「お金の不安がない」とはどのような状態を指すのだろうか。本書では「お金の不安がない人」を、「どんな未来がやってきても、なんとかなると思える人」と位置づけている。
本書は財テクではなく、「お金の不安をなくして、安心して生きていくためにできること」にフォーカスした一冊である。
著者は『いつも機嫌がいい人の小さな習慣』『いつも幸せそうな人の小さな習慣』など、多くのベストセラーをもつ有川真由美さんだ。
「ゆたかに生きるための習慣」を説いたらピカイチの著者が、本作では「お金とのつき合い方」を取り上げる。お金の使い方や稼ぎ方、お金を呼ぶ働き方や時間の使い方など、“有川流”習慣術が今回もたっぷり詰まっている。
お金の使い方の習慣
ほんとうに欲しいものにお金を使う
「本日まで半額!」「2個まとめて○割引」という表示を見て、つい買ってしまうことはないだろうか。
しかし「安いから買う」のは、実はいちばんの無駄遣いだ。「安いから」と買った服は袖を通さずに眠っている、食品は食べきれずに賞味期限が切れてしまった……ということもあるだろう。
賢いお金の使い方をしている人は、「いまの自分にとって必要か」「ほんとうに気に入っているか」で判断している。そのため、どんなに価格が安くても手を伸ばさないし、じっくり吟味して買い物をしている。
買うかどうか迷ったとき、著者は「迷う理由が値段なら買う、買う理由が値段なら止めておく」と決めている。少々高くても、ほんとうに欲しくて買ったものには“愛”がある。使うたびに気分が上がるし、大切に使おうという気にもなるからだ。
買うときは「値段で選ぶ」のではなく、「ほんとうに必要なもの、気に入ったものを選ぶ」ことが、お金と仲良くつき合っていく基本である。
「支払うお金」を働いた時間に換算する
「世界一貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイのムヒカ元大統領は、2012年の地球サミットで「物を買うというのは、稼いだ金ではなく労働した時間で買っている」とスピーチし、現代の経済発展のあり方に一石を投じ、ライフスタイルの見直しを提言した。
著者はその考え方に共感し、元大統領の妻で国会議員のルシア・トポランスキーさんを取材した。
収入のほとんどを慈善団体に寄付し、農業をしながら質素に暮らしている夫妻の姿を見て、「むやみに欲しがらないことは品格で、時間や心の自由を手に入れること」だと思うに至った。
著者はそれ以来、「支払うお金」を「働いた時間や労力」に換算するようになった。
たとえば、時給1000円の人が1万円のものを買うとしたら10時間かかる。「この商品にそれだけの価値があるか」と考えると、無駄遣いせず、「人や自分を幸せにすることに使いたい」と思うようになるはずだ。

「買わない習慣」をつける
「買う行動」は習慣である。お金の不安をなくすためには、「買わない習慣」をつけることが先決だ。その方法のひとつとして「必要なものが出てきたら買い物に行く」というものがある。
私たちは小さな頃からあたりまえに消費活動をしているため、給料やボーナスが入ると、ふらりと新しい服や雑貨を買いに出かけてしまう。また、メディアの広告も消費をあおってくるため、ついそれに乗せられがちだ。
そうならないためには、「欲しいものリスト」を作って、必要になってから買いに行く習慣をつける必要がある。そうすることで欲しいものが明確になり、衝動買いを防ぐことができる。
「必要なものが出てから買い物をする」習慣がつくと、家の中がすっきりとして、「量より質」を求めるようになる。少し値の張る「いつか欲しいものリスト」を手帳に書いておくのもいいだろう。
習慣は変えることができる。必要なもの以外は買わないようにすると、より心穏やかに過ごせるようになるはずだ。
お金の増やし方の習慣
「楽しそうな仕事」で稼ぐ
「仕事を楽しむ習慣」があるかどうかで、お金の不安に対する感覚は変わる。
楽で高収入の仕事を真っ先に選ぶ人には、「仕事はきついもの」という思い込みがあるのかもしれない。しかし、そういった人たちは自分の才能や技術を磨く努力をしないため収入は上がらず、当然仕事へのモチベーションは低いし、ストレスもたまりやすい。
一方、仕事を「面白そう」「ワクワクする」という基準で選んでいる人は、仕事が苦にならない。新しいことへの挑戦や人を喜ばせること自体を楽しんでいるため、自然に成長して、続けていくことができる。
お金の不安がない稼ぎ方とは、安定にしがみつくことではなく、そのときどきで役割を見つけ、楽しみながら仕事を続けていくことである。そのためには楽しそうな仕事を選ぶこと、もしくはいまの仕事を楽しむことが大切だ。
転職や副業、昇進などの際には、「楽」よりも「楽しそう」を優先しよう。
もし仕事を選べないなら、自分なりの目標ややりがいを見つけるなど、楽しめる工夫をするべきだ。どんな仕事にも楽しめる要素はある。人生を有意義に過ごすには、仕事を楽しむ努力が欠かせない。

ものより経験にお金をかける
ものの価値は時間とともに下がっていく。しかし、自分のなかに蓄えた経験は確実に残り、生きている限り生かされ続ける。
稼ぎ力があり、かつ人生を楽しんでいる人は皆「ものより経験にお金をかける」習慣をもっている。
もちろん「世界遺産を見に行く」「音楽のライブに行く」など、経験にはお金も必要だ。
だが、実際に五感で味わったことは、知識や知恵、創造力、行動力などに変換され、未来の自分を形づくっていく。
著者は、20代のころは仕事漬けの毎日を送っていたが「このままでは収入も環境も変わらない」と悟り、30代からはものや貯金よりも経験に“投資”するようになった。
すると、自分がアップデートするたびに、収入も環境も人間関係も変わっていったのだという。
小さなことでも新しい経験を重ねると満足感や自信につながり、毎日が楽しくなっていく。経験への投資は、“心のゆたかさ”としてリターンされるのである。
【必読ポイント!】お金の不安がなくなる時間の習慣
「お金で時間を買う」発想をもつ
時間は有限で、だれにも等しく与えられている。時間をどう使うかによって、お金や人生のゆたかさは変わっていく。
著者は、まず取り入れて欲しい習慣として「時間をお金で買う」という考え方を挙げる。
私たちは「もっと稼がなきゃ」「もっと安く買いたい」と、お金のために忙しく動き回っている。そして「もっと時間があれば◯◯ができるのに」と“時間貧乏”に陥っている。
だが、自分の活動に専念したいときなど、お金を多少支払っても時間をとったほうが得策なこともある。忙しいときも「お金で時間を買う」ことで、仕事がはかどったり家族と笑顔で過ごせたりするはずだ。
よく、死ぬときに後悔することとして「挑戦すればよかった」「人との時間を大切にすればよかった」「仕事ばかりしなければよかった」という声を聞く。これらはすべて“時間配分”や“時間を買うこと”で解決ができるものばかりである。
私たちには自分を幸せにする責任がある。大切な時間を見直して、“時間リッチ”を目指していこう。
優先事項を3つに絞る
お金も時間も足りなくなってしまう人の特徴は、「優先順位」をつける習慣がないことである。
「いま、なにを優先すべきか」がわからないため、なんとなくお金や時間を使ってしまう。だらだらとゲームをするなど時間の浪費癖のある人は、お金も無駄に使っているはずだ。
これを改めるには「一日の優先事項」を3つに絞り、“先取り”する習慣をつけるといい。
たとえば「午後は仕事、18時からは家族と団らん、21時からは英会話レッスン」と決めて、ほかのことはしないようにする。仕事の優先事項も3つにすることで、「今日はなにもできなかった!」ということを避けられる。
1年のはじまりに家族旅行や資格試験の受験など、優先事項を先にスケジュール帳に書き込んでしまうのもおすすめだ。「時間があるときにしよう」と思っていては、いつまでたっても実行できない。
時間には容量がある。器にまず大きくて大事な“石”を入れてしまうことが、時間の浪費を防ぐコツだ。「優先事項」を考える習慣をつけることで、時間にもお金にも困らないようになるだろう。

未来のために時間を投資する
時間の使い方は、お金と同じく「消費」「浪費」「貯蓄・投資」の3つである。ただし、時間はお金のように貯蓄できないため、「いま、なにに時間を使うか」がすべてである。
時間の「消費」とは、睡眠や食事、生活費を稼ぐための労働や通勤時間など、「価値が同等のもの」に時間を使うことだ。
次の「浪費」は、行きたくない飲み会に参加したり、だらだらネットを見たりと「価値が下がるもの」があてはまる。
そして「投資」は、「価値が上がるもの」に時間を使うことで、スキル習得のために学んだり大切な人と過ごしたり、新しい体験をしたりする時間である。
「投資」の時間は、「いい時間だった」「大変だったけど、あの時間があるからいまがある」と思える時間ともいえる。
未来の自分を高めるためには、1日30分でも時間を「投資」に使いたい。
毎日のルーティンに組み込む、忙しければ休日にその時間を確保するなど工夫をしよう。10年後から20年後、時間の投資をしてきた人とそうでない人との間には、大きな差がついているはずだ。
未来をつくる考え方の習慣
お金の不安を力に変える
「お金の不安が漠然とある」という人は多いだろう。不安は、対策を講じずじっとしているときに起きる感情だ。正面から不安に向き合い、やるべきことをやっているときには感じないはずである。
お金の有無より重要なのは、「お金を稼ぐ力」「少ないお金で暮らす力」「いまあるお金を増やす力」の「3つの生きる力」をつけることである。
著者は、元気で働けるうちは「稼ぐ力」に時間をかけることが、もっとも効果があると感じている。
人生における最大のリスクは、働けなくなることである。働けることさえできれば、力をつけて転職したり、副業や起業をしたりもできる。どんな職種でも、仕事で信頼を獲得できればお金はついてくるはずだ。
働きたくないなら「少ないお金で暮らす力」を強化するのもひとつである。収入が少なくても上手にやりくりし、生活の知恵をつけていけば楽しく暮らしていける。
動かなければお金は降ってこない。自分に合う方法で、生きる力を備えていこう。

「できない言い訳」をやめる
あなたのまわりに「やりたいことがあるけど、お金がない」「お金がないから旅行に行けない」と言っている人はいないだろうか。
「お金がない」を口癖にするのは「自分はお金に縁がなく、管理もできない人間だ」と刷り込んでいるようなものである。とてもカッコ悪いことであり、まわりからも信用されなくなってしまう。
著者は「お金がない」「時間がない」「若くない」などの言い訳をすることをやめてから、人生が180度変わったという。
世界一周の船に乗りたいと考えたときは、スタッフとして乗船した。留学のときは奨学金をもらい、個展をひらくときには友人に額を作ってもらった。
言い訳をしないと決めたら、「お金をつくれないか?」「お金を使わずにできないか?」と頭をフル回転して考えるようになった。
もちろん、うまくいったことばかりではないが、結果よりも「やるだけやった」満足感は大きかった。そして不思議なことに、そうして一生懸命やっていると、どこからか手助けやチャンスが転がり込んでくるのである。
お金はあくまで交換手段であり、問題解決のツールである。言い訳をやめると、信頼と一緒にお金も引き寄せられるのである。

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。
提供:フライヤー
編集:斉藤和美
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)