労働基準法の改正で、勤怠管理は複雑化している
労働者を保護するための法律「労働基準法」は、時勢に合わせ度々改正されています。たとえば2019年の改正では、(1)時間外労働の上限、(2)有給休暇の取得義務、(3)時間外労働の割増賃金のアップという、3つの大きなルールが設定されました。
(1)時間外労働における上限制限(月45時間、年360時間)
2019年の労働基準法の改正では、当時は過労死問題やブラック企業などが話題となり、従業員の健康確保が問題視されるようになったことから、時間外労働における上限が設定。
改正法では時間外労働の上限が「月45時間年360時間」と設定されました。
従来では、企業と労働者が「36(さぶろく)協定」という協定を結ぶことで、実質的に時間外労働の上限を外すことも可能でした。しかし改正後は、たとえ36協定を結んでいる場合でも、年720時間、単月100時間未満、平均80時間以内という上限が設定されることになりました。この上限を超えた場合は、企業には懲役や罰金といった罰則が適用されます。
(2)年次有給休暇の5日間の取得義務化
2019年の改正法では、年次有給休暇が年10日以上付与されている労働者に対し、使用者(企業)が1年以内に5日取得させることがルール化されました。
有給休暇は原則として、労働者である従業員の申し出により取得できるものです。しかし、従業員からの申し出や計画的な取得が5日に満たない場合は、不足分を使用者から時期を指定して付与させることになりました。
(3)時間外労働の割増賃金のアップ
時間外労働における割増賃金についての改正も行われています。2023年4月より、中小企業を含むすべての企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%となりました。従来までは、中小企業の時間外労働における割増賃金率は25%でしたが、改正により2倍にアップ。この割増賃金率は大企業と同じ水準となっています。上記3点の変更点で共通するのが、従業員に対する勤怠管理の重要性です。こうした変化に対応するためには、従業員がどの時間から働き始め、どの時間まで働いているか、いつ有給休暇を取得したのか、正確な勤怠の情報が欠かせません。
もし紙のタイムカードによる勤怠打刻や、エクセルによる手入力管理で勤怠管理を行っているのであれば、勤怠管理担当者の負担が増し、処理が追い付かなくなる恐れがあります。誤った勤怠管理により、労働者を上限よりも長く働かせた場合、もしくは有給休暇を取得させなかった場合、企業は1人あたり30万円の罰金が科される場合もあります。
勤怠管理をデジタル化する3つのメリットとは
このように勤怠管理のルールが複雑化している現在、迅速かつ正確に勤怠を管理するためには、勤怠管理ツールのデジタル化がポイントとなります。デジタルの勤怠管理システムを導入することで、「業務効率化」「人的ミスの軽減」「法令順守のサポート」というメリットが得られます。
1点目の「業務効率化」は、従業員が手入力していたデータや集計処理がシステムで一括処理するため、大幅な業務効率化が期待できます。勤怠管理に充てていた時間を他の業務に充てられるため、人件費などコスト削減や生産性の向上にもつながるでしょう。
2点目の「人的ミスの軽減」は、デジタル化によって、ミスを抑えた正確かつ客観的な出退勤時間の管理が可能になります。手動による勤怠管理の場合、入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーが発生する恐れがあり、不正打刻もし易い面があります。しかし、勤怠管理をデジタル化すれば、入力ミスや不正を抑えた、正確なデータの収集が可能になります。
3点目の「法令遵守のサポート」は、勤怠管理ツールの中には、労働時間のルール違反がないかどうかをアラートなどによって知らせる機能が搭載されているものがあります。こうした機能を利用すれば、度々変更される勤怠管理のルールに素早く対応でき、法令違反を防ぐことが可能になります。
これらのほかにも、テレワークなどオフィス以外の働き方における勤怠管理や、従業員のシフト管理、労働時間のデータ分析などにも役立ちます。
「dX勤怠・労務管理」で勤怠管理はどれだけ効率化できるのか?
こうしたデジタルの勤怠管理システムとして、ドコモビジネスでは「dX勤怠・労務管理」というサービスを提供しています。
dX勤怠・労務管理は、従来バラバラに管理されていた人事・労務業務を1つに集約した勤怠管理システムです。労働時間の集計や各種申請、承認業務をはじめ、有給や時間外労働まで勤怠管理業務を一括して行います。さらに、スマホやパソコンなどマルチデバイスによる打刻にも対応しているため、勤務形態や場所を選ばず打刻処理が可能です。
加えて、これまでバラバラだった人的データを1つに集積できるため、組織経営に必要なデータを分析することも可能となります。コストの面でもクラウドのため、オンプレミス型よりも導入コストや運用コストが抑えられます。
このほか、データベースは1つに統合されているため、従業員情報や設定に変更があった場合も、複数システムを修正する必要はありません。誰でも直感的に操作しやすいよう工夫されたデザインを採用しており、法改正に関するルール変更にも対応します。
労働基準法は度々変更されており、今後も変わっていくことが予想されます。それに伴い、勤怠管理業務もますます複雑化していくことが予想されます。しかし、dX勤怠・労務管理のようなデジタル勤怠管理ツールを導入することで、複雑化するルールに簡単に対応することが可能になります。まだアナログな管理方法を続けている企業は、デジタル化を検討してみても良いかもしれません。
(イラスト:タカヤマチグサ)