NTTコミュニケーションズ株式会社
Webサイトのインフラをグローバルで統合
クラウドの活用で運用コストを大幅に削減
Enterprise Cloud を利用したWeb 一元化ソリューション
NTTコミュニケーションズ株式会社
経営企画部 広報室 担当課長
森 佳織 氏
「各現地法人の運用コストに加え、インフラ統合によって運用を合理化することができたため、大幅なコスト削減を実現することができました」
NTTコミュニケーションズ株式会社
経営企画部 広報室 主査
古屋 素衛氏
「これまで各海外現地法人が担当していたインフラ運用の稼働が無くなり、ほかの稼働に割り当てられるようになったことも大きな効果と言えます」
課題
日本と海外のサービスレベルの差を埋めるべく
Webサイトのインフラ統合を検討
法人向けのクラウドサービスである「Enterprise Cloud」から、個人向け無線インターネット接続サービスである「OCN モバイル ONE」まで、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が提供しているサービスは幅広く、それだけにWebサイトの規模も大きい。また、同社ではクラウドやネットワーク、データセンター、セキュリティといったICTソリューションをグローバルに展開しており、世界各地にある14の現地法人が個別にWebサイトを運営し、それぞれの国や地域に向けてサービスの情報提供などを行っている。
従来、これらのWebサイト群を運営するためのインフラは2つに分けられていた。1つは海外のすべての現地法人が共通して利用するインフラであり、ニューヨークとロンドン、香港のそれぞれにサーバーを配置し、それらを同期して運用する形である。そして2つ目が日本の本社が利用するインフラだ。課題となっていたのは、それぞれの2つのインフラでサービスレベルやセキュリティ対策に差があったことだと森氏は説明する。
「日本では仮にトラブルがあっても即座に復旧するための体制を整えていましたが、海外のWebサーバーは場所によってサービスレベルがまちまちで、障害復旧に時間がかかるケースがありました。そこで海外も日本と同等のサービスレベルでWebサイトを運営すべきではと考え、グローバル全体でインフラを見直すことにしたのです」
海外現地法人が利用しているインフラでは、一部で物理サーバーが使われていたことも問題だった。物理サーバーでの運用にはハードウェアの管理が必要で、故障時の対応や保守期限切れに伴うサーバーのリプレースといった作業が生じるためである。
これらの課題を解決するため、Webサイトのインフラをグローバルで統合し、その運用管理を日本の本社が行う方向で検討が進められていた。これに対して海外の現地法人が不安視したのは遅延の問題である。Webサイトにアクセスする際、サーバーの設置場所までの物理的な距離が遠くなると、ネットワーク遅延が増大することになる。仮に日本にサーバーを置くことになれば、アメリカやヨーロッパのユーザーがアクセスした際の遅延が大きくなり、コンテンツの表示に時間がかかってしまうことになる。目的のコンテンツがなかなか表示されなければ、Webサイトにアクセスしたユーザーにフラストレーションを与えることになりかねない。海外現地法人の不安は当然だろう。
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対策
新たな統合インフラにCDNを組み合わせて
遅延とセキュリティの2つの問題を解決
遅延の影響を最小限に抑えつつ、グローバル全体でWebサイトのインフラを統合するため、NTT Comが活用したのがCDN(Contents Delivery Network)だ。これは世界中に配置されたサーバーにコンテンツのコピーを保存し、ユーザーがWebサイトにアクセスする際には、最も近いサーバーからコンテンツをダウンロードするという仕組みである。実際には、Webサイトのインフラを自社のクラウドサービスであるEnterprise Cloudを使って構築し、これにCDNのサービスを組み合わせている。さらにEnterprise Cloudの仮想サーバーへの移行で、運用負荷の高い物理サーバーを撤廃するというメリットも生み出せる。
なおEnterprise Cloudは全世界にあるクラウド基盤のどれを使うかをユーザーが選択できる。今回のプロジェクトで選ばれたのは、運用を担当する本社がある日本のデータセンターで運用されているクラウド基盤である。通常なら遅延の問題が生じかねないが、CDNを組み合わせることで世界各地から快適にアクセスできる環境を整えている。
CDNを利用した背景には、DDoS攻撃を防ぐというセキュリティ上の理由もあった。Webサーバーに過度な負荷をかけ、正常なアクセスを妨害するのがDDoS攻撃であり、多くのWebサイトがこの攻撃の被害を受けている。このDDoS攻撃にCDNが有効だと話すのは古屋氏だ。「CDNを利用すれば、DDoS攻撃の影響を受けるのは世界各地にあるCDNのサーバーで、Enterprise Cloud上に構築したWebサイトのインフラは影響を受けません。さらにCDN側とインフラ側の双方でDDoS攻撃の対策を実施することで、攻撃を仕掛けられても影響を最小限に留められるようにしています」
Webサイトのセキュリティ対策においては、サーバーへの不正アクセスによるコンテンツの改ざんも問題となることが多い。その対策として利用しているのが、自社のマネージドセキュリティサービスである「WideAngle」とWAF(Web Application Firewall)をはじめとするセキュリティ機器の組み合わせだ。これによりWebサーバーに対する不正なリクエストを適切に遮断しつつ、不審なアクセスがあった場合にはWideAngleで即座に検知して対処する形が整えられている。
もうひとつコンテンツの不正改ざんを防ぐために行われているのが、管理体制の見直しとCMS(Contents Management System)上での権限の適正な割り当てである。従来のWebサイトは複数の制作会社がサーバーにアクセスしていたため、固定IPでセキュリティを担保していた。しかし、アカウント情報の漏えいなどによるリスクは懸念されていた。そこで今回、Webサイトの管理をグループ会社であるNTTレゾナントに一元化しつつ、それぞれのアカウントでアクセスできる範囲をきめ細かく制限している。これにより、アカウント情報の漏えいといったリスクを低減しつつ、万が一の事態が発生しても影響がWebサイト全体に及ぶなどといった事態を防いでいるのだ。
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効果
運用の合理化とインフラ全般の見直しで
大きなコストメリットを実現
Enterprise Cloudを利用してWebサイトのインフラをグローバルで一本化した成果として、森氏が挙げたのは運用コストの大幅な削減である。
「各現地法人のシステム運用コストが削減されたことに加え、Enterprise Cloudを使ったインフラ統合によって運用を合理化することができたため、大幅なコスト削減を実現しています。また以前の環境にあった物理サーバーを、Enterprise Cloudの仮想サーバーに置き換えられたことも大きなポイントと言えます。このように全体を見直し、無駄な部分を排除できたこともコストメリットにつながっています」
コスト削減に加え、仮想サーバー化によって柔軟にCPUやメモリといったサーバーリソースを制御できるようになったことの利点も大きかった。Webサイトに多くのアクセスが予想されるキャンペーンなどの際に、ポータルから簡単にリソースを追加して対応できるためだ。
別の観点で、Webサイトのインフラ統合のメリットを語るのは古屋氏だ。
「インフラの運用をすべて本社で巻き取ったことで、これまで各海外現地法人がシステム運用に費やしていた稼働を、ローカルのコンテンツの充実などに割り当てられるようになったことも大きな効果であると考えています」
インフラの効率化によってさまざまなメリットが生まれている一方、障害が発生したときの連絡をどのように行うかなど、整理すべき課題も見え始めているという。今後は海外現地法人と密にコミュニケーションを図りながら、これらの課題を早急に解消していく予定だ。
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導入サービス
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事業概要
クラウド、ネットワーク、セキュリティ、コンサルティングの提供を通し、お客さまのグローバルビジネスをサポート。拠点は世界40カ国/地域以上、120都市以上に広がっており、約20,000名のスタッフを配している。
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(掲載内容は2016年9月現在のものです)
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