そのような背景のもと、PCの更新時期がきていたこと、文部科学省がクラウドを推奨する校務DXのガイドラインを発表したことなどタイミングが重なりました。NTT Comさんからも先生方が一つのPCで校務と教材、それぞれの業務を行うことができることを伺い、オンプレミスからクラウドへの移行を検討し始めました」
検討する過程でオンプレミスよりもクラウド化のメリットが大きいことに気づいた
――加藤事務部長
「校務のクラウド化は、本校が東海地方で最初に取り組んだ事例ではないでしょうか。前例がない状況で始めたのでセキュリティ面、運用面など、不安な点はありました。しかし、NTT Comさんからご提案を受けて検討する過程で、オンプレミスよりクラウドのメリットが大きいということがわかってきました。
まず、「先生方の働き方改革」です。校務に関するデータがクラウド上にまとめられているため、PCさえあればアクセスができ、非常勤の先生も含めてリモート勤務もできます。特に近年多発している自然災害をはじめとした有事に直面するようなときでも、出勤することなく校務を行うことができます。実際、本校でも大雨警報などによって出勤できない場合が多々ありますが、そのようなときでも校務が滞ることがありません。
次に「サーバーの管理負担の軽減」です。オンプレミスで運用する場合、数年ごとの更新と、その都度まとまった費用も必要です。一方、クラウド化した場合には、初期費用と月額の使用料で使えるため予算の計上・見通しがしやすくなります。随時アップデートも行われる点もメリットだと思います。
そしてセキュリティ面。学校では生徒のみならず保護者の個人情報も多く取り扱います。それをクラウド上で管理してよいのかどうか。運用面、費用面でのメリットには納得していましたのであとはその判断をどうするかでした。とはいえ、オンプレミスで管理をしていてもセキュリティを破られる危険や、災害などによってサーバー自体が壊れてしまう可能性もあります。100%安心・安全な管理手段は存在しないのでは?そう思っていた矢先、先述の文部科学省ガイドラインが我々の背中を大きく押しました。NTT Comさんからゼロトラストの考え方に基づいたアクセス制御型のセキュリティ対策について詳しく説明をしてもらい、必要となるセキュリティ対策について理解できました。これによって稟議を通しやすくなりましたし、何よりガイドラインに準じて進めればよいため、本当にタイミングがよかったです」
クラウド化と同時に教員用PCをMacBookに移行し、二大ミッションを達成

鶯谷中学・高等学校ではオンプレミスからのクラウド化と同時に、先生方の使用するPCをWindowsからMacBookへと移行しました。実は、クラウド化よりもMacBookへの移行のほうが大変だったと加藤事務部長は言います。
――加藤事務部長
「MacBookへの移行はセキュリティ面の強化と、生徒が使うデバイスとのシームレス化という面で決定しました。生徒たちにはiPadを支給していたので、同じApple社の製品に揃えることで学習等がシームレスになると考えたからです。ところが、MacBookへの移行を進める中で、問題が多発してしまい…。
見落としがちなのですが、学校には教育の現場でしか存在しないような業務が多くあります。そして、その業務をこなすために必要なソフトがMacBookでは動かない、という問題が起きたのです。
たとえば国語では一太郎でないとテスト問題の作成がうまくいかないと聞きますし、数学や英語でもWindowsでしか動かないソフトを使っていました。今回、MacBookへの移行が大前提だったため、「Windows専用のソフトを動かせる方法を提案してください」とNTT Comさんにお願いしました。その結果としてWindows365の導入をご提案いただき、大きな混乱が起きることもなく、無事にミッションを達成できました」
クラウド化とMacBookへの移行によって校務DX化を目指す鶯谷中学・高等学校に対して、NTT Comのさまざまな面でのサポートの厚さを感じていただいたそう。
――加藤事務部長
「まずMacBookへの移行については、いくつかのご提案をいただき、それらを一つひとつ試したうえで、Windows365 を導入することにしました。オンプレミスからのクラウド化については、多要素認証(2つ以上の異なる情報を組み合わせて認証すること)の設定など、先生方のオペレーションが従来とは大きく変わるため負荷が生じます。そのうえ、先生方の中にはデジタルが苦手な方もいらっしゃるので、NTT Comさんには講習会を開いていただきました」
――中島先生
「導入した直後、4日間ほど学校に来ていただき合計8コマ~10コマほど講習会を開催していただきました。講習会後もNTT Comの担当者が学校に残ってくれて、個別相談に答える体制をつくってくれました。こういった取り組みによって、先生の不安が軽減された実感はあります。また、NTT Comの担当者がいない場合は、私を含むICTに詳しい先生が質問に答えるのですが、当然分からないことは出てきます。そういった急な場合でも連絡をすると、レスポンス早く対応してくださったので助かりました。些細なこともすぐに答えてくれましたし、安心して進められました」
――加藤事務部長
「先生方にしてみれば、知りたいときや不安なときにすぐに教えてもらえる、という状況をつくることができたので、非常によかったです」
手書きで行っていた書類作成〜管理の手間が大幅に短縮したことで、生徒と向き合う時間は変わらずに残業だけが減少

鶯谷中学・高等学校が校務DXを実現したのが2023年8月のこと。以降、運用面を担当したのが中島先生です。
――中島先生
「本件以外でも、鶯谷中学・高等学校ではDX化を推進し、ここ2~3年でさまざまな取り組みをし、従来の業務から大きく変化したことが多々あります。何よりも、以前は手書き作成して管理していた書類をデジタルで処理できるようになったことが大きく、書類管理の手間が劇的に軽減されました」
学校で作成する書類は、指導要録や出欠管理、成績データなど多岐にわたります。従来は、これらを先生方のやり方に任せる形で運用していたと言います。
――中島先生
「たとえば指導要録であれば、成績や出欠など生徒の資料を確認しながら手書きで。また出席管理や成績データなどであれば、十年以上前に組まれたExcelのプログラムを使っていた、という事例もあります。学校は皆さんが想像する以上にデジタル化が進んでいない場所です。それらをひとつのシステムに統合し、すべての先生が同じように扱えるようになったのはデータ管理の視点からも、非常に効率が良くなったと言えるでしょう」
その反面、実際に運用するフェーズに移行すると、一般企業でも見られるようにデジタル化についていけない先生も出てきたと言います。
――中島先生
「デジタルというのは便利な反面、苦手な人にとっては覚えるまでが一苦労です。本校でも運用にあたっては同じような壁にぶつかりました。たとえば、「ログイン/ログアウト」という概念を知らない先生が1/3くらいいたため、そこから教えることに。さらには、校務DXの導入と同時にMacBookへの移行もありましたから、両方を覚えてもらう必要がありました」
そういった経緯を経て、運用された結果、生徒との関係性や働き方にどのような影響があったのでしょうか。
――中島先生
「もともと本校は先生と生徒との距離感は近いほうです。生徒は気軽に職員室にきて先生に質問をしますし、先生方も生徒とのコミュニケーションは密にとっています。なので、校務のDX化で生徒との関係性が大きく変化したわけではありませんが、先生方の働き方に関しては改善された実感があります。たとえば放課後、生徒からの質問に答え、その後に手書きで書類を作成していると残業が当たり前に、ということがこれまでは何度もありました。しかしクラウド化によって書類の作成、保管、管理がPC一台で完結するだけでなく、一元化されるようになったため大幅な効率化につながり、生徒との時間を減らすことなく、残業も少なくなったと実感しています」

鶯谷中学・高等学校にはPC室もあり、ICTに詳しい先生方が複数名いらっしゃいます。それらの先生方がNTT Comと連携を密にしながら推進をしました。校務DXを運用するにあたり、セキュリティ面などでの不安はなかったのか中島先生に尋ねてみると、「信頼するしかない」という答えが返ってきました。
――中島先生
「セキュリティ面に関して「これって、絶対に大丈夫?」と聞いてくる方もいます。でも、そんなことを言っていたら何もできません。クラウドではなく、校内にオンプレミスでサーバーを置いて管理すれば絶対安心かというとそういうわけでもありませんからね。先ほど加藤事務部長もありましたが、外部からの攻撃の危険もありますし、ヒューマンエラーも考えられます。オンプレミスだから安心、クラウドだから不安ではなく、そこは信頼できる事業者に任せるしかないと考えています」
生徒と向き合える時間をつくるためにも、校務のDX化は必須

今後の学校におけるDX化の必要性、そしてそのパートナーとしてのNTT Comへの期待感などを尋ねました。
――加藤事務部長
「どんなにデジタル技術が発達しても、教育の形は“人間”対“人間”が何よりも大切だと考えています。生徒のことを本気で考え、生身の人間として接すること、それが教育の基本です。しかし、先生方の中にはさまざまな校務に忙殺され、ともすれば生徒とのコミュニケーションの時間が少なくなってしまう、という状況に陥ってしまうケースも。だからこそ、業務を効率化し、先生方が生徒と向き合える時間をつくることができるDX化が必要です。今回、NTT Comには、そういった想いを汲んでいただき、本校のDX化を推進していただきました」
――中島先生
「校務DXは本校のデジタル化の基盤を担うものですから、今の体制をできるだけ崩さないように対応していただければと思います。今後も、学校のシステム関連についてはお任したいと考えておりますので、今回のように円滑に進めていただけると嬉しいです」
◆まとめ
「学校の先生の過重労働」という課題は度々ニュースなどでも取り上げられますが、未だ解決には至っていません。その背景のひとつに「学校現場におけるデジタル化の遅れ」があります。NTT Comでは、校務の効率化と先生方の働き方改革の両方を実現するため、今後も「校務DX」の実現に向けてのご支援推進してまいります。
◆サービス説明
文部科学省が主導する「GIGAスクール構想」に関連し、必要とされる校務の改革。過酷といわれている教職員の労働環境を校務DX化することによって改善し、負担を軽減することで教育の質を高めます。NTT Comが持つソリューションを組合せ、各学校に最適なデジタル化のご提案を行っています。